一般儀式おじさんypが懐かしみながらアカデミアを過ごす 作:火壁
まさかローガーディアンが環境行くなんて思わんて……
朝、それは心地いい朝日を受けると同時に、その日の仕事や学業への憂鬱を考える時間である。俺もまた御多分に漏れず、寝ぼけた頭で食堂へ向かい、朝に優しい焼き鮭定食を突いていた。
「ああ……うめえ……」
思えば、転生直前までしばらくの食事はカット野菜だったり出来合いの惣菜を買って食ったりが多かった。栄養に問題がある程では無いが、一人寂しくというのは否めなかった。周囲を見回してみれば、ガヤガヤと朝食のメニューを話し合い、今日の授業へ思いを馳せる生徒たちが目に映る。昔は騒がしいのが嫌いだったが、今となってはある意味で楽しむ事ができるようになっていた。
「すまない、隣いいかな?」
「んお?っと君は確か」
「三沢大地だ。一年だよね?編入試験で儀式モンスターを使っていた」
当然とはいえ見られていたか。あまり目立った戦績でも無ければ儀式なんてマイナーテーマ使ってるだけなのに。
「そうだけど、よく見てるな」
「あの場では、誰もが共にアカデミアで学ぶ仲間で、競い合うライバルになる可能性があった。そんな受験生のデュエルは、観察するだけでも俺のデータベースに新たな情報として蓄積される。それに儀式モンスターは使用者の多くないテーマという事から、正直君のデュエルは為になったよ」
「それは……光栄だな」
感謝からか、三沢が握手を求めてくる。空気とか言われてるけど、礼儀正しいし空まわる要素が無ければただ強い研究者タイプなんよな。
「そう言えば、君はあの一番君に勝ったようだね」
「一番君?」
「遊城十代の事だよ。一番強いと豪語していたが、いずれリベンジに来るんじゃないかな」
「来るだろうなー。ま、デュエル出来るなら楽しいヤツとの方がいいし、楽しそうにやる十代は大歓迎だけど」
「はははっ、ならデュエルアカデミアは正しく天国だな」
「そうとも言えないのが、現実なんだけどな」
「どういう事だ?」
疑問符を浮かべる三沢に簡単に説明する。初日に学園内を散策した時、当然の如くオベリスクブルーと出くわすが、まあこちらへの態度がデカいデカい。ラーイエローの癖にとかオベリスクブルーをひけらかしてオシリスレッドへの差別発言えらい聞く。情操教育どうなってんの?
「そんなオベリスクブルー様がデュエルを愉しんでやるにはまだしも、楽しんでやるようなキャラがどれだけいると思う?因みに俺の会った奴等は男女問わず性格やべえのばっかだったぞ」
「それなら天上院明日香はどうだ?オベリスクブルーの女王と言われる程の腕を持ちながらも自他に厳しく接するが、デュエルへの思いがストイック故と考えれば君のお眼鏡にも適うんじゃないかな」
天上院明日香。GXにおけるヒロインポジション……なのだが、あまりにも男らしい所から十代ともフラグが立たなかったし、最後らへんはユベルに全てかっさらわれた。もっとヒロインムーブしてもよかったでしょうが……!
「まあ、女王なんて呼ばれてるんだから働き蜂がいてもおかしくないよね。刺されたくないからパス」
「働き蜂って……女王と言われてはいるが、それはあんまりじゃないか?」
「ブルー女子の結束力を見てないのか?初日だってのに天上院の周りを囲んで徒党組んでやがるんだぜ?中等部から知ってるが故か、長いものには巻かれる質か。兎に角あれを剥がしてからじゃないと女王にはたどり着けない。今はデッキ構築に注力するさ」
それだけ言うと三沢も理解してくれたように頷いた。俺は食い終わった定食を下膳し、アカデミアに向かった。
「戦真!昨日はどうしたんだよ?心配したんだぜ?」
「心配?昨日はデュエルして解散したろ。何言ってんだ?」
十代と翔に鉢合わせるや否や十代が俺に問い詰める。何が何だか分からない俺は十代に聞く。
「昨日メール来たんだろ?万丈目が言ってたぜ。お前が「やっと来たか!臆病者!!」!」
十代が言うよりも早く、俺の後ろから大きな声が響く。振り返るとそこには、まあ当然いるんだ。万丈目準。後に万丈目サンダーとして愛される男がそこにいた。
「儀式召喚を使い、烏山先生に勝利したからと挑発してみたが、その結果が敵前逃亡とは!」
「所詮お前のような奴は我がデュエルアカデミアに相応しくないんだよ!さっさと荷物をまとめておうちに帰りやがれ!」
取り巻き二人がゲラゲラと笑いながら俺を貶す。十代や翔が突っかかろうとしているが、そこは止める。下手に言わせると何かますか分からん。
「落ち着けお前達。所詮はラーイエローのよそ者、オベリスクブルーに挑む程勇気のいる事はこの島には無い。そういう事だ
「デカい顔をした覚え無いんですが」
「とぼけるな!昨日あんな事をしでかしておいて忘れたとは言わせないぞ!」
「あんな事?」
どうしよう、さっぱり身に覚えがない。
「まだしらばっくれるのか。昨日の入学式後、オベリスクブルーの女子と話していただろう!」
オベリスクブルー女子と……ああ、確かに話した。が、
「ただ儀式召喚について聞かれただけだぞ?編入試験のデュエルを見ていたらしい。儀式召喚を使う人が少ないから参考になったって言われただけだぞ」
デッキ見せるくらいならそこまで気にならんし、周囲が強くなるのはむしろウェルカムだろ。俺自身前世でも強いって感覚は無かったけどこの世界の環境のカードプールで戦っても勝ちきれる自信あるぞ。
「それをデカい顔してるって言うんだ!ラーイエローの癖に女子と会話するのさえおこがましいんだよ!!」
いや思春期!!女子の前で良い恰好したいだけって思惑がチラ見えしちゃってる!後ろ見ろって!万丈目すら止めようとしてるじゃん!女子に至ってはゴミを見るような目しちゃってるよ!!
「デュエルしろ!お前が負けたら退学になってもらう!」
「俺が勝ったら?」
「そんな事起こる訳無いだろ!」
万が一にそうだとしてもギャンブルなんだから互いに賭ける物決めてからじゃねえと。後からあれもこれもと後付けさせないためのマナーだよ?
「なら良いだろう!俺はこのデッキのエースカード『月の女戦士』をくれてやる!」
「あ、アンティデュエルは校則違反なんで拒否しまーす」
「逃げるのか!」
「ルール破る程じゃないし」
「はっ!これだから臆病者は」
「普通にデュエルして叩きのめせばいいんじゃない?それで良い恰好すれば女子からもウケるでしょ」
「……確かに」
欲求が先行しちゃったかー。授業もあるけど、まだ時間に余裕はあるしへーきへーき
「「デュエル!!」」
天道戦真VS長巻永悟
「俺の先攻!俺は切り込み隊長を召喚し、効果発動!手札からレベル4以下のモンスター、神殿を守る者を守備表示で特殊召喚する!」
壮年の戦士が挙げる声に呼応するように、半透明で身体の部位を示すようにラインが引かれた巨人が、モブ君を包むように現れた。あれって確か
「神殿を守る者が存在する限り、お前はドローフェイズ以外でドローが出来なくなる。これでお前は手札が増える事は無い!!」
「ドローロックか!」
「これじゃあ、強欲な壺を使っても意味ない!」
十代と翔が状況説明の如く話す。まああれってサーチ効果には無力なんですけどね。
「カードを1枚伏せてターンエンド。さあ切り込み隊長に攻撃して来い!」
「俺のターン。マシンナーズ・ソルジャーを召喚する」
俺が呼び出したのは、儀式関連でも光属性でも無い。地属性機械族のマシンナーズシリーズ。このカードにも思い入れがあるんだ。全部のカードがキラキラしてマシンナーズが全部揃った時はすぐさまこのデッキを組もうとしたものだ。弱すぎて全然回らなかったけど。でもこの環境なら、デッキを信じると答えてくれるというこの世界なら……!
「ソルジャーの召喚成功時、手札の『マシンナーズ』を1体特殊召喚できる。マシンナーズ・スナイパーを特殊召喚。バトルフェイズに入りソルジャーで切り込み隊長に攻撃」
「かかったな!トラップ発動!
切り込み隊長に装着された禍々しい装甲が、切りかかっていった機械兵士を破壊する。
「スナイパーで切り込み隊長に攻撃」
長巻LP4000→3400
「くそ!お前もモンスターを並べてくるなんて……次のターンで破壊してやる!」
「伏せを1枚仕込んでターンエンド」
授業もあるんだからできて後互いに1ターンだよ。
「俺のターン!神殿を守る者を生贄に捧げ、月の女戦士を召喚!」
半透明の巨人が消滅し、月光に照らされた女戦士がフィールドに現れる。朝なのにそこまで月が主張するのか?ソリッドビジョンか(名探偵)
「光属性モンスターとの戦闘では攻撃力が1000ポイントアップするが、命拾いしたようだな。バトルだ!」
女戦士の細剣が機甲銃士に向かう。しかしそれを通す訳にはいかない。
「永続トラップ発動、銀幕の
「何!?」
俺達の身長を軽く超える鏡が乱立し、女戦士を囲む。全方位に映る自身の姿に思考を奪われたのか、機甲銃士の前に到達する頃には本来のものとは程遠い剣の振り方となり、それを回避するのは、精密動作を得意とするスナイパーにとって造作も無い事だった。そして、その隙を逃す事も無い。
「----」
「ッ!」
月の女戦士
ATK2100→1050
レーザーライフルが鎧を貫通し、爆発する。
「そんな!?」
長巻LP3400→2650
「まだそちらのターンだが、どうする?」
「く……死者蘇生発動!月の女戦士を復活させてターンエンド!」
エースを出して満足してるタイプか?そんなんじゃ返し手無くて死ゾ。
「俺のターン。スタンバイフェイズに銀幕の鏡壁のコストを払わず破壊。メインフェイズに俺も死者蘇生でマシンナーズ・ソルジャーを蘇生。モンスターを裏守備でセットして太陽の書を発動。マシンナーズ・ディフェンダーを反転召喚。リバース効果でデッキから督戦官コヴィントンを手札に加える。
「なんだ?そんな雑魚を並べても月の女戦士には届かないぞ!銀幕の鏡壁が無い今、月の女戦士の攻撃は全てのモンスターを破壊出来る!」
「ならこのデッキのエースと行こう。コヴィントンの効果発動」
「え?」
「俺のフィールドのマシンナーズ・ソルジャー、スナイパー、ディフェンダーの3体を墓地へ送り、モンスターを特殊召喚する。
マシンナーズ・フォース出撃!!」
コヴィントンの電波信号が3体のマシンナーズに送る。空中に飛び出した3体はパーツをバラバラにし、互いのパーツを組み合わせていく。3体のマシンナーズが組み合わさったそれは、先の鏡壁を上回る大きさとなってフィールドに降り立った。
「攻撃力……4600?」
「ブルーアイズどころか、あの三幻神すら正面から倒せちゃうのぉ!!?」
「すっげえカッコイイな!3体合体なんてSFコミックみたいだぜー!!」
「バトルだ。マシンナーズ・フォースは攻撃の際、1000のライフコストが必要だが、入るダメージは2500。コヴィントンのダイレクトアタックで決まりだ。バトル!」
「や、やめろ!!」
「マシンナーズ・フォースで月の女戦士に攻撃!!オペレーションエクスターミネーション!!」
合体機甲の一撃が女戦士を消し炭にする。その余波はモブ君にも当たり、ライフを大きく削る。
「ぐああああああ!!お、俺の月の女戦士が!」
戦真LP4000→3000
長巻LP2650→150
「コヴィントンでダイレクトアタック!」
「こ、こんな雑魚モンスターでえええええええええええええええ!!!」
長巻LP150→0
「ラーイエローごときに負けるとは……情けない」
万丈目がもう一人の取り巻きを連れて去って行く。負けた方は跪いて動かない。そんな中で俺に話しかける人物が二人
「やったな戦真!」
「オベリスクブルーに勝っちゃうなんて!アニキに勝っただけはあるな~」
十代は素直に称賛の言葉をくれて、翔も同じだが、どこか上からと感じるのは俺の性格がひねくれてるからかな。社会人になってから治ってったと思ったけど、肉体に精神が引っ張られてるって事なのかな?
「ってヤベェ!!もうすぐ授業始まるぞ!初日から遅刻はマズい!!」
「いっけねえ!急げ急げ!!」
「ま、待ってよー!」
俺達3人はアカデミアに向かって走る。そんな俺達を影から見ていた者がいたと知るのは、もう少し先の話だ。
3話目早々儀式使ってない……まあ懐かしむというのがテーマだしセーフ……セーフ?