日本に吹き荒れる黄金の風 作:白雪(pixivでもやってる)
ふと、目が覚めた。
ぱちぱちと瞬きをすると、ぬるぬるとした膜のようなものの残骸が自分の身体についている。
はあ……なんかきもちわる、シャワー浴びてえ。
だが、身体に力をいれようとするも入らない。
おかしいな、と思って何回も力をいれても、脚はガクガクと震えて立てないのだ。
……そもそも、なんで四足歩行の動物になってるんだ?
ずいぶんと出来のいい夢だな。
まどろみから覚めはじめて、オレは自分が今どうなってるのか正確に理解した。
「……は?え?なんだこれぇぇぇぇ!?!?」
「あら、ようやく立ったのね。いいこいいこ」
母親のペロペロと顔をなめてくるの、不快感はあまりなくてびっくりした。
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我輩は馬である。
世間一般でいうと、とねっこである。
名前はまだない。
スタッフ……厩務員?さんからは"ギモーヴの2016"と呼ばれている。
ギモーヴ、というのは確かフランス語でマシュマロの意味だったか、それとも似たようなスイーツの名前だったか。
ゆったりと前を先導する母親を見ながら思考する。
母は、これまで二度受胎しているが、どちらも死産だったらしい。
母は遠い国でレースに出て、いい成績を修めたのでこの国に買われて繁殖牝馬として期待されて来たのだ。
飄々としているが、かなり気にしているし……オレに過保護だ。
「はじめての子供だから勝手がわからないの」
とは母の弁である。
オレは前世?はきちんと進学して就職した大人であったため、手のかからない子供だったし、母てしては楽だったろう。
そうだ、前世。
オレはいったい何で死んでしまったのだろうか……。
最後の記憶は、仕事で疲れて風呂に入ったことで……
もしかして 死因:入浴中に死亡
そういや入浴中に寝るのは気絶していることと同義だと聞いたことがある。
やらかしてしまったな……。
虚無の目でとぼとぼと放牧地を歩いていると、同じファームの親子が一組いるのがわかった。
よく放牧時間が一緒になる親子だと遠目でわかる。
「こんにちは、クロノさん」
「ご丁寧にどうも、ギモーヴさん」
芦毛の馬体を震わせて挨拶をする相手はクロノさん。
気さくなご婦人っていう感じの方だ。
「こんにちはクロノさん。……クロノ"ちゃん"は?」
「あぁ、それは……」
「金ちゃん!!!!」
クロノさんをたやすく追い抜いて、オレにぶつかるんじゃないかと思うくらい突進してきた芦毛……というには黒すぎる身体。
きらきらと艶やかな瞳は女の子らしい。
「クロノちゃん」
オレたちにはまだ名前がない。
担当厩務員さんたちから「金ちゃん」なんて呼ばれてるオレ(多分毛色が栗毛だからだと思う)は例外側なのかもしれない。
だから母親のほうをクロノさん、娘さんのほうをクロノちゃんと分けて呼んでるのだ。
このクロノちゃん、やけにオレに懐いてる。かわいい。
オレの精神年齢的は20代なので、まだまだ幼いクロノちゃんはめっちゃ幼女。
兄貴分みたいに接してしまう。
「金ちゃん、わたしね、今日かけっこで一番になったのよ!」
「前は二着だったんだっけ?リベンジしたな」
「金ちゃんがたくさん、わたしと一緒に走ってくれたからだよ!金ちゃん速いもん」
すりすりと身体を寄せてくるクロノちゃん、可愛い()
転生するなら人間がいいと思ってたけど、馬もなかなかよくない?
つか金ちゃんって名前ださくね?
一緒にクロノちゃんとかけっこをしたり、グルーミングをしたりしてると、そろそろ放牧の終了時間だと気づいた。
ぶっちゃけ皆わからないと思う。
これは元人間の自分だったからこそわかった。
「クロノちゃん、多分もう少ししたら人間さんが呼んでくると思う」
「わかった!」
オレについてくついてくしてるの本当に可愛い。
なんだこれは、母性?
クロノさんはゆったりと散歩をしていて、そのタイミングで厩務員さんが母娘を連れて帰っていった。
さて
「母さん、もう帰る時間だよ。準備しよう。」
母さんは寝ているのか身体を倒して顔をふかふかの芝に埋めている。
「母さん、」
返事はない。
「 」
なんとなく、母さんが返事をしない理由がわかってしまった。
ギモーヴの2016(牡馬)(栗毛)
父オルフェーヴル
母ギモーヴ
母父Motivator
母ギモーヴは仏オークス、オペラ賞勝ち馬、全妹に2014年凱旋門賞等を勝ったトレヴがいる。