5話
もちっとした猫好き様。誤字報告ありがとうございます。
ディープスカイ様、感想ありがとうございます。
「だあああああッ!クソッ、いつまで追いかけて来る気だッ!?」
カイザーPMCの軍事基地から囚われていたユメさんを奪還したのも束の間、あたしは巨大な蛇型ロボットに追われていた。
規格外のサイズでありながら悠々と砂漠に潜りながら追いかけるロボット。何が奴の動線に触れたかは分からないが、しつこくこちらの跡を追跡している。
いくらカイザーから拝借したバイクで逃走しているとはいえ、逃げ切るのはしんどい話だ。
ひたすらエンジンを吹かし、ロボットから距離を放そうと運転する。
こちらには負傷しているユメさんがいるのだ、まともに戦おうなんて考えてはいけない。
カーチェイスを続けていると突如ロボットの側方から何発ものミサイル弾が発射された。
しかも、狙いは当然あたしである。
次々と雨のように発射されるミサイル。
あたしは何とかミサイルとミサイルの間を避けながらバイクの走行を続けていた。
「何だよあのとんでもロボットはッ!?砂漠にあんな奴いたのッ!?」
『クククッ‥‥説明いたしましょうか?』
「黒服ぅッ!」
どうやらカイザーの基地から逃走後も黒服のドローンはついてきていたようだ。
何故、ドローンは狙われていないのかは不思議だが、ゲマトリアの技術による賜物だろう。深く追及はしない。
今はあのロボットについて知りたい。
『あのロボット…いえ【預言者】の名は【ビナー】。AIが再現せし神、
「デカグラマトン?預言者?」
黒服が言うには、かつてキヴォトスの旧都心廃墟である研究が秘かに行われていたという。
「神の存在を証明し、分析し、新たな神を作り出す」といったもの。
研究グループとそれを支援していた「ゲマトリア」が作り出した超高性能AI【対・絶対者自律型分析システム?】が、長い年月をかけてついに神の存在を証明した。
そう都市が破壊され、研究所も水に沈み、研究の実在が曖昧になるほどの時が経って。
神の存在を証明・分析・再現した【
そしてその10存在する預言者の1体が今、あたしを追いかけているビナーらしい。
‥‥思いっきり迷惑な話じゃんかッ!?
その神様ってのはよっぽど好戦的らしいね。正直大人しくしてもらってた方がよっぽどいい
『ククッ、あなたの言うことはいつも面白い。さて、どうされますか。アビドスに戻り戦いますか?暁のホルスと2人がかりといえど無事では済まないでしょう。それどころか守ろうとした校舎も戦闘で破壊されるでしょうね』
「かといって負傷したユメさん片手に戦えないぞ!」
『そうでしょうね。ですがどちらにしろ、このままいけばアビドスの市街地に出てしまいます』
‥‥このまま奴を市街地に行かせるのはまずい。暴れさせれば奴も気が晴れて帰るだろうけど、住民に危害が及ぶのは絶対にダメ。
‥‥あたしがやるしかないか…
「黒服。この付近で人気がない市街地ってある?」
『ええ、ここから2㎞先にゴーストタウンと化した町があります」
「ビルとかはある?」
「ええ、多少砂に埋もれてはいますがありますよ』
「ならそこに案内して」
『何をなさるつもりで?』
何をする?そんなの決まってるでしょうが
「そこで
『‥‥クク。ククククッ‥‥やはり貴女は面白い!いいでしょう。貴女が神に挑む姿を見てせて下さい!』
こうしてあたしはビナーを迎え撃つべく、寂れた廃墟が並ぶ市街地へとバイクを駆りだすのであった‥‥
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黒服の案内によって、廃墟群が立ち並ぶ市街地へと到着する。
家屋の一部は、屋根を残し砂に埋もれてしまっている。人っ子一人もいないまさに完全なゴーストタウン。
ここでなら思う存分戦うことができるだろう。
バイクを停め、ユメさんを付近の岩陰に寝かせた。岩陰なら遮蔽物にもなるし、日陰となって直射日光も防げる。
あたしは愛用品のバッグ、『天極』と『地獄』を構え、町の中心地へと走り出す。
少しでもユメさんから遠ざけるために。
町の中心地に到着した時、再び大きな地鳴り音が響き渡る。
舗装されたアスファルトも、近くの建物も全ての地盤とともに砂に飲み込まれていく。
そして渦中から現れるビナー。
どうやら相手もあたしを視認したのか、ビナーが一段と大きい咆哮を上げた
「‥‥上等。やってやろうじゃん!!」
この言葉を皮切りに戦いの火ぶたが切って落とされた。
早速2丁のサブマシンガンによる銃撃がビナーの胴体に当たる。
しかしビナーは全く構わずに己の頭部を突き出しサバキへ叩きつける。
「あっぶねぇっ!」
咄嗟に左に飛び込みこれを避ける。ビナーの頭部が叩きつけられた場所はくっきりと地面が抉られていた。
(どんな破壊力だよ‥‥あれもまともに食らっちゃ一発アウトだな‥‥)
先のミサイルの件といい、ビナーの力は未知数だ。動きを伺いつつ着実にダメージを重ねる。
けれどこのビナー。今まで戦ってきた相手の中でも全てが規格外である。
第一はあの巨体。あそこまで巨大な生物?ロボットは見たことがない。むしろキヴォトスでもいないのではないだろうか。にも拘わらず巨体に見合わない素早さから来る物理攻撃。あっちからしたら豆粒ほどのサイズでしかないあたしが喰らってはひとたまりもない
第二は、武装の数々。現在で見せているのはミサイル発射だが、他にもあると思った方が良い。わざわざ神の預言者に選ばれたのだ単調な兵装では済まないだろう。
最後は体力。機械であるためスタミナは無尽双。ダメージを与えているのかもわからない。よって本当にこいつが倒れるのかわからないという不安が頭をよぎった。、
「‥‥だあぁ、違う!!」
今は気にしてる余裕なんてねえ筈だ。とにかくアイツがつぶれるまで撃ち続ける。
たたそれだけのこと。
遮蔽物に身を隠しつつひたすらビナーの弾丸をぶち込み続ける。
ただ相手も黙っているわけではない。今度は砂漠で繰り出して来たミサイルの雨を展開する。どうやら遮蔽物ごと爆破しあたしをあぶりだすつもりのようだ。
「ケホッ‥‥ケホ…手あたり次第かよ。節操なさすぎるぞ…」
止むを得ず遮蔽物のガードレールから抜け出していると、ビナーが長い首を横に振り辺り一面を薙ぎ払った。
「やばいッ!?」
咄嗟に回避しようとするも、一手遅れビナーの首が直撃。そのまま廃ビルに叩きつけられてしまった。
「クッ・・ぁ・・・」
不味い‥‥あの巨体を諸に食らった‥‥多分今ので体の骨、何本か持っていかれたかも‥‥
瓦礫の上から何とか立ち上がろうとするあたし。だがビナーは追い打ちを掛けんと、驚愕の行動に出る。
血を流すあたしの前で口を開くビナー。
すると口の中から砲台が展開しエネルギーが集約し始める。同時にビナーの体表が強く光り輝く
こいつ‥‥まさかッ!?
次の瞬間、耳をつんざくような轟音と共にビナーの口内から熱光線が放たれた。
痛む体に鞭打ちつつも、何とかその場を離脱するサバキ。離脱した刹那、熱光線がサバキの居たビルに直撃する。
吹き荒れる爆風。振り返ると熱光線に当てられたビルがドロドロになって熔けていたのだ。鉄筋コンクリートで出来たビルが、一部残骸を残しドロドロに。
あまりの光景にあたしは唖然とする。
人口とはいえ、これが神の御業なのか。今相対している相手の強大さが。
しかしビナーはすかさず次の熱線を打つべく発射態勢入っていた。
「ぁぁ…無茶苦茶な野郎だ‥‥!!」
再び発射される熱光線。今度は下から上へ薙ぎ払うように放つ。
今度は、砂ごとアスファルトが溶解。地面もばっくりと割れてしまった。
おまけにミサイルも同時に発射し、攻める手を緩めない。
「あの熱光線にミサイルとか厳しいにもほどが‥‥グッ!?」
熱光線の余波で態勢を崩してしまったサバキ。そこへミサイルが着弾。身体に火傷を負ってしまう。
地面を転がり何とか火を鎮火させるサバキ。しかし、戦いのダメージが蓄積し意識は薄れ始めていた。
(クソっ‥‥目が霞んで来やがった‥‥このままじゃあ、あたしもユメさんも‥‥)
何とか策を考えるサバキ。すると、さっきの爆風で鞄から爆弾が一つ転げ落ちていた。
そういえば、これカイザーから拝借した爆弾だったな‥‥。
えっと、ANTI-DECAGRAMATON・
『ほぅ…対デカグラマトン用の爆弾ですか』
「ドローン!?いつからそこに」
『ずっと近くで見ていましたよ。しかしこれは興味深い。小さな見た目ながらかなりの爆薬が詰め込まれていますね。デカグラマトンの装甲を破るためでしょうか』
「ねぇ、なんでカイザーがデカグラマトン用の武器持ってるのさ?」
『ククッ…そういえば教えていませんでしたね。カイザーがアビドスを狙う理由。それは古代キヴォトスに眠る遺産ですよ』
「遺産?」
『ええ。遥か昔の技術が詰まった所謂オーパーツですよ。カイザーとしてはそれが欲しい。しかしビナーがそれを邪魔する。であれば対デカグラマトン用の爆弾を用意するのも当然でしょう』
あの拉致監禁理事、そんなこと考えてたのか。ついでにアビドスをあの手この手で潰そうとかほんとむかつく!
帰れたらティーパーティーにも報告しておくか。多少なら動いてくれるかもしれん。
その時、ふと妙案を思い付く。
一かバチか、起死回生になるかもしれない策を。
「黒服。この近くに比較的高いビルはあるかい?」
『ありますが…?』
「ルート案内頼む」
『いいでしょう。何を思い付いたかはわかりませんが、貴女の悪あがき見せてもらいましょう』
「サンキュー!」
黒服の誘導に従い、市街で最も大きいビルに入り込む。
脚が悲鳴を上げる中、全速力で階段を駆け上がっていく。途中降りかかる瓦礫は『天極』と『地獄』で撃ち落とす。
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いよいよ屋上に到達した時、眼前にビナーは居た。
見つめ合う両者。
サバキを見つけたビナーは再び熱光線を放つ態勢に入る。
口を開き、エネルギーを急速充電。辺りを吹っ飛ばす、いや確実にあたしを仕留める程のエネルギーをビナーは貯める。
そして口の砲門が開いたその一瞬。
「届けええええええええ―――ッ!!」
サバキは起動済みの対デカグラマトン用の爆弾をビナー目掛けて投げつける。
爆弾はビナーの口に滑り込んでいき‥‥
熱光線の発射と同時に、ビナーの頭部は大爆発を起こす。
黒煙が晴れた先にいるのは爆発によって頭部がひどく破損し黒焦げになったビナー。
口内の砲門と背中の砲台はひび割れ、もはや使い物にならない。
機械に感情があるのかはわからない。けれどビナーは視線の先にいる少女を睨みつける。
ビルの頂上で威風堂々、立つ者の名は――――
「来いよ、ビナーーーーッ!!」