今年も正義実現委員会の閻魔様】をよろしくお願いいたします。
といってももう1月も終わりそうですが‥‥
シャーレの前で暴れまわるチンピラたち。
徒党を組んでいることもあり集団で襲い掛かってくるが、何の支障もなくシバき倒していく。
各々手に持っている銃をぶっ放してはいるものの、所詮は素人の銃撃。『天極』と『地獄』の前では手も足も出ない。
「「ぐあああああッ!」」
「畜生、相手は一人だぞ。なんで勝てない!」
そりゃ、あんたらが戦ってるの正義実現委員会の委員長だぞ、元だが。
日頃からかよわい子ばかり狙ってきたつけが回ってきたな。自業自得さ。
しっかし。いくら今の連邦生徒会に恨みがあるからって、チンピラが徒党を組むとは思えないな。
妙に数も多いし、こりゃあこいつら率いてる親玉がいるっぽいな。
襲い掛かる不良たちを片っ端から鎮圧していると、不意に背後から気配を感じる。
「お覚悟を」
「っ!」
真後ろからの声に反応し、すぐさま振り返ると黒い和服の少女がショットガンを構えていた。
先端が赤みがかった狐耳。あたしとは異なる造形やカラーではあるがかっこいい狐面。そして黒地の和服の袖に書かれた『百鬼夜行』の文字。すぐにわかった。
間違いないこの子は地域の不良とは風格も実力も格が違う。もしかしたら騒動の元凶かもしれない。
なんて悠長なことを考えている場合ではなかった。
あたしの背後を取った少女は、一切の躊躇いもなくショットガンを発砲する。すんでの所で身体をよじり銃弾を避け、『天極』で反撃するも楽々と避けられてしまった。
やはり相当な実力者には間違いない。もしかしたらホシノちゃんやネルちゃんに匹敵。いや今の実力がわからない以上、判断するのは軽率だな‥‥。
互いに間合いを取り出方を伺う
様子を見ていると狐面の生徒は艶めかしい声であたしに話しかける。
「あらあら‥私の物真似とは、少々いけ好きませんわねぇ‥‥」
いや、これ真似してるわけじゃないんですよ。これマエストロの趣味なんよ。この狐面だって外せないんですよ。とはいえ、もしかしてキャラ被りによる誤解から襲ってる感じ?そうだったなら、まだ話し合えば通じるかもしれない。
「すまない。意図したつもりは全くなかったんだが‥‥」
素直に言う。昔より面倒ごとを避けるにはこれが一番だ。実際、嘘をついているわけでもないし、納得してくれるだろう。見立てだけど、話は通じそうだし施設を襲う理由さえ聞ければ説得できるかも。
すると、狐面の少女は意外なことに武器を下した。
敵意に満ちていた雰囲気も落ち着きを見せ、しばしばこちらを吟味するように眺める。
「おや、そうでしたか。これは、大変失礼いたしました。あまりにも似ていましたのでつい‥‥」
吟味を終えた少女は、あっけらかんとした態度を見せる。
とても朗らかで礼儀正しく、とても不良たちを従えているようには思えないのだが‥‥
とりあえす、誤解を解きほっとしていると少女が話を続ける。
「ですが、目的の物を壊す前に貴女を壊してみるのも一興だと思いませんか?」
そういうと、少女は再びショットガンの銃口をあたしに向ける。明確な敵意というよりは、新しい玩具を手に入れた子供という感じに思えた。
‥‥前言撤回。この子、話通じないかも。かといって黙ってやられるつもりはない。暴徒一人にやられたとあれば元正義実現委員会委員長の名が泣く。
降ろしていた『天極』と『地獄』を構え、少女に向ける。
「そうか。やれるものなら‥‥やってみろ」
返答を皮切りに相手はこちらへ向かって駆け出す。
一方、あたしも迎え撃つべく、少女へと駆け出すのであった・‥‥
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サバキがワカモと交戦している頃。
キヴォトスに着任した”先生”は連邦生徒会を訪れていたミレニアムの生徒ユウカ、トリニティの生徒スズミとハスミ、ゲヘナの生徒チナツと共に活動拠点でもあるシャーレの奪還すべく動いていた。
そこかしこで暴れる不良たちを鎮圧し、部室まであともう少しの地点まで迫っていた。
『今、この騒ぎを起こした生徒の正体が判明しました。
”ワカモ。”百鬼夜行連合を停学になり、矯正局から脱獄した生徒です。似たような前科がいくつもある危険
な人物なので気を付けてください』
ホログラムで伝えるのは連邦生徒会行政官、七神リン。失踪した連邦生徒会長に代わって外の世界から連れてきた先生をサポートしている。
『あっ先輩!ちょっと連絡があるんだ~』
『モモカ、どうかしましたか?』
通信に割って入ってきたのは同じく連邦生徒会に所属する由良木モモカ。怠け者な性格で、サンクトゥムタワーを出る前もリンからの通信をデリバリーが来たという理由で切ったほどである。
そんなモモカが再び連絡を寄越したことにリンは少し驚いていた。けれど動揺は見せず応対する。
『そのワカモなんだけど。今シャーレの部室前で誰かと戦ってるみたいなんだよね』
『誰かとは、一体何者なんですか?』
『それがわかんなくてさ。該当するデータはないし、顔も隠れてて確認もできない。便宜上【黒狐】って呼ぶこ
とにするけど、たぶん仲間割れでもしたんじゃないかな?あっ、追加の注文が届いたから切るね』
そう言ってモモカは再び通信を切ってしまった。
自由奔放な彼女に踊らされながらも、リンは先生に告げる。
『‥‥先生、ワカモと交戦している人物が我々にとって味方かわかりません。
最悪交戦することも考えられます。どうかお気を付けて』
「あのワカモと戦っているとは‥‥【黒狐】一体何者なんでしょうか?」
「連邦生徒会のデータにもない人物、心配ですね」
「今はそれよりも、一刻も早くシャーレの部室を奪還することに専念しましょう」
「シャーレの部室はもう目の前よ!行きましょう、先生!」
「”そうだね。行くよ、みんな”」
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場面は再びシャーレの部室前に戻る。
先生と生徒たちがこちらに向かっているなど全く知らずに二人は戦いを激しい繰り広げていた
周囲に不良たちはおらず、仮に居たとしても近づき難い状況になっている。
「中々、骨のある方ではありませんか」
「そいつはどうも!!」
正直彼女の攻撃は苛烈そのものと言っても過言ではない。ショットガンだけではなく、手榴弾や銃剣等使える物は片っ端から使い対象の排除に掛かってくる。
まさに猪突猛進ガール。攻撃はいなせるものの、反撃となるとそうはいかない。他の木っ端よりも圧倒的に場慣れした立ち回り。それでいて攻撃の隙を与えない徹底ぶり。改めて相当な手練れなのは間違いない。
‥‥それよりもあたしが気になっていることがある。そう、彼女のスカートの丈だ
戦っている最中に気づいたことだが彼女の和服のスカート、かなり短いのだ。俗にいう『チラリズム』というのだろうか?結構ギリギリのラインを攻めているように思えてならない。てか、あたしらの頃はもう少し長かったと思うんだけど‥‥
もしかして2年間寝てたから知らないだけで、今の百鬼夜行のトレンドはチラリズムなのか?
誰か教えて欲しい。
「戦闘中に考えごととは随分と余裕がおありの様ですね!!」
そんなことを考えていたら少女が短刀を手に振り下ろす。あたしは瞬時に真剣白刃取りで受け止める。
「おらぁああッ!!」
「クッ!」
受け止めた短刀を払いのけると、傍に落としていた『地獄』を拾い少女の懐に銃口を押し付ける。
「これなら、どうだ?」
少女が後ろに仰け反る前に引き金を引く。重い銃声と共に弾丸が何発も少女へと襲い掛かった。
『天極』と『地獄』この2丁のサブマシンガンは、一見ただの色違いに見えるだろう。だが、実態は大きく異なる。基本2丁拳銃による戦闘スタイルをとるサバキだが、状況や戦場によってはどちらか片方のみに絞って戦うこともある。
サバキが今手にしている黒いサブマシンガン『地獄』
目標とのタイマンや限られた空間での戦闘でその真価を見せる。主な特徴は威力の大きさと重量である。標準的なサブマシンガンよりも『地獄』は重くなっている。これはいざという時接近戦を仕掛けられるようカスタマイズしたもの。また、対象の制圧力に特化しているため近距離から放たれた場合、ハチの巣まではいかないだろうが、無力化されることに違いはない。
一方白いサブマシンガン『天極』は乱戦や集団戦等、多人数を相手取りかつ広い場所で真価を発揮する。特徴は軽さである。『地獄』よりも軽量化されており、装備者の負担になりにくい設計になっている。身動きが取りにくい場所でも身軽に動け、障害になることなく戦闘が可能だ。
場面を戻し、『地獄』の射撃が少女にヒットすると彼女は大きく吹っ飛ばされる。
土煙がもくもくと立つ中、あたしは『天極』を拾いなおしリロードを行う。
(‥‥あまり手ごたえはなかったなぁ。後ろに退く前に撃ったつもりなんだが、間に合わなかったか)
着物に着いた土を払っていると、土煙から靴音が響く。
「うふふ‥‥。中々骨があるお方ですこと。ますます壊しがいがありますわ!!」
やっべ、お相手さん本気にさせちゃったみたい。さっきよりも雰囲気が違うし、声のトーンが上がってるし。
というか、太もも太っ!?いいの、年端のいかない女の子があんな生足晒して。寒くないのかな?
なんて考えていると少女は再び駆け出す。さっきよりも格段に速いスピードであたしへ向かってきた。瞬時に懐まで迫る少女。近距離からの射撃を警戒し、即座に防御態勢をとる。だが意外なことに繰り出したのは健やかに育った脚による回し蹴り。前方からの攻撃を警戒していたあたしは右腕を構え、蹴りを受け止める。健康そうな肉付きの右足が重くのしかかった。
「うっ‥‥」
「これも受け止めますか。ならお熱いプレゼントは、いかがでしょう?」
小さく金属音が鳴ると同時に少女はあたしから離れる。視線を足元に向けると手榴弾が幾つもばら撒かれていた。加えてどれもピンが既に抜かれてある。
気づくのがわずかに遅かった。次の瞬間、轟音と共に熱風が襲い掛かる。
火の粉が舞う中、狐面の少女は高らかに笑う。
「うふふふ!ふふ!アハハ!」
仮面に遮られているため表情を見ることは叶わないが、愉快であったのには違いない。
「ふふ、久方ぶりに楽しい一時でした。またお会いしたいできればと思いますが、まずは目的を果たさなければ」
黒煙を背後にシャーレへと歩を進める少女。
玄関にまで迫ったその時。
「何、勝った気になってんだ?まだ勝負は終わってないぞ」
少女は後方に気配を感じ、はっと振り返る。
硝煙と火の粉の中から近づく人影。煙が晴れた先にいたのは『天極』と『地獄』を構えたあの娘の姿である。
特徴的な黒の着物は所々焦げているものの、目立った傷は見られない。
「ご無事でしたか」
「あれくらいであたしはやられんよ」
「そうでしょうね。でなければ壊しがいがありませんわ!」
軽口を叩きつつも、睨み合う両者。
再び勝負を仕掛けるタイミングを伺っていると‥‥
「閃光弾、投擲!!」
声と共にどこからか、手榴弾が投げ込まれる。
狐面の少女と共に場を離れると眩しい光が弾ける。
「対象、ワカモを確認」
「同じく『黒狐』も確認でしました。援護します!」
ぞろぞろと生徒たちが駆けつけていた。
校章や制服から見るにミレニアムとゲヘナ、
それも一人は正義実現委員会の制服を着ている。あたしがいない間にあんな色々おっきい娘が入部してたなんてなぁ‥‥
そうこうしていると狐面の少女、確かワカモだったか?彼女は興が冷めたのか、耳と尻尾が下げる。
「‥‥連邦生徒会の子犬たちが来ましたか。名残惜しいですが、ここは彼らに任せるとしましょう」
そういうとワカモは即座の身を引き、一目散に去る。
「あー!逃げられたじゃない。追うわよ!!」
「いえ、私たちが今すべきことはシャーレの奪還です」
正実の子が黒髪ツインテールのミレニアム生を窘めていると、轟音と共に何かが近づく音がする。
「気をつけてください。巡航戦車です」
バリケードを突き破りながら現れたのは、クルセイダー1型戦車である。
うっそ、あれ結構お高いはずでは。
不良がクルセイダー戦車まで持ってるとか、治安はどうしたんだ、治安は。
「不法に流通された物に違いないわ!PMCに流れたのを不良たちが買い入れたのかも。つまりはガラクタって
ことだから壊しても構わないわ!そこの貴女も手伝って!」
「あっ、はい」
ミレニアムの生徒に促されつつも、不良とクルセイダー型戦車との戦闘に入る。
戦いの中、彼女らの動きが洗練されているように感じた。
ミレニアム、ゲヘナ、トリニティ。特色も気風も異なる生徒たちが上手く連携を取り合っている。
こんなに滞りなく動けるとは、正直思ってもいなかった。
‥‥あの”大人”か。
連邦生徒会の衣装に身を包み、生徒に指示を行う人物。
あたしたち生徒とは違いヘイローがないが、姿かたちはほぼ変わらない。あの人の指示が3つの学園の生徒を纏め挙げているというのか。それに目の付け所も戦術眼も達者だ。現場に慣れているな。
「『黒狐』さん、戦車が来ます!」
おっと、危ない。
てか、『黒狐』って誰の事?銀髪の子が呼んでたけど、もしかしてあたしのこと?
まぁ、本名知られると不味いし。それでいっか。『黒狐』って呼び方も悪くないし
戦場の中央で砲撃を繰り返すクルセイダー。
砲弾をかいくぐりながら、あたしは砲台の前へと突き進む。
「ちょっと!そんなに近づいちゃ危ないわ!」
あんな戦車、ビナーに比べたら怖くもなんともない!!
「うおおおおおおっ!!」
クルセイダーに飛び乗り、握りしめた右拳を砲塔に振るう。
不良品だったのか、それともサバキの拳が装甲を上回ったのか。理由はともあれ、激しい衝撃とともにクルセイダーの砲塔部分にクレーターが出来上がる。エンジン部分に異常をきたしたのか忽ち、煙と火花を吹かせクルセイダーは停止する。
はっきり言ってみるも無残、廃車確定と言ったところだろうか。
あっ、やべ。他の人たちありえない物見たような顔してるよ‥‥やりすぎたな‥‥
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その後、なんだかんだありつつも無事、シャーレを不良たちの手から護ることができた。
幸い、連邦生徒会が保管していた重要物も無事でありサンクトゥムタワーの制御権も戻ったようだ。
さーてと、面倒なことになる前にあたしは退散いたしましょう。
正体がバレたりしたら大変だ。
‥‥久しぶりに、アビドス行ってみようかな。
おまけ
ファーストコンタクトの結果
・ユウカ→サバキ
クルセイダー戦車をいきなりぶん殴って壊したサバキに困惑。
多少警戒している。
・チナツ→サバキ
正体不明であるため同じく警戒している。ただしワカモを引き留めていたことから悪い人ではないと思っている
・スズミ→サバキ
悪い人ではないと思っているが、いざという時は捕縛するつもりである。
・ハスミ→サバキ
どこかで見たような気がしてならない。ただ記憶と一致しないため、気のせいだと思っている。
・先生→サバキ
あれがキヴォトス人のフィジカルだと思っている。(当然、全員がああではないと教えてもらっていた)
・サバキ→先生
得体がしれない。けれど悪い人ではないと思っている。いつか話してみたい。