絶対、ハッピーエンドで終わらない確信があって怖い。
ユメ先輩の立ち絵がどうなるか、気になるとこ。
それはそうと早く対策委員会編を進めなければ
ワカモ率いる不良軍団を撃退し、シャーレを奪還してから数日が経過した。
あれから、あたしはアビドス自治区に滞在している。寝ていた間、アビドスがどうなっているかとても気になっていたからだ。
短い期間ではあったが、アビドス生徒会はとても居心地の良い場所だった。生徒会長のユメさんはとてもフレンドリーで優しい人で、ホシノちゃんもとげとげしくも根は良い子なのがよくわかる子だった。2人と過ごした日々はとても有意義であったと思っている。
けれど、ユメさんはゲマトリアの下で治療を受けている都合上、少なくとも1年はホシノちゃんが一人きりで生徒会の役割を果たしていたはず。身体を崩していないか、心配だ。
ただ、良いとこ行方知れずのあたしが、おめおめホシノちゃんの前に顔を出せるわけがない。アビドスの現状を知れれば十分。そう思い、アビドス高等学校の情報を集めている。
ちなみに現在の活動拠点はブラックマーケットである。一体いつからあるかもわからない大規模な闇市という言葉がよく似合う場所。裏ルートを通って様々な品が横流しされている。先日戦ったクルセイダー戦車も、ブラックマーケットで手に入れた可能性があるとあのミレニアムの生徒は言っていた。
一応、マーケットの治安機関がいるものの不良や犯罪者の巣窟でもあるため、トリニティは生徒が行かないよう勧告していた。今もそうなのかわからないが。
幸いあたしの正体について探る人もいないことから、ここでの生活は上手くいっている。
しかし、今の姿を後輩に見せる訳にもいかないよな‥‥みすぼらしいし‥‥
っと、それはさておき、本日はブラックマーケットを離れ自治区を散策することにしよう。
もしかしたらアビドス生にも会えるかもしれない。
心を弾ませながらあたしは支度を整えた。
――――――――――――――――――――――――
それから日が暮れるまで、自治区を散策していた。
流石に2年も経っていることから、砂漠化はより進行していた。住人も以前より減っているように感じたし、人離れも悪化している。
(あの時、あたしがビナーを完全に倒していれば‥‥)
ユメさんはホシノちゃんと居れたかもしれない‥‥思えば思うほど後悔が押し寄せてならない。
だが、悪いことばかりではない。散策で得られた情報の中には重要なものもある。
まず、アビドス高等学校が今も存続していること。学生は総員5名で3年生1人、2年生2人、1年生2人とのこと。はっきりいってこの情報は一番うれしかった。あの場所が今なおあり続けてくれたのが、とても嬉しかった。
次にヘルメット団について。あたしとユメさん、ホシノちゃんの3人で豚箱にぶち込んだはずのカタカタヘルメット団が再結成しアビドスに攻撃を仕掛けているらしい。あんにゃろぉ‥‥またか‥‥助太刀に行こう。ホシノちゃんに会わない程度の援護で。
最後に美味いラーメン屋があることだ。名前は確か「紫関ラーメン」だったか。ちょうど脂っこいもの食べたかったから早速行ってみよう!
そう思い歩を進めていると――――――――――
「はあ、はあ、はあ‥‥!!」
あたしの目の前を猫耳の生徒が走り去っていった。あの息の切らしよう、まるで何かに追われているように見えたが‥‥
生徒が去って間もなく、見るからにチンピラな人たちが大勢現れた。それも20人ほどの軍勢で
「待ちやがれ!!」
「どこ行きやがった!」
‥‥なるほど。さっきの子はあれに追いかけられていたのか。
何があって追われているのかわからないが、見捨てる理由にはならない。となれば、あの子を保護するのが先か。
チンピラがこちらに目を向けていないうちに、あたしはそそくさとその場を後にする。
数十メートル先の道端で、さっきの子が座っていた。
相当疲れているようで未だ息を切らしている様子だ。
「大丈夫?良かったらこれ、どうぞ」
ミネラルウォーター入りのペットボトルを片手にあたしはその子に話しかける。
「あ、ありがとう。いただくわ」
若干戸惑いながらも、その子はペットボトルを受け取ると、ごくごくとあっという間に水を飲み干す。水分補給したことで大分落ち着いた様子になった。
「どう、少しは元気出た?」
「ええ。おかげさまで。ところであんたは誰?ここら辺では見かけないけど」
「あたしは、『黒狐』ここに来るのは初めてなんだ」
「そうだったんだ。私はアビドス高等学校、1年の黒見セリカよ」
彼女が話に聞いていたアビドスの1年生か。さっきは暗くてよく見えなかったけど、着用している制服は間違いなくアビドスの制服。あたしも着てたからわかる。
「そういえばなんでチンピラに追われていたの?」
「えっと、それがアイツら、通行人にカツアゲしてて。止めたら
私に襲い掛かってきたから返り討ちにしたの。そしたら、今度は
集団で報復に来て…って感じ」
なるほど。だから連中は血眼になって探してたわけだ。
でもカツアゲしようとしやられたのは自業自得としか言いようがない。それで逆恨みするのもどうかと思うが。
「ところで黒狐さんはなんでアビドスに?」
「ここら辺においしいラーメン屋さんがあると聞いてね。
『紫関ラーメン』って言うんだけど、セリカちゃん場所
知らないかい?」
「知ってますよ!そこ、私のバイト先なの。さっきのお礼も兼ねて案内してあげるわ」
セリカちゃんに手を取られながら、あたしは紫関ラーメンへと案内された。
『紫関ラーメン』というお店。
セリカちゃん曰はく、キヴォトスでも有名なラーメン屋らしい。
そんなお店があるなんてあたし、全然知らなかった。まだまだだな…
お店に到着するなり、アルバイトの制服に身を包んだセリカちゃんが出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ!紫関ラーメンです!
1名様、空いているお席にご案内いたしますね!」
セリカちゃんに促されるまま席に案内され、メニュー表を渡される。
醬油、塩、味噌、豚骨。いろんなラーメンがあり、どれも興味を惹く物ばかりだ。
だが、一番あたしの目を引いたのは看板メニューの『紫関ラーメン』だ。
中太ちぢれ麵にこれでもかとふんだんに盛られたもやし、煮卵、チャーシュー。それでいて驚くのが、お値段。
なんと脅威の580円!!サイズ並で600円下回っているのだ!
トリニティのラーメンでさえ、サイズ並一杯800円はしたのだ。なのでここのラーメンがどれだけ安いのかよくわかる。それでいて上手い!!まさしくお値段以上の味。調理場で料理している大将さん。相当な腕前だと見受けられる。
なんで知らなかったんだろうあたし。知ってたら常連になってたのに!
麺を啜っているとあっという間に麺が無くなってしまった。すかさず店員のセリカちゃんを呼ぶ。
「すみませーん!替え玉とトッピングの追加で!」
「はーい!只今!!」
そうしてあたしは、久方ぶりに腹いっぱいのラーメンを温かみを体感するのであった。
「ありがとうございました!またのご来店をお待ちしております!」
紫関ラーメン。なんというボリュームに美味。お財布にも余裕はあることだし週3で来ていいな。
柴大将も良い人だったし、なんならトッピングおまけしてもらったから最高に気分がいい。
お店から出て、ウキウキ気分でいると何やらもめている声が聞こえている。
「あの‥‥私になにか用ですか‥‥?」
「おうおう、その制服アイツの仲間だな。ちと面貸せや」
「仲間‥‥?なんのことですか?」
「いいから来い!!」
どうやらセリカちゃんと同じく、アビドス生が先ほどのチンピラに絡まれていた。
黒髪、眼鏡、エルフ耳と属性もりもりな子だが、後輩*1 が絡まれていなら助けない道理はない。
アビドス生を連れて行こうとするチンピラの背中を蹴っ飛ばす。
「何してんだ」ゲシッ
「グエっ…」
唐突に表れたあたしにチンピラたちは驚愕していた。
「誰だ、てめっ‥‥てめぇは!」
「く、黒狐!!」
「こんな遅くに何やってんだ。それにそんな大勢で」
「うるせぇ!計画変更だ、まずはコイツからやっちまえ!!」
ターゲットをアビドス生からあたしに変えたチンピラたちは、一斉に銃を構えだす。
「そこのお嬢さん、危ないから隠れてて」
「はい…!ありがとうございます。ですが、大丈夫なんですか?」
「大丈夫。こう見えてあたしそれなりには強いから」
黒髪のアビドス生を避難させ『天極』と『地獄』を構え対峙する。
チンピラたちは全部で20人。
マシンガン持ち5人、アサルトライフル持ち10人、ガトリング持ち5人といったところか。まず最初に倒すべきなのはガトリング持ちのチンピラだろう。射程範囲が広い武器種であるため、周りに被害が出やすい。なので、速攻仕留める。
「くたばれっ!!」
一斉に銃口から弾丸が発射される。
地面を削るほどの火力を持ったガトリングガンだが、脅威ではない。
冷静に射線を見極め、近くまで接近。すかさず『天極』と『地獄』を構える。
「遅い!」
『天極』と『地獄』による高速射撃がチンピラたちを捉えた。
「「ぐあああああっ!!」」
倒れ気絶するガトリング持ちのチンピラたち。
それに驚いたのか、残りのチンピラたちは目をぱちくりしていた。
「なんだコイツ!!」
「話に聞いた通り、やっぱバケモンだ‥‥!!」
「やだなぁ、ただの一般人だよ」
「「「嘘だッ!!」」」
動揺している隙を突き、次はマシンガン持ちに狙いを定める。
『天極』のみ構え、彼女らの脳天目掛け撃つ。
「ぐはっ!」
「うげッ‥‥」
「あわばっ!?」
あっという間に殲滅終わり。残りはアサルトライフル持ちの1人だけだが、あまりの惨状ぶりにガタガタ震えていた。
「く‥‥来るな‥‥来るなぁ!!」
気が動転しているのか手にはピンの抜かれた手榴弾を持っている。
下手に近づいては自爆しかねない。そう判断し、策を巡らせていると。
「がっ・‥‥」
どこからか銃弾が飛びチンピラの頭に直撃。手榴弾が手から離れる。
すかさず『地獄』の引き金を引く。チンピラから離れた遠い場所で手榴弾は爆発した。
「アヤネちゃん、大丈夫!?」
「セリカちゃん!!」
走りながらこちらに駆けつけてくれたのはセリカちゃんだった。
「銃声が聞こえたから来てみたら、案の定‥‥怪我はない?」
「うん。そこの方が助けてくださったおかげです」
アヤネちゃんだったか、彼女があたしの方を紹介するとセリカちゃんは反応する。
「さっきと言いありがとう。おかげで助かったわ」
「私からも、助けてくださってありがとうございます」
お礼を言う2人の姿が眩しく見えた。若々しさが溢れているというか、あたしがどこかに置いてきたというか。そんな輝きがあの2人にあったような気がした。
「別に大したことじゃないよ。それにあたしが駆けつけることが出来たにもそこの―――」
セリカのことを言おうとした瞬間、セリカちゃんがあたしの肩に手を回し顔を近づける。
「ちょっと、私が紫関ラーメンでアルバイトしてることは内緒にして!!」
「何故に?」
「理由はいいから!!」
あっ、はい。
結局あたしはセリカちゃんに頼まれ、渋々セリカちゃんのアルバイトについて誤魔化しながら経緯を話し不良たちを警察に突き出した。
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「では今日はありがとうございました!」
「何から何までありがとう!黒狐さん!」
笑顔で手を振る2人を背にあたしは紫関ラーメンがある学区から離れた。
今回の探索では色々と情報を手に入れることができた。
ヘルメット団の再起と襲撃。
アビドスの存続。
紫関ラーメン。
得られた情報を宿で整理する。
現状優先すべきはヘルメット団の襲撃を食い止めることだろう。
表立って支援はできない身ではあるが、見捨てるなんてことはできない。それに元生徒会*2 として何とかするべきであろう。
支援の草案を考えながら、あたしは就寝するのであった‥‥
余談
シャーレ奪還後、サバキは別称『黒狐』として要注意人物として各自治会で広まっているらしい。
なおやアビドス生は知らない。