25話
伝説の超三毛猫様
18話
よれー様
誤字報告ありがとうございます。
モモイちゃんの提案により、アリスちゃんはゲーム開発部の部員となった。
けれどそれに対し重要な問題があった。そう、話し方や佇まいである。
現状のアリスちゃんは人間のような自我を習得できておらず、機械口調がデフォルトになっている。このままでは聡明なミレニアムのセミナーにバレてしまいかねない。
そこで人間らしさをラーニングさせるべく、ゲーム開発部が作成したゲームの一つ『テイルズサガクロニクル』をプレイすることになった。
「よかったら、お姉さんもプレイしてみませんか?」
「いいの?」
「もちろん。お姉さんの感想も聞いてみたいですし」
ゲームやるの何年ぶりだろうな…今の機種も忘れちゃったし‥‥なんか悪いな。
でも、せっかくのご好意を断るのは野暮ってものだろう。それにこの子たちが作ったって聞いて興味が湧いている。ぜひやらせてもらおう。
「それじゃあ、やってみようかしら」
「ありがとう!予備のゲーム機があるからそれを使ってください」
ミドリちゃんからソフトとゲーム機を借り受けたあたしは、かくしてアリスちゃんと一緒に『テイルズサガクロニクル』をプレイすることとなった‥‥
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ゲームを起動し、壮大なグラフィックと音楽と共に始まるオープニング。
期待と興奮に胸を躍らせ、ゲームを開始する。
――――――コスモス世紀2354年、人類は劫火の炎に包まれた‥‥
‥‥初っ端から飛ばして来たね。これ舞台は世紀末っぽい?
チュートリアルに従って武器を装備しようとBボタンを押す。
すると爆発が起こり、主人公が消し飛ばされた。
《GAME OVER》
「huh?」
「????」
あまりの出来事にプレイしていたあたしとアリスちゃんは画面の前で硬直してしまっていた。
すると様子を見ていたモモイちゃんが笑う。
「あははは!予想できる展開ほどつまらないものはないよね!
ここ、本当は指示に通りじゃなくてAボタンを押すんだよ」
なるほど、一本取られたわ。常識に囚われてはいけないのね‥‥
「再開‥‥テキストでは説明不可能な感情が発生しています‥‥」
「きっと『興味』とか『期待』とか、そういう感情なのかも!」
「多分、『困惑』とかの方が近いと思うよ…お姉ちゃん」
うーん…あたしでもその感情を言葉にするのは難しいな‥‥
驚きと困惑が半々くらいだと思う。
ゲームを再開し、無事武器を装備出来た所でプニプニとの初戦闘が始まる。
「2人とも今度はAボタンを押して!今度は嘘じゃないから!」
コマンドを見るとAボタンは『秘剣ツバメ返し』の技コマンドになっていた。
よし!秘剣ツバメ返しッ!!
意気揚々とAボタンを押し、主人公は技を繰り出す。
しかし、プニプニは身体の一部から弾を射出。主人公に命中し即死してしまった。
《GAME OVER》
「huh?」
「!?!?」
またもや引っかかった初見殺しに呆然とする。
けれど、ショックは先ほどよりも小さかった。
(なるほど‥‥これがテイルズサガクロニクル。やってやろうじゃん!!)
自身の中の闘争心に火が付いたあたしはその後アリスちゃんと共にトライ&エラーを重ねながらゲームを続けていく。
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正直に言おう。『テイルズ・サガ・クロニクル』は、あたしの予想をはるかに超えた作品であった。
シナリオ担当のモモイちゃんが繰り出す独特の言い回し、通称モモイ節の数々。
絶えず仕組まれる初見殺しが蔓延る鬼畜とも呼べる仕様。しかもこれが人為的な仕様なのだからたちが悪い。
情報が‥‥情報が完結しない!!!
「エラー発生!エラー発生!」
「くぁwせdrftgyふじこlp」
「”大丈夫ッ!?”」
「アリスちゃん、お姉さん、頑張って!!あともう少しでクライマックスだから!」
―――――――――――――――――――――――――
さらに1時間が経過。
「こ、ろ、し、て・‥‥」
「ばなな。」
「おめでとう!開発者2人が一緒にいたとはいえ、3時間でトゥルーエンドまで行くなんて!」
「ばなな。」
「”‥‥初めてのゲームにしては刺激が強かったみたいだね”」
紆余曲折ありながらもアリスとサバキは何とかテイルズサガクロニクルの完全攻略を成し遂げた。代償として、彼女らの脳内処理が限界を迎えたが。
苦行とも言えるゲームであったが、同時に収穫とも呼べる変化が起こっていた。
そうアリスの話し方に変化が見られたのである。
「勇者よ、汝が同意を求めるなら我もそれを肯定しよう」
ゲームによるラーニングを受けた影響か、言い方が台詞めいてはいるものの機械っぽさが薄まっている。
もしかしたらゲームを経て、自己が確立されつつあるのではないだろうか。
「こう面と向かって聞くのは緊張するんだけど‥‥」
「「私たちのゲーム、楽しかった?」」
モモイちゃんとミドリちゃんに尋ねられたアリスは少しの沈黙の後、答える。
「回答不可」
「えッ!?なんで!」
「類似表現を検索‥‥ロード中‥‥
面白さ。それは明確に存在」
「おおっ!」
「プレイを進めれば進めるほど……、まるで、別の世界を旅しているような。
…夢を見ているような、そんな気分……」
アリスちゃんはコントローラーをじっと見つめる。
するとぽろっとアリスの瞳から涙が零れる。
「ア、アリスちゃん!?どうして泣いてるの?」
「決まってるじゃん!私たちのゲームが感動するくらい面白かったってこと
だよ!!」
「そうかな‥‥?これギャク寄りのRPGなんだけど‥‥」
「お姉さんはどうだった?私たちのゲーム」
うーん‥‥何と表現すればいいか…。
初見殺しのオンパレードだったり、シナリオが滅茶苦茶だったり、プレイする分にはとっても疲れたとしか言いようがない。
けど、実際にプレイしてみて、苦労の果てに成し遂げた時の達成感はとても良かった。
久しぶりにゲームをやったってのもあるだろうけど、厚みがあったことは確かだ。
「色々目立つところはあるけれど‥‥とてもやりごたえはあったわ。
こんなにゲームに熱中したのは久しぶりね」
「ありがとう2人とも!!そこら辺の評論家の言葉よりも100倍嬉しいよ!!
早くユズに教えてあげなくちゃっ!!」
ん?ユズって誰?
モモイちゃんの言葉に傾げていると、部室にあるロッカーから声がした。
「ちゃ、ちゃんと全部見ていたよ」
一人でに開くロッカーに驚く一同。ロッカーからは少女が飛び出していた。
モモイちゃん、ミドリちゃん曰はくこの少女の名前はユズ。ゲーム開発部の部長らしい。
どうやら彼女はあたしたちが廃墟から戻ってきた時からずっとロッカーの中から全部見ていたようだ。
ユズちゃんはたどたどしくながらも、アリスちゃんに話しかける。
「えっと、あのぉ…‥ありがとう。ゲームを面白いって言ってくれてありがとう
泣いてくれてありがとう。そういう言葉がもう一度聞きたかったの‥‥」
心から嬉しかったのだろう。ユズちゃんはアリスちゃんの手をギュッと握る。
それに対し、アリスちゃんも涙を拭い、にっこりと微笑む。
「パンパカパーン!!ユズがアリスのパーティーに加わったッ!!」
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テイルズサガクロニクルを経て、ゲームの面白さを知ったアリスちゃん。
そんなアリスちゃんの要望に応えるべく、ゲーム開発部のみんなは選り取り見取りのゲームを用意してくれた。
折角なのであたしもやらせてもらうことにした。
あたしが選んだのは育成RPG『キヴォトスクエストモンスターズjr』
広大なフィールドを駆け巡り、モンスターを仲間にして、合成で強化したり新しいモンスターを作って育成できる大人気シリーズである。
ちなみにあたしは初代をプレイしたことがあるのだが、今作はその続編ということでかなり期待している。
ゲーム開発部のみんなに見守られながら和気あいあいとゲームを進める。
ゲーマーであるミドリちゃんやモモイちゃん、ユズちゃんにスキルやモンスターの特性など教えてもらいながら、進めること数時間。
ラスボス、裏ボスを見事攻略し早速対戦することになった。
「最初は私がお姉さんの相手をするよ!
でも手加減なしだからね!!」
「ええ。対戦よろしくお願いするわ」
初戦の相手はモモイちゃんだ。
モモイちゃんが繰り出したのは、ピンクプニプニ、ストロベリーモコモコ、サクラもちもちの三体である。小型のモンスターで構成されたチームで、どれも高い素早さを有している。
一方あたしのチームはというと‥‥
『王様カチカチ』『ヒトツメマシン』『ずんだプニプニ』の三体だ。
お互いコマンドを入力し終え、バトルが始まる。
最初に動いたのはあたしの王様カチカチ。身代わりを使用し、相手の攻撃先を全て王様カチカチに変更させた。素早さが持ち味であるモモイちゃんのモンスターたちが総攻撃をかけるも、王様カチカチの防御力の前に1ダメージも与えることはできなかった。
「固った―――!?
ていうか、王様カチカチの身代わりなんて絶対初心者じゃないでしょ!?」
「初心者よ、正真正銘のね」
それに王様カチカチならまだ優しい方よ?
前作ならカチカチ皇帝はこれの倍はやばかったらから。一時期のオンライン対戦環境、カチカチ皇帝だらけだったこともあるんだから。
それもあってか、今作だと大きさが変わってチーム編成しずらくなっちゃったんだよな‥‥
モモイちゃんの攻撃が終わり今度はあたしの番だ。まずずんだプニプニが攻撃力を上げる魔法『バイバイキル』をヒトツメマシンにかける。そしてヒトツメマシンの斬撃技『裂空斬』をお見舞い、全体に500ダメージを叩きだして、モモイちゃんのモンスターを全滅させた。
「死んだーっ!?悔しいぃぃ!!」
「対戦ありがとうございました」
「ミドリぃぃ、仇を取ってーー!!」
「わかったよ、お姉ちゃん。今度は私が相手をしましょう」
今度の対戦相手はミドリちゃんだ。
対戦ゲームはテトロス。落ちて来るブロックを積み上げ消していくパズルゲームである。
降ってくるブロックを冷静に処理し、自分のテンポで進めるのがコツだ。
『3‥‥2‥‥1‥‥GO!』
合図とともに両者一斉に降ってくるブロックを片付け、パズルを組み立てる。
一個一個着実に組み立てるサバキに対し、ミドリは手慣れた手つきで素早くブロックを消していく。
「ミドリちゃん…このゲーム手慣れてるわね?」
「
「ふふふ…ミドリはパズルゲームが得意なんだ」
なるほど。だからこのゲームを選んだのか、これはやられた。
うっ、お邪魔ブロックが増えてきた…これ以上はまずいかも‥‥
「このまま勝ちます!!」
状況は圧倒的にミドリちゃんが優勢。モモイちゃんや先生もミドリちゃんの勝利を確信しているだろう。
だけどぉ‥‥あたしが何のためにゆっくり組み立てていたと思ってるの?ここから一発逆転するためよ!!
「来たッ!T字ピース!!」
「はッ!しまったッ!」
紫のTミノをスピンさせ、唯一お邪魔ブロックがない場所に嵌める。
列が埋まったことでブロックが消滅、そこから消滅の連鎖が始まった。
1連打、2連打、3連打、4連打、グォレンダァッ!!
連鎖、連鎖、止まらない連鎖によって大量のお邪魔ブロックがミドリのブロックに降り注ぎ、あっという間にお邪魔ブロックによって画面が埋まってしまった。
《2P WIN》
「対戦ありがとうございました」
「嘘ぉッ!ミドリが負けたッ!?」
「うぅぅ…参りました‥‥」
「ミドリちゃん。後は私に任せて…!」
テトロスで勝利したあたしは、最後にユズちゃんと勝負を行うことに。
対戦ゲームは『須臾の見切り』。反射神経がカギとなるゲームで、素早く遊べるゲームである。
「「ユズ!頑張ってッ!!」」
「うん…頑張る」
ゲームを起動し早速対戦モードに移る。
(ユズちゃんには悪いけど、あたしこのゲームは得意な方なんだ)
《♪♪~~~~~~》
和風なBGMと共に吹きすさぶ風の音。
2人のコントローラーを持つ手も、緊張から少し震えている。
!
!マークが出た瞬間、あたしとユズちゃんは素早くボタンを押した。
互いのキャラが交錯する。
結果はーーーーーー
あたしのキャラが倒れていた。つまりはあたしの敗北を意味している。
「‥‥やられた」
あたしの敗北宣言を機に部室ではユズちゃんを称える歓声が鳴り響いた。
「ほッ‥‥」
「”記録は0秒23!?”」
「すごいよユズ!最高記録更新じゃん!!」
「あ~~~参りました。0秒台じゃあ勝てないわね。
ゲーム開発部の勝利よ。そうねぇ…ほらこれあげる。先生」
「”うん。皆これどうぞ”」
先生がそう言うとジュースの入った1.5Lサイズのペットボトルやお菓子がいっぱい用意されていた。
「先生、これって?」
「差し入れだよ。頑張ってる子へのご褒美ってことで」
「パンパカパーンッ!アリス達はアイテムを手に入れた!」
「”それじゃ、みんな休憩しよっか”」
こうしてゲーム開発部の部室では盛大なお菓子パーティーが開かれ、各々はジュースにお菓子に舌鼓を打つ。
パーティーが終われば、再び少女たちのゲーム祭が開かれるのであった‥‥
余談
今回サバキたちがプレイしたゲームは元ネタがあるぞ!
やったことがある人はいるかな?
余談2
ブルアカのアニメ見て思ったのが意外と近接格闘戦仕掛けてるんだなって印象だった。
やっぱアニメは解像度が上がるからいいね。