キリノ可愛い。
27話
伝説の超三毛猫様
感想ありがとうございます。
「うぅぅ‥‥畜生ぅ‥‥」
「ったく、人様に迷惑かけるんじゃないよ?」
アリスちゃんの一件から一夜明け、先生やゲーム開発部のみんなと別れたあたしはD.U地区に来ていた。特に理由があってきたわけではないが、ミレニアムサイエンススクールに留まるわけにはいかない。シャーレの一員として先生から御墨付をいただいているとはいえ、あたしが要注意人物であることに変わりはない。素性を深掘りされる前にふらっと寄ってみたのはいいものの…まさか武装集団と鉢合わせるとは思わなんだ。
しかも、強盗を目論んでいたのだから質の悪い。ヘルメット団とかではなくオートマタだ。
「この‥‥ガキがああああッ!!」
「ッ!?」
倒れていた筈のオートマタの内の一体が突然起き上がった。
すかさず『天極』を発砲するが、執念深いオートマタはものともせず接近、そのまま勢いよく首を掴まれ壁に叩きつけられてしまった。
機械の指があたしの首をぐいぐいと締め上げていく。さらに持ち上がった体勢で壁に押さえつけられたことにより、負荷がかかってどんどん身体から酸素が失われていく。
「がっ‥‥はっ‥‥」
首を締め上げる力は増々強くなっていく。
視界が徐々に狭まり、意識を失いそうになったその時現場に拳銃を持った少女が駆け込む。
「ヴァルキューレ警察です!手を上げて、ただちにその人を解放し投降してください!!」
制服を見るにヴァルキューレ警察学校の婦警さんだろうか。
婦警に気づいたのか、オートマタは目標を婦警に変えサバキから手を離す。
「げほっ‥‥げほっ‥‥」
せき込むサバキを余所に相手は婦警に突撃する。
「ウガァァアアー―ーーッ!!」
「本官に対する暴力行為を確認、公務執行妨害です!!」
突進するオートマタに対し勇猛果敢に拳銃を撃つも何故か一発も当たることはなかった。
「危ない!」
「あわわ…なんでこんな時も当たらないんですか!」
婦警との距離を詰めていくオートマタ。
もはや突進は避けられないと思っていたが‥‥
「こうなったら実力行使です!」
そう言うと婦警さんは瞬時に接近してくる相手に足払いを掛けた。
勢いを殺されたことで迫ろうとしていた目論見は崩れ、盛大にずっこける。
それでもすぐに立ち上がり、婦警に襲い掛かるが婦警さんは1つ1つ冷静に対処し攻撃を捌く。
力任せに拳を振り下ろすが、その腕を掴む。
「せやああぁぁっ!!」
腕を掴み勢いよく相手を背負い投げる。
「ぐあああッ!!」
力強く地面に投げ倒した後
そしてついには手首を捻り上げ、地面に取り押さえた。
「午前10時20分、現行犯逮捕です!」
取り押さえた手首に手錠をかけ拘束に成功する。
「クソ、ボスがやられた!」
「野郎ども!仇を取るんだ!ヴァルキューレの小娘をとっ捕まえろ!!」
気絶していたはずの他のメンバーたちが意識を取り戻してしまったようだ。
「捕まるのはそちらの方です!」
再び拳銃を構える婦警さん。しかしあの数相手では、婦警さんでも厳しいだろう。
「婦警さん。後はあたしに任せてもらえないかしら?」
「えッ!?いやさすがに危ないですよ!」
「さっきは情けない姿見せちゃったけど‥‥あたしそれなりには強いのよ」
「かかれっ!!」
号令と共に再度襲い掛かるオートマタ集団。
「フンッ!!」
先ほどのお返しとばかりにサバキは縦横無尽に戦場を飛び回る。
両手に手にした『天極』と『地獄』を四方八方に撃ちまくる。
1人、また1人と再び気絶していく敵集団。残った1人にサバキは近づく。
「く‥‥来るなァァッ!!」
がむしゃらに銃を乱射するもサバキには一発も当たることはない。
最後の標的の懐にサバキは『天極』と『地獄』を突き立てる。
「ひっ‥‥」
「good-bye」
戦場となった現場では閻魔に裁かれることとなった者の悲鳴が響いたのであった‥‥
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「犯人逮捕のご協力ありがとうございました」
「こちらこそありがとう。婦警さん」
武装集団を撃退したあたしは少し事情聴取を受けた後、婦警さんの巡回に付き添っていた。
「‥‥ですが、本官と致しましては、犯人への攻撃
あれは少々やりすぎのように感じます」
「うぅぅん…そうよね…やり過ぎたかも‥‥」
最近妙に力が入り過ぎてしまうんだよな…。カイザーの時のノリのままなのかも…自重しなくては…
「情状酌量の余地がありますし、正当防衛が成り立ちますが次からは気をつけてくださいね。
それと改めましてご挨拶を。私はヴァルキューレ警察学校の中務キリノです」
「あたしは『黒狐』と言います。シャーレで先生の補佐に務めています」
「ああ、シャーレの!そうだったんですね」
キリノちゃんは
「キリノちゃん」
「はい?」
「ヴァルキューレでの日々はどう?」
「とても楽しいです。
先ほどの拳銃のように時に上手くいかないことがありますが…市民の皆さんの生活
を護る。それが本官の務めなので!!それにいつか憧れの警備局へ転科してみせます!!」
目を輝かせながら自らの夢を熱く語るキリノ。
言葉の節々から彼女の警察官へ対する夢と憧れが伝わってくる。
しっかりと自身の信念を強く持っているようだ。
パトロール中では、道行く人がキリノちゃんに声を掛けたり、手を振ってくれている。
どうやらD.U地区においてキリノちゃんは色んな人に顔を知られ親しまれている。
そんな姿があたしにとって眩しいものに感じた。
「‥‥羨ましいな」
「?どうかされましたか?」
「あっ、いえなんでもないわ」
‥‥いけない、いけない。
また嫌なことを思い出しそうになったわ。
もうあのことはあたしには関係ないじゃない。
今のあたしはしがない『黒狐』だもの。浄玻サバキではないわ
それにしても、こうしてヴァルキューレの生徒と出会えたのも何かの縁だ。
交友関係を広げるためにもあるが、純粋に興味もあるし色々聞いてみよう。
「キリノちゃん。もし良ければお話しもっと聞かせてくれないかしら?」
「はい!本官で良ければぜひ!」
――――――――――――――――――――――――――――
それから語り合っていると、キリノちゃんの無線機に連絡が入る。
「こちらキリノです。‥‥わかりました!直ちに急行します!」
なにやら真剣な面持ちだ。
何かあったのだろうか?
「何かあったの?」
「D.Uの遊園地にてカイテンジャーが現れたみたいなんです」
「カイテンジャー?」
キリノちゃん曰はく、カイテンジャー。
正式名称『無限回転寿司戦隊・カイテンジャー』戦隊ヒーローのような格好をした5人組らしい。
ただ実態はヒーローではなく悪役。他所の自治区から資金や技術を得るため悪質犯罪を繰り返しており、キヴォトス中で指名手配を受けているという。
それにしても人の多い遊園地、しかも真昼間から犯罪とは。
キヴォトスでは日常茶飯事ではあるものの、被害が心配だ。
正義感に燃えるキリノちゃんはグッと拳を握りしめていた。
「‥‥市民の皆さんが怯えて暮らすなんてこと本官は許せません
平和と安心はこの中務キリノが守って見せます!」
力強く言い放つキリノちゃんの目は真っすぐで純粋な瞳であった。
この思い。決して無駄にはさせたくない。
「キリノちゃん。あたしも現場に連れて行って欲しいの」
「えっ!危険ですよ!?」
「構わないわ。それに相手は指名手配犯なんでしょ?戦力は多い方が良い」
始めはあたしが着いていくことをやや拒んでいたキリノちゃんであったが、あたしの熱意に押され納得してくれた。
「わかりました。市民の安全のため力を貸してください」
早速、手配してくれたパトカーに乗り込み現場の遊園地へと向かうのであった‥‥
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
遊園地では突如、カイテンジャーが現れたことで大パニックが起こっていた。
逃げ惑う来場者たちを余所に、ぴっちりスーツを着た5人組は襲撃した飲食店やグッズショップ、屋台等から現金を奪い取っていた。
頭にマグロの握り寿司を載せた赤スーツの人物はカイテンレッド。
カイテンジャーのリーダーを務めている。
「レッド、ヴァルキューレがこっちに向かっているようだ」
ウナギ寿司を載せた黒いスーツのブラックがレッドに報告する。
「む、そうか。それで規模はどのくらいだ?」
そういうとエビを載せた桃色スーツのカイテンピンクがタブレット端末を取り出し確認する。
「‥‥パトカーが一台ですね。見積もって1~4人程度かと」
「はははは!それだけで我々の相手になるものか!」
「その通りだ、イエロー!我々の正義がヴァルキューレ如きに絶たれるわけがない!」
「レッド。警察との交戦は予定にはありませんが、追加給は出ますか?」
「うむ、今回はがっぽり稼いだ。当然出そう」
おおよそ正義の戦隊ヒーローに似つかわしくない会話である。
まぁ、自称ヒーローで実態は重犯罪者なのだから当然と言えば当然なのだろう。
それはそうとカイテンジャーは引き続き現金を強奪し続けていくのであった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ヴァルキューレ警察です!落ち着いて指示に従い避難してください!!」
現場に到着したサバキとキリノは、まずパニック状態に陥った民間人の避難誘導を行っていた。
逃げ惑う人々でいっぱいなこの場所では「群衆事故」が非常に起こりやすい。特にドミノ倒しによる群衆雪崩により全身が圧迫され死者が出る、なんてことが起こりえるのだ。
日頃からこういった現場に手慣れているからであろうか。キリノちゃんの指示は非常に的確で冷静な判断の下行われた。
少しずつではあるが、パニック状態になっていた市民の方も落ち着きを取り戻していき、事故もなく避難が進んでいく。徐々に避難が完了しそうになった時、どこからか泣く声が聞こえた。
「うう…ひっぐ…こわいよぉ‥‥」
声のする方を見ると泣いている幼い少女がいた。
「大丈夫ですか!!」
キリノが泣いている少女の側に行き、寄り添う。
「うぅ…おまわりさん‥‥あのね、しょーをね、みてたらいきなりひーろーさんがきたの
それでね、ひーろーさん、いろんなとこであばれて、こわしちゃったの。
せっかく‥‥せっかく…きょう、たのしみに…してたのに‥‥」
ぽろぽろと涙を流し泣きじゃくる少女。
よほど今日を楽しみにしていたのだろう。手にはチケットが握られていた。
‥‥許せないな。白昼堂々暴れるならいざ知らず、遊園地を楽しんでいた小さい子を泣かせるなんて。
キリノちゃんも内心同じことを想っていたのだろう。
握っていた拳が震えていた。
しかし平常を保ちながら少女に優しく話しかける。
「後はこの本官にお任せください。またあなたが遊園地を楽しめるようにしますので!」
少女を近くの警官に任せキリノは銃を構える。
「行きましょう。まだ犯人は居るはずです」
「キリノちゃん‥‥」
「市民の安全と平和は本官が守って見せます!」
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「来たか」
遊園地の中央広場でカイテンジャーは待ち構えていた。こっちが2人しかいないためか余裕な態度が透けて見える。
「はっはっは!!よくぞ来てくれたヴァルキューレよ!」
「回り続けるレールはやがて……正義の未来へと繋がる」
「「「「「無限回転寿司戦隊 カイテンジャー!参上!」」」」」
息をぴったり揃え、キメポーズを披露するカイテンジャー。
これだけ見ればまさにヒーローと言ってもいいだろう。
「カイテンジャーの皆さん!何故遊園地を襲ったのですか!」
「何故だと?当然、この場に集まる資金を回収するためだ!」
堂々と強盗を宣言するカイテンレッド。
他のメンバーも首を縦に頷いている。
「資金を回収って‥‥ここのお金はお客さんもとい遊園地の物でしょうに…」
「何を言うか!このお金は我々が頂いた!よってこれは我々の物だ!!」
暴論もはなはだしいな!?ガキ大将ニズムじゃねえんだぞ。
「お金を盗んで何を企んでいるんです!」
キリノちゃんからの問いにカイテンレッドはほくそ笑む。
「ふっふッふ…それはもちろん我々のロマンの為に!」
「「ロマン?」」
「そうとも。我々カイテンジャーは悪党から平和を守るため。
無限の回転によって”正義”の未来へと繋げるために!!」
意気揚々と己の行為を主張するカイテンジャー。
対してキリノは静かに怒っていた。
「…ふざけないでください
遊園地を楽しみにしていた人たちを泣かせてまですることなんですか!」
「そうとも!!それがカイテンジャーの正義だッ!!」
己の行為を悪びれることなく、逆に正当化して言ってのけた。
その開き直りぶりを前に、サバキは先ほど泣いていた少女のことを思い出す。
…今、”正義”って言ったか?
『サバキ。”正義”ってのは複雑で一枚岩じゃない。
何を持って”正義”とするのかはソイツ次第だ。でもな
私利私欲で誰かを泣かせるのは”正義”じゃねえ
正義実現委員会としてそこは決して履き違えるなよ?」
純粋に遊園地を楽しみにしていた少女の想いを踏みにじり、台無しにした挙句、反省するどころか正義と主張して開き直るその態度がサバキの逆鱗に触れた。
「‥‥何が正義の未来に繋がるだ?何がカイテンジャーの正義だ?
てめらに正義を語る資格はねぇ!!」
「何だと!?」
怒髪天を衝いたサバキの様子にキリノは思わずたじろぎそうになるも、グッと堪える。
「その通りです。市民の生活を脅かすあなた達を野放しにするわけにはいきません。
全員逮捕します!!」
「‥‥。どうする?相手やる気だけど…」
「相手にとって不足なし!」
「我々カイテンジャーの力を見せるのだ!」
「骨が折れそうです。別途報酬を準備しておいてください」
「そう来なくては。いくぞ!トゥ!!」
そういうとカイテンジャーはあたしとキリノちゃんの周囲を取り囲む。
「キリノちゃん、行くよ」
「はい!」
背中合わせになり、2人はカイテンジャーを迎え撃つ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「カイテンポーズ!熱血のレッド!!」
「カイテンポーズ…休出のグリーン‥‥」
「カイテンポーズ!気合のイエロー!!」
ブラックとピンクの相手をキリノちゃんに任せ、あたしはレッド、グリーン、イエローを相手取る。
さすがは腐っても戦隊ヒーローを自称するあたり、個々の連携は優れている。
前線をレッドが切り開き、その背後からグリーンとイエローが安全に攻撃する。
特にグリーンの装備が厄介で、ミニガンから繰り出される連続射撃はかなりの火力を持っている。おまけに範囲が広いこともあり、遮蔽物に身を隠すことも難しい。
さらにイエローのスナイパーライフルは援護射撃にて真価を発揮しやすい。レッドのアサルトライフルの小回りの利きやすさも相まって、中々油断できない相手だ。
「悪く思わないで。うちは成果給だから‥‥」
「流石、給料が絡むとしっかりしてるな!」
「このまま決めるぞ!」
言いたい放題、言ってくれちゃって‥‥
でもな、不味い飯屋と悪党が栄えた試しはないってな!!
そういうとサバキは地面をトントンと数回、足で軽く蹴ると一気にグリーンへと走る。
「馬鹿なやつ。ハチの巣だ」
走って迫るサバキ目掛けてミニガンを撃つ。しかし多少の被弾をものともせずに距離を詰められる。
(これくらいあればっ!)
「このっ!」
物凄いスピードでグリーンの懐へ入り込むサバキ。迎撃とばかりに銃身を鈍器のように振り回すが、空しくも空を切る。
すかさずみぞおちにローキックを入れ、怯んだすきに天極と地獄による連続射撃をお見舞いする。
「うわああっ!!」
「「グリーン!!」」
攻撃をまともに食らったグリーンを心配するレッドとイエロー。
しかしそんな隙をサバキはも逃さない。
天極の銃口をレッド、地獄の銃口をイエローに向け引き金を引く。
「しまったっ!?」
「こいつ…いつの間に!」
「bang!」
サバキ自慢のサブマシンガンがカイテンジャーに火を噴いた。
防御することさえ敵わずにイエローとレッドは衝撃で吹っ飛ばされ、近くの壁に叩きつけられるのであった。
一方キリノの方はというと、ハンドガン使いのブラックとロケットランチャー使いのピンクと渡り合っていた。
絶え間なく撃ち込まれるロケットランチャーの弾をキリノはパトロールで鍛えた脚を使い華麗に避けていく。
ホルスターから拳銃を抜き、ブラックへと発砲する。
「はっはっはっ!見事な身のこなしだ!だが、私にはかなうま…「あいた!?」えっ?」
なんとキリノが撃った弾丸はブラックではなくピンクのこめかみを綺麗に撃ちぬいたのである。これにはブラックも困惑を隠せない。
「ま、まさか本当の狙いはピンクだったとは‥‥中々やるな!」
「えっ…えぇ!そうですとも!!本官の腕前ですから!」
平静を取り繕っているがこのキリノという生徒、射撃能力においてかなり癖が強いのである。
理由は定かではないが、彼女は犯人を狙って撃つと必ず人質に当たるという不可思議な性質を持っている。先ほどもブラックを撃とうとしてピンクに当たったのもこれが理由である。
「ならば…これはどうだ!!カイテンポーズ!『冷徹なブラック!』」
ピンクをやられたお返しにとハンドガンによる精密射撃がキリノを襲う。
何とか遮蔽物に身を隠すも、ブラックの猛攻は止まらない。
(どうしよう…どうしよう‥‥)
混乱しそうな頭を冷静に落ち着かせようとしていると、近くに小石が落ちていることに気づく。
(えっと、えーっと‥‥なんとかなれーーー!)
無我夢中でその小石を掴み、目を瞑ったまま放り投げる。
しかし軌道はブラックから大きく逸れ、明後日の方向に飛んでいく。
「どこに投げている」
高笑いするブラックだったが、その時不思議なことが起こった。
なんと投げた小石がブラックの後ろの建物の壁に命中し、跳ね返ったのだ。
跳弾となった小石は、何度も跳ねてブラックの後頭部にぶつかったのだ。
「ぐはぁ‥‥ッ」
まさに偶然とは思えないほどのラッキーを前にブラックは倒れた。
「や、やりました!本官の勝利です!」
状況が上手く把握できていないでいるがキリノは思いっきり喜ぶ。
「お疲れ様、キリノちゃん」
「そちらこそお疲れ様でした。これで一件落着ですかね」
互いに労っていると、倒れていたカイテンレッドがゆっくりと立ち上がった。
「まだやる気?」
「これ以上の抵抗は無意味です。大人しく投降してください」
「ふふふ‥‥まさかたった2人にカイテンジャーが全滅させられるとは…
どうやら、我々の読み違えだったようだ。認めよう、諸君らは強いと
だが、負けるわけにはいかんのだよ!!来い!!」
するとレッドが天高く拳を突きあげ、叫ぶ。
「クラーケン――!!!オケランヴァ――!!!」
迫真のキメ台詞と共に、どこからかロボットのパーツが飛来し合体。
巨大なロボットが遊園地に降り立ったのだ。
「完成!KAITEN FX Mark0!!」
ズドンッ!とデカい音を立てて、キリノとサバキの前に現れたのはカイテンジャーの秘密兵器。
『KAITEN FX Mark0』である。
こんなロボを作成できるとはどれだけのお金と技術や素材を盗んできたのか‥‥
ますます正義のヒーローとは呼べない。所詮は、自称ヒーローのコスプレ集団止まりだ。
「勝負はまだまだ1回の表だ!いざ、勝負!!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
こうして始まったKAITEN FXとの戦闘。
カイテンジャーの虎の子とも言えるKAITEN FXは各部に強力な武装を取り付けている。右腕にはピンクのマシンガン、胸部にはミサイルと迎撃用にしては過剰とも言える兵装である。
さらに左腕にはお皿シールドが取り付けられており、攻撃をガードしシャットアウトする。
加えて多少なれど体力を消耗していることから、キリノちゃんには少し疲れが見えている。
「厄介ですね…」
「ええ。無駄に硬いし、盾もあるから崩しずらい‥‥」
せめて、相手に隙ができれば‥‥
「はっはっは――!!名残惜しいがこれで決着としよう。正義は必ず勝つ!
くらえ!《無限回転・FINAL鯖スラッシュ!》」
KAITEN FXの巨大な剣が2人目掛けて振り下ろされる。
「きゃあッ!」
サバキはキリノの前に立ち両腕で剣を受け止めた。
幸い切れ味はないようで真っ二つにはならなかったものの、重さで押しつぶされそうにある。
「ぐぐぐっ‥‥」
潰されないよう踏ん張っているが耐えられなくなるのも時間の問題だろう。
(このままじゃあ…どうしよう‥‥!!)
再び焦る気持ち。自分一人ではあんな大きいロボットに太刀打ちできるのか、キリノは不安に押しつぶされようとしていた。しかしサバキが叫ぶ。
「キリノちゃん!怯えることはねぇ!
自分の信念を信じるんだ!!」
「…はっ!」
私が警察に成りたかったのは。人々の平和を、笑顔を守ること。
その一心で、日々精進を重ねてきたのだから。
(私は‥‥私の想いを、信念を信じる!!)
発煙筒のピンを抜き、そっと地面に置く。
そして‥‥
「行っけ―――――!!」
KAITEN FXに狙いを定め発煙筒を蹴り上げた。
綺麗な弧を描きながら、発煙筒はKAITENの頭部に命中。辺りを煙で覆い隠した。
「何ぃ!?しまった前が見えない!!」
たちまち前後不覚に陥ったKAITEN FX。
そのため、剣に掛かっていた力がふと軽くなる。
隙が出来た。今がチャンス!!
「うおおおおっ!!」
両腕・両足に力を込めてKAITEN FXの剣を押し返す。
「うお!?」
押し返されバランスを崩し巨体が転倒する。
「受け止めてみやがれ!!これがあたしのぉ!!」
――――拳だあああああッ!!
「ぐっ!《無限回転・ULTRAお皿シールド!》」
咄嗟にお皿シールドでサバキの拳を受け止めるも、バキバキと音を立ててシールドは粉々に砕け散った。
「すっごい‥‥」
信じられない光景に思わず呆然とするキリノであったが、サバキがすぐ隣に立つ。
「キリノちゃん、いくよ」
「はい!!」
体勢を立て直したKAITEN FXを前ににキリノとサバキが並び立つ。
キリノは制服のポケットから警察手帳を取り出し、突き出す。
「無限回転戦隊カイテンジャー!
キヴォトス各地での窃盗・強盗行為、
並びに器物損壊の罪でジャッジメントします!!」
「
『地獄』と『第3号ヴァルキューレ制式拳銃』を重ね合わせる。
「「FIREッ!!」」
2丁の銃による同時攻撃が発射され、頑丈なKAITEN FXの胸部装甲貫く。
「‥‥見事だ」
風穴が空いたKAITEN FXは煙と火花を散らしながら大破し、カイテンジャーの野望は阻まれることになったのであった‥‥
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
戦いが終わった頃にはすっかり辺りは夕暮れに染まっていた。
「おーい!キリノ大丈夫かー?」
キリノちゃんの同僚だろうか?同じヴァルキューレの制服を着たツインテールの婦警が近づいていた。
「遅いですよ!フブキ!」
ほっぺを膨らませながら怒るキリノにフブキと呼ばれた少女はたじたじになっていた。
「いやいやごめんね、道中で温泉開発部が暴れてさ道路閉鎖になっちゃったんだよ~」
キリノがカワイイ抗議を続ける中、護送車が到着する。
「んじゃ、護送車来たことだし、面倒くさいけど連れていくね。
キリノも戻ったらゆっくり休みなよ」
「はい。それと今日は何から何までありがとうございました。
また機会がありましたらその時はよろしくお願いします!」
「こちらこそありがとうね。かっこいいお巡りさん」
そう言ってサバキは遊園地を後にするのであった‥‥
―――――――――――――――――――――――――――――――
サバキが去った後、手を振って見送るキリノにフブキは問いかける。
「ねえ、キリノ」
「なんです、フブキ?」
「キリノは彼女のこと知ってるの?」
「いえ、今朝強盗に襲われているのを助けたくらいですからそこまでは…」
その反応にフブキは少々呆れながらため息をつく。
「キリノ…彼女、いや『黒狐』は今キヴォトスで話題の要注意人物だよ?」
「えッ!?そうなんですか!?」
どうやらキリノはサバキがそんな人物だとは知らなかったようで目を丸くして驚いている。
「そんな風には見えなかったのですが…」
「んまぁ、あくまで素性不明でかつ、強いって理由で上層部が騒いでるだけなんだけどね」
フブキからの話をキリノは半信半疑で聞いていた。
(背中合わせでカイテンジャーと対峙したあの姿は間違いなく悪人ではありませんでした…
しかし何故彼女は正体を隠しているのでしょう…?今度会った時、色々聞かせてもらいましょう)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
その頃、サバキはというとコンビニで買ったおにぎりを頬張っていた。
くぅ~~~頑張った後の飯は上手い!!
いいことしたってのはいつでも気分が良くなるってわけだ!
…にしても今のヴァルキューレにも正義感に熱い警察官がいるのね。
あの子には腐らず、そのままの姿勢で成長してほしいな。
ウキウキ気分でおにぎりを完食すると同時に携帯に着信が届く。
「もしもし?」
「”やっ、黒狐”」
「先生!」
まさか先生からお電話とは…もしかしてゲーム開発部のことで?
「”その通り。話が早くて助かるよ。それでまた君の力を貸してほしいんだ”」
え?あたしの力を?
ゲーム開発部に何かありました?
「”ミレニアムのセミナーに乗り込むよ”」
「ウェッ!?」
どうやらまだ休めそうにないらしい。
余談
後日、キリノ曰はくあの時の少女から感謝のの手紙が届いたらしい。
また逮捕されたカイテンジャーだったが、隠し持っていた爆弾で護送車を爆破。再度逃亡したようだ。