カイテンジャーとの闘いの後、先生に呼ばれたあたしはミレニアムにやってきていた。
人気が多かった昼間と比べ、夜のミレニアムはがらんとしており、より施設の大きさがわかる。
先生やゲーム開発部と合流し事の次第を聞いた。なんでも、部員不足による廃部は免れたものの、部長の代わりに会議に参加するはずだったモモイちゃんがゲームに現を抜かしてバックレた為、成果を見せる必要があるらしい。
「…さすがに会議をバックレるのはダメじゃない?」
「うぅ…何も言い返せない…」
それで本題はというと当初の目的であった『G.Bible』にあるという。
あたしが去った後、廃墟に再び訪れ『G.Bible』を回収したはいいものの、解読にはツール通称『鏡』が必要なようで、それはミレニアムの生徒会が保管している。
そこでミレニアムのハッカー集団ヴェリタス、エンジニア部と協力し『鏡』を手に入れることになったというわけだ。
「‥‥というわけで初めましての方は初めまして。
シャーレ所属の『黒狐』です。よろしく」
『おぉ~あなたが先生の言っていた助っ人か~
初めまして、ヴェリタス所属のマキだよ!』
『私はエンジニア部所属のコトリと言います!
作戦のご協力感謝します!』
他にもメンバーはいるみたいだが、先に配置に付いているようだ。
聞かされた作戦によると、アリスちゃんは前もってセミナーに確保されているらしい。
なんでもセキュリティへの抜け道を作るために、あえて騒ぎを起こさせたとか。
中々、ワイルドだな…
あたしに役目は、差押品保管所へと向かうモモイちゃんとミドリちゃんのアシストを担当すること。
正直、真っ向から余所の生徒会とやり合うのは気が引けるが、今回ばかりは致し方ない。
ゲーム開発部の為だ、微力ながら力を貸そう。
「それでは‥‥先生!」
「”作戦開始!”」
「行っくぞー!!」
―――――――――――――――――――――――――――――――
深夜に差し掛かった頃、『鏡』奪還作戦が開始した。
まず、ヴェリタスが細工した情報を餌に、マキちゃんとコトリちゃんが時間を稼ぐ。
その間にあたしたちは、差押品保管所へと続くエレベーターに乗り込むという作戦だ。
そして作戦は見事成功。
囮のマキちゃんとコトリちゃんに釣られたC&Cの1人を閉じ込めることが出来た。
さらにヴェリタスがあらかじめ扉に細工を施し、緊急事態用のシャッターを下ろした。結果、増援のセミナーたちも閉じ込められ、ハッキングで指紋認証のコードを書き換えていた為に身動きが取れない状況を作り出したのだ。
「先生、お姉ちゃん、黒狐さん。ハレ先輩から連絡!
アカネ先輩を閉じ込めるのに成功したって!」
「よし!生徒会の役員も全員隔離できた筈だし…
これで今タワーの中を自由に動けるのは、私たちだけ!」
「本来のエンジニア部製よりほんの少しだけ弱そうに見える、
最新型のセキュリティ。上手くいったみたいだね」
しっかし、セミナーも警戒してたとはいえよくこうも上手くことが進むなあ…
「名前を隠していたからエンジニア部製だとは思わなかったんじゃないかな?」
なるほど。その辺の塩梅も調節できるわけか。流石エンジニアの名が示す通りだ。
なんてことを話しながら、あたしたちは移動用エレベーターに乗り込む。
「とりあえずアカネ先輩を封じられたのは良かった。
せっかくならアスナ先輩も一緒に閉じ込めたかったところだけど…」
「アスナ先輩?」
「そういえばお姉さんは知らないんでしたよね。
C&Cのコールサイン
れっきとしたエージェントなんです」
「そうそう!でも神出鬼没の先輩でどこにいるのかわからないんだよね。
ま、今のところ計画通りだし、気にしない気にしない!」
神出鬼没ねぇ…
意外と自由奔放タイプが対峙して一番厄介だったりするんだよな…
そんなことを思いながらエレベーターは押収品保管室がある階に到着した。
「し、侵入者発見!!」
降りた先ではまだ生徒会の生徒が残っていたようで見つかってしまう。
「ど、どうしよう先生!」
「”突破しよう”」
「‥‥突破するしかなさそう」
「ここまで来たんですから逃げるわけにはいきませんよね」
「なら、ちゃちゃっと片付けてしまおう」
止む終えず、3人で警備用の小型ロボットとドローンの相手をすることになった。
――――――――――――――――――――――――――――――
セミナーが差し向けた警備用のロボットとドローン。
数は多いけれど、一体一体の強さはそこまで強くない。
モモイとミドリの息の合ったコンビネーションやサバキの荒々しい射撃の前に次々と撃ち落とされていく。
最後のドローンが機能停止した頃、モモイが最後のシャッターを解除した。
「ふふっ、今や生徒会専用フロアは私の思うがまま~~
もう少しで『鏡』がある差押品保管所に…」
ルンルン気分のモモイであったが突如ハレから通信が入る。
『モモイ、伏せて!』
「えっ?」
ふとサバキが窓の方へ振り向くと、離れた位置にある屋上から誰かがこちらを狙っていた。
「ごめん!」
咄嗟にサバキはモモイの頭を抑え、しゃがませる。
鋭い音共に、凄まじい勢いの弾丸が壁に命中。綺麗な穴が開いていた。
「対物用49mm弾!?危ない所だった…」
「ねぇ2人とも。もしかしてC&Cに狙撃手っているのかしら?」
サバキからの質問にミドリが応える。
「はい…カリン先輩が――うわぁ!」
応え終えるのを待つ暇もなく続けざまに49mm弾があたしたちを襲う。
狙撃手としての腕は、バンやハスミちゃん並みか。
こんなことなら『黒笏』持ってくればよかったなぁ…
だがない物ねだりしたところで状況はよくならない。
なんとか狙撃を避けつつ進んでいると、狙撃手のいるであろう場所で爆発が起こった。
同時に狙撃もぴたりと止んだ。
「ウタハ先輩とヒビキちゃんだ!
カリン先輩の相手をしてくれてる間に、急ごう!」
どうやら、エンジニア部の2人が狙撃手の足止めをしてくれているようで、その間に狙撃ポイントの廊下を駆け抜ける。
――――――――――――――――――――――――――――
無事狙撃手から撒くことができた一行。
残ったセキュリティも外部電源を遮断したことで機能停止し、指紋認証もクリア。
差押品保管所まであとわずかの所まで来ていた。
「ここさえ抜ければ…」
「うん。もう生徒会の差押品保管所の筈。ようやくこれで…」
安堵するのもつかの間。
廊下に誰かの声が響く。
「おっ!やっと来たね!」
「”誰?”」
暗がりの中姿を見せたのは1人のメイドであった。
「ようこそ、ゲーム開発部!それに…確か先生だっけ。それと狐さん!
ずっと会えるのを楽しみにしていたんだ!」
「あ、アスナ先輩!?どうしてここに!?」
どうやら彼女が先ほど言っていた神出鬼没のC&Cのようだ。
ミドリからの質問にアスナはあっけらかんとした態度で答えた。
「う~んと…なんとなくかな?
ここで待っていたら先生やあなたたちにも会える気がして」
‥‥なるほど。完全なフィーリングタイプか。
知識やロジックなんて一切関係なく、野生本能で感じ取る。
相手にとって非常に厄介なタイプだ。
「さっじゃあ始めよっか。行くよ!!」
そういうとアスナは問答無用であたしたちに襲い掛かる。
――――――――――――――――――――――――――――
「うわああっ!?」
「やっぱりデタラメに強い‥‥」
キヴォトス中でも名前の知れたエージェント組織『C&C』の一員なだけあって、アスナはかなりの戦闘能力を持ち合わせていた。
明るく無邪気に振る舞う姿は大型犬のように見えるが、戦闘に関しては優しい限りではない。
鍛え上げた射撃と動きを見せる姿はまさしく狩りをする猟犬と言ってもいい。
本職の戦闘部隊が相手では流石のモモイちゃんとミドリちゃんも歯が立たなかった。
(これが当代のC&Cの実力…)
「狐さん!私と遊ぼう!!」
次の標的をサバキに定めたアスナは駆け足で迫る。
「はあっ!!」
『天極』と『地獄』で牽制の弾幕を暗がりの中展開するが、彼女は最初から予測していたのか的確に攻撃を避ける。
「アハハ!楽しいね!」
こっちからしたら楽しいどころか冷や汗もんだよ…
何あの反応速度。もはや未来予知ってレベルだぞ。
とにかく、直感を何とかしなければ勝機は見いだせないだろう。
なら肉弾戦はどうだ!
再び牽制の射撃を放つ。当然メイドさんはいとも簡単に避けるだろう。
射撃を避けた先に低姿勢での足払いを掛ける
「うわっ!」
綺麗に足元を掬われたアスナの身体が宙に浮く。
続けざまに背中を蹴り、床に叩き落とす。
息をつく間も与えずに倒れている彼女に向け『天極』と『地獄』を発砲する。
しかしすぐに態勢を立て直し、弾を回避した。それどころか、サバキの脇腹目掛けて痛烈な右ローキックを繰り出す。
咄嗟に脇を固め、右腕でキックを受け止める。
細い脚ではあるものの、ガードした腕がジンジンと痛む。
見かけによらず威力はかなり高いようだ。
「流石、C&Cの1人。中々やるわね」
「狐さんも強いね~びっくりしちゃった」
あっけらかんと笑ってるけど、全然体力使ってないな…あれ。
それに格闘戦も銃撃戦も手ごたえがなかった。
論理的思考に基づく動きではなく、感覚やフィーリングで動く相手はすこぶる厄介だ。
ペースを乱しにくい。
それにあんまり時間掛けてられないってのに…
勝負が拮抗する中、ミドリちゃんはある決断をする。
「黒狐さん、お姉ちゃん、先生。ここは一旦退こう」
「うん、仕方ない」
そうだな…埒が明かないし、下がるしかないか…
なんて悠長なことを考えていると先ほどの対物用弾がこちらに射ち込まれた。
(エンジニア部が抑えては筈では‥‥?)
「ハレ先輩から連絡!カリン先輩を抑えられなくなって、
ウタハ先輩が捕まっちゃったって!」
「この状況を見ればわかるって!」
「マキからも、アカネ先輩がシャッターを爆発させて脱出したみたい!
それと同時にロボットもたくさん来てるって!!」
‥‥これ、結構まずい感じでは?
「もしかしてそっちの計画は失敗寸前かな?」
「”みんなまだ諦めるには早いよ”」
「ここで諦めて貰った方が賢明だと思いますけどね」
モモイとミドリを励ます先生であったが、一同が見知った声が聞こえる。
「”ユウカ!”」
そうミレニアムの生徒会セミナー所属で会計担当の早瀬ユウカである。
それとアスナとは違うメイドがもう一人ロボットを多数引き連れて現れた。
「あ、アカネ先輩!」
「ふふっ、今度こそ「本物」みたいですね。
改めて、初めまして。モモイちゃん、ミドリちゃん。
そして黒狐さん」
「先生、シャーレに抗議文くらいは送らせていただきますので。
それと会うのはシャーレ奪還日以来だったかしら黒狐。
ゲーム開発部の手伝いだったとはいえ、そのお面を剥いで
素性を明らかにさせてもらうわ」
前門のセミナーに後門の狙撃手。
まさに絶対絶命。勝率は限りなく低い。
さらにセミナーを襲撃したことでユウカはお冠だ。
捕まれば停学もしくは拘禁は免れないだろう。そうなってしまえばゲーム開発部の廃部は免れない。
「ごめん、ごめんね。先生…お姉さん…2人とも色々手伝ってくれたのに…
私たちの力不足で‥‥私たちのせいで‥‥」
「”諦めないで”」
先生が励ましの言葉を掛けるも、完全に諦めムードに陥っていた。
2大勢力を前に心が折れそうになるモモイとミドリ。しかし‥‥
「ターゲットを確認。魔力充電100%‥‥」
C&Cでもセミナーでもない、まるで呪文の詠唱のような言葉が聞こえる。
「こ、この音は…」
「お姉ちゃん、黒狐さん、伏せて!!」
―――光よ!!
その言葉と同時に耳をつんざく様な轟音と光、いやプラズマとも呼べる何かが前方目掛けて迸る。
何の光!?
溢れる光の本流は周りを吹き飛ばし、C&Cのアスナちゃんを吹っ飛ばした。
直撃を受けても、会話できるほどの体力はあるようだが、身体が感電したらしく痙攣を起こしている。
結果的に相手側の戦力を1つ無力化した。
さらに、いつの間にか狙撃手の火力支援が止まっている。
もしかしたらエンジニア部が再起し、狙撃手を抑えているのかもしれない。
「モモイ!ミドリ!」
「「アリス!」」
再会を喜び合うゲーム開発部の一同。
なんか会ってない内にデカい武器背負ってる…何あれ?銃なのか?
しかし、どうしてこんなところに?捕まっちゃったはずでは…
「生徒会差押品保管所に向かう途中に考えていました。
『ファイナルファンタジア』『ドラゴンテスト』
『トール・オブ・フェイト』『竜騎伝統』『英雄神話』『アイズ・エターナル』
そして『テイルズサガクロニクル』。
どのゲームでも仲間のことを諦めたりしませんでした」
「なのでアリスもそうします!」
始めはあんなに機械っぽさがあったアリスが今では流暢に言葉を…
いや、感情を理解し話している。一人の人間として自我を確立させたんだ。
ゲームがアリスをアリスとして成り立たせたんだ。
アリスの言葉に諦めかけていた心を奮い立たせたモモイちゃんとミドリちゃん。
この難所を突破することを決意した。
相手が混乱している内に、差押品保管所へ向けて走り出す。
だが相手もそれを阻止せんと動き出した。
「まずい…逃げられる!」
「そうはさせません、アカネ戦闘を開始します!!」
――――――――――――――――――――――――――――――
アリスちゃんが加わったことで、不利だった戦況は、こちら側に傾いた。差押品保管所へと続く廊下を一気に駆け抜ける。だが相手も行かせまいと必死だ。
C&Cのアカネがロボットとドローンを引き連れ、後を追う。
「このままじゃあ追いつかれちゃう!」
いくら戦力を減らしたとはいえ相手が精鋭であることは変わらない。
追いつかれれば当初からの目的である『鏡』の入手が難しくなるだろう。ならば取る手段はこれしかない。
「…ここはあたしが殿を務めます。
先生、モモイちゃんやミドリちゃん、アリスちゃんを頼みます」
「”黒狐…。わかった、任せて”」
「お姉ちゃん!必ず戻って来てね!!」
応援しながら走って行く皆を背に、あたしは追手のC&Cとロボットたちと対峙する。
「…なるほど。貴女を倒さなければ先には進めないわけですね」
拳銃を構え、ゆっくり歩み寄るアカネと名乗ったメイド。
彼女はあたしの前に立つと両手でスカートの裾を掴み、軽く持ち上げる。そして腰を曲げて深々と頭を下げた。
「改めまして自己紹介の程を。私は『Cleaning&clearing』所属
コールサイン
メイド部の名に懸けて、黒狐さん、貴女を「掃除」致します!」
今の作法は確か、由緒正しいメイドさんお挨拶の作法だったか。
挨拶されたからには挨拶で返すのが道理というものだ。
「ドーモ、アカネ=サン、黒狐です。
こんな形で戦うのは無念ですが、これもあの子らのため。
お覚悟を!」
互いの挨拶を皮切りに戦いが始まった。
ドローンを指揮し、一斉射撃を命じるアカネ。ドローンに備え付けられた銃火器が一斉に火を噴いた。
飛び込むように回避行動を取ったサバキは、『天極』でドローンを一体撃ち落とす。そして落ちたドローンを盾に敵陣へと走った。
軽い『天極』だがドローンを撃ち抜くことくらいは造作もない。ドローンを全て撃ちぬき、次はロボット軍団と交戦する。『天極』を『地獄』に持ち替え、突撃。威力を強く出せるようにチューンアップした『地獄』の銃弾はロボットの装甲を簡単に貫いた。近づいて来る相手なら即座に回し蹴りで、首関節を折り曲げ無力化させる。
敵の攻撃は盾のドローンが全部防いでくれるため傷を負うことはない。
ロボットたちを全て片付け終えると、足元でキンッという金属音という音が鳴る。
足元に転がるのは1つの手榴弾。それもピンが抜かれたフラググレネードだ。
脳が理解する前に身体が動く。
前方に飛び出したと同時に手榴弾が大きな音を立てて爆発。爆風と破片が廊下一面に広がった。
殺傷能力は低いものの、飛び散った破片が着物に刺さり、破く。
「あらあら。避けられてしまいましたか。
ですが次は外しません」
「ボマーメイドとは…これまた斬新ね」
暗がりの中、月の光に反射した眼鏡をくいっと上げるアカネ。
メイドというよりかはアサシンに思えるだろう。
にしても直感メイドに狙撃手メイドときてボマーメイドと来たか…
攻撃が当たりずらい前者に比べれば多少マシではあるものの、油断ならないのには違いない。
気を抜けば、彼女の言う通り『掃除』されてしまうだろう。
「参ります」
冷たく言い放ったアカネはメイド服から爆弾を取り出し、放り投げる。
次の瞬間には、眼前で爆発し、煙が煙幕となって辺りを覆い隠す。
元々暗く視界が悪い中、煙幕を活用してサバキへと迫る。
冷静に周囲の気配を探るサバキ。
暗がりの中でも靴から発せられる靴音は辛うじて聞ける。
「ッ!」
「そこッ!!」
靴音を頼りに、相手を探知。背後でピストルを構えていたアカネに『天極』と『地獄』の速射を放つ。
アカネも少し驚きを見せたが、すぐに回避しようと後ろに飛ぶ。
ピストルを構えたところで、盾として使っていた壊れかけのドローンを投げる。
当然自分に向かってくる投擲物をピストルで数発撃つが、ドローンが大破し煙が巻き起こる。
これにはたまらず、煙が目に入らないよう腕で隠した。
やっと、隙を見せたな。
爆弾と射撃が収まるタイミング。
その時に攻撃を当て、仕留める。
今がその時だ。
床を蹴って猛スピードでアカネとの距離を詰める。
「…っ!しまった!」
「ふんっ!!」
向こうも気づいたみたいだがもう遅い。
グリップから銃身に持ち替え、鳩尾付近に『地獄』の銃床で力いっぱいに突く。
「…かはっ」
深々と銃床がめり込んだアカネは、前のめりに昏倒する。
倒れ込んだ彼女をサバキはそっと抱きかかえ、壁にもたれさせた。
戦いが終わった頃には辺り一面機械の残骸だらけ。折角補修した着物も少し煤汚れてしまった。
ふい~~聞いた噂通り強かったなあ、メイドさんたち。
今のC&Cがここまで腕の立つ集団だったとは。
先々代のC&Cも強かったが、まさか苦戦を強いられかけるとは思わなかった。
ワカモの件と言い、あたしのピーク、もしかして過ぎた?いや、単に腕が鈍ってるだけだな。
今のキヴォトスには2年前よりも隠れた強豪が多い。気を引き締めなければ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
廊下を進んでいくとようやく差押品保管所と書かれた表札が見えた。
ゲーム開発部はもう既に『鏡』を手に入れられたのだろうか?
それにしては人の気配がしない。一切の静けさ。不気味だ。あたしあまり夜の学校とかは苦手だ。だって…出そうで怖いから…
もしかしてまだ中に居るのかもしれない。
見つかっていないのか?なら手伝おう。
そう思い、中に入ろうとした時であった。
「おい」
誰かに呼び止められた。ガラの悪そうな声だが…この声、どこかで聞き覚えが…
「おい、聞いてんのか!」
おっと、怒らせては失礼だ。
声する方へ振り返ると、そこに居たのは龍柄のスカジャンを羽織った小さいメイドだった。
両手にサブマシンガンを持ちながら少し不機嫌そうにこちらを見つめている。
「あら、ごめんなさいね」
「ったく、戻って来てみればウチの連中がこっぴどくやられてるたなぁ…
まぁ、来たのは正解だったな。探したぜ『黒狐』」
鋭い目つきでニタッと笑う表情には薄らと殺気が宿っていた。
スゥ‥‥そうだ。思い出した。龍柄のスカジャンに、派手に着崩したメイド服。
そしてあのサブマシンガン。
間違いない。
あの子は―――――
「コールサイン
余談
今回使われなかった『黒笏』だが、ゲマトリアによって若干の改造されている。
ただし本職のスナイパーであるカリンと副職のサバキではカリンに軍配が上がるぞ。
戦闘描写を丁寧に書いてる人ってすごいですよね。
書いていて難しさを感じますが、書き終えた達成感は良いものと思います。