正義実現委員会の閻魔様   作:光からの使者

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ここのカヤは、リンちゃんと連邦生徒会長にクソデカ感情を持っていたらいいなという妄想。


業務2:未来の超人を導け

 どうも、正義実現委員会委員長の浄玻サバキだ。

 今日は連邦生徒会から1年生が体験活動に来る為、歓迎の用意を済ませてるところだ。まぁ、体験活動と言っても普段、正義実現委員会(うち)が行っている治安維持活動や書類整理のような業務を見学させるといった感じだけどね。

 連邦生徒会(あっち)からしても他校に体験活動として派遣させることにより一年生に経験を積ませる機会を設けているのだろう。であれば、正義実現委員会(こちら)としても活動が派遣された子にとって良い経験になれるよう務めなければ。

 

 そうこうしてるうちに時計が約束の時間を指した。

 

 「失礼します。委員長、連邦生徒会よりお客様がお見えになりました」

 

 「わかった。こちらにお通しして」

 

 「畏まりました」

 

 ノックと共に入室した副委員長(バン)に執務室の扉を開けさせる。

 入口からこちらに現れたのは連邦生徒会の白い制服を着用したピンク髪でアホ毛が目立つ少女。まだ1年生ということもあり初々しさが顕著に出ており全体的に小柄な印象を受けた。

 

 「失礼します。連邦生徒会1年防衛室所属の不知火カヤです。お会い出来て光栄です」

 

 「こちらこそ、光栄です。自分はトリニティ総合学園、正義実現委員会委員長の浄玻サバキです」

 

 対面し合い、軽い挨拶を済ませると執務室の椅子に座る。

 

 「本日はトリニティ総合学園にお越しいただきありがとうございます」

 

 「いえいえ、正義実現委員会については生徒会でもかねがね聞いております。トリニティ自治区ひいてはキヴォトスの治安維持に大きく貢献しているそうではないですか」

 

 「それはどうも。我々としては各々が安全を守れるよう活動しているに過ぎませんよ」

 

 「それでも素晴らしいことだと思いますよ。私も防衛室長の座を目指している身ですが、貴女方のような組織がいればヴァルキューレともキヴォトスの平和を担う双璧に成りうるでしょう」

 

 「そういえば、カヤさんは防衛室でもかなり期待されていると噂をお聞きしたことがあります」

 

 「ええ!その通りです!いずれ私は防衛室長の椅子に座り、キヴォトスの平和と安全を守ります」

 

 「でしたら、今回の体験はカヤさんにとって有意義なものになるでしょう。早速業務の方へ取り掛かりましょう」

 

 

 

 

 

 

 カヤさんを連れ早速訪れたのはトリニティ自治区のはずれにある場所。

 現在、ここでは正義実現委員会による不良生徒制圧作戦が展開されていた。

 

「委員長、現着しました」

 

「「「お疲れ様です」」」

 

「戦況は今どうなっているの?」

 

「はい、現在敵勢力の7割が鎮圧されましたが未だリーダー各が抵抗を続けています」

 

「人質の有無は?」

 

「確認できません。恐らくですが人質はいないと考えられます」

 

「それなら、前衛部隊はそのまま敵を引き付け、戦力の一部を背後から奇襲させる」

 

「わかりました!」

 

 あたしが委員会の子たちに指示を飛ばしているとカヤさんは不思議そうな様子で見ていた。まるであたしが指示を飛ばしているのが珍しいかのように。彼女の表情はキョトンとしていた。

 

「あの、貴女は戦闘に参加しないのですか?」

 

「そうですね‥‥今回、あたしは指揮に徹するつもりです」

 

その言葉にカヤさんは首を傾げた。

 

「意外ですね。てっきり前線に出てあっという間に鎮圧させると思いましたのに」

 

 実際、サバキの実力は連邦生徒会でも噂になっていた。不良生徒をたちどころにぺしゃんこにした、ブラックマーケットで購入した戦車が木っ端微塵にされた等、常人では想像がつかない物ばかりである。そのため直接戦闘に関わらないサバキの姿にカヤは不思議に感じた。

 

「あまりあたしが前線に出るようなことはしないようにしています。あの子たちの成長を阻害してしまいますから」

 

 たしかにカヤさんの言う通り、あたしが前線に出てしまえば不良集団などあっという間に鎮圧されるだろう。けれど、それは組織の持つ抑止力が育たなくなる恐れがあるからだ。3年であるあたしはいずれトリニティから卒業する。そうなったら、あたしが正義実現委員会からいなくなったと知った輩が再び暴れ出す可能性がある。それに戦力を一強に依存した場合、抜けた後の瓦解が起こりやすい。

 

 あたしが居なくなった後、正義実現委員会が他所のチンピラに舐められるようなことはあってはいけないのだ。

 

 

「ですが、他を圧倒できる委員長さんなら力づくで押さえつけることができるはずです。持てる力を全て使わないなんて、力を持つ者の傲慢ではないでしょうか?」

 

 ‥‥なるほど。丁寧な口調の裏から見え隠れするカヤさんの本性。すなわち、『特別な存在への執着』

 

 彼女の心境や境遇、努力について今日会ったばかりのあたしが知る由もない。何故力に固執する理由もあたしには考え付かない。けれど、このまま助長させてはいけないと思った。確かに他と一線を画す存在に惹かれるのは理解できる。あたしも前委員長、前々委員長に惹かれ正義実現委員会の道に入った身だ。しかし、人間一人で全て解決できるほど世間は甘くない。

 

 彼女の飽くなき向上心には目を見張るものがある。連邦生徒会主催とはいえ、一年生ながらわざわざトリニティを訪れたのだ。経験を糧に成長したいという意思が見てとれる。だからこそ、その向上心に一度メスを入れなければならない。

 

 組織は支え合ってこそ組織として成りえるのだと、今の内から知っておく必要がある。歪んだままでは遅いから。

 

 返答を待つカヤさんにあたしは、微笑んで返す。

 

「傲慢‥‥ではありませんよ。力を持つ者に必要なのは上から見下ろすことではなく、同じ場所に立って周りを見ることですから」

 

「『超人』が凡人と同じ場に並び立てるとでも?」

 

「ええ。『超人』も『凡人』も等しく人ということですから」

 

 なまじあたしの言葉が信じられない様子のカヤさん。まぁ、妥当だろう。今すぐ信じてもらえるとは思っていない。それでも彼女の理想像である『超人』がどういったものが認知させる。それがあたしのタスクだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「それでは午後の業務に移りましょう。バン」

 

「かしこまりました」

 

 バンに指示し大量の書類の山を持ってこさせた。

 

「な、なんですか‥‥この書類の山は‥‥」

 

「こちらは、鎮圧作戦によってこちらがもたらした被害や事件の調査報告、今後の方針について書き記した書類、生徒会や各部活動・生徒より寄せられた要望の数々になります。午後の業務はこれらの書類を整理していただきます」

 

「また、カヤさんの体験に伴い機密情報の載った書類などではありませんのでご安心ください」

 

「こ、こんな数できるわけが‥‥」

 

「あたしも手伝います。一緒に頑張りましょう」

 

 

 

 それからあたしとカヤさんによる書類整理が始まった。

 

 

 

 

 開始から1時間。連邦生徒会での業務で慣れているためか、カヤさんの書類捌きは鮮やかだった。

 

 机の上に積まれた書類の山を瞬時、かつ的確に仕分けしており彼女の手際の良さが窺える。性格はともかく能力自体は本物のようだ。

 

「流石は、次期防衛室長候補。見事なお手前で」

 

「そうでしょう、そうでしょう!いずれこのキヴォトスの安全を担う者としてこれくらい造作もないことです!」

 

 ふんっと鼻息を荒くカヤさん。野心家ではあるものの、意欲がありそれに見合う実力もある。自己肯定感も強く、未来を担う人間の形としてはこれも一つの形なのかもしれない。けれど、それではいずれ身の丈を超え破滅する。

 

 だからこそ、あたしはカヤさんの根底にある気持ちを探らなくてはいけない。

 

 気の毒だが、心を鬼にする。

 

「ですが…これからが本番ですよ。バン」

「かしこまりました」

 

 あたしの呼ぶ声に応え、バンがさらに多くの書類を持ってくる。

 

「こちらが追加の書類になります。早急な対応をよろしくお願いします」

 

「‥‥。委員長さん、まさかこれも業務の一つですか…?」

 

 恐る恐る顔を向けるカヤさん。まぁ、無理もないですよ

 でもこれも長たる者宿命ということで、諦めてください。

 

 顔を真っ青にしたカヤさんと共にあたしは積み上げられた書類の山と向き合い始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れさまでした。本日の業務はこれで終了になります」

 

「や、やっと終わりましたぁ‥‥」

 

 

 

 あれからさらに時間が経ち、山のようにあった書類は全て無くなった。

 あたしが背伸びする一方で、やりきった達成感か、はたまた限界故の疲労か、カヤさんは机上に突っ伏していた。

 

 気づけば夜になっており、学園内にいる生徒もあたしとカヤさんのみだった。

 

「カヤさん、ありがとうございます。カヤさんのおかげでスムーズに終わらせることができました」

 

「‥‥一つ聞きたいのですが、委員長さんはいつも一人で業務をこなしているんですか?」

 

「まぁ、そうですね。現場は副委員長や一・二年生でも十分任せておけますから。あ、折角ですしコーヒー飲みません?」

 

「いただきましょう」

 

 部室にある器具を使い、コーヒーを淹れる。

 

「まっずい‥‥何ですかこれ、雑味が酷いです…。それに豆が良くありませんね…」

 

「ありゃ、ごめんなさいね。何がいけなかったんだろう‥‥」

 

「道具、借りますね。豆は自分のがありますので」

 

 そういうとカヤさんは懐からコーヒー豆の入った袋を取り出し、豆を投下。そして慣れた手つきで豆を挽き始めた。淡々と作業を進め、あっという間にコーヒーを完成させた。

 

「どうぞ、先ほどのコーヒーよりかは良い出来になったかと」

 

「いただきます」

 

 彼女の勧めるままにコーヒーを一口。すると、甘い香りと一緒にすっきりとした酸味が口の中に広がった。

 

「おいしい‥‥!」

 

「そうでしょう。少しばかり珍しい豆を使っていましてね、正しい淹れ方をすればかなりコクが出るんですよ」

 

 カヤさんの淹れたコーヒーに舌鼓を打ちつつ、あたしは何故特別な存在に憧れるのかたずねることにした。

 

 すると先ほどまでの自信に満ちた表情から神妙な顔つきに代わる。

 

「‥‥私、憧れている人がいるんです。他の追随を許さず、まるで雲の上にいるような人。それなのに誰にでも優しく微笑んで、私なんかにも気にかけてくれる、そんな立派な人です。そんな彼女の隣に立って支えている右腕的存在の人。連邦生徒会に入ったのも、2人の隣に立ちたくて入ったんです。2人の傍で共にキヴォトスの日々を過ごす。それが私の目標です」

 

 納得した。彼女の根底にある憧れの人物。彼女たちに追いつきたくて特別な存在に執着するようになったのだと。

 

「良い目標じゃないですか」

 

「ですが、私はまだまだ凡人です。超人たるあの2人に比べれば未熟も良いとこです」

 

「いくら超人でもできることの限界はあるとあたし、思うんですよ」

 

「えっ?」

 

「優れていても、この世に完璧超人ってのはいないと思っています。誰しも得意不得意はあります。超人てのはその得意の範囲が普通より広いだけだと思います。その不得意な範囲をカヤさんが支えればいいのではないですか?」

 

「わ、私が…!?」

 

「ええ、一人より二人、二人より三人。三人寄れば文殊の知恵とも言います。それも一つの手だと思いますよ?」

 

「私が‥‥あの人たちの支えに‥‥」

 

「きっとできますよ。今日の体験であたしは実感してますから」

 

「‥‥ふふ。ええ、やってやります、やってやりますとも!!超人に不可能はないのです!!」

 

 しおらしい表情はどこへやら、すっかりカヤさんは立ち直ったようだ。

 少なくともこれからの彼女の努力次第ではあるが、道を踏み外すようなことはないと信じよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日はありがとうございました。この体験を糧に私、不知火カヤは飛躍することでしょう!」

 

「こちらこそ、ありがとうございます。もしよろしければ、また来てください。歓迎します」

 

「委員長さん、何かあればご連絡を。できる範囲であれば、私も手伝いますから」

 

「ええ、その際は是非」

 

 その後、モモトークの番号を交換しカヤさんは帰っていった。

 中々癖のある人物であったが、彼女の今後にどことなく期待している自分がいた。

 

 さて、あたしも帰って休むとしよう。





尚、真の超人になるか、原作のような超人(笑)になるかは本人の努力次第。
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