正義実現委員会の閻魔様   作:光からの使者

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22話 恠鳥様
29話 伝説の超三毛猫様

誤字報告、ありがとうございます。


savefile5:サバキのつばさでうつ こうげき!

 

 差押品保管所手前でサバキと相対するは、ミレニアムのエージェント組織『C&C』のリーダー、コールサイン00(ダブルオー)美甘ネル、その人。

 

 ニカっと唇の両脇を上げた表情は、まさに獲物を発見した狩人のようだ。

 地面を蹴り、サバキの眼前へと飛び掛かって2丁のサブマシンガンの銃口を向けた。

 

 「オラオラオラァッーーー!!」

 

 相手の動きに気づいた時には既に、身体に銃弾が次々と叩き込まれる。

 痛い。めっちゃ痛い。それに2年前よりも腕がかなり上がっている。あの時既に、ウチの参謀兼副委員長だったバンを膝につかせたほどの実力を持っていた。それが現場で叩きあげられればここまでなるのも納得がいこう。

 このままだと火力の前にジリ貧だ。

 

 「くっ……」

 

 「どうした?まさかこの程度で終わりって言うんじゃねえだろうなあ!!」

 

 矢継ぎ早に繰り出される弾丸。さっきの戦闘で煤焦げた着物の所々にかすり、破けていく。

 こっちだって、おめおめ、やられるわけにはいかねぇんだ。

 

 「当…然っ!!」

 

 『天極』と『地獄』を抜き反撃。しかし、弾丸は彼女に当たることなく、逆に詰められる。

 

 「へっ!そうこなきゃ、戦いがいがねえ。

  おらあっ!!」

 

 至近距離から繰り出される鋭い前蹴り。瞬時に右腕で受け止めるが威力を殺せず吹っ飛ばされた。

 勢いのままに壁に衝突、叩きつけられた壁は見事に破壊されてしまった。

 

 「痛ぅ‥‥」

 

 しかしまぁ、相変わらず滅茶苦茶だよ、あの子。

 蹴り一発でこの威力だなんてな。受け身取ってなかったら気絶もんだったぜ…

 

 若干足がおぼつきながらも、瓦礫と埃を払って立ち上がる。依然として向こうのやる気は満々だ。

 

 「あれだけ受けて立ってられるたぁな。調べた通り大したもんだ

  褒めてやるよ」

 

 「調べた?」

 

 確かにあたしはキヴォトスの要注意人物として名を轟かせているものの、何を調べたってんだ?

 皆目見当つかないぞ。まさかとは思うけど、正体がバレた?

 ミレニアムの化学力は世界一!だからひょっとしたことで正体を調べ上げたとでもいうのか。

 

 「とぼけんじゃねぇ。D.Uでお尋ね者のカイテンジャーをヴァルキューレの生徒

 と一緒に鎮圧したのはあんただろ『黒狐』」

 

 あ、そっちか。良かったあ正体の方じゃなくて。

 いや待てよ、時間はあったとはいえあたしが関わっていたこともうわかってたのか?

 恐るべし、ミレニアムの情報網。

 

 「ええ、そうよ」

 

 「はっ、やっぱりか。いいな、俄然やる気出てきた」

 

 再びニカっと笑うダブルオー。鎖が付いた2丁のサブマシンガンを構える。

 

 冷や汗が頬を伝う。次の瞬間、彼女は必ず仕掛けてくる。

 あのアスナって子程ではないが、そう予感がする。

 反応が遅れれば今度こそあたしは倒されてしまうだろう。

 

 薄らと月の光が射しこむ廊下。冷たい夜風が吹いていた。

 ユズちゃんと対戦した『須臾の見切り』のように時間が時間がゆっくりと遅くなっているように感じる。

 生唾を飲み、仕掛けてくるのを待つ。

 

 目を閉じ、神経を研ぎ澄ませる。

 冷静に、あの時と同じように。心を落ち着かせて迎え撃つ。

 

 

 ‥‥来るッ!

 

 

 そう確信した刹那、相手は走り出す。小柄な体格は、並の身体よりも軽くスピードも加速度的に上昇する。

 そしてぎらついた笑みは確実に獲物を仕留める証である。

 

 「あたしの間合いに入って勝てる奴なんて、このキヴォトスの何処にもいないってな!!」

 

 んなもん知ってるさ、2年前からな!

 だからその間合いの攻略しがいがあるってもんだろう。

 あの時はスナイパーライフルの『黒笏』だったからこその方法だったが、今回はそれを応用し『天極』『地獄』で迎撃する。

 

 サバキの眼前に勢いよく飛び出したネル。

 2丁のサブマシンガンは既にこちらをターゲットにロックオンしている。

 けどそれはこっちだって同じこと。『天極』と『地獄』の標準をネルに合わせる。

 

 「根比べと行こうじゃないか!」

 

 「へぇ、面白れぇ。いいぜ、乗ってやるよ!!」

 

 2人はほぼ同じタイミングで銃の引き金を引いた。

 併せて4丁のサブマシンガンが相手目掛けて火を噴く。

 

 ネルの弾丸を避けずに真っ向から喰らっているため、かなり負担がかかっている

 しかし同じくネルにも『天極』と『地獄』の弾丸が当たり、ダメージを与えている。どちらかが倒れるまでの耐久レースとも言える。

 

 けれど相手はC&Cのエース。そう簡単に倒せる相手ではない。

 だからこそ、あの時と似た奇策を取る。

 弾を撃ち尽くし残弾が0となった『天極』と『地獄』のグリップをトンファーのように持つ。

 

 「どうした?打つ手なしか!」

 

 いいや。大ありだよ。覚えてるか知らないけど、あたしはこうするのが得意だって。

 

 「おりゃあああ――っ!!」

 

 銃弾の中を身一つで突っ走り肉薄、そして懐にまで迫ったところで、銃口の先端をネルの胴体目掛けて振り回した。

 この行動には流石のネルでさえ隙を見せる‥‥そう思っていた。

 サバキの予想通り、初めは面食らっていた彼女であったが、すぐさま不敵に笑む。

 

 「‥‥へっ、残念だったな!!」

 

 「何?」

 

 その言葉と同時にネルは右手に持っていた銃をあたしの方に投げつけた。

 すかさず避けるが、バキの首にぐるりと冷たい感触が伝わる。同時にギュッと締め付けられ、前へと引き寄せられた。

 そう首に巻かれていたのはネルの銃に結び付いていた鎖だ。あらかじめサバキが銃で殴ってくることを予期した彼女は、銃を投げ鎖を巻き付けたのである。

 サバキを引き寄せ、己の額を狐面に打ち付ける。

 

 バキッという音と共に衝撃がサバキの額に伝わった。

 辛うじて踏みとどまったサバキだが、肉体が限界を迎え始めていた。

 何しろ、カイテンジャーとの闘い、アカネ、アスナとの戦闘、そしてネルと4連戦しているためとうとう疲労が祟り始めているのだ。

 

 まさか、対策されてるなんて夢にも思わなかった。

 ‥‥正直立っているのもつらいとこ。

 けど、ここで引くわけにはいかない。ゲーム開発部のためにもここで彼女を足止めする。

 

 「…だいぶタフだな、あんた。だけどそろそろ限界みてえだ。

  次で終わらせる!!」

 

 再びネルが鎖を引き、前へと引っ張られる。

 もう片方のサブマシンガンで狙いをつける。一方サバキは、引き寄せられる中で着物で抑えていた右翼を露出する。

 

 今までは正体が露呈されることを恐れ隠してきた。

 けれどもう四の五の言ってられない。勝つためにはこれしかない。

 

 「…翼だと?」

そう、これが

 

 翼でうつ!!

 

 引っ張られる勢いを利用し、大きく広げた翼の先端をラリアットの如くネルの首にぶつける。

 加速度的に繰り出した翼はカァンッという硬い音を廊下に響き渡らせた。

 

 

 咄嗟に放った起死回生の一発。

 ネルの身体は、仰向けのまま倒れた。

 

 「はぁ…はぁ‥‥あたしにとって、ぎりぎりの賭けだった…」

 

 まさに強敵だった。いくらあたしでも接近戦では彼女を制することは難しい、いやできなかっただろう。

 一切明かさなかった翼を出して尚、不意を打つことでしか有効打を見出せなかった。

 

 完全にあたしの実力不足。2年という時間の開きがあったとはいえ、彼女たちの成長を甘く見ていた。そのツケが回ったと言ってもいい。

 視界が霞む。これ以上は体力が持ちそうにない…

 

 頭を押さえ、ふらふらと壁によりかかるサバキ。

 ほっと一息を付いていると、倒れていたネルが起き上がった。

 

 「ったく、…してやられたぜ。まさかあんな隠し玉があるなんてよぉ」

  

 首をポキポキならしながら、立ち上がるネル。

 まだ余力を残していると見える。一方、サバキは連戦に次ぐ連戦で疲労困憊。戦えるだけの余力はもはや残っていなかった。

 

 (‥‥くっ、これ以上は)

 

 絶体絶命。そんな中、誰かがこちらに近づいている。

 増援かと警戒していると、そこに現れたのはユズちゃんだった。

 息を切らし、緊張で身体が震えながらも話しかける。

 

 「ね、ネル先輩!大変です!」

 

 「あん?あんたは?」

 

 「せ、生徒会『セミナー』所属のユズキです

  戦闘ロボットが暴走して、あちこちがめちゃくちゃなんです!

  カリン先輩、アスナ先輩、アカネ先輩は動けなくてユウカ先輩が

  対処していますが、1人ではとても…」

 

 「なんだよ、暴走か?まだ整備が終わってなかったのか。

  にしてもものの見事にやられてんな」

 

 「状況的に、助けが必要かと…思いまして…

  それでここにいらっしゃると聞いたので‥‥

  私はあまり戦闘が強くないので…」

 

 どうやら彼女はユズちゃんがゲーム開発部であることを知らないらしい。

 すっかりセミナーの1人だと信じ切っている。

 彼女の引きこもり性が功を奏したと言えるだろう。

 

 「はぁ…仕方ねえな。んじゃ、そこの奴のことを見ててくれ」

 

 「は、はい…!」

 

 「それとあんた、覚えときな。戦闘で一番大事なのは、武器でも経験でもねえ。

  度胸だ。その点、あんたは強え。他の奴からどう思われてるか、

  あたし自身よくわかってるつもりだ。結構ビビりなのも見ればわかる。

  それなのに、初対面であたしに声をかけるなんてのは、それなりに勇気がいることだ。

  そこのアイツみたいに度胸は常に切り札になる。覚えときな」

 

 「は、はい!ありがとうございます!?」

 

 「じゃあな。またどっかで会おうな」

 

 そう言ってネルは差押品保管所から立ち去って行った。

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 「ふっ、ふえぇぇ‥‥」

 

 緊張から解放され、ユズちゃんは一気に地面にへたりこんだ。

 

 「落ち着かせてるとこごめんなさいね、ユズちゃん。

  ちょっと手を貸してくれないかしら?」

 

 「あ、はい!って羽!?」

 

 そういえば羽は折りたたんで隠してたから、驚かれるのも無理はないわな…

 

 「あはは…他のみんなや先生には秘密にしてね」

 

 「わ、わかりました…」

 

 ユズちゃんに手伝ってもらい右翼をしまい込んだタイミングで、机の下からモモイちゃんにミドリちゃん、先生が出て来る。

 

 「ユズぅぅぅぅぅ!!お姉ちゃん!!」

 

 「ユズちゃん、狐のお姉さん、ありがとう!おかげで命拾いしたよ!」

 

 「”黒狐、大丈夫かい?”」

 

 「ええ。さっきよりかは幾分かマシになりました。

  それより、アリスちゃんが持ってる機械って」

 

 「はい!これが人類と世界を救う、私たちの新しい武器。

  『鏡』です!」

 

 無事『鏡』を手にいれたゲーム開発部一行。

 警備ロボットたちを蹴散らしながら、差押品保管所から帰還するのであった。

 あたしはというと、極度の疲労から先生に背負われたまま眠ってしまった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

意識を取り戻した時には、シャーレの一室で寝かされていたのを覚えている。

 隣ではいつの間にか居ついていたワカモが、あたしの世話をしていた。

 

 「ワカモ…?」

 

 「はぁ…まったく。あなたとあろうものが”あの方”に心配をかけてどうするのですか?

  眠っている間、ずっと先生は心配なさっていたんですよ」

 

 そうだったんだ…それは申し訳ないことをした。

 

 「先生に頼まれましたので、本日は私が面倒を見させていただきます。

  よろしいですね?」

 

 あ、はい。そう睨まれては動けないです。

 大人しくしてますから‥‥

 

 ワカモに言われる通り、その日サバキは身体の療養に努めるのであった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

~後日のミレニアム校舎内にて~

 

 「…なるほどな。ゲーム開発部か、初めて聞く部活だ。

  ってことはつまり、あたしたちはまんまとしてやられたわけだ」

 

 「「「‥‥。」」」

 

 「申し訳ありません。依頼を受諾して準備したのは私です。

  メイド部の名傷つけてしまいました‥‥」

 

 戦いから夜が明け、C&Cメンバーは一堂に会し話し合っていた。

 失態に謝罪するアカネであったがネルは気にするそぶりはなかった。

 

 「んなことはどうでもいい。

  それにここに戻ってきた時リオから連絡が来た」

 

 「セミナーの…ミレニアムの生徒会長から?」

 

 「今回の依頼は撤回。白紙に戻すそうだ」

 

 生徒会長直々の撤回宣言に3人は驚く。

 ネル曰はく、リオとヒマリがアリスの力を確かめるためだったと推測している。

 

 「依頼とは関係なくなったが、アカネ」

 

 「はい」

 

 「ゲーム開発部について調べておいてくれ。関係者も全部だ」

 

 「リベンジなさるおつもりで?」

 

 「その表現はちと癪だが、興味が出てな。頼んだぞ」

 

 「お任せを」

 

 (『黒狐』が見せたあの黒い翼。あたしの勘が正しけりゃ…あいつはトリニティの…

   しっかし、何故トリニティ生が正体隠して先生と一緒にいんだ?意図が全く読めねぇ)

 

 ゲーム開発部への興味と同時にネルの頭の中には黒狐の疑問が渦巻くのであった。

 




余談
ワカモは”先生”の希望もあり、シャーレでの保護観察処分となっている。
サバキが動けない事態場合、ワカモが代理を務めているぞ。
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