投稿の頻度を上げていきたいですね。
補習授業部の学力強化合宿2日目。
今日から第二次特別学力試験へ向けて、勉学に精を出す日々が始まる。
朝食を済ませ、あたしはヒフミちゃんたちより一足早く教室に入った。
先生と2人、授業で使うプリントや資料をセッティングし、みんなが勉強できる環境を整える。大方準備が終わった頃、ヒフミちゃんたちが食堂から教室に集まってきた。
「みんな、おはよう」
「おはようございます~~」
「おはよう‥‥」
「おはよう。先生、副先生!」
「お、おはようございます‥‥」
うん、みんな元気そうでなにより。ヒフミちゃんも昨晩より調子良さそう。少し寝ぐせが見えるも、気にはならない。コハルちゃんが少しはにかんでいたのが、気になるが‥‥気にしないでおこう。
授業を始める前に、ヒフミちゃんは教壇に立ちみんなに告げた。
「みなさんにまず、注目してもらいたいものがあります!」
そういって掲げたのは、空白の答案用紙であった。
「今から模擬試験を行います!」
ヒフミちゃんの宣告に騒めきが起こる。
ヒフミちゃんが突然、このようなことを言い出したのはしっかりとした理由があった。ヒフミちゃんを始め補習授業部の生徒は退学を免れるために学力試験に合格しなくてはならない。しかし、第1次試験の結果を振り返ると十分な力が備わっているとは言えない。特に最近転入したアズサちゃんやコハルちゃんは今よりも学力を上げる必要がある。
そこで考えたのが模擬試験だ。アズサちゃん、コハルちゃんは現状の実力を把握し、効率のいい勉強を模索すること。そして模擬試験に用意した答案用紙は、昨年の試験問題である。模範解答も人数分用意している。
「昨日遅くまで先生方が手伝ってくださったおかげで、第二次特別学力試験を想定した模擬試験にできました。制限時間は60分。100点中60点以上が合格になります。これは本番と同じです。まずはこれを解きましょう!!」
こうしてヒフミちゃん主導のもと、第一次模擬試験が行われることになった。
◇◇◇
答案用紙を配り終え、各々目の前のテストに集中する。
「”準備できた?”」
「これより、第一模擬試験を行います!」
「”…試験…開始!!”」
◇◇◇
60分後‥‥
「”そこまで!”」
テストを終え、あたしは答案用紙を順番に集めていく。
すべての用紙を集め、さっそく採点に取り掛かった。
ヒフミちゃんの懸念通り、このままでは全員合格は夢のまた夢。そこでヒフミちゃんはとある提案を出した。まず、1年生用試験であるコハルちゃんとアズサちゃんの勉強をヒフミちゃん、ハナコちゃんで教える。というのも曰く、ハナコちゃん1年生の頃の成績はとても良かったようで、1年生時の答案を見つけたという。成績が落ち込んだ原因を把握した上で、あたしとヒフミちゃん、先生で解決策を探して行こうとのことだ。
「頑張りましょう!きっと頑張ればどうにか、みんなで合格できるはずです‥‥!」
その場をまとめあげ士気を鼓舞する姿に、重圧で押しつぶされそうになっていた面影はない。補習授業部のリーダーとしてその責任を全うする心意気があった。
「‥‥うん、了解。指示に従う」
「わ、わかった…」
「ヒフミちゃん‥‥すごいですね。昨晩だけでこんな準備を‥‥」
「あ、いえいえ。先生方が手伝ってくださったので‥‥」
「なるほど。先生方が…」
「”大したことはしてないよ。ヒフミの頑張りの成果だよ”」
そうそう。ヒフミちゃんが精一杯、頑張ってくれたおかげさ。
ヒフミちゃんの準備はこれだけではなかった。何と、頑張った人へのご褒美を用意したという。なんとなく察しはつくが‥‥
「良い成績を出せた方には、この『モモフレンズ』のグッズをプレゼントしちゃいます!」
やっぱりか。
「モモフレンズ‥‥?」
「何よ、それ?」
「‥‥っ!」
案の定というべきかあまりいい受けは得られなかった。
ハナコちゃんやコハルちゃんの反応からするに存在すら知らなかったと思われる。それもそのはず、『モモフレンズ』はかなりマニアックな部類に入るファンシーキャラブランドだからだ。かく言うあたしも、最近その存在を知ったものだ。一部の層から絶大な支持を受けているという話だ。
ちなみにあたしはペロロ?とかいう鳥は苦手だ。あれを見るとどうしても寒気が‥‥
コハルちゃん、あんな見た目だけど鳥だからね?言うほど名前も卑猥じゃない…と思う!
コハルちゃんとハナコちゃんへのアプローチは失敗したものの、人は千差万別。苦手な人もいれば好きな人もいる。受け入れる人はちゃんといるのだ。そう、彼女のように。
「あ、アズサちゃん‥‥?」
「か、可愛い…!!」
「!!?」
「!?」
「あら‥‥?」
普段とはすっかり変わって満面の笑みを浮かべ、ヒフミちゃんが用意したモモフレンズグッズに興味を示している。興奮気味に羽をパタパタとさせながら一つ一つ食い入るように眺めていた。
「この目、表情が読めない‥‥何を考えているのか全くわからない!」
「さすがはアズサちゃん、ペロロ様の可愛さに気づいてくれたんですね!そうです、そういうところが可愛いんです!!」
アズサちゃんがモモフレンズに興味を持ったのをヒフミちゃんは見逃さなかった。ここぞとばかりにモモフレンズのキャラクターたちに関する説明を始める。
「こっちにある、長くて首に巻いたら温かそうなのは…?イモリ…キリンか?」
「それはウェーブキャットさんですね。いつもウェーブして踊っている猫なのですが‥‥」
「この小さいのは?」
「それはMr.ニコライさんと言いまして――――」
「えぇ…なにこれ‥‥」
「おや、まぁ」
あたしたちが半ば置いてけぼりになっている中、ヒフミちゃんとアズサちゃんのモモフレンズ話はより花を咲かせていく。ヒフミちゃんの紹介にアズサちゃんの何かが刺激されたのか、勉強へのモチベーションが高まっているようだった。
「よし!必ず任務を果たしてあの不思議でふわふわした動物を手にして見せる!!約束しようヒフミ」
「はい、ファイトです!」
兎にも角にも、ヒフミちゃんのアイデアはモチベーションを上げる効果には繋がったので十分だろう。それにヒフミちゃんも何だか嬉しそうだ。
「あら、何だかヒフミちゃんが楽しそうに、と言いますかお人形さんと同じような表情に……♡」
「”モモフレ仲間ができて喜んでいるのかな……?”」
多分そうだと思いますよ。マニアックな立ち位置にあるモモフレンズだ。トリニティと言えど、同じ趣味の人を探すのは難しかったはず。だから、アズサちゃんが好意的な関心を持ってくれたのが、とっても嬉しかったんじゃないかな。
にしても、微笑ましいなぁ。
◇◇◇
第一次模試を終え、補習授業部のみんなは勉強を続けている。
かくいうあたしも、別室でみんなが難しかったと答えた箇所や間違いやすいポイントなどをまとめているところだ。けど、第一次試験に比べてひしひしと成長しているってのがよく伝わってくるよ。ゆっくりとはいえ、アズサちゃん地頭は良いみたい。飲み込みも早いしこのペースなら間に合うかもしれない。コハルちゃんも、頑張り屋で必死に食らいついていこうっていう意思がある。とても教えがいのある後輩ね。
ただ…問題はハナコちゃん。第一次でうすうす気になっていたが、模試で確信した。
この子‥‥わざと不合格点を出している。アズサちゃんとコハルちゃんの勉強を手伝う上で、本当にわからないって子の表情や所作ってのがなんとなくわかるようになってきた。だから、ハナコちゃんの試験での表情や自習での様子から素で学力が低い可能性は消えた。
それに答案用紙の記載されている回答がどれも的を得ているのにも関わらず、全く違った回答になっている。古文の問題だって、微妙にずれた訳を回答をしているのだ。ただ単にやる気の問題というわけでもなさそうだから、余計に頭を抱えたくなる。
知らないとはいえ、試験が3回不合格だったその時は‥‥退学だ。
ハナコちゃんの心境を聞かなきゃ合格は難しいかもしれない。
「うわあぁぁっ!?な、なんでっ!?
なんて考えていると補習授業部の教室からコハルちゃんの悲鳴が聞こえた。
「どうしたのっ!?」
急いで教室に戻るとコハルちゃんが顔を真っ赤にしていた。
「コハルちゃん、それってエッチな本ですよね? まあある意味参考書かもしれませんが。隠しても無駄です、『R-18』ってバッチリ書いてありましたよ?」
えっちな本?R18?なんの話?
「あ、副先生!」
「ち、違う! 見間違い! とにかく違うから! 絶対に違う!!」
ちょいちょい、一旦落ち着こう。状況が呑み込めない。
「私の目は誤魔化せませんよ、確実にアレなことをする本でした。それも結構ハード‥‥いえ、キヴォトスでもめったに見ることができないレベルの内容かとお見受けしました!」
なるほど。流れから察するにコハルちゃんが教室に、禁制品を持ち込んでいたと‥‥
「こ、これは違うんだってばぁぁ――――!!」
◇◇◇
コハルちゃん曰はく、このエッチな本もとい禁書は正義実現委員会で押収した品だそうな。なんでも正義実現委員会で押収品管理を任されていたそうだが、補習授業部の設立にあたり、タイミングを逃してしまったようで入れっぱなしになっていたという。いや、学校にそんな本持ってくる人もいるものね。2年前じゃ、いなかったのに。もしかして気づいていなかっただけど、いた可能性も無きにしも非ず…?
というわけで先生が同伴して押収品を返すことに。
一方あたしは引き続き勉強を見ることにした。正体を隠しているとはいえ、何かの拍子にバレたら大変だからな。それに、どの面下げてハスミちゃんたちに会おうというのか。あたしにそんな勇気はなかった。
「一緒に行かなくて良かったのですか?」
「いいのよ。先生がいる以上、あたしまで行く必要はないもの。あたしが行ったら、誤解されそうだからやめておくわ」
シャーレに所属してるけど、素性不明の狐面とか自分でも怪しすぎる。下手にトラブルを起こすわけにもいかない。
◇◇◇
一方、学園へと向かった先生とコハルはというと‥‥
無事、正義実現委員会に見られることもなく、押収庫へたどり着いた。
早速バッグから押収品を取り出し、指定の場所へと納める。
「これで一安心―――」
ほっとしていると扉が開かれ、副委員長のハスミが入室した。
「コハル…?」
「は、ハスミ先輩!?」
「確か合宿で別館にいると聞いていましたが、どうかしましたか?成績が良くなるまで出入りを禁じている筈ですが…」
「あの…えぇと…」
しどろもどろになっているコハルの代わりに答える。
「”実は授業で使う書籍の件でね”」
押収品のことは上手く誤魔化しつつ説明し、ハスミを納得させた。
「偶然とはいえ、会えたのはある意味良かったかもしれません。コハルにあらためて伝えておきたいこともありましたし」
「え?私にですか?」
「ええ。先生、申し訳ございませんが少し席を外してもらえますでしょうか?正義実現委員会としてお話ししたいと言いますか‥‥
それなら部外者である自分がいる訳にはいかない。邪魔にならないために離れることにする。
「”うん、わかった”」
「‥‥すみません、ありがとうございます」
◇◇◇
隣の部屋で待っていると、扉越しに微かながらだが2人の会話が聞こえてきた。何かへ怒鳴るハスミの声。それに対し、か細く応えるコハルの声。一体どんな内容の話をしているのだろうか。途切れ途切れでしか声が届かない為、全貌を把握することは敵わなかった。
少しした後、私は部屋に戻る。
「すみません、先生。おまたせしました」
「”それじゃ、帰ろう”」
ハスミとコハルの会話が気になるものの、一旦帰路に着こうとしていたその時。
少し開いていた窓から強い風が吹いた。
「あっ!」
風の勢いに巻かれハスミの制服の胸ポケットから、何かが飛ばされ床に落ちた。
幸いにも写真は自分の近くに落ちたため、写真を広いハスミに渡す。
「”はい、どうぞ”」
「ありがとうございます、先生」
写真を受け取るとハスミは安堵の表情を浮かべていた。
「ハスミ先輩、その写真は何ですか?」
写真に興味を持ったコハルは問いかけるとハスミは写真を見せてくれた。写真には正義実現委員会の制服を着た赤い髪の少女が、1年生らしき少女2人の肩を抱き寄せ、笑顔でピースサインをしている。
「この写真は、私が1年生だった頃の写真です。ちなみに隣にいるのはツルギですよ」
「えっ!そうなんですか!?」
ハスミの言葉に自分も驚かずにはいられなかった。写真に写ったハスミとツルギの姿が現在の姿とはかけ離れていたからだ。面影はあるが‥‥ここまで変わるものなのか。子供の成長期には不思議が多い。
「”写真中央の生徒は‥‥?”」
「その方は当時の正義実現委員会の委員長。浄玻サバキ先輩です。コハル、貴女の4つ上になりますね」
「へぇー、すごく大人の女性って感じで、素敵‥‥!」
「”その委員長ってどんな人だったの?”」
「とても尊敬する先輩です。何度も助けてくれましたから‥‥」
◇◇◇
正義実現委員会に入部してから日が浅かった頃、不良生徒グループによる誘拐の現場に居合わせたことがありまして。
被害者を避難させるために、ツルギと対処していましたが取り囲まれてしまいました。お恥ずかしながら、当時の私たちは非力でした。
多勢に無勢。危機的状況に陥っていたのですが‥‥
『覚悟しやがれ、このやろ‥‥うわっ!?』
を跳ね飛ばし、サバキ先輩が駆けつけてくれたんです。
『ハスミちゃん、ツルギちゃん。よく踏ん張った。後はあたしたちに任せて』
そういってサムズアップする先輩の姿はとても安心できました。
『リーダー!閻魔です!正義実現委員会の!!』
『閻魔だぁ?舐めやがって!!』
そういって飛び掛かる誘拐犯を先輩は蹴り飛ばしました。
先輩が交戦を開始したと同時に、当時の副委員長と2年生の方々も来てくれました。
『て、てめぇらも正義実現委員会か!』
『バン先輩っ!?それに生輩方も!どうしてここに?』
『委員長から誘拐犯について捜索を任されてまして』
『ドローンで偵察してたらここにたどり着いたってわけよ』
優しい顔をしていた先輩方は、一変して鋭い目つきで不良生徒たちを睨みつけたのです
『うちの生徒に手ぇ出したんだ、覚悟しろ』
『ぶっとばす!!』
2年生の先輩方が構成員たちを蹴散らす中、サバキ先輩が戦う光景は圧巻でした。
向かってくる相手に銃を使わず、体術で圧倒。態勢を立て直す隙も一切与えません。
そもそも一介の不良生徒と正義実現委員会の精鋭では、相手にもならないのです。グループのリーダーになすすべはありませんでした。
『ぐあッ…!このぉぉ!』
決死の抵抗も、サバキ先輩には通用しません。一方的に捌かれ、地面に転がるばかり。
日頃から鍛えたフィジカルの前には無意味なのですから。
『よくも、うちの子たちに手ぇ、出そうとしたな!利子付けて返しやるッ!おらあッ!!』
『うごああぁぁ‥‥ッ!!』
体重を込めたサバキ先輩の拳が炸裂。壁に叩きつけられた誘拐犯は、あっけなくダウン。他の構成員も瞬く間に先輩方によって鎮圧されていきました。
◇◇◇
「‥‥と、こんな感じでしたね」
先輩のことを語り終えたハスミの表情はとても晴れ晴れとしていた。いつも冷静沈着な副委員長としての彼女ではなく、一人の生徒としての側面が垣間見えたような気がした。
「カッコいい‥‥」
話を聞いたコハルも目を輝かせながら、聞き惚れていた。何せ、自らが尊敬するハスミが敬愛していた先輩の話である。どんな人物か想像するだけでも興奮が止まらないだろう。
「”とても良い先輩だったんだね”」
「ええ。今日の正義実現委員会があるのは、サバキ先輩を始め先任の先輩方が支えてくださったのが大きいですから」
「あの、ハスミ先輩。そのサバキ先輩とは、今も会っているんですか?」
コハルからの問いかけに一瞬だが、ハスミの動きが止まる。
「い、いえ。先輩が卒業されてからというもの、お互い忙しく…」
「そうだんたんですね。会ってみたかったなぁ‥‥」
なんだろう。先輩のことを語っていた時とは違って、ハスミの様子が少しぎこちないように見えた。まるで何か含みがあるような…
「すみません、長話が過ぎましたね。コハル、お勉強頑張ってくださいね」
「はい!!」
こうしてコハルと一緒に押収管理室を後にする。
気になることが多いが、ひとまず合宿場に戻ることにした。
こうして合宿2日目が終わるのであった‥‥
余談
山海経イベントの感想。
カイ…思った以上にヤバかった。最近出たアケミや同じ7囚人のワカモ、アキラとはまた違ったヤバさがあった。地下生活者といい、頭のキレる相手は厄介揃いだと感じた。
それとキヴォトスって意外と住みやすい自治区ってもしかすると少ない?個人的住んでみたいランキング上位だった山海経があれだったからなぁ…もしかしたら次のメインって山海経だったりして