正義実現委員会の閻魔様   作:光からの使者

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業務3:対談を乗り越えよ

 ある日、トリニティのトップ『ティーパーティー』からあたしへ呼び出しがあった。

 

『サンクトゥス分派』『フィリウス分派』『パテル分派』の代表者3名と複数の行政官で後構成された、トリニティの歴史ある生徒会だ。

 

 トリニティにおいて、『ティーパーティー』から御呼びが掛かるのはめったにあり得ない。政治的に重要な任務がある時、もしくは退学もありえるほどの問題を起こした時くらいだろう。

 

 呼び出される理由に思い当たる節はないが、しいて言えばゲヘナ嫌いで有名なパテル分派からの密告だろうか。

昔から対立関係にあるゲヘナ学園を憎む者は多い。ゲヘナの自由過ぎる校則で無法者と化した生徒たちによる被害を受けた者もいる。そのためゲヘナ学園の生徒へ嫌悪感を示す生徒が多いのも事実だ。

 

一方で、とにかくゲヘナが憎く、徹底抗戦もじさない過激派もいる。それがパテル分派だ。

 

 このパテル分派は、ゲヘナ嫌いがこれでもかと煮詰まっており、暴徒と化した生徒がゲヘナ生と争い合うことも珍しくない。これほどの過激派集団でもあるパテルだが首長の舵取りあってか、なんとか被害を出さすにとどまっている。首長もゲヘナ嫌いではあるものの、トリニティの均衡が崩れることをよしとは思っておらず

 

『確かにゲヘナは野蛮で粗暴で、品がない。しかし、我々が強硬を続ければ、いずれゲヘナ以下になるだろう!』

 

 そう言って分派の暴走を抑制しているようだ。

 さて、では何故あたしがそんな連中に目を付けられているのか。理由は簡単、平等な治安活動を行うあたしが気に入らないからだ。

 

 ゲヘナに対してあたしは特に思うところはない。ゲヘナに限らず悪人もいれば善人もいる、ただゲヘナだからって嫌っていてはいずれ他学園に対しても同じことをするかもしれないという懸念があるから。

 

 そのため、あたしは正義実現委員会の活動をするにあたってトリニティ、ゲヘナ関係なく対等に接している。でも連中は、そんなあたしをトリニティの恥、ゲヘナに魂を売り渡しただの誹謗中傷を吐いた。デモ隊なんかも出てきてあたしの解任を求めたこともあったが、トリニティの治安への貢献もあってか3分派が手を貸してくれたため事なきを得た。

それでもパテルの過激派はあたしに対する弾圧を諦めるつもりはないらしい。事あるごとに根も葉もないことをティーパーティーに噂しては釘を刺されているようだ。

 

 

 正直、今回で3度目である。

 いいかげん、なんとかしてもらいたいところだが、首長もあんな癖の強い連中を束ねているのだ、苦労も絶えないだろう。

 

 そうこうしていると、ようやくティーパーティーの居る執務室に辿り着いた。

 失礼のないよう、ドアをノックする。

 

「失礼します。正義実現委員会、委員長の浄玻サバキです」

 

「どうぞ、お入りください」

 

 透き通るような声で入室を促されため、ドアを開ける。

 

 部屋にはいると、そこは真っ暗闇でお昼なのにも構わらず、視界が利きにくい場となっていた。

 

「‥‥すみませんー誰かいませんかーー?」

 

 暗い場所が苦手なため、恐る恐る声を出し訊ねてみると、突如部屋の照明が付き辺りを照らす。

 

「ようこそ、お越しくださました!申し訳ありません。このような格好で」

 

 明かりに照らされた部屋の中央で優雅に紅茶を嗜む一人の少女。雪のように真っ白な髪、それと同色で体格よりも大きい翼が生えている。

 

 しかし、目を引くのは彼女の容姿ではない。気品と風格を漂わせる佇まいでありながら、トリニティの体操服姿で出迎えているからだ。

 

 少し呆気に取られていると、こちらを察したのか再び透き通った声で話しかけられる。

 

「このような場ですのに、ジャージ姿ですみません。不覚にも紅茶を溢してしまいまして」

 

「は、はぁ‥‥」

 

 ジャージ姿で佇んでいながらも、こちらに伝わる緊張感。流石はトリニティのトップを担っている人物だ。

 

「貴女とお会いしたのは2度目でしたね。改めまして、ご挨拶を。私はティーパーティーホスト、フィリウス分派首長、赤崎 マエル。ようこそ、お茶会(ティーパーティー)へ」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 仕切り直り、トリニティの最高権力者と一対一の状況になった。

 

「それでは本題に入りましょう。今日、貴女を御呼びいたしましたのは、ヘルメット団についてです」

 

よかった…、パテルの連中の嫌がらせではなかった。

それにしてもヘルメット団か。ここ最近、トリニティのでも連中による被害が多発してるし、それ関連か。

 

「ここ連日、ヘルメット団による被害が後を絶ちません。正義実現委員会の皆さんのおかげで目立った被害はありませんが、杞憂な事態なことに変わりません」

 

「確かに、かなりのメンバーを捕縛しましたが相変わらず犯罪行為を重ねていますもんね」

 

「はい。そこで我々も情報部に依頼し、調べてもらいました。すると興味深いことがわかったのです」

 

「興味深いこと?」

 

「それはですね。トリニティ自治区に点在するヘルメット団は、別自治区にいる別の団の下部組織だということです」

 

 つまり、連日騒ぎを起こしている連中は唯の末端で、それを裏から操っている本隊がいると?

 

「その通り。それもかなり大規模のようです」

 

 ‥‥なるほど。筋が通った。あれだけ正義実現委員会(あたしら)にボコボコにされているのに、犯行を続けられているのは本隊の支援があってこそ。本隊を潰さない限り、連中は退かないわけだ。

 

 あたしの考察にマエルは頷く。

 

「それで、あたしを呼び出したのはそれとどう関係が?」

 

「サバキ委員長。他でもない貴女を御呼びいましたのは、件の本隊を潰すためなのです」

 

 正義実現委員会を本拠地に派遣させるのか?まぁ、それが手っ取り早いがトリニティの守りを減らすのは些か不安だ。

 

「いえ、派遣しますのは貴女お一人です」

 

 マエルの発言にあたしの思考は、一瞬フリーズする

 

 ‥‥‥え?嘘ですよね?あたし一人でチンピラの巣を潰してこいと?具体的な戦力もわからないのに?

 

「申し訳ございません、確かに力に自信はあるあたしですが流石に一人では‥‥」

 

 あたしの反応にマエルはふふっと微笑する。

 

「このマエル。何も考えナシで御呼びしたわけではございません。サバキ委員長にはアビドス高等学校の皆さんと共闘戦線を組んでいただきたいのです」

 

 

 アビドス高等学校。以前、助けた生徒さんがそこの生徒会長だったような‥‥。

 

「調査を重ねた結果、本隊と思われるヘルメット団はアビドス砂漠を拠点していることが判明しました。彼らは何の理由あってか何度もアビドス高等学校を襲撃しています。それもクルセイダー型戦車など、恐らくブラックマーケットで不正に流通したと思わしき装備が使われています」

 

 まじか、これまで対峙したヘルメット団でも一番戦力があったのはRL(ロケットランチャー)だぞ。それにクルセイダー型戦車ってトリニティで導入されてるのと同型じゃん。

 

「でも何故わざわざアビドス高校を?かつてはキヴォトス最大の高校と聞きましたが、現在は砂漠化がひどく規模もかなり縮小していますが‥‥」

 

「連中の狙いについては私も推測の域を出ませんが、考えられるのは学校を占拠し根城にすることだと思われます。アビドスに広がる砂漠はある種の罠としても運用できますから」

 

 そう考えると、如何に衰退したとはいえ不良たちが学校を占拠したとなれば大きな問題になる。

 

「既にアビドスの生徒会には、話を通しています。あちらもサバキ委員長とはお知り合いだったようなので話がスムーズにまとまりました」

 

 そこまで話が進んでいるとなると、あたしが断る理由もない。引き受けるしかなさそうだ。

 

「わかりました。浄玻サバキ謹んでお受けいたします」

 

「貴女ならそう言ってくれると思っていました。よろしくお願いいたします」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――

 

 長いこと話していたらすっかり日が暮れていた。話もまとまり、部屋を出ようと思ったが一つ気になったことがあった。

 

「そういえば、サンクトゥス分派とパテル分派の代表はいないんですか?」

 

 その質問にマエルは気まずそうに顔を俯く。

 

「それがですね‥‥。サンクトゥス分派代表のアザールさんは、救護騎士団へ講義を行っているため来れず、パテル分派代表のシェムさんは、可愛い娘探しで席を外しています。おかげで、業務が滞って大変です…ウウウ…イガイタイ…」

 

「それは、お気の毒に‥‥」

 

「貴女もお気を付けて。長に立つことはストレスとも向き合わないといけないことですから」

 

「はい、ご忠告ありがとうございます」

 

 無事、話し合いを終えあたしは部室へと帰還した。

 

 さて、アビドスに向かう支度をしなくては。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 サバキが去り、がらんとした部屋で一人佇むマエル。すっかり冷めきった紅茶を口にしながら、思案に暮れていた。

 

「サバキさん。トリニティは一枚岩ではありません。いつか、貴女の優しさを嫉み、危害を加える者が現れるでしょう。それでもどうか、優しさを、貴女らしさを失わないでください。貴女の行く末に光あれ」

 

 

 独り言のように呟いた言葉はそのまま静かに消えていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 翌日、アビドス中央線を乗り継ぎ、装備の入ったバッグ片手にアビドス高等学校へとやってきた。砂嵐の影響が強いのか、学校の敷地内にまで砂が入り込んでいた。

 

 ここが、アビドス。やっぱり砂漠地帯ってだけあってあっつい…。暑くて干からびそう‥‥

 

 さて、生徒会長のユメさんには前もってモモトークで連絡してたし問題ないはず。

 

 それじゃ、さっそく中に入って生徒さんに説明していないと‥‥

 

 その刹那、全身を凄まじい殺気が襲った。

 

 敷地の境界線を越えそうになる、その一瞬。本能が危機を訴えかけてきた。このままではやられると。

 

 即座に後方へ跳躍する。すると先ほどまであたしが居た地面に散弾銃(ショットガン)特有の弾跡が出来ていた。もしあの時飛ばなければ、まともに弾が直撃していたであろう。

 

 辺りを警戒しつつ、態勢を整えていると校舎の入口から誰かやってきていた。

 

 頭頂の一本アホ毛が目立つピンク髪のショートカット。アビドスの制服の上に着用した防弾ベスト。黄色と青のオッドアイを有した小柄な身体。

 

 一見幼いように見える容姿からは想像がつかない程の覇気を漂わせていた。

 

 確信する。先ほどの攻撃は彼女によるものだと。

 

「あなた、誰ですか?アビドス高校に来た目的は?‥‥まぁ、別に話さなくても良いですよ。痛めつけてでも吐かせますので」

 

 アビドスに来てヘルメット団とも交戦していないが、此処があたしの正念場かもしれない。




・生徒紹介
 赤崎 マエル
学園:トリニティ総合学園
部活:ティーパーティー
学年:3年生
年齢:17歳
トリニティ総合学園の生徒会ティーパーティーに所属している3年生。現在のホストで最高権力者。フィリウス分派の首長。
癖のあるティーパーティー内をまとめる常識人。しかし、天然でどこか変人っぽさがあるため一部の生徒から怖がられている。最近胃痛に悩まされている


・天陀 アザール
学園:トリニティ総合学園
部活:ティーパーティー
学年:3年生
年齢:17歳
ティーパーティー所属でサンクトゥス分派の首長。元は救護騎士団所属。学力が高く、時々救護騎士団に赴き、実技や講演を行っている。染物やアクセサリー作りが得意。


・我妻 シェム
学園:トリニティ総合学園
部活:ティーパーティー
学年:3年生
年齢:17歳
同じくティーパーティー所属、パテル分派の首長。派閥の特徴としてゲヘナを嫌っているがあくまでゲヘナの蛮行を憎むが故。レズっ毛がありことあるごとにカワイイ子をナンパしている。おチャラけた性格だが、規律に厳しく違反した身内にも容赦はしない。お菓子作りがブーム。

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