今回はタイトル通りプロローグです。
プロローグ
聖園ミカさんによるクーデター未遂事件から幾日。
多くの人間を巻き込んだ一件ではあったが、元の平穏を取り戻しつつある。
生徒たちが笑顔で登校し、友人たちと何気ない日々を送る。先生と補習授業部のみんなつかみ取った証だ。
それとこれはナギサさんから聞いた話だが、クーデターが起こった時、ツルギちゃんとハスミちゃんが戒厳令を破った件は不問となったらしい。状況が状況であったことや正義実現委員会がいなくなることで予想される治安維持の悪化等それらを考慮した結果なんだとか。
彼女たちが正義実現委員会を追放されずに済んでホッとしている。
騒動の発端となったミカさんはというと、トリニティの監獄に幽閉中とのこと。慎重な議論を重ねた後、然るべき処分を下すそうだが、どうなるかは誰にもわからない。セイアさんとナギサさんの襲撃を企てたものの、アリウスの陰謀が絡んでいる以上、多少なりとも情状酌量が適用されて欲しいと思うばかりだ。
話題は変わるが、キヴォトスは絶賛のサマーシーズン。
サンサンと輝く太陽。
潮の香り漂う海原。
青春を彩るアウトレジャーの数々。
学生にとってははしゃぎたくなる季節だ。ちょうど夏休み突入もあり、各々が描いた休暇を満喫しているだろう。そんな中、あたしはというと……
◇◇◇◇
「…それでは、サバキ先輩。改めて説明をお願いできますか?」
「きひゃぁぁ」
正義実現委員会の部室にて、ハスミちゃんたちに詰められています。
何故こうなったかというと、補習授業部の一件で
2年前に理由も言わず失踪し、生存も絶望しされていた人物が生きていた。なんて事実、問い詰めない方がおかしい話だろう。仮にあたしがハスミちゃんたちの立場でもそーする。適当にはぐらかそうとも思ったが、それはそれで最低だからしないことにした。元とはいえ正義実現委員会の人間だしな。
後がっちりとツルギちゃんに腕の関節をロックされているため物理的な逃走も敵わない。
徹底してんなぁ…(感心)
幸いこの場に居るのはハスミちゃん、ツルギちゃん、マシロちゃんの3人。コハルちゃんやイチカちゃんは別件で席を外している。
補習授業部の副担任として過ごして来た以上、流石にコハルちゃんには良い格好したかったから居なくてよかったと思う。
「2年間、一体どこで何をしていたのか。洗いざらい聞かせてもらいますよ」
「くけけけけ‥‥!!」
ツルギちゃんが笑う度、関節を締める力が強くなる。
「痛ててて!ツルギちゃん、キブっ!ギブだって!!」
関節ミシミシって鳴っちゃってる!!あっ、今パキッて鳴ったかも。
「あの…ハスミ先輩。これ以上はいけないのでは?」
「いいえ。私もツルギも、先輩方も。随分と心配を掛けさせられたんです。2年間もですよ。ですのでこれくらいやってもバチは当たりません。むしろ大分穏便だと思います。ツルギ、もっと強くしてください」
「…わかった。きえあああああああ!!」
があ゛あ゛あ゛あ゛あ!!アームロックかけないでぇぇぇ!折れるぅぅ!
◇◇◇◇
激しい拷問の末、あたしは無事に解放された。
骨折しなくてよかったよ。てっきり折れたかと思ったもん。とはいえ解放してくれた手前、説明責任を放棄するのは誠意に欠ける。
「‥‥ことの経緯はアビドス砂漠から始まったわ」
あたしは2年前にあったことを明かした。
ユメさんのことは上手いことはぐらかしながら、『ゲマトリア』のこと、デカグラマトンの一体『ビナー』と交戦し、死にかけたことを打ち明ける。正直なところ信じてもらえるかは怪しかった。何せ存在が都市伝説みたいな集団に暴走した巨大ロボットと戦ったなど正気を疑われてもおかしくないからだ。実際、今の内容はあくまであたしの言ったことでしかない。証明できる証拠品もないのだから。
不安に思いながら話を終える。
考え込むハスミちゃん。
真剣な表情で話を聞いていたツルギちゃん。
SFじみた内容に理解が追い付いていないマシロちゃん。
概ね反応としては予想通りと言ったところか。
「ゲマトリアというのは今一わかりませんが、そのデカグラマトンという存在には覚えがあります」
「そうなんですか、ハスミ先輩?」
そうなの?
「ええ。時折、アビドスに現れてはインフラを破壊する謎の機械。先生の指揮もあって撃退することはできましたが…先輩の失踪に深く関わっていたとは」
改めて聞くと先生って凄いんだな。
ミカさんの時もそうだったが先生の指揮のおかげで数の差を覆すことができた。
単騎だったとはいえ、死にかけたビナー相手に戦い追い払えるとは。
ビナーについて納得してもらったわけだが次にツルギちゃんがあたしに問いかける。
「2年前と比べてお姿が変わったようですが、いかがされたのですか?」
「ああ、これね。さっきも言った通り、ビナーと戦った時あたし死にかけてね。2年後に目が覚めたら、こうなってたの」
実際あたしも驚いている。
何がどうしたらこんなカラーになるのやら。
「‥‥大丈夫なんですか?何か身体に異常が起きたなどは‥‥?」
「いや、連邦生徒会で健康診断受けたけど、どこも異常なかったって」
医者からもピンピンしてるって言われたくらいだし。何でこんな髪色になったんだろう?
みんなからの質疑応答を終え、次の話に行こうとしたその時。ハスミちゃんの無線が繋がる。
『ハスミ先輩!現在、備品のクルセイダー戦車が暴走!メンバーも大多数やられました!』
「何ですって!?わかりました、こちらから増援を送ります。今動ける人員で食い止めてください」
『了解!』
どうやら大変なことになったようだ。クルセイダー戦車が暴走って何が起きてるんだ?
「きひゃぁああああ!暴れる時間だあああ!」
おっ、ツルギちゃんも戦闘態勢に入った。
よし全員で出撃しますか。
なんて思っている矢先、また別の連絡が入る。
『こちら巡回チーム。自治区内でスケバン同士の抗争が発生。増援をお願いします』
タイミングが悪いな。こうなるとスケバンと戦車を誰が対処すればいいか…
思案に暮れていると考えこんでいたハスミちゃんが決断を下した。
「ツルギ、貴女は抗争の鎮圧を」
「了解。きえええああああああっ!!!」
大声と共にツルギちゃんは壁をぶち壊し、行ってしまった。
「すみません、サバキ先輩。先輩は戦車の無力化をお願いします。マシロも先輩の援護をお願いします」
「わかりました。正義のために、頑張ります。サバキ先輩、今回はよろしくお願いします」
若い子は元気があっていいね。
よし、そんな期待されちゃあ応えねば無作法と言うもの。あたしに任せな!
「こちらこそ、よろしくマシロちゃん」
あたしとマシロちゃんは各自装備を整え、現場へ向かった。
◇◇◇◇
時は遡ること数十分。
サバキがハスミたちに詰められている頃、正義実現委員会の戦車格納庫ではヒフミとアズサが見学に来ていた。
「戦車はトリニティが発明しました。ゲヘナではありません。我が校オリジナルです。ミレニアムに遅れを取りましたが今や巻き返しの時です」
意気揚々と解説を行う部員。彼女はこの格納庫における管理を任されている。
「クルセイダー戦車が好きだ」
「クルセイダーがお好き?いいですね。それならますます好きになりますよ。ささ、どうぞクルセイダーの最新モデルです」
促されるままに2人はハッチを開け、中に乗り込む。
「へぇ…結構広いんですね」
「快適でしょう?言わずともわかりますよ。見かけによらずのスペース、従来の戦車なら狭いし、夏は暑苦しいわ、集中できないわ、ろくな事がない。天井もたっぷりあるし、荷物もたくさん入る。どんな大人数でも大丈夫。どうぞ、エンジンつけて体感してみてください」
エンジンを始動させると力強い音が鳴り響く。
「良い音でしょう?余裕の音です。馬力が違いますから」
委員の子が笑顔で解説する中、ヒフミはペダルを徐々に力強く踏み始める。
「あはは…一番気に入っているのは――」
「なんです?」
「――値段です」
そう返答するや否やハンドルを操作し、クルセイダー戦車を急発進させた。
「ああ、何を!?待って、ここで動かしちゃダメですって!待って!止まれ!うわぁぁぁ!!」
止めようとした正義実現委員会の生徒を轢き飛ばしながら、戦車は格納庫を脱走。
ヒフミとアズサはどこかへ向かおうとするのであった‥‥
◇◇◇◇
「それでマシロちゃん。現場の状況は?」
「ヒフミさんとアズサさんを乗せた戦車は現在校門を目指して前進しています。正義実現委員会のメンバー30名余りが重軽傷、東の学園広場が半壊、第12校舎が全壊等…挙げればきりがありません」
派手にやってんなぁ…
てか、せっかくナギサさんからの誤解が解けたってのに何してんだか。
何かしら理由があるんだろうが、これ以上好き勝手させる訳にもいかない。灸をすえるとしよう。
「
「動ける人員で確保に向かっていますが、少しばかり時間が掛かるかと」
ということは戦車の足止めをする必要があるわけだ。
いくら人員が多い正義実現委員会とはいえ無策で突入…なんてのは愚策にも程がある。しかたない、あたしとマシロちゃんで時間を稼ぐ。
「マシロちゃん、後方で火力支援をお願い。あたしは前線でできるだけやってみる」
「お1人で向かうつもりですか!?いくら先輩でも危険すぎます」
マシロちゃんの言うことも一理ある。
普通なら1人で戦車に立ち向かうなんてのは自傷行為にも等しいだろう。だけど、ここにはあたしたち2人しかいない。それにここで食い止めないと余計な被害が出てしまう。
「危なくなったらすぐ退く。まぁ、マシロちゃんがいるんだ。頼りにさせてもらうよ
何も問題ないかのようにマシロちゃんを見ると、彼女はキョトンとした表情をしていた。
しかし信頼を置かれていると察したのかきりッとした態度に戻る。
「わかりました。正義の名において、お任せください」
いい顔ね。コハルちゃんといいマシロちゃんといい。正義実現委員会の将来は安泰だな。
後輩からの期待には応えないとなぁ!
ひとまずマシロちゃんには狙撃地点へ向かってもらい、あたしは校舎の窓際で待機。
現在いるポイントはあえて人気を少なくした場所。速やかに逃走したいであろうヒフミちゃんたちなら必ずここを通る。
待機していること数分。マシロちゃんから通信が入る
『先輩、ターゲットが間もなく真下を通過します』
『了解。作戦を実行する、OVER』
タイミングを見計らい、解放した窓から勢いよく飛び降りる。
位置を正確に計算した為、あたしの身体は無事に戦車の上に着地した。
どれほど荒い運転をしているのか。車体は激しく揺れ、立つのにも一苦労する。
何とか張り付いて、ハッチを思いっきりこじ開ける。
「ふ~た~り~と~も~~!話なら聞くから、今すぐ戦車を止めて!」
「きゃあああっ!副先生!?」
「む、正義実現委員会かと思ったが副先生か。想定外だ」
びっくりしたヒフミちゃんとそうでもないアズサちゃん。
理由はあとで聞くとしてまずは説得をしなければ。なんて思っていると、車体のスピードがさらに速くなる。
「ご、ごめんなさい。でもいくら副先生でもそれはできないんですぅぅ!」
「悪いが大人しく降参するつもりはない。最後まで抵抗する」
すかさずアズサちゃんの銃があたし目掛けて火を噴いた。
ぎりぎりで避けるも、咄嗟に動いた反動でバランスが崩れてしまう。
ああもう!そうだったな。
説得したくらいで止まるんなら正義実現委員会もいらんわな!
ハッチに張り付き食らいつぐが、砲身を回転させて払い落そうとする。
「うおおおおおおっ!」
薙ぎ払いに耐え、再びハッチに手を掛けるとピンを外した閃光弾を投げつける。
眩い閃光が戦車内部を覆いつくす。
「‥‥くっ、閃光弾か。やるな」
「あわわ…」
閃光弾の光に当てられ、2人の視界は奪われた。
だが、そのせいで操縦が不安定になってしまった。
左右に暴走する戦車。
操縦者を失った重機はゴールのないままひたすら走り続ける。
人がいるところに突っ込めば大惨事になることは間違いない。
けれど今の状況ではあたしが止めることは叶わない。最悪を想定し、苦い顔をする。
その時、ズドンとした銃声が響く。
銃声から数秒、戦車の片側の履帯に穴が空く。
銃声のした方向を見るとマシロちゃんがいた。どうやら屋上から履帯を狙撃してくれたようだ。
履帯を損傷した戦車は少しずつスピードが落ちていく。
(あの距離から撃ちぬくとは…やるな!)
なんて思ったのもつかの間。
減速しつつあるも履帯が壊れたことで余計にアンバランスとなり、制御不能になってしまう。
「あわわ…どうすれば‥‥」
残り十数メートル。前には大聖堂が!!
『サバキ先輩!ヒフミさんとアズサさんを連れて避難してください!』
マシロちゃんの言う通り2人を連れていくのが最もだろう。
だがこの暴走戦車はどうする。制御を失った鋼鉄の塊が突っ込めば大聖堂は確実にぶっ壊れる。
シスターフッドの子たちに危害が及ぶ可能性もある。ならば余計にその選択はとれない。
「そいつは聞けない相談だ。正義を担う者として人命は等しく守らなければならないもの。2人を助けて、他は見捨てるってのは、可笑しいよなあ!!」
『それは…なんでも…』
「欲張りじゃあ」
「ないか?」
欲張り上等!!
「ヒフミちゃん、アズサちゃん。しっかり捕まってな!」
戦車前方に飛び降り、全体重を使って抵抗する。
「「副先生っ!!」」
『サバキ先輩!!』
勢いよく迫って来る戦車に大聖堂前は大騒ぎ。
シスターたちが慌てて逃げるも、避難が間に合わない状況だ。このままでは大惨事になりかねない。
為せば成る。為さねばならぬ、何事も。
勇者であれば希望を求めて光よっ!と言うだろう。であればあたしは――――
「光あれええええええええええ」
大聖堂まで残り1メートルにまで迫った時、全身全霊の力を込め、クルセイダー戦車を堀へと投げ飛ばした。
戦車が宙を舞い、大きな車体が堀の中へと沈んだ。
幸いヒフミちゃんとアズサちゃんは芝生の上に投げ出された為、怪我することはなかった。
こうしてトリニティ総合学園で起きた『クルセイダー戦車強奪事件』は鎮圧されたのであった。
◇◇◇◇
「こちらに入ってください。抵抗はしない方がいいですよ」
「きゃっ!?」
「‥くっ」
戦車の鎮圧を終えたあたしたちはヒフミちゃんとアズサちゃんを拘束し、正義実現委員会の部室に備わっている留置場へ収容した。
「マシロ、サバキ先輩。お疲れさまでした。改めてお聞きしますが、今回発生した被害はあの2人によるのもで間違いないのですよね?武装集団や大型の何かと戦ったわけではなく?」
「そうよ。全部あの2人によるもの。被害がこれ以上広がらなくてよかったわ」
件の戦車もゲリラ戦の名手とヒフミちゃんの操縦が合わさってそこらの雑兵が乗る戦車とは比べ物にならない性能を引き出していた。実際、機動戦を仕掛けられたことで対応するのに大分手間取ってしまい、正義実現委員会のメンバーの負傷も相まって人でも足りない状況に追い込まれた。
アズサちゃんの戦術もそうだがヒフミちゃんの操縦技術が厄介すぎた。当人は無我夢中だったと言っているが、本当にそうかと疑ったよ。自称平凡って言う割には洗練された動きだったよ。急加速ドリフトなんて発想、普通ならしないと思う。
「それにしても学園の戦車を堂々と盗み出すなんて、お二人とも思っていた以上に大胆な所があるんですね」
大胆…大胆不敵すぎない?
「いえっ、その‥‥盗んだわけではありません!ちょっとだけ借りて、また戻しておこうかなって…」
ヒフミちゃんの言い分にあたしとハスミちゃんはため息をつく。
友人間での貸し借りじゃないんだぞ‥‥何の話もなく無断使用したとあればそれは窃盗と変わらないんだから。
とはいえ彼女たちの処分の方を決めなくてはならないし、あたしも先生への報告書をまとめなくてはならない。
一旦部室を離れ、処分の検討を話し合うことにした。
しばらくして、減罪の猶予が無いか改めてヒフミちゃんたちと話し合うこととなった。
「なるほど‥‥つまり、アズサさんに海を見せたくて犯行に及んだというわけですね」
ヒフミちゃんの供述では、過酷なアリウス自治区で暮らしていたアズサちゃんは海の名前も存在も知らない為、どうしても見せたかったのだという。そういえば水着パーティーの時、言ってたなぁ。んで折角だから戦車で海に行こうと思い立ち備品の戦車を借りようと…という具合らしい。
「嘘はついてないんだろうけど、わざわざ戦車を使おうとした理由ってあるの?」
あたしからの疑問に、ヒフミちゃんは待ってましたと言わんばかりに勢いよく答えた。
「アズサちゃんにとっては初めての海。せっかくの夏休みもシチュエーションとしてバッチリです。照り付ける日光、足をくすぐる砂、きらめく海…そうとくれば―――」
「「――そうとくれば?」」
「戦車で行くしかないじゃないですか!?」
‥‥えぇ?
盗んだバイクならぬ、盗んだ戦車で走り出すって奴?
今の若い子の考えはおじさんわかんないなぁ…
困惑した様子のハスミちゃんを見るに同じように感じているのだろう。ただマシロちゃんは別のようで
「理解しました。夏休み、光る海、輝く砂浜、友達と行く旅行。そして戦車。確かに外せませんね。海に戦車は付き物、ロマンと言っても過言ではありません」
これあたしがおかしいのか?あんまりピンと来ないんだけど…
ヒフミちゃんは嬉しそうに頷いているし、ハスミちゃんは余計困惑してる。アズサちゃんはいまいち掴み切れてない。はっきり言ってカオスだ。
「海に友情にロマン。となれば―――」
マシロちゃんが言い切る前に部室が揺れる。
「な、なんですか!?地震!?」
「いえ、この音は‥‥」
激しい音を立てて部室の壁が粉砕した。
「青春んんんーーーー!!」
盛大に壁をぶっ壊し現れたのはツルギちゃんであった。
「あっ、お帰りツルギちゃん」
「きへぁぁぁっ!!海ぃぃぃぃぃぁぁぁ!!」
今日のツルギちゃんは中々テンションが高い。ただなんか切れが悪いような…
「すみませんごめんなさい許してください!爪は痛いのでやめてください多分楽しくないと思いますっ!」
ああっヒフミちゃん怯えちゃってるよ。
爪に何かするつもりもないって。昔のシスターフッドの噂じゃあるまいし
怯えるヒフミちゃんを余所にハスミちゃんも何かを察したらしい。
「‥‥なるほど。ツルギ、ちょっとこちらに」
「‥‥へ?」
そういうとハスミちゃんはツルギちゃんを別室に呼び出して行った。
「ふぇぇ…怖かったです‥‥」
「まだ終わってない。気を緩めないでヒフミ。また強襲されて戦闘になるとも限らない」
「ええっ!?そうなんですか!?」
いやぁ、流石にしないと思うよ?しないよね?
「うーん、私に聞かれても何とも。ただ最近のツルギ先輩は少し元気がないように見えるんですよ」
「やっぱりか」
「わかるんですか!?」
一年時のあの子たちの面倒見てたんだ。それくらいわかるよ。
話し合っていると別室からハスミちゃんだけが戻って来る。
「ひぃ!せめて遺言だけでも残させてください‥‥」
「‥‥何の話ですか?」
気にしないであげて。ところでツルギちゃんは何処に?
「ツルギなら今日は帰ってもらいましたのでご心配なく。話を戻しますがお2人にお願いがあります。サバキ先輩もよければ聞いてくださいませんか?」
一体なんだろうか?
ハスミちゃんが言うには今回の騒動への処罰、もといボランティア活動の一環として頼みたいことがあるのだという。
「ツルギと一緒に海に行ってリストに書かれたことをその通りに実行してきてください」
ここ最近ツルギちゃんは疲れが溜まっているらしく、委員会の仕事も合わさって休息がとれていないようだ。そのためボランティア活動という体裁でバカンスを楽しんできてほしいというわけである。必要な経費も戦車も正式に貸し与えてくれるのだからいい話だ。
「いいじゃない。みんな楽しんできなよ」
なんて言っているとハスミちゃんの生暖かい目があたしに向く。
「何を言ってるんですかサバキ先輩。貴女も行くんですよ?」
マジですかい。もうあたし19歳よ?年頃の女の子とはしゃいでられる年じゃないって
遠慮気味にしているとヒフミちゃんやマシロちゃんが捲し立てる。
「そんなことありません!」
「そうですよ。夏を、ロマンを楽しむのに年齢なんて関係ありませんよ」
うーん、でもなぁ。
「先輩。ツルギにとってもせっかくの機会なんです。彼女にいい思い出を作らせてあげてください」
そう言われればぐうの音も出ない。
本来卒業して、後のことを引き継ぎをすませて楽しい思い出と共にトリニティを去るはずだった。でもあたしは何も言えずにいなくなった。あの子たちに悪いことをしたと今でも思っている。なら、贖罪として付き添わなくては無作法といもの。
「…わかったわ。こんなあたしで良ければご一緒させてもらうわ」
あたしの返答を聞いてみんな嬉しそうな表情をした。ハスミちゃんもにっこり笑っている。
「ええ。ぜひ、お願いしますね」
結局、ツルギちゃん、マシロちゃん、ヒフミちゃん、アズサちゃん、そしてあたし。総勢5人で真夏のバカンスを楽しむこととなった。
ただ1つだけ懸念があった。
「水着、どうすっかなぁ‥‥」
今ある服は連邦生徒会の制服と黒狐時代の着物、そして濡れてもいいインナースーツのみ。
友人と海で遊ぶなんてこともなかったし、水着もスクール水着くらいしか着てこなかったのがここにきて弊害になってしまった。
幸い準備期間はある。
明日D.U地区で水着を買いに行くとしよう。
余談
サバキが戦車を抑えるシーンはシンフォギアの『RADIANT FORCE』をイメージしてもらえると幸いです。
あの曲、シンフォギアでトップ5に入るほど好き。1位は『逆光のフリューゲル:無印1話ver』
余談②
サバキは結構着痩せするタイプである。(普段着が着物or連邦生徒会の制服である為)