翌日、再びアビドスに赴いたサバキは生徒会長のユメに幾つかの書類を提出していた
「サイン、お願いします」
「もちろんいいよ~~」
提出した書類にユメは嬉々と自分の名前を書き、並びに生徒会の印を押す。
「これで、よし。改めてよろしくねサバキちゃん」
「はい。よろしくお願いします、ユメさん」
正式に手続きが済んだところに、ホシノが教室に入ってきた。
「おはようございます」
「おはよう」
「おはよう、ホシノちゃん!聞いて聞いて!この度、サバキちゃんがアビドスの臨時生徒になってくれることになりましたーーー!!」
「‥‥‥‥はい?」
ユメの突拍子のない台詞に、さすがのホシノも己の耳を疑った。
まぁ、実際驚くのも無理はない。昨日、自分と戦った相手、それもトリニティの立場ある人がアビドスの生徒になるというのだ。脈絡がなさすぎてフリーズもするだろう。
「ユメさん。ホシノちゃんが固まってますって。正確には少しの間留学生としてアビドスに滞在するってだけですから」
そう、先ほどユメさんに提出していたのは留学届である。
いくらヘルメット団を鎮圧することが目的とはいえあたしも学生である。授業を欠席するとなれば日数足らずで留年になる可能性がある。しかし、救援を願ったアビドスを見捨てるなんてこともできない。そのため、考えたのはあたしを留学生としてアビドスに送ることだ。
留学生として正式に派遣されれば出席は公欠として考慮されるし、任務に支障をきたすことはない。パテル分派の過激派どもも目障りなあたしが学校から離れるのだから、バカ騒ぎする理由もなくなる。それに正義実現委員会もバンや有望な後輩たちがいるのだ。何も心配はいらない。
既にティーパーティーの承諾を得ている。
「は、はぁ‥‥そうですか‥‥」
いまいち状況が飲み込めないながらも無理やり納得するホシノ。そんな傍ら、ユメさんはアビドスの制服を手にしていた。
「じゃじゃーん!折角だから、制服も持ってきちゃいました~~」
ニコニコ、満面の笑みでにじり寄るユメさん。顔は笑ってるはずなのに、なんでこう‥‥圧を感じるんだろう‥‥
「え、えっと‥‥ユメさん…?」
「一時的とはいえ、アビドスの生徒になるんだから制服着てみよっか。ホシノちゃん、抑えてて」
「了解」
ガシッと腰回りを掴まれ、あたしは身動きを封じられてしまった。
「この、裏切者ぉぉぉ」
「何が裏切者ですか。あなたとは手を組んだ覚えもありませんし、裏切者と言われる理由もないです」
おっしゃるとおりだわぁぁぁぁ
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結局あたしはユメさんのされるがままに、アビドス生の制服を着せられた。
ちなみに用意された制服は全然きつくなかった。スリーサイズ教えてない筈なんだけどなぁ…ここまでジャストサイズだなんて想像してなかった。
白いシャツに水色のネクタイを通してキュッと締める。シャツの上から紺色の上着を羽織り、ボタンで留める。
袖にはアビドス生徒会臨時委員の文字が書かれた腕章をつける。
鏡に写った姿を見て、改めて今の自分はトリニティ生ではなくただのアビドス生徒なんだなって実感する。
「改めまして、アビドス生徒会にようこそ、サバキちゃん」
「まぁ‥‥歓迎しますよ」
「ほ~ら~、ホシノちゃん、スマイルスマイル!!」
「ちょっ‥‥先輩、やめてください、人が見てる前で。それにさっきからちゃん付けしてますけど、一応サバキさん、先輩よりも年上なんですからね?」
「え、そうなの?」
「あ、はい。一応三年生です」
気づいてなかったのか‥‥
「うへ~~ごめんねぇ~~気づかなくて~~」
「いえ、全然問題ないですよ」
謝罪するユメさんをホシノちゃんと慰めていると、校舎の外が何やら騒がしい
教室の窓から外を伺うと、フルフェイスのヘルメット集団がアビドスに押し寄せていた。
「ユメ先輩、例の奴らです」
「来たね~~早速迎撃するよ。サバキちゃんもお願い」
「了解です!!」
アビドスに来てようやく、仕事ができそうだ。
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ぞろぞろと校舎に迫るセーラー服にフルフェイスヘルメットを被った集団。
その中でもリーダー格と思わしき赤いヘルメットにガスマスクといった装いの生徒がスピーカーで声高々に話す。
「この校舎に居る者へ告ぐ!!今度こそ、この学校はカタカタヘルメット団が頂く!!痛い目に遭いたくなきゃ、とっと明け渡せ!!」
はあーーーこいつらか。
アビドスを襲ってる兼トリニティ自治区の連中を率いてる親玉ってのは。あんたらのせいでこちとら偉い迷惑こうむってんだよなあ!!
「ホシノちゃん、ユメさん。目標あいつらであってます?」
「間違いないよ。あれがカタカタヘルメット団。悪者だよ」
「今日はいつもに増して数が多いです。が‥‥実力は大したことがないのでサクッと片付けてしまいましょう」
「了解ですーーー」
あたしはバッグから『天極』と『地獄』ではなくスナイパーライフル『黒笏』を取り出す。
いつもの銃ではないことに、ホシノが聞いてきた。
「いつものサブマシンガンは使わないんですか?」
「うん。防衛戦ならこっちの方がやりやすい」
「まぁ、どうでもいいですが私やユメ先輩の足引っ張ったりしたら許しませんからね?」
「わかってますよ、ホシノせ・ん・ぱ・い」
「誰が先輩ですか!!」
「二人とも、来るよ!!」
「「はい!!」」
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「ダメです。奴らから返答ありません、要求は拒否されたようです」
「そうか。ならば全軍進撃!!目にもの見せてやれ!!」
リーダー各の号令と共にヘルメット団は攻撃を仕掛ける。
一方こちらはユメさんが先陣を切り、ヘルメット団の攻撃を誘う。ホシノちゃんはショットガンでガンガン連中を追い立てていく。
そしてあたしも遮蔽物に身を隠し、スナイパーライフルで敵を確実に撃ち抜いていく。
「クソっ!狙撃手がいるなんてきいてなーーー」
慌てふためく構成員の黒ヘルメットに小さな穴が音もなく空く。
「ちくしょう、また一人やられた!!ただでさえ、あのチビとでかパイの相手でもしんどいってのに―ーー」
愚痴をこぼしていた構成員も、言葉が続くことなく、地面へ倒れる。
「グエッ!?」
「ガフッ!」
「ホギャッ!」
あたしのスナイパーライフルは独自のカスタマイズを施しており、威力や撃ちやすさはもちろんサプレッサーを搭載することで周囲に悟られることなく制圧することができる。
「‥‥ぐぬぬぅぅぅ 退け!!撤退だあ!!」
状況が芳しくないと判断したのかリーダー各の号令とともにヘルメット団は蜘蛛の子散らすように撤退していった‥‥
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「みんなお疲れ様ーー。今日も無事に学校を守ることができたよ~~」
ヘルメット団が引き上げた後、再びあたしたちは生徒会室でミーティングを行っていた。
「それにしても貴女、狙撃手が本職ですか?」
迎撃に出る際、あたしがスナイパーライフルにしたことが気になったのかホシノちゃんに聞かれた。
「いや、本職はサブマシンガン。
「でもすごかったよ~~サバキちゃんの狙撃の腕。撃たれた子何人か吹っ飛んでたもん」
「あはは~~。この銃、結構威力ありますからね…」
実際、魔改造しすぎた感はある。何せ後輩たちにいいとこ見せたくてカスタム費用が嵩んだくらいだ。
ただ、普段はサブマシンガンで事足りるためバッグの中で置物になっていることが多いのが現状だが。
「さてと‥‥無事学校は守れたけど、あの調子じゃあヘルメット団は諦めてないと思う。引き続き警戒を怠らないようにね」
確かにああいった連中は負けたくらいで諦めない。諦めてくれたら楽なんだけどなぁ~~
しかし戦闘中気になったけど、わざわざこの場所攻めて来るってことはどこかに拠点があるってことなんじゃないかな?それに襲撃するたって物資が多くないとできない筈。だとすると撤退経路から逆算して拠点を割り出した方がいいかもしれない。
‥‥少し、探ってみるか。
戦いの後片付けを済ませてから、その日は解散することとなった。
余談
・浄玻サバキ(留学生)
貫通 重装甲
固有武器:SR(スナイパーライフル)『黒笏』
サバキが扱う武器の一種。後方支援や後輩に狙撃を教えるために持ち歩ている。
基本『天極』と『地獄』を使っているため、使用頻度は使っている武器の中で一番低い。