1話の爆弾様
8話の伝説の三毛猫様
誤字報告、ありがとうございます。
「今日の活動はここまで。皆、気を付けて帰るんだよ~」
「「「はーい!!!」」」
ある日。
正義実現委員会の活動を終え、あたしは部室から退室する後輩たちを見送っていた。
ツルギちゃんとハスミちゃんも退室した所で携帯のモモトークに通知音が鳴る。
「ん?誰からだ?」
携帯を手に、着信履歴を見てみるとホシノちゃんからであった。
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ホシノちゃんが言うには先日からユメさんがアビドスに来ていないらしい。
心当たりはないかと聞いた所、言い過ぎてしまったのが原因かもしれないと打ち明けてくれた。
詳細を聞くと、少し前ユメさんの発言に対し、つい声を荒げてしまい教室を出てしまったそう。言い過ぎたと思い翌日謝ろうと思って学校に来たは良いもの、肝心のユメさんが来ない。モモトークで連絡を取っても全然既読が付かないそう。
家にも向かったそうだが、帰って来てすらいないという。
そのため、親しかったあたしに連絡を寄越したわけである。
それであたしがいるのはアビドスの砂漠地帯である。
はじめに町の方でも聞き込みを行ったが、目撃情報は得られなかった。
何か犯罪に巻き込まれていようものなら、町の人たちが目撃しているため、そもそも町には来ていない可能性が高い。
だとすれば他に行く先があれば、砂漠地帯である。土地勘のあるユメさんが遭難ってことは考えにくいが何か非常事態が起こり動けなくなった可能性が高い。
なら砂漠を探してみようと意気込んできたものの‥‥アビドスの砂漠はめっぽう広い。
目途も経たずに来たのは失敗だったか‥‥
照り付けるような日光。
砂漠の乾燥した空気。ユメさんではないけど、『あっつい…暑くて干からびそう…動いてるけどに暑いよ~…』と言いたくなる。
正義実現委員会の制服は真っ黒な生地で出来てるため熱を吸収してしまう。
そのため今のあたしはクリーニングして返すはずだったアビドスの制服を着ている。
いくら銃の不所持より数が多いとはいえ、流石に全裸で動くわけにもいかないし、如何せん仕方ないことだ。
はぁ‥‥クリーニング代嵩むな…
広大な砂漠を充てもなく歩いていると、目の前に真っ黒なドローンが一台浮いていた。
ドローンはこちらに気づくと、ゆっくり向かって行く。
敵勢ドローンかと警戒しあたしは『天極』と『地獄』を構える。すると、ドローンから音声が響いた。
『クックック‥‥またお会いしましたね。サバキさん』
「ゲッ‥‥お前かよ黒服‥‥」
てかわざわざドローンを配置している辺り待ってたなコイツ。
『わざわざこんな辺鄙な砂漠に居るとは‥‥何かお探しでも?』
「あんたには関係ないでしょ」
『いえいえ。もしかしたら関係あるかもしれませんよ。
例えば‥‥アビドスの生徒会長について、とかね』
「‥‥ッ」
『どうやら、そのようですね』
そういえば黒服もアビドスに興味あるって言ってたな。
もしかして何か知ってるのか?
「それが事実だとして、何になるのさ?」
『‥‥ククッ、貴女には耳寄りな話かもしれませんよ。
私はその生徒会長の場所を知っています、よければご案内いたしましょうか?』
また露骨に怪しい話を‥‥何か対価でも求めているのか
「‥‥何が目的?」
『別に取引しようとは思っていませんよ。私はただ貴女を生徒会長の場所に案内させる
だけです』
「嘘とはついてないな?」
『当然です』
「‥‥わかった。案内して」
『ククッ、ええ了解しました。それと、何時ぞやの【百夜ノ春ノ桜花祭】での演奏はお見
事でした。同僚も良い刺激を受けたと言っていましたよ』
「そいつはどうも!その人に伝えておいて、今度の夏、百鬼夜行で和太鼓やるからぜひ
来てねって」
『確かに、伝えておきましょう』
黒服が操作するドローンの案内の元、あたしはアビドス砂漠を移動していった
―――――――――――――――――――――――――――
『ククッ‥‥到着しました。ここに生徒会長は居ますよ』
移動すること数十分。
あたしは目的地にたどり着いた。
砂漠には見合わない物々しい雰囲気の場所。鉄柵や宿舎、たちどころにあるカイザーPMCのロゴ。
どうやらここはカイザーの軍事基地だと思われる。
ここにユメさんが居るのか‥‥
オートマタの警備兵やPMCの巡回兵が辺りを歩いており、厳重な警戒態勢が敷かれている。
きな臭い噂が絶えない会社とは聞いていたが、こんな砂漠にわざわざ基地を建てるなんて何を考えているんだ?
っとそんなことはどうでもいい早くてユメさんを見つけないと。
「黒服、ユメさんがどこにいるかわかる?」
『もちろんです。案内しましょう』
黒服のドローンの後に続き、慎重に基地を進んでいる。
今のところあたしが忍び込んでいることに気づいていないのが幸いだ。
基地を進んでいくとドローンは少し大きな建物の前で止まった。
『ここの地下に生徒会長はいらっしゃいますよ』
「地下?」
『ええ、この辺りは誰も近づきません。ましてや地下であれば声など届かないでしょう』
「ねえ、黒服。なんであたしを案内したの?ホシノちゃんが狙いならわざわざ連れて来る理由なんて無かったろうに」
ユメさんを人質にって魂胆ならあたしに知られることなく進めればよい物を、黒服はわざわざ呼んだ。
心意が読めない。
『ククッ…私としては小鳥遊ホシノ自らの意思で来てくれなければ意味がありませんからね。PMCの強引なやり口はあまり好みではありません』
「はぁ~~悪趣味がよぉ‥‥」
この厄介神秘オタク君さぁ‥‥
教えてくれたのはありがたいけど、そんな理由で呼び出されたこっちの身にもなってくれよ!
すっごい複雑なんだけど‥‥
『さて、行きましょうか』
黒服の案内で地下に続く階段を下ると独房エリアにたどり着いた。
何やら話し声が聞こえる‥‥
恐る恐る物陰から様子を見てみると、鎖に繋がれたユメさんが護衛付きの恰幅の良いオートマタと何やら話していた。
「いいかげん諦めたらどうだ、アビドスの生徒会長?9億もの借金など先のある若者が背負う責任などなかろうに」
「‥‥諦めるわけないでしょ理事さん。それにホシノちゃんをそっちに渡せなんて絶対にしない!!」
「ふん、中々頑固者だな。生徒1人こちらに渡せば借金も多少は緩和してやるものを…。良いだろう、ならば根を上げさせてやるまでだ。おい、そいつを痛めつけておけ」
「はっ!」
そう言って理事と呼ばれたオートマタは護衛とともに去っていった。
一方、牢に残されたユメさんへ看守のオートマタが迫る。
手には鞭にスタンガン。会話の内容からして拷問を行うつもりだろう。
「全く、子供の分際で大人に歯向かうなんて身の程知らずだな」
「ああ、理事のためにも徹底的に躾てやる」
ユメさんの身体のあちこちは傷ついており、制服も破れている箇所がある。
そうとう激しい拷問を受けていたのが窺えるだろう
それにあの理事だのオートマタだの‥‥よくもユメさんを‥‥!!
「それによ、あのホシノっつうガキだか渡せばいいのによ」
「ほんとそれな?あんな寂れた学校、どう頑張ったってつぶれるってのに」
「「ガハハハッ!!」」
「‥‥潰させない。絶対に潰させない‥‥また砂祭りを開けるようにするんだから‥‥」
「あん?また減らず口か?」
「しゃーない、また気が済むまで痛めつけて――――」
あたしの中で何かが切れた音がした。
看守に気づかれないよう、慎重に背後へ近づく。
そして一気に看守の首に手を回し、チョークスリーパーを掛ける。
「な、なんだ――――グエッ!?」
不意を突かれ動揺する看守の首を無理やり180度回し、気絶させる。
「貴様!どこから入って「うるさい!」ガハッ!」
もう一人の看守も顔面を壁に叩きつけ、液晶画面を破損させる。
「サバキちゃん!?なんでここに‥‥!?」
「ホシノちゃんから連絡を受けたんですよ。ユメさんが学校に来ないって。それと昔の腐れ縁といいますか…知り合いがこの場所を知っていたもんで‥‥」
「そうだったんだね‥‥ありがとう」
「早く脱出しましょう。こんな奴らの場所とっとおさらばです」
「でも鍵が‥‥」
「それなら!ちょっと失礼」
ユメさんを拘束している手錠のつなぎ目に少しばかり力を入れる。
すると、手錠が難なく外れてしまった。
これぞ忍法こじ開けの術ってね
「え、サバキちゃんこれ鉄製だよ?どうやったの?」
「それは秘密です」
まぁ、昔百鬼夜行で演奏した際、小さい忍者っ子に教えてもらったんだけどね。
そうこうしている合間にもう一つの手錠も粉砕し、ユメさんを背負う。
『ククッ…上手くいったようですね』
「ああ、帰りの案内頼むぞ」
再び地上に出て、カイザーの車両がある場所まで走る。
「侵入者だー!!」
「総員、迎え撃てーー!!」
わらわらとカイザーの兵士が出てくるが問題ない。『天極』一本でも相手になる。
あたしは目標地点までひたすらユメさんを背負いつつ全力で走った
途中カイザーの武器庫から爆弾を少々拝借した。
――――――――――――――――――――――――――
カイザーの車両が並ぶ駐車場に着いたあたしは、気になっていたことをユメさんに問いかける
「…ユメさん。あのカイザーとどういった関係なんですか?」
するとユメさんはいつものほんわか顔ではなく、思いつめた表情を浮かべていた
「サバキちゃんには言ってなかったんだけどね。アビドスの借金はカイザーから借
りた物なんだ…」
「え?」
「前に砂漠化を食い止めるべく、生徒会が借金していたって話したでしょ?その相手が
カイザーなの。砂漠化が進むにつれて融資してくれる銀行は減っていき、切羽詰まっ
た結果、黒い噂が絶えないカイザーに借りることになったわけなの‥‥」
結構、闇深かったんだな‥‥
てか、あのユメさん以前の生徒会さん?せめてその辺の後始末はしていかなかったの?
「それで借金について理事さんと交渉しようと思って行ったら‥‥捕まっちゃっ
て‥‥」
あんにゃろ‥‥いたいけな少女の拉致・監禁なんざ、キヴォトスでも犯罪だぞ
「そうだったんですね。でも間に合ってよかったです。さぁ、帰りましょう。ホシノ
ちゃんも待ってます」
「うん!」
駐車場に置いてあったバイクに乗り込もうとしたその時、あの理事とかいう奴が表れ
た。
「貴様!何のマネだ!!ここを誰の所有地かわかってのことか!」
「うっさい!この生徒拉致・監禁犯がよ!」
「一介の生徒が生意気な‥‥!!」
「じゃかあしいッ!!どけ!!!あたしはアビドスの名誉生徒会役員だぞ!!!
このまま正面突破も考えていたその時。
砂漠の地面から不気味な咆哮が鳴り響いた。
まるで何かの雄たけびのような音。
こんな音、初めて聞いた。
すると突如として起きる地ならし、
前方の地盤が次々陥没していく。
吹き荒れる強風と共に大地にぽっかりと大きな穴が開く。
突然の強風にあたしとユメさん、カイザー理事も吹っ飛ばされる。
大地にぽっかりと開いた大穴。
そこから生える馬鹿程でかい大きな蛇‥‥正確には蛇の形をしたロボットといった方が良いだろう。
機械でありながら生徒が持つヘイローを有している特異性。
明らかに目の前に居る存在が超常的存在なのは疑うまでもない。
突然現れた蛇のロボットに対し理事を守るべく、兵士が弾幕を展開する。
しかしどの兵装もロボットの装甲には通用しない。
ロボットがカイザーの連中へ向いている隙に離されて飛ばされたユメさんに近寄る。
「ユメさん?ユメさん!!」
打ち所が悪かったのか、ユメさんは気を失っていた。
しかも拷問による影響がユメさんの身体は衰弱し始めている
このままでは危険だ。
そう判断したその時、カイザーを蹴散らしたロボットがあたしを見つめていた
その時、あたしにははっきりとした確信があった。
この状況下で最も当たってほしくない確信が
「‥‥狙われた」
あたしが呟くと同時に蛇のロボットは呻りながら襲い掛かる。
ロボットが大地を潜るたび地響きが起こる。
あたしはユメさんを急いで担ぎ、近くに転がっていたバイクに乗り込む。
幸か不幸か鍵がかかっておらず、すぐにでも出発できる状態だった。
「ユメさん‥‥しっかり捕まっててくださいね!!」
アクセルを全開に吹かし、あたしは再びアビドスの砂漠へ駆り出した。
当然、奴もあたしの跡を追い始める。
広大な砂漠を舞台に過去最高に危険で未知数な戦いが始まった。