何よりも大切なモノ。
最初はただ、ある目的の為に人間の絶望を集めようとしていた。
嫌いだったが、仕方なかった。だってそれしか方法がなかったから。
一人目は、平常心を保つだけがやっとだった。保てなかったら、殺していたかもしれない。
目的の為を思えば、なんてことはなかった。
人間を、絶望の底に落とした。
膝をついて涙を流す様を見て、床が汚れる、後処理面倒くさいな、いい気味だ。とボクは思った。
そいつが、ボクの方を向いて聞くに堪えない暴言を吐いてきた。
発言は別にどうでも良かった。今じゃもう覚えてもいない。
ただ、あの時の顔、あの表情だけが、ボクの目に焼き付いていた。
不快だとは思わなかった。むしろ──もっと見たい。
嫌いなのに、できるだけ関わりをもつまいと考えていたのに。
ボクは気が付けば、一人、また一人と、人間を誘導してコンビニへ呼び寄せていた。
そして、絶望する瞬間のその顔を、嬉々として見つめていた。
人間は、醜く、脆い。自分勝手な生き物で、思い通りに行かないとすぐに癇癪を起こす。
ちょっとした望みを叶えてあげても、こうじゃないそうじゃない、違う、自分の本当に望んでいた事じゃないなどと叫び散らかす。
自分の意志で叶えたに等しいのに、直ぐボクのせいにして責任から逃げる。
滅んでしまえばいい。なんて、小さい頃はずっと思っていた。
だけど、違った。滅んじゃいけない。
ボクは知ってしまった。知ってしまったんだ。
──人間が絶望へと飲み込まれる瞬間を。
とっても、美しかった。最っ高に輝いていた。
人間の、すべてが惜しげもなくさらけ出されるあの瞬間が……ボクは大好きなんだ。
何度見ても飽きることなく、もっともっと、何度でも見たいと願ってしまう。当初の目的など忘れてしまいそうになる程に。
憑りつかれてしまったんだ。人間の絶望の輝きに。
だからボクは、想いを込めてこう呼ぶことにした──〈お客様〉と。
◇
「初めまして、未来のボクの〈お客様〉」
何を驚いているのか、見られていたことなど、とっくに気付いていた。
ボクの事を見ていたのだから、逆に、こちらから見られていることも想定しなければいけない。そういうものだ。
「さあ、次は貴方の番ですよ」
ボクは片手を広げ、未来の〈お客様〉へと伸ばす。
〈お客様〉の表情までは、見えない。それだけは、ちょっと残念かな。
「ボクは、ここでお待ちしていますよ。〈お客様〉の事を」
──この白い霧に包まれた、コンビニの中で。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
誰かが読んでくださることが、何よりも嬉しかったです。
ありがとうございました。
また、お会いしましょう──〈お客様〉。