TS転生精霊女王、神様から自然の再興を任されてしまう   作:ひのかぜ

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第1章
はじまりの話


 ファンタジー世界への転生。これは、小説・アニメ・漫画・ゲームや映画の世界でしか起こり得ないはずの、非現実的な現象と言えるだろう。

 しかし今、その出来事が自分自身に起きた上、明らかに性別まで変化していたものだから、戸惑っていた。

 

 こうなる少し前、俺は仕事で疲れた身体を癒すため、家に帰って来た後すぐに流れ作業の如く入浴と簡単な食事を済ませ、自室にこもって怠惰の限りを尽くしていた。

 簡単に言うならば、好きな小説や漫画を読み、頑張って稼いだ給料で買った最新版のゲーム機でゲームをプレイしたり、実況者の動画を見たりすると言った感じである。

 

 で、そんな感じで午後11時と言う寝る時間ギリギリまで過ごし、明日の仕事に支障が出るとまずいため、歯を磨いて寝ようかとして立ち上がった瞬間、頭の中に響いてきた「ようやく見つけました」と言う女性の声と同時に意識を失い、気づいたらバカデカい115m級の大木内にある家のベッドの上で目を覚ましていた。

 

 そして、その後にやたら神々しいオーラを纏った神様を名乗る金色長髪の超常存在の女性に、俺を自然の精霊として、性転換させた上に転生させた事を伝えられる。

 勿論、ここまでするに至った経緯や理由や目的、俺がさせられた世界についての説明、精霊と言う種族の特徴など、ここで暮らさざるを得ないのなら必要不可欠なため、しっかりと聞いた。

 

 で、聞き終えた後に思った事を正直言ってしまえば、何で俺なんだと言う感想だった。後は、性別どころか人間じゃなくなっていたのかと、更に困惑するだけだ。

 

 まあ、精霊女王クラスの適性と魔力の持ち主だったからって理由なら、百歩譲ってまだ理解出来る。地球だったら、まず間違いなく宝の持ち腐れとなっていたと分かったからだ。

 

 しかし、他にも挙げてくれた異世界ファンタジーが好きそうだとか、色々と御託を並べて言ってきた事に対しては、それなりに思うところがある。

 

 だから、文句の1つや2つは言ってやりたいと……いや、元に戻してくれとも付け加えて、実際に言った。

 だが、見事なまでにのらりくらりとかわされた上に、もう現代世界には戻れないときっぱり言われてしまったため、表面上は引き下がる羽目となってしまう。

 

 正直、神様の言った通りで、魔法とかがあるファンタジー異世界は想像するだけでも楽しいし、好きだと俺は思っていた。

 けれど、その世界に実際に行ってみたいかどうかと問われれば、話は別である。あくまでも、ゲームや小説等で楽しんでこそだろう。

 

「と言う訳です。えっと、何かありますか?」

「……そうですね。ほんの30分前まで一般人だった俺に、今居る地帯の自然の再興などと言う大層な役割を、任せて良いんです?」

「その点なら問題ありません。貴女には普通よりもとりわけ強い四季の力、自然に関連する属性の力と言いましょうか。それが元々備わっていますので。精神的なサポートも、必要ならば行います」

「なるほど」

「後は、この精霊大樹ですね。これは、貴女の力を自動的に大地に循環させるためのもの。つまり、極論時間さえあれば何もせずとも自然再興は成る訳です。何か行動を起こした方が、早く達成は可能でしょうが」

 

 と言う感じで、今に至るまでの経緯を頭の中で振り返っているのだけど、やはり元々は単なる一般人だった俺に、こんな大層な役割が務まるとは思えない。

 

 まあ、神様曰く俺には普通の自然の精霊よりも強い、自然に関連のある属性の力が元々備わっていて、なおかつ精霊大樹の根を通して俺の力が自動的に大地へ循環されるため、極論何もしなくても問題ないとの事。

 どう考えてもそれだけでは解決しそうにない様に思えるのだけど、こんな超常現象を起こせる存在が胸を張って堂々と言うのだから、そうなのだろう。

 

「はい。ですので貴女は、この精霊大樹を中心として暮らして頂ければ、基本的にどんな事をしようと構いません。1日中寝ていようと、外で魔法の試し撃ちをしてみようと、全て自由です」

「分かりました。まあ、適当に頑張ってみます」

「よろしくお願いいたしますね。それと、達成の暁には……貴女の願いを1つは叶えましょう。それとは別に、日本とこの世界を繋げる、ないし日本そのものをこの世界に呼び込む事も、望むなら可能です」

「おぉ……」

 

 そんな感じで神様を名乗る超常的な女性とのやり取りを交わした後は、自然再興の達成報酬についての話になった訳だが、それがまあ凄まじい。

 

 残念ながら、俺を元に戻すのは出来ないかしないと暗に示されてしまったものの、それを打ち消そうとの意思は感じられた。

 思うところがなくなった訳ではないが、ひとまずはこれで引き下がることとしようか。

 

「それでは、私はこれで去ります。あまり下界に長居し過ぎると、不都合が生じてしまいますので」

 

 そう言って、神様を名乗る超常的な女性が去っていった後、ベッドから起き上がった俺は、側にあった窓にかけられたカーテンを開けて、精霊大樹の周辺がどんな場所かを取り敢えず確認してみようと思い、実行に移してみたところ、唖然とする事となった。

 何故なら、俺の居るこの精霊大樹を起点とした一定範囲より外側が、本当に見渡す限りの砂漠地帯であったためだ。

 

 俺が居るエリアは運良くある程度の生活が可能なオアシスである事が判明したが、嬉しいかどうかと問われれば疑問でしかない。

 昼間は猛烈な暑さにより、逆に夜中はうって変わって寒さに苦しめられると言う温度変化の激しい環境(砂漠)で、魔法が存在するとは言え、たった1人で生活するには明らかに不向きだからだ。

 

 現に今は真っ昼間であったため、カーテンと窓を開けた瞬間に部屋の中に思わず顔をしかめたくなる程の熱気が入ってきた。ついでに風も吹いていた様で、少しではあるけど砂まで入ってきてしまった。転生前まで冬の日本で生活していた事に加え、今すぐ戻りたい気持ちが加わり、最悪な気分になる。

 

 砂漠地帯に生命力に満ち溢れた大樹、どう考えても場違いも良いところだ。

 

 とは言っても、それを愚痴ったところで何も変わらない事は明白だ。俺には自然に関連する属性の力があるとの事だし、今はそれを上手く使ってこの地獄の様な環境をどうにかしなければ、1人悲しく孤独に消えていってしまうのだから。

 

「まあ、こうなったものは仕方ない。やるしかないか」

 

 だからこそ、俺はこの世界で生きていく事を決意し、出来る限りの事をして動き始めることとなった。

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