TS転生精霊女王、神様から自然の再興を任されてしまう 作:ひのかぜ
ほんの数秒間の出来事でありながら、非常に神秘的で印象に残る精霊生誕。
1週間前、この現象を経て生を受けた、俺をお母さまと呼んで慕う精霊の性格は好奇心旺盛で甘えん坊、なおかつ見た目相応に活発な少女であると分かってきた。
当のテウルフが懐いているとは言え、毎日物理的な意味ではない方で振り回し、クタクタになるまで一緒に遊ばせている。
その長さはおおよそ1~2時間くらいだが、疲れきるのはテウルフだけで、この精霊……いや、この子は元気な事が殆んどだ。俺が声をかけるか、本人の集中力が続く限りは遊びが続いていく。
「お母さま! テウちゃん疲れたって言うからさ、わたしと一緒に遊んで!」
「うん。良いけど、もう少しだけ勉強したらね」
「はーい! じゃあ、わたしも一緒にお勉強する!」
「了解。じゃあ、隣に座ってこれでも読もっか」
俺に対しては、外で遊ぼうとせがんでくるのは勿論の事、
内容が内容なだけに難易度は高く、難しそうな用語も多数登場しているから、多少なりとも理解出来るのかが気になったのだけど、結果としては俺とほぼ同等の理解度であると判明した。
この子の誕生に及ぼした影響の割合を殆んど俺が占めているが故に、その力量のみならず性格や知能などに対しても、相当影響を及ぼしているらしい。
(……)
経緯は大分特殊であり、普通と違って非常に大変な例の時期がないと言う面が大きいのは理解している。
それに、例えその時期がなくたって、親としての役目を全うするのは決して楽ではないだろう。
この
加えて、地球とは異なる世界な上に『子供』が人間ではないのだから、俺の想像出来ない何かがあってもおかしくはないはず。
「ねえ、お母さま! お勉強って楽しいね!」
「そう? それは良かった――」
「でも、お外で遊ぶ方がわたしはもっと楽しいな! 砂遊びとか、空中追いかけっことか……他にも色々と!」
「……よし。もうそろそろ勉強は終わりにして、外行こう。ちょっと待っててね」
「わーい! ありがとー!」
だが、それを考慮に入れたとしても、この子との生活は大変ではあるだろうが、
だが、
故に、変にやらかす事なく上手く母親として振る舞えるか、不安に思う気持ちも多少はあった。
まあ何にしたって、俺が頑張るしかない訳ではあるのだが。
「お母さま。地面、また変わってるね」
「……うん、確かにまた少し変わってるね」
心内で決意を固めつつ、この子のお願いを聞き入れ外で遊ぶために1階のエリアまで降り、外に出た瞬間にとある変化が起きていた事を確認した。
精霊大樹を中心とした目測半径20mの範囲内の地面が、完全ではないものの、普通の土らしき色合いへと更に近づいていた点である。
目を凝らさなければ気づく事が出来ず、見過ごしてしまうであろうレベルから、目を凝らさずとも気づく事は出来るレベルまで変化していた。
試しに触ってみると、触り心地は砂と土を混ぜたやつと言った感じで、近づいてはいるが、土と言い表すにはまだ遠い感じである。
(3日前にも1度あったし……間隔は今のところ、3日か4日に1度くらいか?)
この現象が起こる前、前兆として精霊大樹を流れる魔力が大地へ急速に流れていき、波紋のように広がる現象が発生していた。神様が、極論何もしなくたって良いと俺に言う最大の理由がこれである。
砂漠地帯特有の環境を恒常的に変えるにはまだ至らず、普通の植物の生育は現時点では不可能だ。過去に大森林だった頃に生息していた動物や魔物も、同様に生存は不可能と言えるだろう。
しかし、完全に砂が土に変化しきれば、その範囲内に限り俺の魔力による保護を行えば、普通に育つ事が出来るようになる。
流石に物理的なスペースが足りないが、理論上は動物や魔物も生存が可能となると断言しても良い。
そして何より、順調に植物が育っていってくれれば、俺の力がなくとも勝手に自然の精霊が生誕するようになるのだ。ここまで来てようやく、第1段階の突破が目処に入ったと言えるのだ。
「お母さま、何だかちょっと嬉しそう。だから、わたしもちょっと嬉しい」
「あ、分かる? 私の目標達成に、1歩近づいてきたからね」
「ルゥゥ、ルォ!」
「おぉ……君も嬉しそうにしてくれるの? ありがとうね、テウルフ」
自然環境を恒常的に変える。言葉にするだけなら簡単だが、実際に行うとなると、自然の精霊女王たる俺でも容易に出来る事ではない。
この子を含めた、数多もの自然の精霊たちの力。
各々の生息圏で精一杯命を輝かせている、動植物や魔物たち。
個々では俺の力には及ばずとも、沢山集まるだけで絶大な力を発揮してくれる彼ら彼女らの助力は、目標を達成するための強力な追い風となってくれる。
それに、俺自身もそうだけど、テウルフやこの子だって自分たち以外にも、一緒にオアシスで暮らす仲間が居た方が良いだろう。
勿論、今の3人だけで暮らせと言われれば、不可能って事はないとは思うが……やはり、仲間は居ないより居る方が断然良いのだから。
「あっ! テウちゃん、動けるんなら一緒にお母さまと遊ぼ!」
「ルゥゥ……」
「こらこら。流石に早すぎるし、今日は休ませてあげなさい。代わりに私が沢山付き合ってあげるから」
「はーい!! テウちゃん、ごめんね!」
「ルゥッ!」
頭の中でそんな事を考えながら、早く早くと言わんばかりに急かしてくるこの子の手を引いて、俺はオアシスの湖へと遊ぶために向かっていった。
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