TS転生精霊女王、神様から自然の再興を任されてしまう 作:ひのかぜ
意図しないものであれ、俺の下へと生まれてきてくれた4人の
大切な我が子への名付けを行うと言う、一世一代の重大イベントを今から行うとだけあって、この場に漂う緊張感は並大抵のものではない。
1人につき1度、儀式を行った後の変更は例外なく不可能である。後悔をしないように、付けた我が子を苦しめる変な名前を付けないように、気を遣わなければならないのだから、至極当然の事だ。
「わたしのお名前……えへへ、お母さまからの贈り物! なにかななにかな~」
「……お姉ちゃん。お母様からのお話聞いてた? 精霊にとって『名前』は凄く大事なもの。私たちと下のテウちゃん以外に、言っちゃ駄目だよ」
「大丈夫! 絶対に大切にするもん!」
「まあ、それなら良いけど……て言うか、これ私の方がお姉ちゃんしてる……?」
しかし、その一方で子供たちは緊張感など存在しないと、言わんばかりに和気あいあいとしている。
最初の子が嬉しさのあまりはしゃぎ、3番目の子がそれを抑えようとする流れになるのは予想通りだが、2番目の子が大人しいのは正直意外だった。
4番目の子のお陰である程度抑えられているのかと、最初はそう思ってはいた。
まあ、実際は嬉しさがオーバーフローして、逆に大人しくなっていただけだと分かり、相変わらずだなと微笑ましく思ったのだけど。
「ありがとうね、皆。じゃあ、私から名前を授かる準備は良い?」
「「「うんっ!!」」」
お陰様で、抱いていた緊張感が嘘のように和らぎ、考えに考え抜いた
皆も皆で心の準備を各々で済ませていたので、俺は早速最初の子の前に手を差し出す。4人一気に行えない以上、時間がかかってしまうのは仕方のない事である。
ここまで行えば、後は考えた名前を口に出してはっきりと言うだけになる。至極簡単な行為だが、まるで難しい事をしているかのように感じだ。
「あなたの名前は、【アエスタ】。これからもずっと、よろしくね」
「アエスタ……うんっ! 大好きだよ、お母さま……わわっ!?」
そして、手を握ってくれた最初の子の瞳をしっかりと見つめ、真剣に考えていたその名前を口に出し、にこやかな笑顔を見せてくれたその瞬間、この子……もとい、アエスタに変化が起こり始める。
外見的な変化に関しては、瞳の輝きが少し増してくるのと、向日葵の花が飾りとして付いた白い麦わら帽子をいつの間にか被っていること、靴にも小さな向日葵の花が飾りとして現れるくらい。
(こいつは……まさに『夏』だな)
内面的な変化に関しては、精霊女王ないし精霊王を除き、精霊の中で最も強い【大精霊】の中でも上位レベルだったアエスタから、発せられる魔力が俺のほぼ半分に迫る強さまで、外見の変化が終わると同時に増大したのである。
加えて、周辺の気温が体感的に数度上昇し、家の中が少し暑くなってきた。が、耐えられないレベルではなく、外の真昼間の気温に比べたら大した事はない。
「お姉ちゃん、凄い魔力……」
「流石はぼくのお姉ちゃん!」
「そりゃあ、僕らのお姉ちゃんだもん」
案の定、この変化に本人のみならず他の3人もかなり驚いてはいたが、まあそりゃそうだろう。俺から説明をしていたとは言え、名前を授かるだけでこうなるなんて、普通は信じられないだろうし。
なお、消費魔力量は雨呼ぶ霊声と同等か若干上回る程度で、決して少ないとは言えないものの、当初の見立て通り4人に連続で名付けるくらいなら、問題ないと分かった。
名付ける相手によって消費魔力が変わらない事が、前提条件とはなるのだけど。
「えへへぇ……お母さま! 次は誰に名前を贈るの?」
「そうだね、順番的には……2番目に生まれてくれた、君かな」
「ぼく!? やったーー!」
そして、間髪入れずに2番目に生まれた子を呼ぶと、アエスタの時と同じ手順で儀式を執り行い、最後に心を込めて
(少し冷えたな。影響はほぼないに等しいが……)
案の定、アエスタと同じように外見・内面的な変化を起こすも、ヴィンターはより内面的な変化の方に比重を偏らせた。
発せられる魔力量が、俺のほぼ半分まで増大したのは変わらないものの、周りの外気温が少し下がったような感じがしたのである。
とは言え、俺はもとよりアエスタ含む2人には影響はなく、下の階に居るテウルフにも尋ねに行ったところ、全然平気であった。まあ、アエスタの力と相殺し合った訳だし、当然の流れと言うべきか。
外見に関しては、冬の椿の刺繍が服に現れた事と、瞳に非常に薄い雪結晶の模様が現れた程度の変化をしたのみとなっている。
アエスタとは真逆で、四季で言うところの冬の要素がより強化された、唯一無二の精霊となったと見て良い。
「さて。次はあなただけど、心の準備は大丈夫?」
「大丈夫。だけど、お母様から名前を授かるって、凄く名誉のある事だから……緊張してる」
「ふふっ。そうまで言ってくれるなんて嬉しいな……じゃあ、始めるよ」
「うん、お願い。お母様」
嬉しさのあまり、アエスタと大はしゃぎしているヴィンターを尻目に、次は3番目の子に対して同じ流れで儀式を行い、心を込めて【ウェール】と呼んであげた。
すると、やはり同じように発せられる魔力量が俺の半分近くまで増大し、これが周辺の大地に活力をより一層与えたらしく、地中深くで眠っていた植物らしき生命の目覚めた数が、以前よりも増えていると察知する。
いわゆる、春の訪れと言うやつだろうか。まだ大きく影響を与えるレベルには至っていないにせよ、大きな1歩ではあるだろう。
「お姉ちゃん。私、姿はあまり変わってなさそう?」
「うーん……あっ! 髪の毛の色が少し変わってるよ!」
「それだけ?」
「うん、それだけ! でも、ウェールは元から可愛らしい姿だから良いじゃん!」
ちなみに、外見的な変化は他2人よりも更に少なく、髪の毛の桜色部分が少し増えたくらいに留まっていた。内面的な変化が特殊であればある程、外見的な変化が少ないのかもしれない。
この辺に関しては、本を読んで勉強していても良く分からなかったが、今のところは不都合もないし、後回しでも大丈夫そうだ。
「母様、最後は僕だね」
「うん、そうだね。じゃあ、始めるよ……」
そして、最後に残った4番目の子にも同じ手順で儀式を実行、心を込めて【ルプス】と呼んであげると、同じ感じで変化をし始める。
発する魔力量は案の定他の3人と同じくらいの強さになり、加えて周囲を穏やかにする力が宿ったらしく、俺を含めた4人の心がリラックス方面へと傾いていく。
自然の精霊なだけに、上手くこの力を利用すれば周辺の気候を
「……ルプス、姿は変わらないね!」
「そうだね、お姉ちゃん。でも、嬉しそうだよ。ルプス」
「当たり前だよ! 何せ、大好きな母さまから大切な贈り物をもらったんだしさ」
「うん。ヴィンターの言う通り、姿が変わらないなんて僕にとっては大した問題じゃない」
ちなみに、ルプスに対して外見的な変化は一切見られなかった。やはり、先程していた俺の推測が正しかったのだろうか。
気になるところではあるが、それを確かめるためだけにこれから生まれてくるであろう精霊へ、名付けを行う訳にもいかないし、何より知らなくたって何ら影響はないのだ。
「お母さま! わたしたちに名前を付けてくれて、ありがとー!」
「「「ありがとね! 大切にするよ!」」」
「はい、どういたしまして」
それよりも重要なのは、4人の我が子が名付けを喜んでくれている事と、懸念点が1つ消えてくれる事なのだから。
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必要
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必要ではない
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どちらでも構わない