TS転生精霊女王、神様から自然の再興を任されてしまう   作:ひのかぜ

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精霊の真名(後編)

 真名を授けた事で、各々四季に対応した属性や特殊能力を身につけた、4人の我が子(精霊)たち。

 

 あの後、有り余る力のコントロールと遊びたい欲の発散も兼ねて、テウルフも含めた6人全員で外出した俺だったが、案の定色々と4人が行う『お遊び』の規模が凄まじい事になってしまっていた。

 

 並大抵ではない暴風が吹き交い、日光や()の力が満ちた弾や光線が飛び交い、夜中の砂漠と同等以上の冷風が吹き荒ぶ。

 仮に、普通の人々がこの光景を見た場合、穏やかな自然とは程遠いと満場一致で即座に頷くくらいには、酷い状況であろう。

 

 万が一に備え、精霊大樹含めたオアシス全体に防御系精霊魔法の【四季の円盾(テルティクトム)】を展開、更に遊ぶ場所を離しておいたのは、まさに正解だったと言える。

 

「わはははー! ウェール、待て待てぇー!」

「追いかけてくる人から待てって言われて、待つ人は居ないと思うよ、お姉ちゃん!」

「だよね……おっと! ヴィンター、わたしに不意打ちは効かないよっ!」

「ふふっ。そんなの、ぼくだって分かってるよ……ルプス!」

「了解……取り巻く霧雨よ、吹き飛べぇ!!」

「わわっ、考えたね! でも、負けないぞーー!」

 

 なお、今現在の俺の役目は『お遊び』が行き過ぎないように、空を飛び交いながら楽しむ4人を見守りつつ、テウルフを流れ弾から守る事だ。

 

 名付け前だったらまだしも、今なら流れ弾程度ならどうにかする力を持つこいつだが、それでも無傷では居られない。

 

 大切な仲間であり、家族でもあるテウルフのためには、この選択が最善だと言えるに違いない。

 

「ルゥゥ……ルァゥ」

「テウルフ、心配せずとも大丈夫だよ。あの子たち、あれでもじゃれ合ってるだけに過ぎないし」

「ウルゥゥ……?」

「信用しづらいって? まあ、確かにその気持ちは分かるけどね」

 

 しかし、これは兄弟姉妹の仲睦まじいお遊びであり、決して喧嘩などではない。例えるなら、ふかふかの枕を投げ合って遊ぶようなものである。

 

 規模が規模なだけに、他人に言ってもまず間違いなく信用してもらえないだろうけど、本当にそうなのだ。

 

 季節を体現した力を持つ4人だからこそ、上手く手加減が出来ていてすら、本気で遊べば周囲に大きな影響を与えてしまうのである。

 

 完全なる想像の話にはなるが、これが正真正銘(全力全開)の大喧嘩であったならば、最低でも見える範囲内では四季の力が荒れ狂い、俺が介入しない場合だと混沌とした天候が何日かは続くだろう。

 

 自然の再興を目指している身としても勿論だが、子供を持つ親の身としては、傷つけ合う4人を見るなんて冗談抜きに嫌でしかない。

 故に、万が一喧嘩をするなら平和的な勝負事、最悪は口喧嘩で決着をつける事を約束させている。

 

 もし破ったら、可愛らしく俺を母親として慕う4人の我が子に対し、心が痛くなって非常に気が進まないが、厳しく叱るつもりだとは伝えてある。

 

 実際にそうなった場合、当の俺がちゃんと厳しく叱れるのかと問われれば、甚だ疑問ではあるのだが。

 

「ねえねえ、お母さま! お母さまも見てばっかりいないで、一緒に遊ぼうよ!」

「アエスタの言う通りだよ、母さま。ぼくも一緒に、はしゃいで騒いで遊びたいなぁ」

 

 なんて考えながら、テウルフと一緒に荘厳とも言えるこの光景を見ていた時、唐突にお遊びを中断したアエスタとヴィンターの2人がふわふわと近づいてきて、ニコニコしながらこう声をかけてきた。

 

 ウェールとルプスの方も後に続いて降り立つと、物凄くキラキラした瞳で俺の方を見つめ、一緒に遊ぶ事を期待しているのがすぐに分かる仕草を、意識してか無意識かは分からないが行ってはいる。

 

 確かに、今まで俺はテウルフの背中に乗りながら移動しつつ、4人が大はしゃぎをする光景を見守っていただけで、1秒たりともお遊びに参加していない。

 

 とは言え、遊ぶのが嫌な訳ではない。一緒についてきたテウルフを流れ弾から保護するためなのと、お遊び中に何かあった時すぐに動けるようにするために、遊んでないだけなのだ。

 

「私は別に良いけどさ、そうなるとテウルフがひとりぼっちに――」

「ルゥゥ、ルゥッ!」

「えっ? 自分の事は構わずに遊んでこい? あー……テウルフも良いみたいだから、遊ぼっか」

「「わぁーい!!」」

 

 加えて、テウルフが遊んでこいと吠えて促してきた事も相まり、俺は4人と遊ぶ事を決断し、少し不安定ながら乗っていた背中から飛び立つ。

 

 特別な外付け装置やそれに類する魔法を使用せず、生身で空中を飛び回ると言うこの行為。この世界に転生してから1ヵ月も経ってない俺からしてみれば、まだ完全に慣れたとは言い切れないが、恐怖は過剰に感じなくなった。

 

 本来なら、余程トラウマになる出来事でもない限りは、初飛行でもあまり恐怖を感じる事はない。一般的な日本人だった前世の記憶が存在するから、過剰に恐怖を感じてしまったのだ。

 

 逆に言えば、それですら1ヵ月もしない内に恐怖を克服出来る程に、種族的本能が強いのだろう。精霊や状況による差はあれど、飛行中に精霊魔法で自動強化出来る特性があってこそと言えよう。

 

「また避けられた! お母さまの飛び方が変過ぎて当たらないよー!」

「こんな感じで良いのかな……えい!」

「わっ! お母様の弾、確かに速くて避けにくいけど、全く避けられなくはないね!」

「2人とも! 母さまばかりに気を取られてると……」

「僕たちが隙を突いちゃうよ!」

「「うおっと!」」

 

 頭の中でそんな事を考えつつ、怪我をさせないように細心の注意を払いながら、先程までの子供たちの真似をして弾をばらまいたり、鬼ごっこをしているかの如く追いかけたりして、俺自身もお遊びを楽しむ。

 

 真名を与えた事で、4人の我が子に対する呪言の影響を大幅に抑え、更に周辺環境の変化による自然消滅の可能性を潰した。

 これだけで、十分に安心出来る要素は揃い、憂いなくお遊びを楽しむ事が可能になると言っても、過言ではないはずだ。

 

 なお、後者に関しては、俺やオアシスの精霊大樹の存在がある限り、真名がなくとも消滅する可能性は非常に低かっただろうけど。

 

「えへへっ! お母さま、ありがとう! 楽しい?」

「勿論、とっても楽しいよ。とってもね」

 

 これで、後は俺自身の名前についてを考えなければならないのだが、後3日後の夜まで制限時間はあるし、最悪思い付かなくてもこの見た目に合わない前世の名前になるだけだから、まあ大丈夫か。

 

 だからこそ、俺は一旦これについてを頭の片隅に置いておき、今は4人とのお遊びを楽しもうと決めたのだった。

 

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