TS転生精霊女王、神様から自然の再興を任されてしまう 作:ひのかぜ
俺の名前を考えるために、夜遅くまで寝ずに話し合ってくれていた子供たち。
そんな光景をこの目で見て、最悪思い付かなかったとしても、前世の名前になるだけだし良いかなどと言うのんきな考えは、頭の中から完全に吹き飛んだ。
と言うか、そもそもアエスタに聞かれる前に、変にこだわらず素早く決めておけば、余計な心配をかけずに済んでいたのだ。
今後は似たような事をやらかさないように、気をつけなければならない。
「これとかどう? 歴代の精霊王・精霊女王が名乗った名前とか、参考になりそうってぼく思うんだけど」
「えぇ……わたしは嫌っ! たった1人のお母さまなんだから、真名は特別なものが良いの!」
「確かにそうだけど、参考にするくらいだったら……ねえ、母さま的にはどう思ってる?」
「うーん。アエスタの気持ちも、ヴィンターの気持ちも分かるしなぁ」
それはそうと、子供たちが持ってきていた何冊かの本なども資料とし、眠気を押して5人で話し合いを始めたは良いものの、内容が内容なだけあってか納得の行く案が浮かばない。
ウェールやルプスはもとより、当の本人である俺よりもアエスタとヴィンターの方が、喧嘩しているのかと思われかねないレベルで議論が白熱していてすら、案は出ても結局はすぐに引っ込めると言う流れが繰り返されている。
個人的には、アエスタの言った【イフォーネ】とか結構気に入ったし、私的には良いと思うよって伝えてはみたけど、良く見たらまるっきり一緒の名前の精霊が居たと言う事で、様々な理由から却下せざるを得なかったのは残念に思う。
「何でだろう? 4人の名前はパッと思い付いたんだけど……あっ、適当に考えたって訳じゃないから信じて」
「そんなの分かってるし、仮に適当でも私は嬉しいよ。お母様」
「うん! 本当なら、わたしたちに名前なんてなかったもんね! それに、数秒でもお母さまの時間を使ってくれた事には変わりないし!」
しかし、こうなるといよいよ本格的に俺の真名としてふさわしい、今の姿に違和感がないか少ないもの、ないし直感的に気に入った真名の候補はなくなってくる。
4人の子供たちの知識はある種本能的なものを除くと、俺の記憶か精霊大樹の中に存在している本が元であり、量が少ない。
また、ありがたい事に俺を大好きな母親として慕う気持ちが強いからか、完璧を求め過ぎている状態となっていた。
一方の俺に関しては、前世日本で培った人生経験や精霊大樹内の本から得た知識があるものの、情報量が多過ぎて逆に思い付かないも同義な状態となった上、まあまあ強めな眠気が更に思考に靄をかけてしまう。
いくつかの候補に絞っては、やっぱり駄目だから却下する流れを繰り返すから、こうして話し合いが平行線を辿るのだ。
「では、ツァイテンとするのはどうです?」
「「「えっ?」」」
だが、何の脈絡もなく俺を、この世界へ転生させた張本人である神様が現れた瞬間から、平行線を辿るばかりだったこの話の流れが急速に変わっていく事となる。
必要ならば精神的なサポートを行うと言ったのと、もうすぐ期限が過ぎるだけあってか、俺たち5人が寝ずに話し合っている光景を天から見ていたのだろう。少しばかり、手を差し伸べてくれたのだ。
(なるほどな……)
で、神様曰くツァイテンと言うのは、ドイツ語で四季を表す意味の言葉から、一部を取ったものらしい。
自分も持っていて、かつ各々が四季を司る力を持つ4人の子供たちの親としても、良いのではないかと思ったとのこと。
「あなたは誰? お母さまの敵?」
「初めまして、アエスタ。正確に説明すると色々面倒なので、便宜上
「えっ……何だぁ、もう! 凄いプレッシャーだったから、お母さまの敵かと思ったよ。ごめんなさい!」
「問題ありませんよ。考えが足りなかった私のせいでもありますので、心配なさらず」
なお、アエスタが特有の威圧感を発する神様を俺の敵と勘違いし、戦闘態勢を取りかける一幕があったが、そこは何とか収まった。
4人の子供の中でとりわけ慕ってくれている彼女だが、これを見ると知らない人間と相対する場面がやってきた時、何かの間違いで予期せぬ攻撃を仕掛けないよう、色々と教える時間を増やそう。
可愛い自分の子供が痛い思いをしかねない、そんな未来がやって来る事がないように。
「驚きましたよ、神様。それで、貴女の提案なんですけど……助かりました。是非、それでお願いしても良いですか?」
「勿論です。貴女がそれで良いのであれば、これで行きましょうか」
そして、真名について悩みに悩み抜いていた俺にとっては、神様の提案は渡りに船。勿論、了承するどころかこちらからお願いした。
これにより、俺の名前を考えてくれていた4人がどう思うか念のために聞いたところ、俺さえ良ければ別に良いよと頷いてくれている。
むしろ、アエスタに至っては「お母さまだって、
あまりにもニコニコしているものだから、嬉しさで言ったら子供たちからの方がかなり上だとは、少し言いにくい。
「では……自然の精霊女王。貴女の真名は、ツァイテンとしましょう」
そんなやり取りを終えると、神様が俺たちの様子を見てから口上を述べ、1回手を叩いて大きな音を響かせる。
すると、俺の身体から淡い水色の揺らめくオーラが発生し、頭に何かが付けられた感覚を覚えたが、自分で見える範囲では服装などに変化は見られない。
「わぁ……お母さま、綺麗になってる! 凄いね!」
「そう? ありがとう、アエスタ」
ちなみに、名付けによる強化は精霊女王も例外ではないらしいが、俺の場合は力そのものが増えた感覚がなかった。
ともなれば、何らかの特殊能力が備わったのだろう。そう言えば、さっきから妙に頭がすっきりしたような感覚があるし、これがそうなのだろう。
授かった能力の一部なだけかもしれないが、仮に本当にこれだけであった場合、もはや強化とは言いがたいレベルで規模が小さすぎるけど、何か困るような事態にはならなそうだから別に良い。
「神様、ありがとうございました」
「どういたしまして。貴女……いえ、ツァイテンはこの世界にとって大切な存在、この程度は大した事ありません」
それよりも、今こうして真名が決まった事の方が重要なのだから。神様に頭を下げたり、まるで自分の事のように喜ぶ子供たちの顔を見ながら、俺はそう思った。
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