TS転生精霊女王、神様から自然の再興を任されてしまう   作:ひのかぜ

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精霊信仰の総本山【幕間】

 レーガラント帝国領内で大きな勢力を誇る、この世界に存在しているあらゆる精霊と共存し、平穏に暮らしていく事を是とする【ピリトス教】。

 

 現状全体としては穏健派が多数を占め、戒律や教えもかなり良いバランスを保っている事もあってか、民衆のみならず帝国政府内にも信仰する者は少なくない。

 

 信仰の自由が保障されているのもあってか、国家の方針を大きく変えるレベルの強い影響力がある訳ではないが、それでも無視をするのは厳しい程には影響力があるのだ。

 

「ここに居る者であれば当然知っておろう。この度、遂に自然の精霊女王様が、アスウェイク大砂漠にて生誕なされた!!」

「「「おぉぉぉ……!!!」」」

 

 そんな宗教の総本山、自然と精霊の街【ティルネス】の中にある【ピリトス霊大堂(れいたいどう)】の中枢では今、教皇【ティルピリオス】を含む幹部8人が一堂に会していた。

 

 帝国各地にあるピリトス教の支部、色々な場所を回っている冒険者や商人や旅人、優れた精霊術士を経由した精霊たちの声などから、自然の精霊女王が生まれた事を知ったためである。

 

 遥か昔……140年前、自然の精霊が減少し続ける原因不明の現象を皮切りに、15年足らずで豊かな森林地帯が地獄の砂漠地帯へと変貌、それによって生じた各種自然現象などにより、凄まじいダメージを各所へ与えた史上最悪の大災害が帝国にて発生していた。

 

 ありとあらゆる垣根を超え、帝国に住んでいる人々が協力して何とか乗り切り、今世代にバトンを繋ぐ事には成功したものの、一時は国家体制すら揺らぎかねないレベルであったのだ。

 

 特に、当時の教皇を含むピリトス教上層部、および信者となった人々にとってこの出来事は非常に強い衝撃を以て受け止められ、十数年間続いた過激派と穏健派の対立の引き金にもなっていた。

 

「ようやく、我々が待ち望んでいた時が来ましたね。思えば、ここまで本当に長かったですよ」

「いつ生誕なされたのか正確な時期は不明だが、ここ数週間で約10回、大砂漠の約半分の領域にて天候が急変……降雨量が急増している。気温差も少しずつではあるが、縮まりつつあるとの報告もあるな」

「遥か昔、多種多様な動植物が生命を育み、精霊たちが活気づいていた大森林へとあの大砂漠がここへ来て、ようやく回帰し始めた。あぁ、何と素晴らしき事か!」

「ただねぇ、その分追いやられた砂漠の魔物共が周辺の村や町に出没する頻度が、結構増えてるのよ。私たちとしても、人員を即座に派遣するべきでは?」

「違いありません。その影響で、精霊様に恨み辛みが行くのは避けたいですし」

 

 長期的に考えれば、帝国の人々にとって凄まじい利益と安寧をもたらす現象であれど、短期的にはそうも言っていられない。

 

 環境の急激な変化によって、砂漠の魔物が周辺の村や町に出現する確率が上昇することを筆頭に、人々にとって不利になる面も決して少なくはないのだ。

 

 現状、自然の精霊女王生誕が魔物の出没率上昇の原因の1つだと知る者はそれ程多くなく、その中でも精霊に恨み辛みを向ける者は更に少ないと言える。

 

 しかし、何もしなければピリトス教全体が非常に懸念している展開、精霊に対する恨み辛みを抱く者の急激な増加による、精霊信仰の衰退が起こりかねない。

 

 それだけならまだ良いが、当時のような大災害と同等ないし、それ以上の規模の災害が起きましたなんて事になれば、精霊信仰どころか最悪国家滅亡も視野に入ってしまう。

 

 勿論、これらの事象が確実に起こるとは限らないものの、可能性が0ではない以上、帝国で最も精霊関連の事象に精通している自分たちが、可能な限り対処していくべきだと、ティルピリオス(教皇)はピリトス教全体に行動指針として示している。

 

「いや、魔物に関しては緊急依頼を受けた冒険者たち、おまけにヘーラの奴までも独自に動いている。動く事自体は決定事項でも、即座に派遣とまではいかなくとも良いのでは?」

 

 なお、ピリトス教の幹部7人は、帝国でも上位に位置する戦術級の実力者だ。

 更に、万が一の時には並の冒険者以上の実力者が所属している、いつでも動かせる遊撃部門の面々も数百人単位で居る。

 

 穏健派であるため、教皇含む8人はもとより遊撃部門の面々も滅多な事では表に出ないが、これがあるから積極的な行動指針を打ち出せているのである。

 

「あー……あの戦略級の狂人ねぇ。大丈夫? 彼女が自然の精霊女王の存在を掴むだけなら良いわ。万が一、何かトチ狂って「愛する民を害した。くたばれ」とか言いながら、喧嘩を売りに行けば……絶対に、困るどころの話じゃなくなりそうよ?」

「彼女の理性は強い方ではあるので、流石に大丈夫でしょう。女王様が直接手にかけたとなった場合は、正直どうなるか分かりませんがね」

「俺も問題ないとは考えている。その辺の事情すら理解しない、しようともしない程に狂ってはいないしな。まあ、お近づきにはなりたくないが」

「そうかしら? うーん……」

 

 だが、それでも上澄みの中の上澄み……戦略級との差は如何ともし難く、一対一では間違いなく勝てない。

 

 また、教皇ティルピリオスは戦略級の領域に到達しているが、戦略級の中でも下位・中位・上位・最上位と、序列が4つ存在している。

 

 帝国に存在する例を挙げれば、紫双の戦女神ヘーラは最上位でティルピリオスは上位寄りの中位となっている。

 

 純粋な力量だけ見れば戦いにはなるが、戦闘経験や得意な戦闘方法などの要素も合わせれば、やはり勝利するには非常に厳しくなってしまう。

 

 帝国に住まう民を理不尽に害する者は、何人たりとも許さない。守るためならば鏖殺する事も辞さないし、それで自身が地獄に落ちようが死のうが構わない。ヘーラの発言として、最も有名な言葉があった。

 

 魔物の出現率上昇に伴い、残念ながら死者が出てしまっている現状なため、ピリトス教は自然の精霊女王生誕の情報を入手すると同時に、ヘーラの動向も追い始めている。

 

「うむ……よし、今回は儂も直に動こう。あやつも儂が居ると知れば、万が一があっても多少は理性も働きやすくなるだろうしな」

 

 こうして、色々と話し合いを行った結果、今回の自然の精霊女王生誕にあたっては当初の予定を大きく変更、幹部のみならず教皇ティルピリオスも積極的に動く事が決定したのであった。

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