TS転生精霊女王、神様から自然の再興を任されてしまう 作:ひのかぜ
少々口は悪いが、戦略級の最上位に分類される程の抜きん出た実力、それを元手に立ててきた絶大な功績により、守護神としてレーガラント帝国の民衆から絶大な支持を得ているヘーラ。
当然の如く、自然の精霊女王生誕により出現した多数の魔物を
それと同時に、活動の最中に出くわした不逞の輩の捕縛ないし始末、大小様々な困り事の解決も並行していたため、ただでさえ高かった人気が更に上昇しているのだ。
特に、当事者となったアスウェイク大砂漠近辺にある町や村の住民たちからの歓迎ぶりは凄まじく、活動中に衣食住に困る事はないに等しい。
何なら、本人は即座に断っているが、時折自発的に報酬として金銭を渡そうとする人物まで出ていた。
下手すれば、犠牲者の数が想像を絶する領域に突入し、小さな村であれば故郷を捨てざるを得ないどころか、この世界から消え去る領域に達する可能性もあったから、そうやって行動に出る人々が出ても不思議ではない。
「お隣よろしいかな、ヘーラさん」
「好きにして」
「では、ちょいと失礼。水飲むか?」
「ありがと。じゃあ、もらっておく」
しかし、そんな中でもヘーラの心は晴れず、むしろどんどん曇っている……いや、大雨だと言い表せる状態である。
今現在彼女が滞在している【スウナ】と言う小さな町も、彼女が来る前から3羽のラスカルトホークに襲われていた。
その戦闘自体は30秒もしない内に終わったものの、コンマ数秒で対処が遅かったため、1人の尊き命が目の前で失われてしまう。
勿論、彼女自身に原因がある訳ではない。運悪く、スウナの町に到着するまでの道中でも、到着してからも
それこそ、被害をここまで抑えたのは凄い事だと、貴女は微塵も悪くはないから落ち込む必要なんてないと、他ならぬ犠牲者の家族から言われる程には。
「助けてくれてありがとう。そして、見ず知らずのうちの子のために、あんなにも泣いてくれてありがとう」
「……」
「こうして実際に会ってみて分かった。噂通り……いや、噂以上に優しくて強いんだな。ヘーラさんは」
「でも、私は守れなかった。あの子も、貴方の笑顔も」
「いや、この町の人たちの命と笑顔は守りきっただろう? さっきも言ったが、盗賊団云々でごたついていた中でのこれは、誇っても良いくらいだぞ」
「貴方は強いね。私よりも、心が」
「ははっ、ご冗談を。俺はただ、こうして現実から目を逸らしているだけさ。現実に向き合ってる貴女よりは弱い、間違いなく」
だが、ヘーラにとっては自分の手の届く範囲で、理不尽から罪のない民衆を守りきれずに死者を出す事を、最も忌むべき愚かなミスと位置づけている。例え、如何なる事情があろうとも。
そのため、励ましを受けながらも、心の中で終わりの見えない反省会と自身の糾弾会を数時間もの間、町の住民と会話を交わしながら続けているのだ。
と同時に、魔物の襲撃が落ち着いたタイミングないし対処にあたる腕利き冒険者の数が増えるなどして、自身の出る幕がなくなった時に、ヘーラはアスウェイク大砂漠へ向かう事を決意した。
この騒動の大元となった自然の精霊女王が今後、愛する帝国の民衆を脅かす『怨敵』となり得るか、自分の目で見て確かめるためである。
戦略級の最上位まで上り詰めた彼女であっても、精霊の最上位の相手は非常に危険が伴う。敗北して死亡する可能性もさることながら、戦闘時に周辺環境へ大きな影響をほぼ確実に与えてしまうからだ。
それに、今回の出来事発生の要因となった自然の精霊女王に、悪意がこもった攻撃の意思がない可能性もある。
流石のヘーラも、これらの要素から実際に会った瞬間に、見敵必殺するつもりはない。
実際に会ってみて、自然の精霊女王が人間に対して害意を持っていて、存在自体が脅威になり得ると判断した時のみ、全身全霊を以て排除しようとしている。
「ヘーラお姉ちゃん、大丈夫? 元気出して!」
「みんないってるよー! ありがとう、まもってくれてって!」
「えへへっ! わたしたちもおなじだよ! お姉ちゃん、ありがとー!」
「……お礼なんて、要らない。私は当たり前の事をしただけ」
「それでも、だよ! お母さんを守ってくれた時のお姉ちゃん、格好よかったなぁ。わたしも、お姉ちゃんみたいになれるかなぁ……?」
「君なら頑張ればなれるとは思うけど、本当に辛いよ。だから、ならない方が良い。私にはこれしか能がなかったからなったけど、誰かを守るって一口に言っても色々な方法があるから」
すると、こんな出来事がありながら、町の広場で元気に遊んでいた子供たちがヘーラに気づいて周りへ集まると、屈託のない笑顔を見せて励まし始める。
盗賊集団に凶暴な魔物の襲撃、子供たちにとっては大人以上に恐怖を味わった時間なだけに、そんな『敵』をあっと言う間に始末した彼女は、格好いいヒーローそのもの。
守りきれなかった子供の事を想って心を痛め、大粒の涙を流し、謝り続けた後に埋葬まで子供の家族と共に行うなど、振る舞いもまさにヒーローであり、多少口が悪くても子供に懐かれるのは道理であると言えよう。
「そっかぁ……分かった! わたしなりに、大好きな人を守る方法を探してみる!」
「ふふっ。ささやかながら、応援してるよ」
「えへへっ、ありがとー! じゃあ、お姉ちゃんも元気が出たら一緒に遊ぼうね! 町の広場で待ってるよー!」
そんな、無邪気で元気な子供たちからの暖かい励ましを受ければ、大雨だったヘーラの心の天気が曇りへと変わり、徐々に日が差し込み始めてきたのも、至極当然の事と言えた。
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