TS転生精霊女王、神様から自然の再興を任されてしまう 作:ひのかぜ
さてと、これからどうしたものか。風と共に開けた窓から吹き込んできた砂の掃除を終えた後、
いくら、あの神様が自由気ままに暮らしてくれて構わないと言っても、全く何もしない訳にもいかないだろう。
かと言って、何かしようにもやるべき事は沢山あるために、何を最初にやるべきかの判断がつきづらい。
こんな事なら、簡単な指針でも出してもらえば良かったと今更後悔するが、もう遅いので諦めよう。
そんな事よりも、これから自然の精霊として生活していく上で何をするべきか、色々と計画を立てる事の方が重要である。
取り敢えず、半ば強制的に押し付けられた自然の再興と言う役割がある以上は、俺自身がどこまでの事を出来るのかを確認する必要はありそうだ。
しかし、今日は転生して1日目。精霊大樹の中はともかくとして、果てしなく長い時間を暮らす事になるオアシスの内情は全く分からず、異世界生活にも当然ながら慣れていない。
故に、出来る限り早い段階で出歩き、我が家の周囲を確認する方を優先した方が良いだろう。異世界生活に少しでも慣れるためと言う点でも、悪くはないはずだ。
まあ、ここで何もせずボーッとして過ごすのも、神様が色々と用意してくれた本などを読んで過ごすのも、同様に決して悪くはない。極論、そんな過ごし方でも良いと言われているのだから。
ただし、やるとしても集中力持続や飽きが来る事を考えれば、3日目くらいまでと言う注釈はつきそうだが。
「よし、行こう」
こんな感じで考え続け、いい加減に決めた方が良いと思い立った俺は、オアシス内部の探索へと向かおうと決めた。
とは言え、今は風が強くて砂が巻き上がって視界が悪いため、止むのを待ってからの出発となる。
多分、と言うか絶対に、この程度の自然現象なら俺がどうにか出来るとは思うが、右も左も分からない状態で試そうとしない方が良いかもしれない。
何も起こりませんでしたとか、ショボい現象しか起こりませんでしたとかなるなら良いものの、出力を間違えて家ごとオアシスを全部吹き飛ばしてしまいましたとなれば、目も当てられないのだから。
(うん、止んだみたいだな。日差しは相変わらずだが、まあ砂漠地帯で過ごす以上は仕方ないか)
そんな事を考えながら2時間半、神様の用意してくれたこの世界について解説した本を読みつつ待っていると、窓の外の景色がハッキリと見える事に気がついた。どうやら、激しめの砂嵐はいつの間にか止んだらしい。
日差しは相変わらず強いみたいだが、それに尻込みしていたら永遠に外出不可能となってしまう。
それに神様曰く、俺の純粋魔力量だけで並大抵の攻撃を通さない防壁にはなるとの事なので、砂埃が目に入って痛いと言うのはないと見ている。
異世界の定番とも呼べる魔物も生息しているらしいが、俺にとって致命的となり得るレベルは居ないらしいから、取り敢えず我慢して外に出ようか。
「あぁ、やっぱり凄く暑い。けど、まだ耐えられない程ではない」
分かってはいたが、全身に照りつける砂漠地帯の日差しはかなり強く、それのお陰でとても暑い。ただ、湿度が高い訳ではないからか、ジメジメした暑さと言う訳ではないから良かった。
それに、これ程の気温の高さと湿度の低さは、洗濯物を干すのには最高の環境だ。時折風で舞ってくる砂などに対する対策と、色褪せに対する対策、干す場所の確保さえしっかりとすれば、すぐにでも使えるようになるだろう。
にしても、時折吹いてくる風で舞った砂が口や目に入ってきて、実に気持ち悪い。しっかりと攻撃判定されているらしく、痛みとかは全然ないのがせめてもの救いである。
また、自然の精霊が
精霊の力量や状況に左右されはするが、平均的に自然毒や細菌・ウイルスへの耐性も非常に高いのだ。
とは言うものの、服とか髪の毛が汚れるのもあって、不快である事には変わりないが。
(こう言うのもなんだが、違和感が凄いな。
色々なものを見ながらオアシスの中をしばらく歩き回り、暑さが半端じゃない位にまでなってきたため、ひとまず最後に水が貯まっているところを見に行くと、底が見える位の綺麗な水面に映った俺自身の顔が、初めて目に入った。
水色混じりの白髪に綺麗な銀の瞳、自分で言うのも自惚れてるみたいになるが……美少女だった。どう考えても、砂漠のオアシスに居るのは場違いで、どちらかと言えば一面銀世界の森とか雪山の方が合っている。
ただまあ、広大な森林や山岳地帯にこんな目立つ姿をした人型の存在が居るのも、それはそれで印象的ではあろう。
(……誰かに見られたら、笑われそうだ)
手を振れば、水面の
微笑みを見せれば、水面の少女も同じように微笑みを見せてくる。
端から見れば……いや、自分でも何をしているんだ
今までずっと、標準的な日本人の男の見た目で人生を送ってきた分、見た目と性別と種族の変化に思考が追いついていないし、今は仕方ないだろう。
(さて、こんな事をしててもしょうがないし、そろそろ行くか――)
などと思考を巡らせつつ、湖底が見える程に透明度の高い湖の水や、俺自身の姿を知る事が出来た今、これ以上ここ留まるべき理由はない。
そう思い、さて戻ろうかと立ち上がろうとした瞬間、何者かの気配を感じると同時に魔物か何かが吠えるような音が聞こえてきたため、咄嗟に振り向く。
「うわっ」
すると、そこに居たのは砂と似た色の体毛を持ち、不思議な力を醸し出している高さ2.5m位の巨大な狼の魔物……【
その体躯や高い身体能力のみならず、土属性の魔法を操る能力にも長けていて、それらを活用して他の魔物だけでなく人も襲って捕食する事がある、危険な魔物の一種として数えられている。
精霊や妖精に対する記述は見なかったし、俺の本能も危機感を微塵も訴えかけてこないが、実際に相対すると迫力満点だ。
人間の時にこんな奴と相対するなど、考えたくもない程に恐ろしい。
「はっ……?」
なんて事を考えていたその時、俺は奴の取った予想外にも程がある行動に対して、面食らう事となってしまった。
本小説の用語解説的なものは必要でしょうか?
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必要
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必要ではない
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どちらでも構わない