TS転生精霊女王、神様から自然の再興を任されてしまう 作:ひのかぜ
「あっ。母様、お願い! この精霊ちゃんのお話、聞いてあげて!」
自然の聖域から瞬間移動魔法で出た後、さて2人を探そうかと行動に移そうとしたその瞬間、視線を横に向けた時にウェールはすぐに見つかった。
だから早速声をかけようとしたのだけど、雰囲気や状況がそれどころではなさそうだったので、出かかっていた言葉は一旦飲み込まざるを得なくなる。
「うん、話を聞くだけなら良いけど……
「この間、母様が魔法で作った湖で遊んでた時に落ちてきたの」
「落ちてきた!? えぇ、嘘でしょ……?」
何者かに痛めつけられたのか、妙にボロボロな中精霊クラスの自然の精霊少女が、ウェールに回復精霊魔法をかけられながら支えられている。
少なくなったとは言え、この大砂漠には凶暴な魔物がまだ生息しているので、一瞬それによってやられたのかとも思った。
だけど、この大砂漠に生息する魔物の魔力とは明らかに違い、それでいて少し不快な力の残滓を感じた事が、俺の考えを否定へと追い込む。
(……本当に何があったんだ? まあ、ロクな話ではなさそうだが)
それに加えて、涙を流す彼女の茶褐色の瞳を見たらすぐに分かるくらい、何かに対して強い怒りや恨みを抱いている。
大切な仲間やそれに類する物や人を奪われているのか、えげつない行為をされて自分の身体や精神を酷く傷つけられたのか、はたまた俺の想像を遥かに超える出来事でもあったのか、何にせよただ事ではない。
オアシスで生まれた精霊たちではない、外部の見知らぬ他人であるとは言え、彼女は同族だ。ウェールにお願いされているのもあり、何もせず無視を決め込むのは少々抵抗感がある。
と言う事で、話を聞いてあげるのは確定として、場合によっては物事の解決に力を貸してあげるのもやぶさかではない。
「えっと、精霊さん? 取り敢えず、私で良ければお話聞かせて――」
「お願い、します……女王さま。わたしの大切な仲間を、助けてあげてくださいっ!!」
そう思いながら、この精霊少女に話を促した瞬間、大泣きしたかと思ったら土下座に似た体勢を取り、声が震える程の意思が籠ったお願いをしてくるものだから、面食らった。
ウェールを含めた4人の子供たちにも協力してもらい、どうにか会話が出来るくらいにまで落ち着かせた後に改めて尋ねてみたのだけど、案の定ロクでもない話であったと強く実感する事となる。
どうやら、彼女はとある1人の人間の少女……リリシアと言うらしいが、その子と親友とも呼べる間柄まで関係が深まっているようだ。
で、つい半日前に【サンデ】と呼ばれる小さな村にて、いつものようにリリシアと一緒に動植物を愛でていたところ、明らかに武装した
当然のように狙われてしまったリリシアを守ろうと孤軍奮闘したものの、想定以上の物量と1人1人の強さだったために何人か薙ぎ倒したところで疲弊、殺されそうになってしまったとのこと。
(マジか……前世でも殆んど見ないレベルの聖人だぞ、リリシアって子)
しかし、そのタイミングでリリシアが逆に身を呈し、人さらい集団に自分が捕まる代わりに彼女の救命を懇願、受け入れられた事で今に至ると言う。
ちなみに、俺の存在はサンデに居た精霊や村人経由で把握していたみたいだ。
「事情は分かった。けれど、私が動くのはかなり厳し――」
「サンデの村までなら、わたしが女王さまを連れて……瞬間移動で行けます! 帰りも同じです! アイツらはまだ、きっとそれ程遠くには行けてないはずだから!」
「ちょっと? まあ、嘘はついてないみたいだけど……あなたの事情にお母さま巻き込んで、お母さまに得あるの? 逆に危ない目にあったりしたら、許さないよ?」
「何でも、命令通りに動きます! 万が一の時は女王さまだけ逃がしますし、何なら全部終わった後に代償として、わたしが死んでも構いません!」
「ちょっ……精霊さん。それじゃあリリシアって子が悲しんじゃうって……」
「万が一の時に命なんて捨てられるくらい、わたしにとってリリーは大切な親友なんです!」
まあ、そうだろうなとは予想してはいたが、いざ現代日本ではあり得ないレベルのエグい人間が存在すると知ったら、気持ち悪くて堪らない。
それと同時に、俺が最初に出会った人間がラヴェラ商団の面々で本当に良かった、いかに幸運だったかを再確認した。
(さて、どうしたものか……)
俺の心情的には、並大抵の脅威をはね除けるだけの精霊女王としての力がある以上、助けに行ってあげたい。彼女が、達成の暁には自分が死んでも構わないと強い決意を抱いているから尚更だ。
だが、アエスタの懸念も理解出来る。情報があまりにも少ない以上、俺を害する事が可能な強さを誇る輩が居るかもしれないし、特殊能力とかがある可能性だって0ではない。
こう言っては彼女に悪いが、俺にとっては人間の少女リリシアより、4人の子供たちの方が大切なのだ。
「なら、母さまと一緒にぼくも行く。
「えっ。いやいや、この精霊さんは瞳とこの行動を見る限り信用に値するし、そもそもまだ行くとは決めてないよ、
「うん。でも、母さま何だか行ってあげたそうな表情だよ?」
「あはは……まあ、正直そうなんだよねぇ」
「じゃあ、いっそのことお母さまとわたしたち全員で行くのはどう?」
「確かに僕も良いとは思ったけど、テウちゃんだけひとりぼっちにするのは良くないし、やっぱり行くなら誰か1人の方が……」
それに、万が一があっては神様にも申し訳が立たない。故に、行くか否かは真剣に時間をかけて考える必要があるだろう。
とは言うものの、話を聞く限りではあまり悠長に構えていると、面倒な展開になりかねない。精霊少女の心情的にも返事は早い方が良いだろうから、考え過ぎないように気をつけなければ。
「まあとにかく、精霊さんがこんなにボロボロな以上、動くにしたってある程度の時間休む必要はありそうだから……ひとまず、治癒としばらくの休憩はさせるよ」
「……はい!」
ただし、今の彼女はウェールの回復魔法を受けているとは言っても、かなり消耗が激しい状態だ。
今後どんな展開となるにせよ、一定の休息と回復魔法がけは必須だろうと判断、ひとまずこの精霊少女を家の中に招き入れ、お願いを聞き入れるか否かはその間に考えようと決めた。
本小説の閲覧、および評価や感想を下さった読者の方々に感謝です。執筆の励みと助けになっています。
差し支えなければ、評価や感想の程をよろしくお願いいたします。
本小説の用語解説的なものは必要でしょうか?
-
必要
-
必要ではない
-
どちらでも構わない