TS転生精霊女王、神様から自然の再興を任されてしまう 作:ひのかぜ
結論から言ってしまおう。俺は精霊少女の懇願を聞き入れ、親友のリリシアの救出に力を貸す事に決めた。
敵である人さらい集団についての情報は、多人数かつ中精霊クラスの彼女を打ち倒せる程だと言うものだけである。
人さらいをする目的や後ろ楯の有無、危険な特殊能力持ちが居るか否か、他にもあれば有利になる情報などは、残念ながら一切ない。
また、このお願いを聞き入れ達成したとしても、現状俺や
言わずもがな、想定外の事態の発生などによって目的が達成出来ない可能性、危険な目に会うリスクが全くない訳ではないのを、しっかり理解した上での判断ではある。
「本当に……本当にありがとうございます、女王さまっ!!」
「もう、さっきも言ったでしょ? 万が一の事態もあり得るから、やる前からあんまり喜ば――」
「待っててね、リリー! 絶対に、わたしが死んででも助け出してあげるから!」
「あー……うん、駄目みたいだね」
それに、リリシアを人さらい集団から救出すると言う事は、その過程で集団に所属する人間と対峙し、邪魔立てするなら躊躇わずに殺す必要がある点も、当然俺は理解している。
たまに襲ってきたりした時とか、テウルフの狩りに同行した時に魔物を討伐するのとは、訳が違うのだ。
オアシスそのものや原初の4人を含む
(……)
しかし、彼女の藁にもすがる思いで頼み込むその様子、死すら厭わないレベルの強い決意を目の当たりにしてしまえば、無視するのは結構厳しい。
神様から制限をかけられていたり、俺の子供たちからの強い反対があったり、俺の力が大して強くなかったりすれば別だが、そうではないから尚更だ。
だが、それでも万が一がないとは言い切れない。多少の想定外ならともかく、俺の命に届きかねない想定外が発生したら……心苦しいが、まだ見ぬ人間の少女リリシアを見捨ててオアシスへと逃げ帰る。
で、いずれその想定外と対峙するために自然再興を行いつつ、これまで以上に力をつける訓練をしなければならない。そうなれば、原初の4人にも付き合ってもらうつもりだ。
「ところで、精霊さん。身体の調子はどう?」
「この方……ハルさまと女王さまのお陰でバッチリです! 派手に戦闘する事だって出来ますよ!」
「えっと、精霊ちゃん? 私に様付けはしなくても良いんだよ……?」
「いえっ! 女王さまの子供であるならば、わたしからしてみれば遥か格上の存在、このくらいの敬意は払って然るべきかと!」
「そう? まあ、強制はしないけどね……」
ちなみにだが、ウェールや俺の回復魔法による治療も相まってか、3時間半の休息でボロボロだった精霊少女は完全に回復したどころか、むしろ元気が滾っている。
ウェール曰く、結局リリシアの救出には俺と彼女の2人で行くと決まった以上、万が一があってはいけないと考え、回復魔法と同時に彼女の身体を大きく強化する魔法をかけたからとの事。
せっかくリリシアを助けても、彼女が敵にやられて死んでしまいましたとなっては、俺が出向いた意味がほぼなくなる。
何より、俺が彼女を守って代わりに傷を負うなんて事になったら、冗談抜きで発狂する自信があると言っていた。
だから、本当は俺が出向かずとも彼女1人でどうにか出来るレベルの強化魔法を使いたかったらしいけど、あまりにも強力過ぎるものは逆に彼女の負担となりかねない。
それに、時間を食い過ぎても負担になりかねない事から、身体強化魔法はある程度の時間が経過すると、自動的に解除される術式が組み込まれていると言う。
であれば、ヴィンター辺りに同行してもらった方が良いかもと思ったが、これは間違いなく汚れ仕事。
精霊ではあろうと、生まれたばかりの子供に人を殺す瞬間を見せるか、実際に殺させるなんて、俺の感覚が許さない。
オアシスを襲撃してきた
「それじゃ、精霊さんが完全復活した以上悠長に構えている理由はなくなったし……もう行けそうかな?」
「はいっ! では、わたしと一緒に魔法陣の上にお乗りください!」
「お母さま……頑張ってね。元気な姿で帰って来て」
「勿論だよ、ナツ。じゃあ、行ってくるね」
「……行ってらっしゃい! お留守番は任せて!」
そうして、元気漲る精霊少女が瞬間移動魔法の準備を終えた事を確認した俺は魔法陣の上に乗り、原初の4人の子供たちに見送られながら、サンデへと向かう。
(流石に早いな。にしても、ここがサンデの村……と言うか、誰かの家の中か?)
とは言え、彼女の瞬間移動魔法によって実際の移動時間は極めて短く、濃い霧に一瞬包まれて晴れた時にはもう既に着いていたのだが。
「おぉ、良く無事に戻ってきてくれた! 隣の精霊様は、まさか本当に……」
「そうですよ、リリーのお父さま! 女王さまが、リリーを助けてくれるって!」
「何と!? 一体どんな手を使って……」
「わたしが一生懸命、命をかけて頼んだらお願いを聞いてくれたんですよ!」
「そうか、そうなのか……本当に、お前には迷惑をかけてばかりで申し訳ないし、無力な俺が恨めしい」
「謝らないで! リリーはわたしの命の恩人、このくらいなんて事ありませんから!」
すると、瞬間移動先の家の主と思われる憔悴しきった男、リリシアの父親が精霊少女と俺を見た瞬間、その青い瞳から涙を流し始めた。自分の娘が助かる光明が見え、嬉しさが込み上げてきたのだと思われる。
「唐突に話しかけてすまない。この怪我は、人さらい集団とやらの仕業なのか?」
「ええ、女王様。この怪我は、唐突に家を襲ってきた奴らにやられました。何も出来ずに殺られかけ、俺が無力なせいで彼女をも死なせかけ、挙げ句の果てに娘を拐われ、精霊様たちにも迷惑ばかりかける……うぅぅ、クソッタレ!」
「……そうか」
だが、俺はそれよりもリリシアの父親が、オアシスにやって来た時の精霊少女よりもボロボロで、不快な魔力らしき力も強く感じるのが気になった。
肩から脚にかけて包帯がキツく巻かれていて、何人かの精霊少女や少年が回復魔法らしき魔法や薬草なども使い、泣きながら必死になってお世話をしている光景は、酷く俺の心を刺激してくる。
幸いにも命の危機には至っていないようなので、このまま治療を続けていけば時間はかかれど、体調の完全快復は成りそうだ。
(クソ野郎共が……いや、野郎だけとは限らないか。まあ、そんなのはどうでも良い)
リリシアのみならず、父親も相当に優しい人物なのだろう。これ程まで自然の精霊に好かれるなど、並大抵ではない。
「まあ、不安だろうが任せておけ。リリシアとやらは私とこの子で見つけだし、無事にお前の下に戻そう」
「はい……よろしくお願い、致します……!!」
そして、こんな惨状を生み出した人さらい集団とやらには、それ相応の報いを受けさせてやらねばなるまい。
心の中でそう決意を抱きながら、俺はリリシアの父親にリリシアを無事に助け出し、この場に連れてくる事を強く誓った。
本小説の用語解説的なものは必要でしょうか?
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必要
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必要ではない
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どちらでも構わない