TS転生精霊女王、神様から自然の再興を任されてしまう   作:ひのかぜ

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救出作戦

 リリシアの父親に救出を約束してからすぐ外出し、精霊少女と共にサンデの村を飛び立った俺は遥か上空を飛び回りつつ、遠視魔法を使って人さらい集団を探していた。

 

 理由は単純明快で、俺たち2人が奴らに発見されて戦闘態勢が整えられ、リリシアが戦闘の盾にされたり、見せしめなどで殺されたりする最悪の結末を回避するためである。

 

 後は、奴らについての情報がほぼない以上、俺や精霊少女の身に何かが起きないとも限らないとの訳もあった。要は、石橋を叩いて渡っているのだ。

 

「女王さま、どうですか?」

「まだ見えないね。不逞の輩も、リリシアらしき女の子も」

「そうですか……あの、もう少しだけ高度を下げてみるのはいかがでしょう?」

「うーん、確かにそうかも。分かった、下げよっか」

 

 救出の流れとして、それらしき集団とリリシアらしき少女をこれによって発見した場合、まずは隙を見て瞬間移動魔法を使い、俺と精霊少女が側に出現する。

 

 その時、間髪入れずに防御魔法の四季の円盾(ティルテクトム)を発動させ、リリシアや精霊少女の身を攻撃から守りつつ、広範囲水属性魔法【水の落星(アスフェリア)】で敵を一掃する。

 

 結果、安全になったところで再び瞬間移動魔法を使用し、四季の円盾を張ったサンデの村に帰還、後は必要に応じてリリシアの治療や解呪などを行い、救出作戦は終了と言う流れになる感じだ。

 

(さてと、出来るだけ楽かつ良い結末で終わってくれれば良いが……)

 

 無論、これは俺の想定が全てないしほぼ外れない事を前提条件とした流れであり、場合によっては大きく流れが変わる可能性も大いにある。

 

 リリシア以外にも、どこからか拐われた人が複数居るかもしれない。

 

 奴らの中に、俺や精霊少女のような瞬間移動魔法の使い手が存在するかもしれない。

 

 何者かに追跡される事を想定し、隠蔽系の魔法なり秘密の逃走ルートなりを事前に用意、使用しながら移動しているかもしれない。

 

 そもそも、遠視魔法や瞬間移動魔法に対する防御策を練っていて、まともに機能していないかもしれない。

 

 他にも色々と、考えれば考える程湯水の如く嫌な考えが浮かんできている。しかし、あまり過剰に考えるとかえって動きが阻害され、良い方よりも悪い方に天秤が傾いてしまう。

 

「……は?」

 

 頭の中でそう思考を巡らせながら、少しだけ高度を下げてリリシアと不逞の輩の場所を探すこと数十分、俺の真下にある川の畔にてとんでもない光景を捉えてしまう。

 

 紫の水晶らしきものが嵌め込まれた首輪をつけた、光沢のある銀髪青目の少女……傷とあざだらけのリリシアが、苦悶の表情をしながらも勇ましく両手を広げ、輩らしき男から後ろに居た精霊の女の子を庇っていたのである。

 

 どんな流れでこうなったのかは分からないが、十中八九大ピンチであることだけは理解出来た。

 

 それに、良く見たらリリシアの脚は限界に近いのか震えている。後は、首輪が何らかの悪さをしているのも相まって……いや、今はこんな事を考える暇などない。

 

「まずいっ! 精霊さん、ちょっと失礼するよ!」

「えっ!?」

 

 なので、少々乱暴ながら精霊少女を右腕で抱え、念のために四季の円盾で俺共々囲ったと同時に瞬間移動魔法を使用、今まさに拳を叩き込もうとしていた輩とリリシアの間に、すんでのところで介入する事に成功した。

 

(ギリギリセーフ……そら、お返しだぜクソ野郎っ!!)

 

 それと同時、リリシアや庇われていた精霊の女の子を結界の中に引き入れて安全を確保した後、俺に攻撃を防がれて唖然としている馬鹿を発射した魔法【氷の槍(アイスランサー)】で貫き、一瞬で全身を凍らせた後に砕いた。

 

 ついでに射線上に居た輩1人にも当たり、自然消滅するまでに貫通した木が氷の彫刻と化してしまうが、不可抗力であろう。

 

 ちなみに、こんな状況ながら再会した精霊少女とリリシアの2人は、無事とは言い難くも生きていた事に感動し、抱き合いながら泣いて喜んでいた。

 

「な、何故ここに……がっ!?」

「黙れ、お前たちの声を聞くだけでも虫酸が走る。汚い我欲の塊が!」

「クソッタレ、結界魔法が全く用を成してねえ! まるで伝え聞く奴の相手をしている様だ!」

「ええい、だから俺は精霊共々殺しておけと言っただろうに!」

「うるさいぞ! リリシアってガキは今後の計画の資金源になり得る容姿を――」

「あっ、またやられました! 奴隷共が次々に結界内部へと……!」

「全く、どいつもこいつも耳障りだ!」

 

 そして、リリシア以外にも居た20人程の奴隷と思わしき少年少女を、瞬間移動魔法で四季の円盾で厳重に守られた領域に運びつつ順次氷の槍で残りの輩を貫き、凍らせて砕く。

 

 殺し方としては残酷な部類に入るだろうが、これは奴隷とされて運ばれていた少年少女を傷つけず、周辺の環境にも配慮した上で敵を確実に仕留め、なおかつ全員の精神的影響を出来るだけ抑える方法として、現在の俺に出来る最適な方法だ。

 

 まあ、正直他にもっと適した方法があったのではと言われれば、色々な面でまだまだ勉強する必要のある俺だから、そんな気がしてならないが。

 

「さてと、輩のリーダーらしきお前に命ず。あの人間たちの首輪に関しての情報を吐け」

「けっ……誰が吐くかよ。吐くくらいだったら死んで――」

「そうか……ならば、望み通りにしてやろう」

 

 で、奴隷とされた少年少女全員を結界内部へと運び入れ、リーダーらしき輩を意図的に半殺しにして尋問しようとしたのだが、抵抗してやるとの強い意思を見せてきたため、即座に他の輩と同様の末路を辿らせた。

 

 リリシアの首にもつけられている、忌まわしき力を発する首輪を無理やり外した結果、永続的な呪いがかけられたり、死亡が確定する可能性を危惧したためである。

 

 こう言った場合にどうすれば良いのか、最適な行動は何だったのか、知識が全くないのが悔やまれる。

 

 でも今は、前世が前世だから致し方ないと考えるしかない。悔やんだって、事態が好転するはずなどないのだから。

 

「あっ、私の首輪……」

 

 だがそれは、俺が最後の輩を殺し、リリシア含めた21人の少年少女を連れてサンデの村へ瞬間移動しようとした瞬間、全員の首輪が自壊し始めたため、不安はすぐに解消される事となった。

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