TS転生精霊女王、神様から自然の再興を任されてしまう 作:ひのかぜ
実子にしろ養子にしろ、親となった人間にとって子供とは自分の命と同等か、それ以上に大切で守るべき存在となる。
前世の俺の両親やリリシアの父親が、その最たる例であると言えるだろう。
それ故に、原因が何であれ子供を失った時の精神的負担は凄まじく、大体の親が現実を生きる活力をごっそりと削がれるし、事実が確定していなくとも、自身の子供が事件や事故に巻き込まれた事を知り、その後どうなったか分からないだけでも間違いなく、精神的に負荷がかかる。
経験者ではない以上俺の勝手な想像でしかないが、総合的なダメージは後者の方が大きいに違いない。心の中の時がその日を境に止まり、何かしらの進展がない限りは再び動く事がないのだから。
「あぁ……リリシア、リリシアなんだよな……?」
「もうっ、何言ってるのさ。私は正真正銘、お父さんの娘のリリシアだよ」
「すまない、本当にすまない……俺が弱いばかりにリリシアを守れなかったどころか、
「謝らないで、お父さんは私を命がけで庇おうとしてくれた。結果としてこうなっちゃったけど、お父さんに愛されてるって実感出来ただけでも、私は幸せだから」
「そうだよ、リリシアのお父さま! 確かに辛かったけど、それはお父さまのせいじゃないもん!」
となれば、自分の子供が無事に生きて戻ってきた時の喜びと幸せは、俺なんかが想像も出来ないくらいには大きいものだ。
無事に生きて戻ってきたリリシアを見た瞬間、涙を滝のように流すリリシアの父親を見ればそうだと分かる。
(よしよし、ひとまずハッピーエンドだな。しかし……)
この光景は、赤の他人の俺ですら思わず涙をもらう程に感動的なのだが、これで喜んでばかりも居られない。
あのクソ野郎共は始末したものの、アイツらにも他に仲間が存在し、ソイツらが再び戦力を整えて襲撃してくる可能性があるからだ。
仮にアイツらに仲間が居なかったとしても、他の似たような輩がサンデの村を発見し、同じような事をしかねないのだから尚更だろう。
「女王さま、リリシアを助けてくれてありがとうございました!」
「私からも、ありがとうございます。お陰様でお父さんやこの子と、再び笑顔で再会できました」
「本当に、何とお礼を申し上げて良いか……俺は、このご恩を死ぬまで忘れません」
「気にするな。その一言だけで、私としては十分だ」
サンデは、リリシアが精霊少女や父親たちと思い出を育んできた、決して替えの利かない
精霊少女や他の自然の精霊たちにとっても、特別な人間であるリリシアとその父親が住む、一種の聖域に等しい場所。
俺としてもこの短時間の滞在で、オアシスには大きく劣れど居心地の良さ自体は感じている。もし何かがあったら、守ってあげたいという感情が芽生えてくるくらいには。
しかし、便利な瞬間移動魔法があるにせよ、サンデを守るためにしょっちゅうオアシスを留守にする事は、絶対に無理だ。
理由は言わずもがな、俺にも守らなければならない大切な家族たちが居る、唯一無二の聖域なためである。
だから、今も村全体を囲っている四季の円盾を俺が居ない間も常時展開出来れば、簡単に敵から守る事が出来て良かったのだけど、維持が大変だとか俺以外だと出入りが極めて面倒になるなどの理由もあり、それは難しい。
「失礼……リリシア。邪な考えもなく、その命をかけて自然の精霊を守り、純粋な人間にも関わらず自然の精霊たちに慕われているお前に、これを授けよう」
「あっ……えっと、女王様。この
「端的に言えば、私と話せるようになる道具だ。対処不可能な危機に陥った時に、私に知らせるのに使え」
「えっ!? そんな凄いものをもらっても良いんですか!?」
「ああ、構わないさ。ただし、他人には
とは言うものの、精霊少女の頼みを聞き入れ、この村に1度関わってしまった以上は無視も出来ないから、俺の力を使って会話が出来るような道具を作り、渡しておくくらいの事はしておこう。
こうすれば、俺がわざわざ様子を見に瞬間移動魔法を使わずとも、再び自分たちだけでは対処が出来ない『敵』が現れた時、リリシアを通してそれを知れる。
結果、取り返しのつかない事態に陥る前に何とか俺が駆けつけ、解決に導けるのだ。
(まあ、リリシアなら大丈夫だろ。ラヴェラ商団の面々よりも、遥かに信頼出来る目をしているしな)
無論、悪用される可能性も考えなかった訳ではないが、自然の精霊たちがこれ程までに懐く人間の1人であるリリシアの目は、この上なく輝いているように見えた。だから、問題ないだろう。
「さてと。少しであれ、怪我をしているお前たちを放置していて申し訳なかった。今すぐ治すから、待っていてくれ……」
「「あっ……」」
そして、リリシアたちとのやり取りを交わしていた5分間、放置してしまった元奴隷の少年少女たち20人に頭を下げ、誠心誠意謝罪をした後、すぐさま精霊魔法の【
霧状にした特殊な水へ、自然の精霊としての力をそれなりに込めているため、死にかけとか強い呪いとかでなければ割とすぐに回復させる事が可能な、上位の精霊魔法だ。
ちなみに、この魔法はウェールとアエスタの2人も使えて、なおかつ俺と比べても遜色ない効果を発揮させる事が出来る。
「わぁっ! 傷が、あざが、どんどん治ってくよ……!」
「ねえ見て! 僕の腕が、また折られる前くらいに動かせる!」
「痛くない……しかも、目が見える……!!」
そうして、全方位に広がる特殊な水の霧は少年少女たち20人のみならず、リリシアやリリシアの父親まで広がり、等しくその身に負っていた傷を凄まじい勢いで癒していく。
(……)
怪我が治り、自分たちが助かった事に対して感極まって泣いてしまう、年端もいかない無垢な子供たち。
十中八九、今回の経験は相当なトラウマとなって、リリシアを含む少年少女の心に暗い影を落としただろう。
残念ながら、俺には身体の傷を癒す事は出来ても、心の傷を癒す事が出来る力は備わっていない。
これを癒すには、安全な場所でゆっくりと過ごしながら、長い時間をかけるしか方法は現状はないのだけど……可能ならば、その傷も治してあげたかった。
「えへへっ! 女王さま、怪我を治してくれてありがとう!」
「「「ありがとー!!!」」」
「……どういたしまして」
トラウマレベルの経験をしたばかりとは思えない程の笑みを浮かべ、感謝の言葉を俺にかけてくる子供たちを見ながら、俺はそう思った。
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