TS転生精霊女王、神様から自然の再興を任されてしまう   作:ひのかぜ

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大自然の化身【幕間】

 レーガラント帝国の東部、アスウェイク大砂漠より150㎞離れている森林地帯の中、数ある小さな村の1つである【サンデ】。

 

 自然との調和を村の固い掟とし、故に純粋な人間を基本好かない自然の精霊も珍しく、サンデの村の人間とは比較的良好な関係を築いている。

 

 また、この村で生を受けた子供たちの多くは精霊術士、もしくは自然に関連する属性魔法に対する適性が高いものの、立地の悪さと自然の精霊たちの意向により、帝国内ではその割には知名度が低い。

 

 更に2ヵ月程前、実力者を揃えた人拐い集団の襲撃に合い、村の子供たちが大勢誘拐された上に、大人や精霊たちにもかなりの被害を与えるという事件が勃発していた。

 

 1人の精霊少女の命をかけた強き意思が伝わり、それに共鳴した自然の精霊女王により事なきを得たものの、自然の精霊たちのよそ者に対する警戒心が振り切れてしまい、一時は物資を運搬していただけのラヴェラ商団ですら、攻撃対象となってしまう程。

 

 今現在は、村人たちの努力によってある程度落ち着きを取り戻してはいるが、未だに自然の精霊たちの警戒心は高いままだ。

 

「エーメルア村長殿。貴殿の治める村はまさに、儂らピリトス教が聖典で思い描いた理想郷そのもの。実に羨ましく、それでいて素晴らしい限りだ」

 

 そんな、襲撃以前の和気あいあいとした村に戻ったとは、とても言えない状況下のサンデに、世界を見渡してみても上位に入る程の実力者、ピリトス教の教皇ティルピリオスが、幹部数名を含む15名を引き連れて来訪していた。

 

 人拐い襲撃事件の報がピリトス教の情報網に引っかかり、その全容を耳にした教皇が、()()()()()()()となったのなら絶対に行かねばならぬと、そう言ったためである。

 

 彼は、精霊に対しては非常に温厚な宗教のトップではあるが、村に住む自然の精霊たちにとっては全く関係ない。一切隠す事なく、強い警戒心や敵対心を向けていた。

 

 だが、いかんせん1番強い中精霊ですら、教皇含めた15人全員に全く歯が立たない程に実力差が開いている。

 

 本能的にそれを察知してしまった上に、相手側は一切敵対行動を取っていない。こんな状況下なため、動けないのだ。

 

「いやはや、まさか貴方のようなお方にお褒め頂けるとは。実に光栄ですよ、聖下」

「そう改まらずとも、近所の爺と接する程度で問題ない。儂はな、貴殿や村人たちと是非とも交流を深めたいのだ」

「分かりました。では、畏れ多いですが……ティルピリオス『さん』で良いですか?」

「うむ、それでよい」

 

 後は、【エーメルア】と呼ばれるサンデの村長を含めた、村人の8割が全く警戒していないのも、精霊たちを躊躇させる要素の1つになっている。

 

 凄まじい威圧感はあるが、あの人間たちは悪い奴ではないのかもしれない。

 

 いや、表向き温厚で優しいと装っているだけで、いつかあの時の奴らみたいに村を荒らし回り、信頼出来る大人や大好きな子供たちを傷つけそう。

 

 そうでなくとも、何か悪い事を企むおじいさんたちではないか。

 

 口には出していないだけで、精霊たちの心内はそんな感じで一致している。

 

「うーむ。この様子だと、あまり長居しては精霊たちの更なる刺激になり得るか……ならば、交流はまたいずれとして、手短に重要な要件だけ伝えておこう」

「要件、ですか」

「ああ、実はな……エーメルア殿の治めるこの村を、ピリトス教としての重要な()()として、指定しようと思ったのだ」

「何と!? あっ……」

 

 なお、そんな精霊たちの様子を見た教皇は当初の予定を白紙とし、重要な用件だけを手短に伝え始めた訳だが、その内容がまた場をざわつかせてしまう。

 

 ピリトス教において、聖域とは自分たちが持つ力を使って守り、少しずつ発展させていく必要がある場所の事を指す。

 

 仮に聖域に指定された場合、その場所に物理的に極めて適していないか、持ち主がいた場合は交渉の末に了承が得られなかった時以外、基本的には大規模な【霊堂】が建つ。

 

 そして、ピリトス教の抱える人材や物資のみならず、冒険者ギルドにも教皇の名前で莫大な報酬と共に依頼が出され、かなりのペースで対象となった場所の開発が進む。

 

 勿論、必ずそうしなければならない訳ではなく、場所によって臨機応変に守護態勢を変える事が可能な柔軟性もある。

 

 例を挙げると、強力な結界を多重掛けしたり、瞬間移動魔法が使える戦術級以上の実力者が長期滞在したりなど、こんな感じだ。

 

「えっ……そのどういうこと……? せいいきって、なあに……?」

「わかんない! わかんないけど、たぶんもっとたくさん人間がやってくるってことだよ!」

「村長さんも、あんな顔して大声をあげるってことは……やっぱり、危ない人間だったんだよ!」

「あわわわわ……リリーちゃんにこの事伝えて! ぼくたちじゃ、どうにも出来ない『敵』が出たって!」

「えっ、でも……女王さま――」

「もたもたしてないで早くっ! お叱りなら後で沢山受ければ良いでしょ!?」

 

 村長も、まさか教皇からこんな突拍子もない話をされるとは思わず声をあげて驚いてしまい、その影響で周りで見守っていた自然の精霊たちも、盛大にパニックを起こしてしまう。

 

 そして、当の村長や何事かと集まってきた村人たちが一生懸命宥めるも意味を成さず、どんどんとパニックが連鎖していき、最終的にはリリシアやリリシアの父親にまで伝わっていく。

 

 なお、この状況下で「女王さま」とのワードを聞いた教皇は、内心でこれは不味い事態に陥ってしまったと、自分の行為は盛大なる誤りであったと、冷や汗をかく。

 

 戦術級を大きく超える戦略級の実力者ではあれ、あくまでも上位寄りの中位。戦略級の最上位を以てしても危険極まりなく、精霊の最上位クラスを相手取るには大きく不足しているのだ。

 

 そもそもの話、ピリトス教の性質上どれだけ弱くとも、精霊を殺すための攻撃は余程の例外を除いてやってはならない、禁忌としての立ち位置。

 

 今回の場合、許されるのは防御や回避、逃走の3択である。

 

「ふむ……お前たちは、何者だ? 私が認めたリリシアの村に手を出そうとするならば、如何なる者でも容赦はせんぞ」

 

 そうしてパニック状態の自然の精霊たちを経由し、リリシアに話が伝わってからおよそ30秒、この場の何者よりも絶対的な力を内に秘めている大自然の化身が、水の輝きを纏って現れた。

 

 

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