TS転生精霊女王、神様から自然の再興を任されてしまう 作:ひのかぜ
あの日から2ヵ月後、俺があげた木の指輪を通して鬼気迫っていると、すぐに理解出来る声色のリリシアからそう伝えられた俺は、大層驚いた。
自然の再興に向けて、オアシスで生まれた精霊たちや原初の子供たちと一緒に苗木を植えたり、いつの間にか生えていた植物の成長を促したり、精霊の魔力を注いで湖の水質の高水準維持を行うなど、平穏な1日を過ごしていた最中のこれである。
しかし、状況からして逼迫しているのは理解出来たため、すぐに行くから待っていろと伝え、オアシスの皆にもごめんねと頭を下げた。
で、万が一に備えて精霊魔法の1つである
「確かに、こやつらに中精霊では歯が立たないか。殊更、駆けつけるのが間に合って良かった」
「うぇぇぇん……女王さまぁ、リリーに伝えたのはわたしです。呼び出してごめんなさい……!」
「気にするな。厳密に言えば違うが、私にとっては自然の精霊は我が子も同然。我が子が愛するならば、この村の人間もそれに類する存在。手の届く場所に在るならば、助けを求められれば無償で助けるのは当然の事だ」
「えへへぇ。ありがとうございます、女王さま……」
頭を垂れている15人全員、真っ白なローブを身に纏い、片手に【精霊聖典】と書かれた分厚い本を携えている。精霊を信仰している宗教か団体なのだろうか。
しかも、全員が中精霊はおろか俺が殺した不逞の輩を凌駕する実力者で、1番前に居るお爺さんに至っては、原初の子供たちの推定6割の魔力をその身に秘めていた。
やろうと思えば、俺が来るまでにこの村を更地にする程度は余裕だっただろう。
それをしなかったのは、俺への情報伝達が凄まじく早くて動く間もなかったか、最初からするつもりなんて微塵もなかったかの2択なはず。
まあ目的が何にせよ、平和に慎ましく暮らしていた村人や自然の精霊たちを刺激し、パニックを引き起こしたのは間違いない。すぐに攻撃を行いはしないが、威圧感は出して話は聞こう。
勿論、場合によっては事前に宣言した通り、情け容赦なく全員を自然へ還すつもりである。
「さてと。パッと見、犠牲者も出ていないようだからな。申し開きがあるなら特別に聞いてやろう」
「……」
「ただし、事と次第によっては、お前たちの命は自然へ還る事となる。人間の間でどれだけ高位の者であろうと関係ない。良いな?」
「はい、感謝致します。
「よし、言ってみろ」
「では、失礼して……」
そうやって威圧し、話を促したお爺さんが口に出した話を聞いていく内に、このお爺さんを含めた15人が俺の予想を大きく超える大物であった事が分かり、内心で戦慄した。
確かに、見た目通りに宗教……精霊信仰を是とするピリトス教の信仰者だったのはともかく、ティルピリオスと名乗ったお爺さんが教皇、ピリトス教のトップだと誰が想像出来るのだろうか。
それで、この村に来たのも2ヵ月前に俺が不逞の輩を殺し、拐われた子供たちを助けたあの出来事を聞き付け、自然の精霊女王が守った村は我々の理想郷だとテンションが爆上がりした事。
同時に、サンデの村をピリトス教の聖域として指定し、自然との調和を是とするここの掟に則って発展させ、同時にクズ共から守ろうとする思いからした行動だと、嘘偽りのない
「女王様。儂とした事が、この村の者や精霊様たちの気持ちを考えず、酷く怯えさせてしまったのは紛れもない罪であると、今更ながら海よりも深く反省しております」
「うむ、ティルピリオス……だったな。お前の目を見れば、今の話は全て真実だと私に思わせてくれる。反省の意とやらも、本当に深いのだろう」
「こんな儂の言葉を、信じて下さるのですか……?」
「ああ。ひとまず今は、信じてみようと思う。だが、同じ事を繰り返すようでは駄目だ。気を付けろ」
「……女王様のご厚意に、感謝の念を。ありがとうございます」
で、村人や自然の精霊たちをパニックに陥れた件についても、本人の言葉通りに反省しているのが良く分かったし、一緒に来ていた数名の幹部含めた14人も、教皇と全く同じ輝きを持つ瞳をしていた。
結論としては、もう気を張らなくても大丈夫だろう。そう判断したため、発動させてた
今回の出来事は、逸ってしまった教皇が対策もせずに部下共々来てしまい、それを勘違いした精霊たちがパニックを起こした事で起きてしまった、一切の悪意なき人災なのだから。
とは言え、悪意の有無に関わらず次から気をつけてもらわなければ、流石に擁護は出来ないが。
「そして……エーメルア村長殿、それに数多もの精霊様。平穏だったこの村を騒がせ、あろうことか怯えさせてしまい、大変申し訳ありません。ピリトス教教皇ティルピリオスの名において、お詫び申し上げます」
「あっ……えっと、ティルピリオスさん。どうか頭を上げてください。こちらとしては、全く怒りなどは抱いておりませんから」
「ねえねえ、この人間たちは敵じゃないんだって」
「なーんだ、敵じゃないの? まあ確かに、女王さまが認めたなら間違いないねっ!」
「もう、びっくりしたよ。でも、これで落ち着ける」
「なんとか教……? のまっしろお爺さん! こんどはおどかしたりしないでよね!」
「無論ですとも。同じ失敗は2度としませんよ、精霊様」
でもまあ、村長や村人たち、集まってきた自然の精霊たちに対して頭を下げ、心を込めて謝罪をする教皇や部下の人たちを見れば、俺絡みで同じ失敗をする事はもうないと見て良い。
教皇やその部下14人は、当時のラヴェラ商団の面々とほぼ同等に信用に値する、この世界の人間として認めよう。何なら、現時点でサンデの村に住む村人も同等だろう。
なお、リリシアの信用度はもはや別格だと、俺は見ている。精霊少女を身を呈して庇っていたあの光景が、脳裏に焼き付いて離れないのが理由だ。
「さてと、ひとまず今回は我々はこの村を後にしましょう。今度はしっかり、事前に通達を行ってからにしますのでご安心を」
「了解しました。ティルピリオスさん、お待ちしております」
ちなみに、自分が色々と騒ぎを起こした事を謝罪後も相当気にしているようで、教皇は村に来た目的を達成しようとする事なく、後日改めて来訪した際に込み入った話をすると決めていた。
本小説の用語解説的なものは必要でしょうか?
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必要
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必要ではない
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どちらでも構わない