TS転生精霊女王、神様から自然の再興を任されてしまう 作:ひのかぜ
今回の案件は、ピリトス教の教皇一行の逸りとリリシアたちのパニックにより引き起こされた、一種のすれ違いによる事故のようなもの。
鬼気迫るリリシアからの知らせを聞いた時はマジで焦ったが、終わってみればサンデの村や村人、リリシアや精霊少女たちが傷ついたりする事はなく、精霊女王として少し介入する手間を取るのみで済む。
宗教勢力との戦いが発生し、巡りめぐって例の戦女神とやらをも巻き込んだ、大規模な戦争へと発展していく可能性がゼロではなかっただけに、俺は胸を撫で下ろす。
「よっと……わっ! もう、急に飛び込んできたら危ないでしょ? ヴィンター」
「えへへ……ごめんなさい、母さま。それと、お帰りなさい! サンデの村、どうだった?」
「大した事はなかったよ。初めての事態で、精霊さんたちがパニックになっちゃってただけだったから」
「ふーん、それならよかった! ところで、母さま。母さまがオアシスに居ない時、お仕事殆んど終わりにしちゃったんだけど……」
「あっ、そうなの? じゃあ……あれ探し、やろっか?」
そして、気が引けるくらいに謝ってきた教皇一行、事態を収めた事に対する感謝を述べてきたリリシアたち村の面々とのやり取りの後、オアシスに戻ってきた俺は原初の子供たちや精霊たちと元々やっていた作業を再開した。
ただし、俺が居ない間にアエスタが音頭を取ってあらかた終わらせてくれていたため、かねてより考えていた計画の最序盤へと取りかかる旨を伝える。
どうせなら、前世の故郷である日本のように、四季折々の自然の眺めが楽しめる大森林にしてやろうという計画だ。
なお、序盤にやる事はこのオアシスを中心とした一定範囲内に、原初の子供たち独自の勢力圏、周囲に秘めたる力を行き渡らせる中枢となる、【原初の領域】を作ること。
例えば、精霊大樹があるこのオアシスをアメリカ合衆国の連邦政府、およびホワイトハウスだとするなら、原初の領域はアメリカ合衆国の州政府のようなもの。
言わずもがな、州政府の庁舎に相当する領域の
いかに自然の精霊女王と言えど、無から自分の望み通りの生命を即座に生み出すなんて芸当は不可能だし、仮に出来たとしてもやりたくはない。
そもそも別に、原初の領域を作らずとも精霊女王たる俺の力さえあれば、計画達成はいずれ可能ではある。だけど、子供たちが俺の手伝いをしたがっている上に、何より万が一の際のリスク分散と負担軽減にもなる。
「あれって、わたしたちのお家のこと? お家を作るだけで、お母さまのお手伝いができる……えへっ、楽しみだなぁ」
「でも、ぼくたちのお家って、母さまのお家みたいなものでしょ? すぐにできるものでもないよね?」
「うん。家自体を作るだけなら、全力でやって4人分を1~2年くらいだけど、家に出来る木の苗を探す時間とか、その他諸々の要素を含めて、完璧な領域として機能させるには倍以上の時間がかかるかな」
「そっかぁ、お母様。人間とかならともかく、私たちみたいな精霊にとっては大した時間じゃないけど」
極論、領域は大砂漠内にありさえすれば良いので、作る場所については深く考える必要性があまりない。
が、俺の家でもある精霊大樹はもとより、原初の領域同士も可能な限り等間隔かつ、付かず離れずな距離になるように配置した方が、何かと都合が良いのは確かなのだ。
勿論、それを1つ作るだけでも相当な時間と精霊としての魔力、集中力が高水準で求められるので、4つ作るとなるとそれまでの状況にもよるが、最低でも年単位は想定する必要がある。
ただまあ、ウェールの言う通り精霊は普通の人間に比べて遥かに長寿……と言うか、対応する概念さえ一定程度あれば不老であり、一定のラインを下回るか、物理的に殺されなければ基本的に何年でも生きる事が出来る。
それこそ、力のある精霊であれば数百~数千年は容易いし、今代の光の精霊女王【ルミエール】のように、1万年この世界に留まる事だって可能なのだ。
神様からそう聞いた時、俺は元人間としてあまりにもデカ過ぎるスケールの話に、もはや何の反応を返す事すら出来なかったのを覚えている。
「長い時を生きる精霊や妖精にとっての1~2年は、人間に例えるなら1日か2日。ちょっと待てば、すぐに過ぎ去る程度の時間でしかないしね」
「そうそう! だから、油断してると時間を無駄にしちゃうんだよねー」
「でも、ちょっとぐらいだったら無駄にしても良いんじゃないの? ほら、母さまも平和な時間の無駄遣い日とかって、何もしないでのんびりする時あるしさ」
「確かに!」
ちなみに、サンデの村に居る自然の精霊たちもあの見た目と振る舞いからは想像つかないが、大半が村一番の長寿であるお爺ちゃんよりも、かなり年上らしい。
リリシアに懐いている中精霊に至っては、村近くの森で生まれてからもう300年くらい経っているという。精霊としての力はともかく、精霊歴に関しては大先輩も良いところであった。
(……)
生まれたばかりの
精霊女王ないし精霊王という存在は、精霊同士なら力量の差に関係なく
なお、精霊の最上位同士であればそれ以下の精霊同士の関係性とほぼ同様で、
「あっ、お母さま! この木の苗、何だかスッゴく暖かい感じがするよ!」
「どれどれ……おぉ、良いじゃん。どの苗よりも生命力に満ち溢れてるし、これならいずれアエスタのお家に相応しい大樹になると思う」
ニコニコしながら寄ってきた、元気なオアシスの精霊たちと戯れたり、子供たちとのやり取りを楽しみながらのんびりオアシス中を探し回る事おおよそ1時間、この間作った湖の隅の方にひっそりと生えていたのを、アエスタが発見する。
それは、普通の木の苗のように見えたものの、発する生命力がオアシスの植物の中でも随一で、どういう訳かぼんやりと暖かな光を放っていた。
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