TS転生精霊女王、神様から自然の再興を任されてしまう   作:ひのかぜ

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光の聖域【幕間】

 現代に存在している、精霊女王ないし精霊王の中でも最古参、1万年という悠久の時を生きる、あらゆる『光』を司る力を持つ精霊女王【ルミエール】。

 

 強固な結界に隔たれた遥か上空(天界)、常に太陽の光を浴びる場所に浮かぶ光の理想郷……もとい、【光想郷(シャングリラ)】。その中心部にそびえ立つ、荘厳な神殿に彼女は暮らしている。

 

 なお、結界が光学迷彩のような役割を果たしているため、外側からは基本的に視認する事が不可能だ。無論、通常の手段では立ち入る事すら不可能。

 ルミエール本人か、大精霊以上の高位の精霊が認めた者のみが視認し、領域への立ち入りが許される。

 

 また、その性格は()()()()温厚かつ非常におおらか。彼女の下につく光の精霊もその影響を受け、同様の性格である事が多い。

 

「ふふっ……今日も元気いっぱいで良いものね~」

「どうかされましたか、ルミエール様。本日は随分とご機嫌なようで」

「あら、やっと出て来てくれたの? 見てみなさい、エゼル(光の守護者)。ここ、帝国の人間たちが地獄と呼ぶ砂漠の中心を」

「アスウェイク大砂漠でしたっけ……ん? なんと! これは、まさか……!」

 

 そんな、人々のみならず日の光を糧とする存在から有り難がられているルミエールであったが、ある時定期的に行っている下界観察中に、自然の精霊女王【ツァイテン】が誕生したという事実に気付いて以降、ずっと表情が緩んでいる。

 

 1万年も生きているが故に、滅多な変化では特に心を動かされることはない。数え切れないくらい、国家の存亡や大災害や災厄の襲来をその目で見たり、時には当事者となってきたり、他にも想像し得ることは全て経験済みだからである。

 

 言い方は悪くなるが、人間たちにとっては心を動かされるようなことであっても、ルミエールにとっては単なる暇潰しかそれ以下である場合が殆んどなのだ。

 

 ただし、同じ精霊女王や精霊王の消滅や生誕ともなると、場合によっては世界に与える影響が、文字通り桁違いとなってしまうため例外。

 

 光想郷やルミエール含む光の精霊には、他所への影響と比較してそれ程規模が大きかった訳ではないものの、無傷で済んだとは言い難かったのだ。

 

 ツァイテンに関しては、通常の世代交代によって生まれた精霊女王ではなく、先代の消滅も普通ではあり得ない形であったことも、ルミエールが興味を引く一因となっていたが。

 

「そう。彼女は今代の自然の精霊女王、ツァイテン。側の4人は彼女の守護者(子供)かしら。和気藹々としてて可愛いわね~」

「凄い……しかもあれ、守護者の1人(アエスタ)が植え替えようとしている陽気を発する木、精霊樹ですよ」

あの子(ツァイテン)、歴代の自然の精霊女王の中でもかなり上位の力を誇っているから当然よ、エゼル。それにしても、あのウェールって子とルプスって子の着ている衣服、『着物』って言うのね。初めて見るわ」

「確かに。守護者の装いは、精霊女王や精霊王の意向が反映されると言いますが……生まれたばかりというのならば、一体どこでこのような衣類を――」

「まあ、そんなことどうだっていいじゃないの。それよりも、私が着たら似合うかしら?」

「……さあ、どうでしょうね。普通に入手するとなると、かなり大変そうに見えますが」

 

 後は、単純に長命種族故の性である、過度な退屈による精神の退廃が万が一起こらないようにしたいという思いも、決して小さくはない。

 

 純粋な力量は精霊女王や精霊王の中でもトップクラス、最古参故の知識と経験も加えれば、まさに鬼に金棒。

 精神退廃の憂き目に会えど、そう易々と消滅するような存在ではないのだが、世界への影響はその概念からして大きくなってしまう。

 

 何だかんだ、この世界を気に入っているルミエールにとって、自分のせいで災厄が起こるのは認められないため、精神衛生には気を遣っているという訳である。

 

 ちなみに、ルミエールが自然の精霊女王やその守護者の真名を知れたのは、彼女の下界観察に使用された能力が非常に優れていたこともあるが、当人たちが領域の中枢に張られている特に強固な結界の範囲外で、真名を口にしたのが1番の要因。

 

 とはいえ、それを知ったのは元となった概念こそ違えど、同じ精霊女王とその守護者。全く問題はない。

 加えて、人間を含む他種族には厳格に真名の流出を防ぐ必要はあるが、そうでなければその辺はかなり緩い傾向にある上、それによる問題が発生したことはないのだ。

 

 そもそもの話、仮に流出したとて精霊女王ないし精霊王、その守護者に通ずる呪言を使える者は非常に限られている。無論、流出しない方が安全であることには変わりないが。

 

「ルミエール様。その、他の精霊女王、ないし精霊王の方々はどのような反応を示されているのでしょうか」

「まず、大地の精霊女王や風の精霊王、次点で水の精霊女王はやかましい程に大喜び。早速、生誕祝いとして直接会いに行こうとするくらいにはね。まあ、直接は時期尚早だと止めたけれど」

「ふむ、なるほど」

「それとね、火の精霊王はいつも通り(素っ気ない)、闇の精霊女王は珍しく興味関心が高そうだったわ」

「本当に珍しいですね。やはり、精霊女王の生誕は別格ということでしょうか」

 

 そして、ルミエール以外の精霊女王ないし精霊王の面々も、ツァイテンの生誕を認知している上に全員が祝福している。闇の精霊女王以外、先代の消滅による影響をもろに受けてしまっていたからという理由があったのだ。

 

 無論、そうは言っても今現在は既に解決済み。ツァイテンの生誕よりも遥かに昔、強力な対応策を講じて決行したことが功を奏していたため、当然であると言えよう。

 

 ちなみにだが、他の精霊女王や精霊王には直接会いに行くのはまだ早いと言っておきながら、ルミエール本人はツァイテンに会いに行く気満々である。

 

「それはそうと……ルミエール様、あなたも例外ではないですよ。むしろ、あなたの方が正直心配です」

「分かっているわー。先んじてお手紙は送ったけれどね~」

「……大丈夫でしょうか、この人」

 

 勿論、ルミエールに近しいエゼルがそれに気づかないはずもなく、今は直接会いに行くなと諌めてはいるものの、好奇心も人一倍ある彼女に対しては、あまり効果を発揮していないようではあったが。




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