TS転生精霊女王、神様から自然の再興を任されてしまう   作:ひのかぜ

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光の精霊女王と守護者の来訪

「女王さまっ。えっと、えっと……お客さまが来てますっ!」

 

 随分と、このオアシスも賑やかになってきたなぁ。テウルフの世話を終えて、子供たちを構いながら大樹の根元でそんなことを考えていたある日の昼間、随分と慌てた様子の中精霊に声をかけられる。

 

 常時気を張っている訳ではないから、一応オアシスを訪れる来客を見かけたら伝えて欲しいと、子供たちやここで生まれた自然の精霊たちには言ってあるが、普通の来客程度ならここまで慌てることはない。

 

 例えば、気楽な感じで「お客さまが来たよー」と教えてくれたり、「人間さんがお水くださいだって!」と、ニコニコで教えてくれるのだ。

 

 精霊たちが怖いと感じるくらいにヤバい、人外レベルの実力者の人間が来たのだろう。いや、精霊としての格が違う、ルミエールとその守護者が来たという可能性も捨てきれない。

 

「うん、一応聞くね。そのお客様って、もしかしてこの間私が言った、光の精霊の女王様だったりする? 輝くような金色の髪で、とっても大きな白い翼の」

「えっと……はいっ! それと、もう1人お隣に……守護者のエゼルって名乗ってました!」

「あー……」

 

 と思いながら、慌てている中精霊を落ち着かせつつ聞いてみると、後者の予想が当たっていた。気を張って確認してみたところ、オアシスの外縁部……昨日、適当に作った池の畔で他の自然の精霊たちと戯れながら、のんびりと待っている様子が確認出来る。

 

 ルミエールから、俺や俺の子供たちに会いたい旨が書かれていた手紙が届いて2週間後に、再び来た光の大精霊に渡した日からまだ3日しか経っていないのに、もう来るとは。

 

 1ヵ月以内に来そうだとは思っていたが、たった3日で来るとは予想が出来ておらず、準備を完全に終えることは出来なかった。

 この世界における最上位精霊の最古参、いわば大先輩を相手にするのであれば、それ相応の準備はしておきたかったのだが、まあ仕方ない。

 

 人間であれば自然の精霊女王モードで行ってたが、今回はルミエールと守護者のエゼルという光の精霊が相手なので、ここはひとまず会社での仕事モードで行こう。

 その後の振る舞いについては、ルミエールやエゼルの反応を見つつ、場合によっては適度に変えていくかと考えたものの、恐らく仕事モードのままで大丈夫だろう。

 

 そして、子供たちにははしゃぎ過ぎないように、かといって過度に萎縮する必要もないことを教えておく。

 

 興味津々に近づいていく自然の精霊にも嫌な顔1つせず、まるで歳の離れた妹に対する姉のごとく接していて、楽しそうな感じを漂わせているからだ。

 

「ほらほら、モフモフの翼ですよー……あら、こほん……こんにちは。今日はお願いを聞いてくれてありがとうね~」

「あっ、はい。どういたしまして」

「ちなみに、改めて自己紹介させてもらうけれど、私の真名はルミエールで隣の彼が守護者のエゼル。無理にとは言わないけど、あなたと子……守護者の真名も教えて」

「えっと……私の真名はツァイテン。で、こちらが右から順番にウェール、アエスタ、ルプス、ヴィンター。守護者というよりは、自慢の子供たちです」

「「「「えへへぇ」」」」

「あらまあ可愛い。確かに、そうみたいね~」

「ええ。ルミエール様と同様、私もこれはとても素晴らしい関係性だと思いました」

 

 教えてくれた精霊少女(中精霊)にお礼を言った後、俺と子供たち全員は池の畔で待つルミエールと守護者の下に向かい、簡単ながら自己紹介を含めたやり取りを交わす。

 

 一応、お互いに真名での自己紹介を行うので、念には念を入れて結界を一時的に1段階強力なものにしたが……まあ、この場に悪意ある存在は居なさそうだし、特に心配はしなくてもいい。

 

(……ふぅ)

 

 前もって調べた通り、彼女はとても穏やかでおおらかな精霊であり、事前まで感じていた緊張感が和らいできた。子供たちも、そんな俺を見てか少し身体の力を抜いている。

 

 ただし、その身に秘める魔力の質と量は凄まじいの一言。ピリトス教の教皇は勿論のこと、俺自身すら上回っていると実感する程であった。純粋な魔力量だけは、そこまで差はないといった感じだが。

 

 まあ、そりゃあそうだろう。元となった概念は光、なおかつ1万年という悠久の時を過ごし、多種多様な知識と経験(技術)を持つであろうルミエールに、生まれたばかりの俺が勝てる訳がないのだ。

 

「もしかして、ちょっと緊張してるの?」

「まあ、はい。ルミエールさん、大先輩ですし」

「ふふっ。今代の精霊の最上位同士は、そんなのあってないようなものよ。確かに、生きてきた年代故の諸々の知識とか技術の差はあるけどね~」

「なるほど」

 

 同じ理由で、俺の子供たちは同じ守護者であるエゼルには魔力量では同等でも、恐らく勝てない。

 

 対立するつもりなんて一切ないから、勝てないこと自体は別に良いのだが、それはそれとして俺や子供たちの力をより一層増やしてはおきたいと、改めて思った。

 

 今後、絶対に精霊女王や精霊王と戦闘が成立するレベルの、人外の最上位級や人類の戦略級と対立することがないとは、とても言い切れないから。

 

(頑張らなきゃな、俺)

 

 俺が殺られるのは、言わずもがな論外。無論、俺自身を守るので精一杯、オアシスそのものだけでなく、生まれてくれた自然の精霊や原初の子供たちまで手が回らず、その結果全てを失うなんてこともあってはならない。

 

 神様から自然再興を任されたからというのもあるが、純粋に自然の精霊たちや原初の子供たちが、ほぼ無条件でニコニコ慕ってくれるこの状況が、かなり心地よいからだ。

 

 それに、自然再興自体は俺が何もせずとも時間さえあれば成るとはいえ、皆の存在は言われるまでもなく非常に大切。

 精神を高水準で保ち、再興にかかる時間を減らし、その質のみならず安定性も劇的に向上させることが、1人でやるよりも容易に出来るともなれば尚更だろう。

 

「わたしの予想通り。時期尚早云々、あれは()()()()()策略だった」

 

 と、考え事をしながら改めて心の中で決意を新たにしていたその刹那、底冷えするかのような怒気をはらみつつも、囁くが如く静かな声が辺りに響いてきたお陰で、思考が一瞬停止してしまうのであった。




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