TS転生精霊女王、神様から自然の再興を任されてしまう 作:ひのかぜ
「あらまあ。こんなにも早く、テネールに勘づかれるだなんて」
「ふん。何千年、わたしはあなたと付き合ってると思ってる?」
何の脈絡もなく、底冷えするような怒気を発しながら現れた、ルミエールに【テネール】と呼ばれている、俺と同程度の体格の少女。
名前に加えて長い黒髪に黒目、黒いトレンチコートに先端が三日月の形をした杖を持ち、ルミエールに負けず劣らずの魔力量を誇っていた。
格好はともかく、その容姿は元日本人の俺としては何だか親しみが持てる。
で、その隣にはナイトキャップを被って遮光バイザーで目隠しをした、金色がかった銀髪の
まさか、このタイミングで闇の精霊女王とその
「よくもまあ、抜け駆けしてくれたよね。わたしもそうだけど、
「ええ。それで、
「伝言を授かってる。『調子に乗るなよ、ルミエール』って」
「あらら、これは駄目なやつね~。素っ気ないふりして、何やかんやで気にはしていたってことかしら」
そして、テネールとルミエールは俺や子供たちをそっちのけに、普通の人間がこの場に居たらそれだけで失神しそうなプレッシャーを放ちながら、殴り合いがないだけの喧嘩を始めてしまった。
正確に言えば、ルミエールが怒っているテネールに一方的に詰め寄られているという感じだが、当の本人は意に介していないのを見るに、いつものことなのだろうか。
(……うっわあ)
どうやら、本来は精霊王や精霊女王が足取りを合わせ、俺がある程度この世界に慣れてきたタイミングで会いに行く手筈であったらしい。2人の会話を聞く限りでは、そう判断出来る。
しかし、ルミエール自身は端から足取りを合わせるつもりなどなく、他の最上位精霊にはそう伝えておきながら、1対1で今日こうして来てしまった。
結果、それに気づいた全員をガチで怒らせてしまい、出し抜かれた面々で相談したところ、比較的冷静なテネールが代表して突撃し、
何というか、この後ルミエールがどうなるかは察してしまった。まあ、身から出た錆ということで諦めてもらうしかない。
「もしもーし、喧嘩なら他所でやって下さいな。うちの子が貴女方の圧で怯えているんで」
「ごめんなさいね、ツァイテン。確かに、ここでやるべきではなかったわ」
「……ごめん」
それで、一通り聞きながら俺が力を解放して声をかけると、ルミエールもテネールも謝ってはくれた。プレッシャーも霧散させてくれたため、他の妖精たちも落ち着きを取り戻している。
「それで、わたしから1つ質問大丈夫?」
「あっ、はい。答えられるかどうかは分かりませんが」
「ツァイテンって、あなたの真名?」
「そうです。一応、他の最上位精霊の方々にもお伝えしてもらっても、構いませんよ。えっと……」
「わたしの呼び方は、テネールでいい。取り敢えず、このバカをしばき倒してから伝えておくから」
しかし、話の流れで俺がルミエールと、真名を交えた自己紹介をしたとテネールが知った瞬間、鬼が宿ったが如き恐ろしさを感じさせる表情になる。ついでに口も悪くなっていたが、そこはまあ気にしないでおこう。
単に生誕をお祝いする旨を伝えただけならまだしも、お互いの真名まで伝え合っていたのは、精霊同士なら真名に関する事柄が緩いとはいえ許せないと、そう言いたいだけだろうし。
ちなみにだが、お互いの守護者……エゼルとルーナは言い争いをしている主を見てため息をつくと、俺や子供たちに向けて申し訳ないと言って頭を下げてくれていた。
(俺の見た目で気になるところでもあったのか? いや、それは流石に違うか。うーん……分からん!)
困惑こそありつつも、別にそれ程怒っていない俺は謝罪を受け入れた訳だが、遮光バイザーを外してこちらに視線を向けたルーナの目が、何故だか見開かれる。
見た目の問題か、それ以外に驚くような要素が俺にはあったのか、はたまたそれらの要素とは違う何かがあったのかは俺には分からないが、少なくとも見た目でないことだけは確かだろう。
遮光バイザーをした状態でも周りがはっきり見えている彼女が、わざわざそれを外してから驚いたのだから。もし見た目が原因であれば、顔をこちらに向けた時点でそれらしき仕草を見せるはずだし
「それじゃ、わたしはこのバカ連れて帰る。また今度、日を改めて皆と挨拶しに来てもいいかな?」
「おぉ。最上位精霊の方々が勢揃い、ですか。事前に連絡を頂ければ、準備してお待ちしてます」
「よかった。ツァイテン、今日はルミエール共々迷惑かけてごめんなさい」
なんてことを考えていると、闇の精霊女王の本拠地【
そして、何か言いたげなルミエールの手首を掴むと、俺や子供たちに改めて深々と頭を下げてから、間髪入れずに中へと引きずりこんで消えていってしまう。
更に、その後ろからエゼルとルーナがついていって完全に姿が見えなくなり、扉が閉じると同時に門そのものも消えていった。流石は最上位精霊が使う魔法、残留魔力量だけでどれだけ多くの魔力が使われたのかよく分かる。
「……えっと、色々と賑やかな人たちだったね。お母さま」
「そうだねぇ。何だか妙に疲れたし、一緒にお昼寝でもしよっか」
「うん! じゃあ、わたしがお母さまの隣ね!」
こうして、何やかんやで光の精霊女王であるルミエールだけでなく、期せずして舞い込んできた闇の精霊女王テネールとの挨拶も、そつなくこなすことに成功したのであった。
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