TS転生精霊女王、神様から自然の再興を任されてしまう   作:ひのかぜ

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平穏なオアシス

 ルミエール(光の精霊女王)テネール(闇の精霊女王)、その守護者たるエゼルやルーナと相対する、自然の精霊女王としての最大のイベントを乗り越えた後、オアシス内は実に平和でのほほんとした雰囲気で保たれていた。

 

 自然の精霊が一気に増え、植物の生育に適した土壌が半径数百m単位で広がり、外縁部の結界の外で昼夜での気温差が一気に縮んだりなど、大きく変わった面は勿論ある。

 

 しかし、大まかな1日の流れは相変わらず。原初の子供たちを含む精霊たちに構ったり、テウルフの世話をしたり、毎日行っている自然再興の仕事をこなし、精霊魔法の練習とかを行ったりで1日が終わるのだ。

 

「お母様、何か面白いことない? 毎日お母様や兄弟姉妹、仲間たちと遊んだりするのは楽しいし幸せだけれど、こう……ね?」

「うん、分かるよ。ウェールの言ってることも分かっているけど、面白いことかぁ……」

 

 つまるところ、娯楽が前世の現代日本と比べれば圧倒的に足りない。脅威もなく非常に安定的ではあるものの、変化が少なく非常に退屈ということでもあるのだ。

 

 で、この思いは俺から多大な影響を受けている原初の子供たち、および新たに生まれてきている自然の精霊たちも、同様に抱いている。

 

 むしろ、精神年齢が見た目相応(10代前後)の人の子供に近いか同等な分、俺よりも退屈への耐性が低い。

 

 無論、それに対して何の対策も施していない訳ではない。うろ覚えなのも含めて前世の知識を元にした遊びを提供したり、たまに来るラヴェラ商団を含む人間の集団から、普通の水などを対価に色々と物品を仕入れたりとかはしている。

 

 それに、自然再興の仕事を暇潰しを兼ねて手伝ってもらったり、各々の領域作りに精を出してもらったり、テウルフの食べる魔物だったりを狩ってきてもらったり、そういったことだってお願いもしているのだ。

 

(どうしたものかねぇ……)

 

 しかし、それでも完全に退屈をカバー出来る訳ではない。いくら優れた娯楽とて、常に一定の供給量を維持し続けるか、持ち込んだ対象によっぽど入れ込んでたりでもしない限りは、遅かれ早かれどうしても飽きが来てしまう。

 

 自然再興や領域作り、精霊魔法の練習やテウルフのお世話は娯楽ではなく、こちらはやるべきことであるため、退屈しのぎにはあまり向くものではない。

 

 現に今、こうしてウェールがあまりにも退屈だったのか、俺に何かないのかと聞きに来ているのだ。意外や意外、アエスタ辺りがこうやって聞きに来ると思っていただけに、事態は結構進んでしまっているのかも。

 

「……皆で遊びに行く? サンデの村」

リリー(リリシア)とあの精霊ちゃんの村に?」

「そう。勿論、いきなり私や子供たちが行ったら大慌てになっちゃうから、誰か使者を送らないと――」

「では、この大精霊たる私めをお使い下さいっ!」

「おぉぅ、びっくりしたぁ……大丈夫、大精霊さん? 結構距離あるし……まかり間違って、何もしてない人間さんに喧嘩売らないでよ?」

「勿論ですとも! 道中なぎ倒していいのは、()()()()()()()()()()()()か、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のみ……ですよねっ!」

「よし、分かった。じゃあ、お願い」

「任されました!」

 

 という訳で俺は、サンデの村に遊びにいくというカードをここに来て、ようやく切ることに決めた。

 

 テウルフのみならず、留守中でも安心して任せることが出来るくらいに強力な、自然の大精霊が数週間前に1人生誕したという点がなければ、この判断を下すことは恐らくなかったであろう。

 

 ルミエールがここに来る前に、来ることを知らせる手紙を寄越しに来た光の大精霊より、体感で1割魔力量が多い。

 その上、例によって俺の知識や記憶などの影響を多大に受けていて、謎に戦闘技術もある。前世の俺は武術の武の字もないような人間だったのだが、突然変異みたいなものなのかもしれない。

 

 まあ、そうは言っても経験(戦闘技術)の一定程度ある冒険者相手には及ばないだろうが、フィジカルと魔力の暴力で大概の輩は叩き潰せるので、大丈夫だろう。

 

 最悪の場合は、精霊大樹周辺の超強力な結界に自然の精霊たちを連れて、引きこもってもらえればいい。結界に何か異常があった際、すぐにでも駆けつけられる体制もおとといようやく整ったから。

 

「さてと、ウェール。このことを子供(アエスタ)たちに伝えてきて、行きたいか行きたくないか聞いてきて? 私は自然の精霊たちの方にお留守番よろしくとか言ったり、その他色々とやることやってくるからさ」

「うん、分かった。まあ、十中八九皆行きたがると思うけどね」

 

 そうして、大精霊がサンデの村に使者として向かいに飛んで行ったのを確認した後、俺たちも俺たちでお出かけに向けて動く。

 オアシスの皆にこのことを周知して回ったり、出かけている時の行動に関して指示を出したり、結界の強度を大きく上げたりなど。

 

 何故なら、俺や原初の子供たちはこのオアシスの中核に値する存在、近所のコンビニに行ってくるみたいなノリで出かけてしまうと、皆に不安を与えてしまうからである。

 

 そんなことを言ったら、娯楽が云々とかいう理由で皆を置いて出かけるなと言われそうな気もするが、勿論ただ遊びにいくだけで終わらせるつもりはない。

 

 美味しそうな食べ物だったり何かしらの村特有の遊び道具、ラヴェラ商団などから仕入れたであろう書物など、持ち帰れそうなものは許可をもらった分だけ全て持ち帰る。この国で使える金銭ももらえれば、万々歳だが。

 

 その分、俺の力のお陰か常に綺麗な状態を保っている湖の水、いつの間にかなっていた妙に光っているヤシの木擬きの実など、村の生活に役に立ちそうなものはいくつか持っていく。

 勿論、無理やり押し付けたなんてことにならないように、要るか要らないかをちゃんと聞いてからにする。

 

(……)

 

 多分、俺が持っていこうとしているものは、この世界の人間にとって価値の高いものではありそうだと察してはいるが、関係はない。

 

 いざとなったら俺が力で介入すればいいし、サンデの村にはこれからも末永く、子供たち共々お世話になるだろうから。




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