TS転生精霊女王、神様から自然の再興を任されてしまう 作:ひのかぜ
「うぉっ……」
大陽が完全に沈み、代わりに綺麗な星空と月が顔を覗かせる夜。
大精霊から聞いた時間帯になったため、原初の子供たちと共に瞬間移動魔法にて、サンデの中の指定された広場へと移動した俺は、その瞬間に見た想像以上の光景に呆気に取られてしまった。
魔法版ランタンとも言うべき照明により辺り一面が暖かな光に照らされ、中央に用意されていたテーブルには美味しそうな食事が、透明なケースに保護された状態でずらりと並ぶ。見た感じ、全てが作りたてなのだろう。
またら見える範囲の村の路地にも明かりが灯っていて、そこには露店らしきものが立ち並び、興味をそそりそうなものが置いてある。アエスタが、今にもあっちに行きたそうな感じを醸し出す程には。
そして、単純な飾り付けもさることながら、魔法で浮いている垂れ幕にはこの世界の文字で『ようこそ、自然の精霊女王様方。サンデ村長 エーメルア』と、歓迎の意を示した言葉が記されていたからだ。
(すっげぇ……てか、この短時間でここまで用意してくれたってことだよな? お礼の品、持ってきた奴で足りるか……? うーん)
例えるなら、まるで田舎のお祭り。無論、俺にとっては異世界なだけあって色々な要素が混ざってはいるが、逆にそれが新鮮で面白そうだと思わせてくれる。
アエスタは勿論、ウェールやルプス、ヴィンターもオアシスでは決して見ることが出来ないこの光景に、瞳を輝かせて喜びを露にしていた。サンデに連れてきたのは、間違いなく正解だったと言えるだろう。
「わーい! えへへ、女王さまたち! 今日はたっぷり楽しんでってね!」
「あの日からずっと、僕たちは元気です! お母さんとお父さんが笑っていられるのも、全部女王さまのお陰です! ありがとうございました!」
「ねえねえ、その光る木の実ってなあに? 美味しいの?」
「ちょっと? まずはお礼とか、歓迎するお言葉が先だと思うんだけど? あっ、ごめんなさい! この子、悪気はないんだけど……その、食いしん坊で……」
「わぁ……そのお洋服、見たことないやつ! なんて言うんですか?」
「ちょっと!? 君も君でさぁ……もう!」
「頼むから、少しは大人しくしててくれないか……? 相手が相手だぞ?」
そして、老若男女関係なく周りに居る多数の人々は、俺たちを見るなり頭を下げてくるだけにとどまるが、あの時助けた見覚えのある子供たちは先んじて、こちらへと駆け寄ってくる。
余程テンションが上がっているのか、駆け寄ってきた子供たちが思い思いに話しかけてくるものだから、俺もアエスタたちも返事を返すことが出来ずにいた。
後から駆けてきたリリシアや父親もこの状況を収めようとするが、まるで聞こうともしていない。
だが、困惑こそすれ全く不快には思わないし、アエスタたちもそれは同様らしい。ボルテージこそこっちの方が今は上だが、オアシスの精霊たちも似たような性格の持ち主だから、ある程度慣れているというのもある。
ともなると、サンデから色々なものを持ち帰ったその瞬間から、まるで今の村の子供たちみたいな反応を、オアシスの精霊たちが見せる未来が訪れる可能性が高くなる。万が一、どれを使うとかこれが欲しいとかで喧嘩にならないように、今の内から考えておこう。
「皆さん、私も私の子供たちも大丈夫です! えっと……リリシアも気にしなくていいよ。皆、珍しいものを見てちょっと興奮しちゃっただけっぽいからね。私が助けた子供たちってことも、拍車をかけてるだろうし」
「えっと、そう言っていただきありがとうございます。守護者様方も、ありがとうございました」
「それと、リリシアのお父さん。オアシスの精霊たちの相手で慣れてるので、お気になさらず」
「そうですか……それは何よりです」
「うんうん! わたしも全然気にしてないというか、むしろ気が合いそうって思うもん!」
それに、こうしてグイグイ来る村の子供たちではあるが、歓迎してくれているのは顔を見れば何となく分かった。俺としてはとても嬉しい。
なので、リリシアと父親に続いて子供たちを止めようと動こうとした大人たちを手で制しつつ、更にこの状況を不快に思ってないことを示すために、口調や振る舞いをリラックスモードへと切り替えた。
まあ、リリシア一家には言わずもがな、これからも永くお世話になるであろう村人相手に、精霊女王モードになる意味はまるでない。むしろ、無駄に威圧して遊びに来た時の居心地が悪くなるなど、悪い方の意味ならあると言える。
なので、これがなくともどのみち、リラックスモードに変えるつもりではあったが。
(うおっ。よく見たら、ラヴェラ商団の面々が居るじゃねえか。ある程度落ち着いたら、ちょっくら話しかけに行こうかな)
ちなみに、今後はサンデに訪れる余所の人々に対して時と状況を考慮し、仕事モードと精霊女王モードを切り替えると決めている。
ただし、サンデの住人には及ばずとも信頼してて、今この場に居るラヴェラ商団の面々に関しては、正直どうしようか迷う。オアシスでは、精霊女王モードで接していたからだ。
とはいえ、この場で彼ら彼女らに対してだけ別の態度を取るのは、何だか申し訳ない。住人たちとも仲良さそうで、自然の精霊も警戒心が薄そうだし、俺を軽んじるようになる人間にも見えないから、この際対応をサンデの住人とほぼ同じにしてしまおうか。
無論、時が経つにつれて商団の団員も入れ替わっていくだろうし、色々な場所を回っていく時に同行してもらう冒険者や精霊術士に至っては、専属契約や長期契約みたいなシステムでもない限りは、高頻度で変わるだろう。
でもまあ、ラヴェラが余程思想や性格的にヤバい奴、そうでなくとも相容れない相手を俺のところに来る時に連れてくる心配は、正直あまりしていない。一応、最低限の警戒をしつつ接する感じで良いだろう。
「私からもお礼を申し上げます。そして、ご挨拶が遅れて申し訳ありません。ようこそ、サンデの村へ。村長の私含め、住人一同女王様方を歓迎致します」
「ありがとうございます。えっと、エーメルアさん……? 挨拶云々辺りは、私も私の子供たちも特段気にしていないので……ね? 4人とも」
「「「うん! 全然気にしてない!」」」
「そうですか……それはよかった。気にされていたらどうしようかと思っていましたから」
と、流石にテンションの高かった子供たちも徐々に落ち着き始めたところで、人波を掻き分けながらエーメルア村長が俺たちの前に来て申し訳なさそうに一礼した後、こう話しかけてきた。
例の事件の時は会わなかったものの、ピリトス教の教皇一行と相対した際、帰り際に軽く自己紹介をする程度のことなら出来ていたため、名前も顔もしっかり覚えている。
(案外覚えられてるもんだな。時々思い浮かべておいた成果か?)
自己紹介程度の時間しか会話はしていなかったし、そこから今までやり取りを交わしたりといったことは、全くなかった。
普通であれば、記憶の引き出しから出てこなくなるくらいの時間は経過している。
それでも、これから長くお世話になるサンデの村を束ねる人物の名前と顔は、たった1回かつ短時間のやり取りであっても、しっかり覚えておいて当然。
無論、いずれは村長以外の村の住人の顔と名前も一致させられるように、努力していくつもりだ。
「さてと……皆の者! これより、我らが故郷たるサンデをお救い下さった女王様と、その子供たる守護者様方への感謝と歓迎の意を示す、自然精霊祭の開催を宣言しよう!!」
声高らかに、俺たちを歓迎するための祭りである、【自然精霊祭】の開催を宣言するエーメルア村長を見ながら、俺はそう考える。
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