TS転生精霊女王、神様から自然の再興を任されてしまう 作:ひのかぜ
エーメルア村長によって、俺や原初の子供たちを歓迎するために急遽開催されることになった、自然精霊祭という名の一大イベント。
想像を超える規模とサンデの住人、特に俺が助けた子供たちの盛り上がり様に圧倒されながら、側に控えていたリリシアと親友の
「こちらは、サンデの家庭料理から特別な料理まで、すぐに出来るものをほぼ全て取り揃えてあるんですよ。精霊である、女王様方のお口にも合うと嬉しいです」
「おぉ……どれもこれも美味しそうだけど、凄い量」
「はい。満足して頂けるように、大量に用意してありますので。勿論、食べきれなくても構いませんし、お持ち帰りして頂くことも可能です」
「そうなんだ。なら安心かな」
そして、机の上に置かれていた料理を保護するケースがリリシアに取り外された瞬間、現代日本に持ち込んでもやっていけそうだと思わせられる程に、美味そうな香りが俺の鼻を抜ける。
汁物に煮物擬き、揚げ物に焼き肉、ホクホクのお米擬きご飯に卵焼き擬きなど、俺と原初の子供たち5人合わせても食べきれるか不明な量があれば、香りも必然と強くなるのも当然だろう。
(こっちも美味そうだ。種とか苗があったら、もらって自家栽培でもするかな)
更に、俺たちが自然の精霊ということだからか、ドレッシングらしきものがかけられた野菜類、りんご他未知のものを含めた果物類もかなりの量用意されていた。
知識は全くないに等しい状態ではあるが、食べることに抵抗感を感じてはいない。サンデの住人やラヴェラ商団の面々が用意してくれたものが、害を成すようなものであるはずがないと、強く信頼出来るからだ。
何なら、俺や原初の子供たちを含めて自然の精霊に毒は効かないし、呪いなどの魔法由来の異常に関しても、それ相応の耐性はある。何なら、事前に探知する手段もあるし、即死級でなければそれらを治癒する精霊魔法もない訳ではない。
ルミエールやテネールであれば、毒はともかく呪いなどの魔法由来の異常耐性は俺よりも高く、知見や技術に関しては俺を遥かに凌駕する。なので、同じ立場になったとしても、こんなことを考えすらしないだろうが。
「ねえ、リリシアちゃん。私、早く食べてみたいんだけど……いい?」
「はい、どうぞ。女王様も、お好きな時にお好きな量お召し上がり下さい。料理についての詳しい説明は、必要とあらばそちらに資料を用意してありますので、ご覧下さいね」
「うん、分かった。ところで、リリシア? お父さんの方も、私たち相手に畏まるなってのは無理だろうけど、ちょっとは肩の力を抜いても怒らないよ」
「あー。じゃあ、こんな感じです? 村の大人たちには、いつもこういう感じで話してるので」
「俺もですか。まあ、そう仰るのであれば」
「うんうん、そんな感じ……さてと、いただきます」
ということで、この思考を巡らせるのは終了。ウェールや他の3人も早く食べたいと言わんばかりの目をしていたので、話が途切れてから目の前にあった、リリシア曰く【
「おぉ……この森林豆のスープ、凄く美味しい。中の具もいい感じ……うん、駄目だ私。語彙力が足りなくて」
「いいえ、私はそうとは思いません。お父さんなんか――」
「おいこら。何かこう、恥ずかしいだろうが」
「ふふ。相変わらず、仲良し親子なんだね。リリシア」
「はいっ!」
すると、そのスープの美味しさと共に一瞬だけ、俺の脳裏に日本の田舎の光景が浮かんだ。味はさることながら、見た目と香りが少々薄めの味噌汁のような感じだからだろう。
粘りが少し弱めなお米に酷似した穀物も併せると、尚更そのイメージが強くなる。いわゆる、ノスタルジックな気分というやつだ。
ウェールとルプスも、このスープがお気に入りになったようで、1杯をかなりの早さで食べ終えると、リリシアの父親におかわりをよそってもらっていた。
側に鍋とよそるためのお玉があるのに、こんなに至れり尽くせりでいいのだろうか。出来れば自分でやった方が良いと、俺はそう声をかけようとする。
しかし、妙に察しのいいリリシアが「いいんです。お父さん、あれで割と楽しんでるので」と、微笑みながらそう言ってきたので、声をかけるのは止めた。確かに、何だかんだでこの状況を楽しそうに味わっているように見える。
サンデに住む村人の中でも特段、大勢の精霊少女や少年たちに懐かれる理由の一端を、垣間見た気がした。
(……まあ、心配は要らんだろうが)
ということで、ウェールとルプスには今回のような待遇を次回以降も要求したり、してもらって当たり前とは思わせないように、食事が終わった後に言っておくことにしよう。無論、アエスタやヴィンターにも同様だ。
ただまあ、俺の子供たちの様子を見ていれば、要所要所で優しく導いてあげさえすれば、下手に増長することはないはずだ。
とは言うものの、全ては手探り。こういう時に、前世で子育ての経験が少しでもあれば、小学生くらいまでの子供と接する職業にでも就いていれば、役に立ったのかなとしみじみ思う。
「わぁ、凄い……! このりんご、凄い美味しいよお母さま! 甘くて、シャキシャキしてて――」
「お姉ちゃん! そのりんご、ぼくの分も取っといてよ!」
「きみこそ、わたしの分の
「「むぅぅ……!」」
「あはは……何というか、毎日が賑やかそうですね。女王様」
「まあねぇ。そのお陰で、娯楽がなくてもやっていけてたんだけど」
「確かに。子育てというのは退屈とは真反対の、大変でありながら楽しくもあることですからな」
そして、アエスタとヴィンターは果物の方に興味関心が大きく向いたらしいが、好みも完璧に被ってしまったようだ。オアシスで俺の取り合いをしている時のように、頬を膨らませながらお互いに向き合い、視線でバチバチとやり合い始めてしまう。
(相変わらずだなぁ、アエスタもヴィンターも)
俺もサンデの皆が用意してくれた【りんご】や【森林栗】は、森林豆のスープや【
りんごは名前の通りの見た目と味で、恐らくは前世の高級品と同等。森林栗は外側の見た目こそそのままだが、中身は若干緑がかった黄金色で味は焼き芋みたいな甘さである。
ちなみに、食事前にリリシアが言っていた資料を覗いてみたところ、この2つだけはサンデの生活を支えている特産品かつ、収穫したばかりだという。そりゃあ、美味い訳だ。
もしあれなら、この2つの果物の種とか苗木をもらえればとも思ったが、そういうことならもらうのを止めにしておこう。同等の利益を生み出し続けてくれるものが、用意出来るまでは。
「はいはい、2人ともそこまで。私の分を半分ずつあげるから、仲良くしなさいな」
「「わぁ……ありがとー!」」
なお、ガチの殴り合いにはならないと判断して半ば放置していた2人のやり合いは、未だに終わる気配が見られなかったため、残っていた俺の分を分け与えて終わらせることにした。
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