TS転生精霊女王、神様から自然の再興を任されてしまう 作:ひのかぜ
この世界にある大国の1つである【レーガラント帝国】の領土内、あまりの環境の過酷さ故にそこを訪れる多くの人々の心を折り、時には命まで奪っている【アスウェイク大砂漠】と呼ばれる場所があった。
砂漠地帯特有の降雨の少なさと昼夜の大きな気温差に加え、【
故に、ここを通る際には食糧や水の備えは勿論の事、魔物の脅威から身を守ってくれる屈強な戦士は必須。
加えて、昼間の直射日光や熱波に対抗するための水や風属性の魔法に精霊術を使える者、夜中の冷気に対抗するための火属性の魔法や精霊術を使える者も、同様である。
更に、そんな彼らをサポートする魔法使いや各種回復系の道具に関しては、言わずもがなだろう。
これ程までの準備をしてさえ死者を出す事もあるのがこの砂漠なため、準備を怠ればどうなるのかは、推して知るべしと言う訳である。
「はぁ。昼間は暑いわ夜中は寒いわ、おまけに魔物がわらわら出てくるところを通るとか地獄かよ。時間をかけて砂漠を遠回りすれば安全に通れると言うのに……」
「うん。まあ、わたしもそう思うけど、勧められた護衛依頼を受けちゃった訳だから、頑張ろーよ」
「ああ、分かってるさ。依頼書の注意書きにも過酷な旅になると書かれていたからな。それはそれとして、愚痴らんとやってられねぇが」
そして今、アスウェイク大砂漠を縦断している15人の商人集団の護衛任務を請け負う冒険者の集団の内、新米ながらも優れた能力を持つ若い男女の精霊術士2人が、その過酷すぎる環境が故に文句を言っていた。男性の方はギリセス、女性の方はイリシスと言う名前の人間である。
2人はこの砂漠と面している【ザデート】と呼ばれる街に滞在中、そこの冒険者ギルド経由で商団の団長から多額の金と物品の報酬を提示され、それならしょうがないと了承したと言う経緯があった。自分たちの扱える水の精霊術や風属性魔法に、非常に自信があったのも後押ししていた。
「しっかし全力でないとは言え、水の精霊結界に風の防御壁があっても暑いとは、恐れ入ったなぁ。流石、現世に顕現した地獄と呼ばれるだけはあるぜ」
「だよね。でもまあ、今のところ猛毒の紫蠍とデカい大鷹は見かけないし、水の精霊結界と風の防御壁のお陰で大地を駆ける大狼は寄り付いて来ないから、割とマシな方なんだよねー」
しかし、2人を含めた精霊術士や魔法使いが全員で協力して張った精霊結界や防御壁、これらのお陰でマシにはなっているとは言え、昼の暑さに夜の寒さはかなり厳しい。
更に、魔物の襲撃も同様の防御手段で寄せ付けない対策を取ってはいるが、それでも現れてしまった場合、ある程度が寄ってきてしまう。
それを理解・実感し続けていたがために、愚痴をこぼさずには居られないのだ。
「そう言えば、この砂漠にはオアシスってあるのか? 入ってから結構経つが、今のところ砂と魔物と、時折生えてる砂の花位しか見かけないんだよな」
「少ないとは思うけど、あるんじゃないかなー。商団長さん、どうですか?」
「ええ、貴女の言った通りです。もう少し経てば、1つ目が見えてきます。何度も通った事のある我々が言うのですから、間違いはありませんよ」
「そうかぁ……ちょっとは希望が出てきたぜ!」
そんな中、ギリセスと同じく若い男性で新米である精霊術士が、オアシスはあるのかと言い始めた。暑すぎて、早く思う存分冷たい水浴びをしたいと言う欲が、表面に露呈してきたためである。
ただそれは、新米の若い男性の精霊術士と同じ様な事を思っていたイリシスが、何度もこの砂漠をルート通りに縦断した事のある商団の団長に訊ねた事で、あっさりと解決した。
「……っ! なんだあれはっ!? あんなものがあるなど、私は知らぬぞ!」
「凄まじく大きな樹木……自然の精霊の力を感じます。どれだけ低く見積もろうと、大精霊クラスはあるでしょう。実際は十中八九、精霊女王ないし精霊王クラスでしょうが」
そんな会話からある程度の時間が経った頃、若い2人や商団の団長の前を歩いていた、ベテランの精霊術士である男性が突如として足を止め、驚きの声をあげ始めた。
どうやら、砂漠で感じるはずのない程の強い自然の精霊の気配に加え、本来ならないはずの生命力に満ち溢れた大樹が、見えてきたからだ。
ギリセスとイリシスの2人も、ベテラン精霊術士たちと同じものを見て感じ取っていたため、彼の言葉に頷くなどして同意を示す。
「確かに、この砂漠にあの大樹は場違いも良いところ……ですが、本当にそれ程の精霊が居るのですか? いやまあ、貴殿方が居ると言うのなら居るのでしょうけど」
そんな感じで精霊術士の人たちが慌ただしくなる中、商団の団長である女性が、本当にそれ程までの精霊が居るのかとの疑問を呈した。
精霊術士になるための努力を積んだ者やその素質が元から一定以上ある者以外は、精霊自身が気配や姿を感じさせたり、見せようとする意思を示さない限りは基本的に気配を感じ取ったり姿を見たりする事が出来ないため、彼女の疑問も当然である。
「そうですねぇ。ここから遠目に見えるオアシス……正確にはその中にそびえ立つ大樹から、
「かなりの強さ?」
「ええ。先程も言いましたがどれだけ低く見積もろうとも大精霊クラス……実際は、十中八九精霊王か精霊女王クラスの可能性の方が大きいです。当然、敵対などしようものなら、我々では一瞬で大地へ還る事となるでしょう。我が帝国が誇る
「それは……」
今回の護衛依頼主からの疑問なだけあり、質問された精霊術士も自身の知識や経験をフルに活用し、それに答えていった。で、精霊が関係する事柄や術のプロである彼らからの話を聞いた商団の団長は、あまり顔色が良くない状態になっていた。
勿論、自分が雇った護衛ではどうにもならないレベルの存在が、立ち寄る予定のオアシスに居る事が最大の原因である。
しかし、それだけではない。自然の精霊が基本的に純粋な人間に対してあまり友好的とは言えないためなのと、彼女自身がそれ絡みで過去に苦い経験をした記憶があったからだ。
決して自分から何か酷い事をした訳ではなく、単に愚か者のとばっちりを受けたに過ぎないだけであるが。
「……友好的であれば、ありがたいですね。無理そうでしょうが」
「さあ、そこは実際に相対してみなければ何とも。ですが、覚悟はしておいた方が良いかも知れませんねぇ。恐らく、立ち入りを拒まれる可能性が高いです」
そう言う会話を交わしながら、過酷な環境の中進んできた事による休息を全員で取るため、商団の団長を含んだ30人は自然の精霊が住み着いていると思われる、大樹がそびえ立つオアシスへと進んで行く。
「「「……!?」」」
だが、その足取りはかのオアシスより発せられたとてつもない魔力の波動によって、一時留められる事となってしまう。
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