TS転生精霊女王、神様から自然の再興を任されてしまう   作:ひのかぜ

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女王としての振る舞い

「さて、どうしようか……」

 

 テウルフにより、ラクダに似た大柄の動物に荷車を引かせていた、明らかにこのオアシスを目指す人間らしき集団を発見した俺は、彼ら彼女らとどう接しようかと悩んでいた。

 

 何せ、神様からある程度の説明は受けているにせよ、俺はこの世界について知らない事があり過ぎる故に、確実に情報を得られる相手として、あの集団と接するのは俺の中で決定事項だからだ。

 

 しかし、だからと言って下手に出過ぎれば足元を見られ、高圧的になり過ぎれば情報どころではなくなる。もしかしたら、敵対する羽目にもなりかねない。

 

 仮にそうなってしまったとしても、相手があの集団のみなら俺やテウルフが死ぬ事はないと見ている。傷すら負わずに勝つ事だって余裕だろう。

 

 とは言うものの、万が一それを実行に移してしまった場合、最悪本当に人間か疑わしいレベルの実力者(ヤバい奴)がここにやって来て、テウルフ共々死ぬ(消滅する)なんて展開もあり得る。

 

 そもそも、例え自分や仲間や自然を守るためであっても、人の命はおろか魔物の命を直接奪う事に対する覚悟が不完全にも程があるのだ。

 

 勿論、その時になってみれば何やかんやで上手く行くのだろうが。

 

「取り敢えず、精霊女王に相応しいだけの風格は出した方が良いよね……テウルフ、行くよ」

「ルォッ!」

 

 なんて色々と考えている内に、もうはっきりと視界に捉える事が可能な距離にまで人間の集団が近づいてきたので、俺は覚悟を決めてテウルフの背中に乗る。

 

 走ってもらえばすぐなのは明らかなものの、間違いなく余計な恐怖を抱かせてしまいそうだったため、ゆっくりと歩いてもらいながらこっちから近づいていく。

 

 ただ、それはそれで恐怖を過剰に煽りそうだけども、あまり考え過ぎても仕方ない。とにかく、今回の対面に関しては戦いになりさえしなければ最低限良しとしよう。

 

 言わすもがな、この世界の情報の入手に成功する事が、俺にとって最高の展開なのだけど。

 

「うん。この場合は初めまして、で良いのか? 見たところ、私の領域が目的地の様だが……よし、聞こう。何用だ? ()()()()

「「「……っ!」」」

 

 集団の先頭を行く白髪のお爺さんから、数mのところまで近づいたらテウルフに歩みを止めてもらい、背中より降りてから集団に向けて、オアシスへ行こうとする理由を問いかける。

 

 まあ、訪れる理由と言ったら、水の補給を含めた休息のためとしか考えられない。彼らも十中八九そうとは思うが、念のためって奴である。

 

(……やべぇ。テウルフと一緒なのがまずかったか? それとも、俺が威圧感を抑えられて……いや、両方か。それに、他にもありそうだな)

 

 だが、最初の接触の仕方から間違えていたらしく、彼らを取り巻く緊張感が強過ぎるせいで、この場を気まずい沈黙が支配下に置いてしまった。

 

 威厳を出そうとか色々と考えてしまったがあまり、空回りしたと言わざるを得ないだろう。せめて、俺1人にしておけば少しはマシだったかもしれないが、後の祭りだろう。

 

 今更このムーブを変える訳にもいかないし、このままやり取りを続ける事とするか。

 

「すぅ……単刀直入に申し上げます、女王様。我々にあのオアシスの水を、分けて頂けませんか? 後、休息のために一時的……翌日の朝方まで領域の一部をお借り出来ればありがたいです。勿論、ただでとは申しません」

 

 なんて思っていると、白髪のお爺さんの後ろに居た青い髪の女性が1歩前に進み出てくると同時に跪き、予想通りの用件を申し出てくる。

 

 俺としては、そのくらいだったら特に断る理由もないし、受け入れようとは思った。この女性の瞳やその立ち振る舞いから、一切の嘘や悪意を感じなかったからである。

 

 無論、他の人間の瞳や立ち振る舞いからも同様であり、清廉潔白かどうかは判断出来ないが、少なくとも色々な面でヤバい奴らではない事だけは分かった。

 

 万が一……いや、億が一ヤバい奴らだったとしても、武力ではこちらの方が上との安心感もあり、心には余裕がある程度存在していた。

 

 それに、オアシス自体がそれなりの広さを誇っていて、数えた感じだと30人が休息を取る分には余裕だし、水だって極論俺のアクアボールを筆頭とした、水属性魔法で増やす事が可能と言うのもある。

 

「なるほど……よし。お前たちの様な悪意なき人間であれば、まあ良いだろう。出来る限り汚さず、暴れず、去る際は綺麗にする。これさえ守ってくれれば、私としては言う事はない」

「ほ、本当ですか!? ありがとうございます!」

 

 なので、その旨を青い髪の女性に伝えたところ、彼女のみならず俺の声を聞いた人が全員喜びを露にし始めた。

 

 過酷な環境下、ありとあらゆる生命を繋ぐために必要な水を無理に節約せずとも、オアシスに居る限りは使えるのだ。

 

 そして、ここを出て行った後の砂漠旅を乗り切るための水も、荷車の積載量が許す限りは積んで行けるのだ。俺が相手の立場だったら、同じ様に喜んでいたに違いない。

 

「気にしなくても良い。それで、こんな大砂漠に人間が大所帯で居るなど、一体何をしに来ている? 私が言うのもなんだが、好き好んで訪れるような場所でもないだろう?」

「それでしたら、実は……」

 

 なお、皆がわざわざこんな大砂漠地帯を渡っている理由についてだが、ここから数日かかる『マリスタルナ』と呼ばれる大きな都市へ、早く向かうためとの事。

 

 この大砂漠を通らずとも行けはするみたいだけど、下手すれば2~3倍もの時間が必要らしい。

 

 ちなみに、青い髪の女性……話の途中で『ラヴェラ』と名乗ってきた彼女は、自身の名を冠した商団を率い、この大砂漠を擁する『レーガラント帝国』内を回り、有名故に広がった人脈を使って珍しい商品を仕入れ、行く先々で売りつつ暮らしているようだ。

 

 過酷だが早く目的地へ到着するルートと、比較的平穏だが到着まで倍以上の時間が必要なルート。

 ラヴェラ商団は腕利きの戦士や魔法使い、精霊術士を護衛として雇っている様なので、前者を選ぶのは当然の摂理か。

 

「そうか……ところで、ラヴェラ。ここは1つ、水と休息場所の提供の対価だと思って、私の頼みを聞いてはくれないだろうか?」

 

 そんな感じでラヴェラと長々とやり取りを交わし、話も落ち着いてきた事からタイミング的にバッチリと判断した俺は、彼女にこの世界についての『情報』を、尋ねてみる事に決める。

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