TS転生精霊女王、神様から自然の再興を任されてしまう 作:ひのかぜ
商いのためにレーガラント帝国の各地を渡り歩いていると言う、ラヴェラ商団を率いる団長の女性、ラヴェラ。
そんな彼女から、商団の団員や護衛の人たちのための水補給や休息場所提供の要望を聞き入れた俺は、オアシスの湖付近でテントを立てたり水を汲む皆の様子を見ながら、この世界に関する情報を色々と提供してもらっていた。
既に知識のある事柄か、全くと言って良い程知識のない事柄かは問わず、とにかくラヴェラが知っている内容かつ機密事項とかでなければ、本当に何でもだ。
精霊や純粋な人族含め、この世界に存在している種族の特徴。
商団にも居る精霊術士や魔法使い、戦士や召喚士などと言った『職業』に就く人について。
範囲は狭まるが、レーガラント帝国に根付く各種文化や歴史、周辺諸国との関係に関する話。
こんな感じで、俺にとっては興味深くためになる内容の話も聞く事が出来ている。対価としては、これだけで十分過ぎるだろう。
「ラヴェラ。その話、詳しく聞かせてもらえるか?」
「勿論です。私が知っている限り、全てお話しましょう」
しかし、それらよりも正直聞いていて驚いたのが、本当に人間かどうかが疑わしいレベルの者の中でも上澄みに位置する、『戦略級』に分類される存在が帝国に居る事だ。
その存在の名前は『ヘーラ・アーティア』。
子供を拐おうとした凶悪人拐い集団15人を、相対してからたったの3秒で魔力防壁や鎧ごと斬り伏せる。
ワイバーンの火属性ブレス
そもそも、万が一さえなければ敵の攻撃は避けるか、オリハルコンとヒヒイロカネの合金製愛剣2つにより
加えて、これ以外にもヘーラの常識外れも良いところな強さを象徴する、驚きでしかない出来事は他にあるのだから、もうドン引きでしかない。
「何とも凄まじい話だな。実は、正体が人間に化けた人外の最上位でしたとか言われても、まあ納得出来そうではあるぞ」
「女王様ですらそう思われますか。確かに、伝え聞く……と言うか、実際に見た事もありますが、あれはもはや人類の枠組みを超えてますからね。でも、私のようなほぼ無力な民衆にとっては、凄まじく頼もしい守護神でもあります」
「違いない。そやつの目が黒い内は、だが」
しかも、過去の経歴から帝国や帝国に住まう民を愛していて、それ故に平和を害する敵対者への容赦は一切ない。
人間離れした身体能力や高みに至った剣の技術、場合によっては
だが、誰かとの戦闘時や自身が平和を害する敵対者認定されてさえいなければ、基本的には温厚との事。
それこそ自身が対象であれば、誰がどれだけボロクソに罵ってこようと、はいそうですかと受け流してくれる程みたいだ。
なお、彼女は帝国の民衆からかなり支持を得ているので、度を越した悪口を言おうものなら、本人ではなく民衆から袋叩きにされる可能性が高くなるが、当然の摂理と言って良い。
「うむ。もう大丈夫だ、ラヴェラ。こんな状況下、私との話に付き合ってくれて感謝している」
「あっ、はい。分かりました」
「それと、あまり居過ぎてもラヴェラたちの気が休まらないだろうから、私は精霊大樹へと戻ろうと思う。まあないだろうが……何かオアシス内で困った事があれば、あの大樹の根元まで来てくれれば対応するぞ」
「お気遣い感謝致します、女王様。では、失礼します」
こんな感じで会話を交わしつつ、かなり沢山の情報の入手に成功した後、俺はラヴェラを皆の下へと解放する。
もう少し聞きたかった気もするが、長旅の疲れや暑さ、俺の存在が側にある事によるプレッシャーからか、ラヴェラの疲労感が強くなってきていたためである。
今更だけど、情報を聞くのは彼女を含めた商団の人たち、および護衛の人たちがオアシスの湖付近で身体と心を休め、ある程度体力や精神力が回復してきた後にするべきだったと、俺は反省した。
「さてと……グラ。あんまり近場で見続けてるとあの人たち休めないだろうから、家に戻るよ」
「ルゥゥ……?」
「心配してくれてるのかな? ありがとう、でも大丈夫。ラヴェラたちだし、時々家の窓からチラ見する程度はするからさ」
「……ルゥ!」
そして、1時間近くもラヴェラたち商団の様子を見続け、流石にもう良いだろうと言う事で誰かが居る時の呼び名でテウルフに声をかけ、背中に乗って
(初めての異世界人は、まあ良さそうな人たちだったな)
入口の前で下ろしてもらい、木で作られた階段を登りながら彼らとの出会いに、俺は心の中で感謝の意を表した。
完全に心を許すとまでは当然いかないが、初めて出会った異世界人がある程度の信用がおける存在だったからだ。
俺が精霊女王であり、自分で言うのもなんだがほぼ全てにおいて格上の存在だから良い人を演じたと言うのも、勿論あるだろう。
ただ、この世界でも変わらないのを前提とするが、本当の意味でヤバい奴は例え言葉や仕草を偽ったとしても、雰囲気とか直感で何となく違和感を感じるものだ。
勿論万能ではなく、ただの杞憂で終わったり逆で外す時もあるから、この直感を信用し過ぎるのも良くない。
でも、ラヴェラたち商団の面々はヤバい奴らではない。この点に関しては自信を以て断言が出来る。
(……)
仮にだが、記念すべき異世界人との初対面がラヴェラたちではなく、如何にもなオーラを漂わせた本当にヤバい奴らであったら、果たしてどうなっていたのやら。
それ以降の接触により一層慎重となるか、下手すれば戦闘となるか、はたまた他の流れになるかは分からないが、少なくとも俺にとっては良くない事が起こるのは間違いなかっただろう。
本当に、俺は運が良い。この一言に尽きる。
「さて、聞いた情報を纏めておくかな」
たらればの展開を頭の中で想像しつつ、外へ出る用事もなく気分でもなくなったため、時折窓の外を見ながらラヴェラから聞いた情報を『本』に纏めておく作業を、俺は始めた。
本小説の用語解説的なものは必要でしょうか?
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必要
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必要ではない
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どちらでも構わない