Fate/Another Verse 虚栄未来都市聖杯戦争 作:たかしマン
アーサーとアーチャーが表通りに出ると、昼時になっていた。
高層ビルが乱立して飲食店も多くあるにも関わらず、人通りが少ない。
たまに人が現れても、死んだような顔をして去っていく。
「活気が無いな。いつもこうなのか?」
「ああ、第三次世界大戦が始まったからな。ここは主要都市ではないから大都市や田舎に人が流れたんだ」
「成程、マスターからは最低限の情報しかいただけなかったので助かります」
唐突に聞こえてきた声に警戒して振り向くと、スーツを着た老紳士がすぐ近くに立っていた。
「貴様、何者だ?」
アーチャーが両手に剣を持って構えながら尋ねると
「私はセイバーです。貴方がたにとっては敵ですね」
と、微笑みながら答える。
「ですが、今回は戦うために出てきた訳ではありません。ひとつ忠告しておこうかと思いまして」
「忠告?」
「はい、私達が戦う原因である聖杯はマトモではありません。望まぬ形で願いを叶えるかも知れませんし、そもそも願いを叶える力を持たないかも知れません。それでも聖杯を求めますか?」
「当然だ」
アーサーは即答する。
「どんな形だろうが、
「そうですか、では貴方は?サーヴァントとして召喚された以上、何か叶えたい願いがあると思いますが」
「無いな。そもそも私はこの聖杯でしか召喚できない。寧ろ、召喚されるまで存在していなかった英霊だ。そんな私がどんな願いを叶えようが、座に還れば全て無だ。ならば現世に留まっている間に好き勝手やらせてもらうさ」
「そうですか。戦いを止める気は無い、ということですね。なるほどなるほど…」
セイバーは1人納得すると霊体化して何処かへ去っていった。
「何だったんだ?アイツは」
「何だというのなら、お前もだろう。召喚されるまで存在していなかったとはどういうことだ?」
「私は実在する英雄ではないというだけのことだ。私は『名の無い英雄』という概念そのものが形を持った存在だ。だから何者でも無い。元となった英霊は居るがね」
アーサーはなるほど、と納得して歩き出す。
「それで?」
その背中にアーチャーが質問を投げかける。
「何が」
「いや、君の言う組織が何なのか気になってな」
アーサーは立ち止まってアーチャーの方へ振り返る。
「組織の名は“ノヴァ・ウトピア”。新たな理想郷を自称するカルトだ。人工生命体を作るのが得意な奴らが集まって、より進化した生物を目指しているらしい。そして最終目標は現人類に代わる新たな支配種、
「となると君は…」
「ああ、新人類の失敗作だってよ。何かの素材か魔力タンクにされそうになった時、令呪が現れたんだ。そしたら俺の扱いに困ったらしく隙が出来たから逃げ出した。で、アンタを召喚したって訳だ」
アーサーは再び歩き出す。
「何処に向かうんだ?」
アーチャーが霊体化しつつ聞くと
「さあ?」
自分でもわかっていない返答をする。
「適当に拠点にできそうな場所を探す」
「で、ここに辿り着いた訳だ」
「建物があるだけマシだろ」
辿り着いたのは明らかに廃墟とわかる程度にはボロボロの邸宅だ。
アーサーは念のためにと人払いの結界を掛けて、最低限寝泊まりが出来るよう片付けるのだった。