「なぁシエスタ」
「なに、助手?」
「一つ疑問なんだけど......なんでヘルもここに連れてきたんだ?」
ヘルとの死闘を演じた後、ベテルギウスの凶刃から君彦を守るためにヘルと手を組んで戦い、これを撃破したシエスタ。しかし、シエスタに何を魅せられたのか、戦いの後にヘルがシエスタにベッタリとくっついて離れないのだ。それが君彦には気に入らなかった。
「...俺なんて三年間もシエスタと一緒だったのに。あんなにベッタリシエスタにくっつきやがって」
「助手?どうしたの?何か言った?」
ヘルに抱きつかれながら、何やら様子がおかしい君彦にキョトンとした顔で問いかけるシエスタ。
「いや、別に」
君彦はそう答えるが、
「シエスタは僕のもの」
とでも言いたげなヘルの表情に怒り心頭、ジェラシーが最高潮に達する寸前であった。
「ところでヘル...ちょっと暑いんだけど...離れてくれないかな」
苦笑いを浮かべながらシエスタはヘルに言う。
「うーん、もっとシエスタの体温を感じていたいかな」
しかし、ヘルは離れてくれなかった。とは言え、シエスタはトイレに行きたいので、無理言って一応どいてもらった。
「私はお手洗いに行ってくるから、ふたりともなんか適当に遊んでて」
パタパタとシエスタの足音が遠ざかっていくと、君彦はヘルに尋ねる。
「なぁヘル、お前はなんでシエスタに付いてきたんだ」
ヘルは少し黙りこくるが、数秒して口を開いた。
「...ご主人がシエスタと会いたがっているんだ。それに、僕はあの戦場でシエスタのことが好きになっちゃってねぇ...戦闘時のシエスタの横顔とか、クールな性格とか、あの綺麗な瞳に恋をしたんだ」
うっとりとした表情でヘルは言う。
「シエスタと過ごした時間は俺のほうが長い。それに...お前は女だろ。法律的にシエスタと付き合うのは難しい。...なぁヘル」
君彦は必死に反論するが、先程のヘルの言葉に引っかかりを感じた。
「何かな相棒」
「いや相棒じゃねぇけど...ご主人って誰のことだ?」
「......話せば長くなるよ?」
いつもよりワントーン低くなった声色でヘルは答える。二人の間に、ガキ使で田中がタイキックされる瞬間よりも張り詰めた緊張が走る。
「ただいま...ってアレ?ふたりとも黙り込んじゃってどうしたんだい?」
その緊張を破壊したのは、二人の話の中心であるシエスタ自身だった。
「...あぁ、シエスタ。戻ってきたんだ」
「何そのぎこちない顔。まさか助手、ヘルと喧嘩でもしているのかい?」
見当違いな予想を口にするシエスタ。探偵でも間違えることってあるんだな、と君彦が心中思っていると、
「いや、なんでもないよシエスタ」
ヘルが話に収集をつけた。
「ふーん、まぁ良いや...ところでヘル。あなた今何歳?」
先程SPESを裏切ってきたヘルに年齢を聞くシエスタ。
「...17歳」
「...はぁ、まだ子供じゃないか。それに、助手と同い年か」
ため息を付きながらシエスタが言葉を零す。
「じゃあそういうシエスタは何歳?」
ムッとした表情でヘルはシエスタに尋ねる。
「内緒だよ。名探偵は自分に関してのことは大体誤魔化すものだからね。ほら、有名な探偵作品の主人公も、自分の正体は一部の人にしか晒してないでしょ?」
しれっと年齢を誤魔化すと、暫く考え込み、そして何かを思いついたような表情でヘルと君彦に話しかけた。
「助手、ヘル。あと半年もしたら日本に行こう。」
「日本?なぜ?」
ヘルは首を傾げ、君彦は疑問符を浮かべる。
「私が君たちの保護者になるから、君たちは高校に通うんだよ」
アリシアとの約束もあるしね...
と心のなかでつぶやきながら、ドヤ顔でシエスタは言い放つ。
「え?」
あと、とシエスタは付け加えるようにヘルに言った。
「ヘル、君の戸籍を作る」
「戸籍?」
「ああ。まずは君の名前から決めようか...そうだね...渚...夏凪渚...なんてのはどうかな」
数秒間の沈黙の後、ヘルの口が微かに動いた。
「...良い名前だ...うん。それでいい...いや、それが良い!」
ヘルの目尻には、一つの雫が浮かんでいた。
―――1年後
「日本に来るのは久々だなぁ」
シエスタが日本の空港に降り立ってから零した最初の感想は、その一言だった。
「シエスタは前にも日本に来たことあるのか?」
「えぇ、古い友人から依頼を受けてね。なんでもある人物を捕まえてほしいとの依頼だったけど」
とまで言いかけて、シエスタは急に話を変える。
「さ、早く行こう二人共。予定に遅れちゃうよ」
一方、君彦は先程シエスタが言いかけた話に、"どこかで聞いたような話だな"と思いながらも、シエスタの後を追いかけていった。
「僕を置いてくなよ相棒、シエスタ!」
後ろに続くヘル―――夏凪渚。そのとき、空港にあるアナウンスが流れる。
『ただいま、空港内に刃物を持った男が侵入しました。繰り返します―――』
シエスタは振り向きざまに、後ろを歩いていた君彦に呆れ顔で言った。
「君のその体質、そろそろなんとかならない?」
君彦は苦笑いを浮かべるだけだった。
「―――さすがは
ボソッとシエスタが呟く。
「なんか言ったか?シエスタ」
「いいや、何も」
軽く流し、シエスタたちはバスに乗り込む。その際、誰がシエスタの隣に座るかということでヘルと君彦にひと悶着あり、シエスタによって二人に鉄拳制裁が下されたのは言うまでもないだろう。
ご都合主義満載でなんとも頭が痛い短編でしたねへっへっへ。最近たんもしにハマり始めたにわかですどうも。東方の小説は暫くおやすみということで。
『東方の小説を待っていたそこのお前。今すぐ期待は捨てろ』
で、皆様に質問。
―――お前は明日、何がしたい?