今回は結構オリジナル要素強めです。
Rei - お久しぶりです、伯林 澪です。また誘って貰ったので今回も共著です。なんかここで気の利いたことでも書こうと思いましたが思いつきませんでした。
黒森峰の10連覇が途絶えた全国大会から一年。
黒森峰が敗北した原因であり、その後黒森峰から姿を消した西住姉妹の妹、西住みほが初心者だらけの初出場の無名校、大洗を率いて全国大会の舞台に凱旋優勝した事実は、瞬く間に界隈を超えて一気に広がった。
だが、この大波瀾の大会において舞台に立つことすら叶わなかった学校があった。
ただ、速見高校は新生高校ということもあり、開校当初に在籍していた生徒が卒業してしまった今は人員不足に悩まされていた。今年の全国大会は最低限の参加人数すら確保出来ずに、新規参入の大洗に枠を取られてしまい、出場が叶わなくなってしまったほどといえば、その悲惨さが伺えようというものだろう。
おまけに速見高校の枠を取った大洗が優勝してしまったため、彼らの戦車道界における立場は非常に危うくなっていた。当然、学校運営側は大金を投じて維持してきた戦車道から撤退する訳にも行かず、全国大会出場前の大洗学園と同様、人員確保に動き出した。
──速見高校・理事長室──
「『今年は初出場の大洗が全国優勝!フラッグ車同士の一騎打ち!黒森峰は2年連続準優勝!』か……中々の大波乱だったみたいですね……」
俺は応接机に読みかけのまま放置されていたスポーツ紙の一面に載っている戦車道の記事を見ながら、そう呟いて顔をあげる。視線の先にはここ数日ですっかり老けた理事長が、憔悴した様子で革張りの椅子に腰掛けていた。
「そうさ……別に僕だって大洗の優勝にケチをつけたり、恨みをむけるほど狭量な奴じゃない。でもね──最近系列校会議ではウチへの風当たりが強まってるのさ。新参の大洗
「そんなのおかしいですよ!大洗は新参とはいえど結果で言えば聖グロリアーナにも引けをとらない実力を持っていた学校、おまけに大洗の隊長は去年の黒森峰の副隊長ですよ!優勝したっておかしくは……!」
理事長は同意の表情を示しながらも、片手を挙げることで俺を制止した。俺は不本意ながら話すのをやめ、理事長の言葉に耳を傾ける。
「
だが、解ってくれ──そう言いたげな眼で、理事長は俺を
「真鶴くん、僕の方からも今の在校生から有望株のスカウトと志願者の募集をしてみるから、君の方は今いる子たちの練度を上げるように頼むよ。僕の方から他の高校の練習に参加も出来るように頼んでおくから。僕も優秀な君たちを路頭に迷わせたくはないからね」
「……分かりました。失礼します」
部屋を出ようと扉に手をかけた時、理事長がまた呟いた。
「そう言えば、黒森峰にいた
「……ご忠告感謝します」
「練習、頑張ってね」
会話を終えて廊下を出ると、俺は人手が足りず維持するだけで手一杯な戦車が並ぶ格納庫へ向かうべく歩き始める。──この学校における戦車道は人数の割に大金が投じられているため、そこそこの成績を出しているとはいえど微妙な立ち位置にある。更に「乙女の武道」の隊長が男というのだから、周囲からはあまり好意的な目では見られていない。周囲から注がれる好奇の視線を避けるように廊下の窓側を歩いていると、タンカース・ジャケットのポケットに入れていたスマホが催促するように振動を始める。
「────?」
電話番号を確認してみるが、俺の知っている番号ではない。
俺の携帯の連絡先を知っている奴はそう多くない。俺の電話番号を知っている奴はさらに少ないはずだ。
「はい、どちら様です──」
『真鶴か?』
「!?」
受話口からは、以前から聞きなれていた凛とした声が聞こえてきた。聞き間違うはずもない。この声は──
「西住隊長、ですか?」俺はほぼ確信をもってそう訊いた。「お久しぶりですね」
『そうだ。──元気そうで安心したぞ』
電話の向こうからは安堵したような溜息が聞こえてきた。──とりあえずは喫緊の用事ではないことに胸を撫で下ろしつつ、俺は率直な疑問を口にする。
「西住隊長──俺の番号、教えてませんでしたよね?」
『ああ。実はお前の知り合いから……いや、誤魔化すのはよくないな。大洗が優勝した後、みほが自分の戦車道を見つけたのを見て安心はしたんだが、お前の消息も気になってな……ダージリンに教えてもらった』
「はぁ……あの人ですか」俺は若干の呆れをこめて呟く。「誰にも番号は教えないように釘を刺しておいたんですけどね……」
『あいつも悪いとは思っているらしいぞ──今度そちらに寄る時にとっておきの紅茶をもっていくと言っていた』
西住隊長もダージリンさんの自由さには辟易しているようで、彼女の言葉にも若干の呆れが交じる。──だが、わざわざ電話をしてきた理由が安否確認だけではないだろう。俺は本題に入るべく探りをいれた。
「まあ……わかりました。で、本題はなんですか?」
『本題というほどでもないが……』と西住隊長はすこし口ごもった。『まずはお前の安否を確認したかったというのが第一だ。あとは──お前の学校から我々の演習に参加したいとの連絡があってな。演習場所の連絡をしたかったんだ』
理事長の言っていた“練習相手を探す”というやつだろうか。本来なら受けてもらえなさそうな黒森峰まで連絡を入れたということは、方々に電話を掛けまくったに違いない。
「それでダージリンさんに訊いたら俺がその学校にいることが判った、と?」
『そういうことだ。演習場所だが──我々の学園艦だ。一週間後の正午に本艦は神戸港に寄港する予定だから、それまでに現着してくれればいい。……まあ話したいことは色々あるが、また今度話せばいいだろう。また演習の時にでもゆっくり話そう』
「そうですね……ではまた今度」
そう返し、俺は電話を切った。──
登場人物紹介・Pt.1
【名前】真鶴将翔(マナヅルマサト)
【所属】速見高校2年
【役職】コメット車長(戦車隊隊長)
【概要】
速見高校の快速戦車部隊を率いる2年生隊長。元々は黒森峰の中等部にいたが、3歳年上の姉の事故が原因で高等部への進学を辞退し、聖グロ系列の新設校である速見高校に入学する。得意な戦術は「機動力戦車道」で、とにかく車輛を停止させずに移動させ続ける。西住姉妹や逸見エリカとは旧知の仲だが、高校進学後は連絡とっていない。高校が聖グロ系列ということもありダージリンに度々お茶会に誘われるが断っている。