ガールズ&パンツァー外伝 戦場を駆ける彗星   作:レオパルト

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Leo - どうもレオパルトです。この前、最終章4話を劇場で見て、継続のヨウコを推すようになりました。少々間が空きましたが2話です。

Rei - レオパルトさんと一緒に最終章4話を観てきました。ガルパンはいいぞ。
あと最終章とは()()()()()()()ですが最近WTでBT-42を開発しました。


第2話 速見高校戦車隊

西住隊長からの突然の電話が終わり、俺は再び歩を進める。

──西住()()、今は学校が違うので隊長と呼ぶ必要はまったく無いのだが、黒森峰の中等部にいた三年間、確かに俺にとっての「隊長」はあの人だった。そして今も、「隊長」はいまだあの人のままだ。

中等部時代、数少ない男の戦車乗りとして奇異の視線を浴びていた俺を懇意にしてくれていたのが隊長だった。だが二年前、当時黒森峰の高等部で戦車道の副隊長をしていた俺の姉、真鶴涼霞(マナヅルスズカ)が事故に巻き込まれてからというもの、俺は黒森峰に──そして「西住流」という流派そのものに──嫌悪感を抱くようになった。

中等部卒業と同時に黒森峰高等部への進学を辞退し、西住流の影響が少ない聖グロリアーナの系列の速見高校に進学したのも、それが理由だ。──それから先、「隊長」とも連絡を絶ったままだった。

そして──相も変わらず「隊長」は俺のことを気にかけ、こうして演習の算段までつけてくれている。だが、過去の因縁は消えない。俺が西住姉妹とふたたび連絡を取ることになったとて、今の関係が変わることはないだろう。

「今更な……」

厭な過去を思い出し、俺は舌打ちとともに小さく呟く。もし姉の事故がなければ今ごろ──などとあり得もしない「if」を考え出す自分を叱咤しながら。

──やがて格納庫の近くまで来ると、俺に人影が近寄ってきた。

「隊長」

「──六甲か」

六甲清一(ロッコウキヨカズ)、速見高校戦車隊の副隊長だ。中等部時代からの俺の知り合いでもあり──と言ってもしっかりと会話するようになったのは高校生になってからだが──中等部時代は俺以上に周囲に馴染めない問題児的扱いをされており、女子がその殆どを占める戦車道チームでも浮きまくっていた。

「ええ。しかし隊長殿──随分と暗い顔をしてらっしゃいますねぇ」

「そうか?」

「そりゃアもう。苦虫をダース単位で嚙み潰したような顔をしてましたよ……()()()()のことでも思い出しましたか?」

揶揄(からか)うようだが心配の色をふくんだ口調で六甲が訊く。

「まあ、な……」俺は口ごもりながら返した。「隊長から久々に連絡をもらった。理事長が次の練習試合を一緒に戦う高校を探していてな。スケジュールがようやく決まった形だ。我々と組む学校は──」

「──黒森峰ですか」六甲が引き取っていう。俺が“隊長”というだけで察したらしい。

「そうだ。対戦相手はプラウダ・知波単連合軍だが……()()()()?」

「ふぅむ……」六甲はしばし黙考していたが、やがてきっぱりと言った。「──無理、ですな……このまま挑んだ所で対プラウダの戦果はせいぜいT-34を数輛撃破する程度でしょう。突撃高──いえ、知波単はまあ懸念するほどではありませんが……」

にべもない回答だが、正鵠(せいこく)を射ている。全国大会で損傷した車輛の修理に時間がかかるだろうが、それ以外はいくらでもバックアップがあるだろう。そもそもこちらで動かせる車輛が少ないうえ、ISシリーズの増派も検討しなければならない。──このまま挑めば、醜態を晒すだけになるのは明白だ。

「今の戦闘可能車輛は?」

「確実に稼働できるのがコメットとチャーフィー、あとは……」六甲は使い込まれた小さな革手帳をめくりながら続ける。「クロムウェル、III号L型、K型、レオパルトの中から2、3輛といった所ですかね。どうにも火力不足が顕著です」

「なるほど──たしかにIS-2と正面からやり合うにはきついな。自走砲の類でもあればまだマシなんだが……」

「一応、グロリアーナ側から自走砲の供与を受けられるよう要請していますが、なにぶん書類審査や輸送手続に掛かる時間が多く……とても演習までに間に合いそうにありません」

そう──我々の懸念点はまさにそこにあった。本来、俺たちが得意とするのは「機動力戦車道」──可能な限り高速で走りまわり、敵を翻弄しつつ弱点を攻撃する機動戦ドクトリンの一種だ。だが速度性能と引き換えに火力には制限があり、黒森峰やプラウダのように装甲・火力・物量に物をいわせて敵を粉砕する戦法とは相性が悪い。

いかに演習試合といえど、初っ端から黒森峰に頼り切りではあまりに体裁が悪い。──どうにかならないかと思いながら、俺は六甲の方に向き直った。

「──艦内の捜索はどうだ?」

成果なし(ネガティヴ)です。派遣した戦車道部員曰く、第IVC区画から第LXXVIIE区画まで調査しても一輛も見つからなかったとのこと」

「第LXXVIIE区画……ずいぶんと深層部まで調べたな」

「ええ。それで見つからないのなら望み薄でしょう」

「新車輛の購入は?」

「難しいです。現在この高校は資金難でこそありませんが、生徒会では戦車道部への資金提供に待ったをかける勢力が台頭しはじめています。新車輛の購入は部員を拡充してからでなければ通らないでしょう」

「しかたない、今回は出せる車輛だけで出るか。──今回はクロムウェルとIII号L型を出そう」

「了解。整備部門に伝えておきますね」

踵をかえした六甲が整備部の方へ駈けていくのを見つめながら、俺はやるせない思いに駆られていた。むろん、俺とてこの惨状に至るまで何の努力もしなかったわけではない。六甲と一緒に勧誘活動を活発化するよう生徒会に慫慂(しょうよう)したものだ。──だが、当時の生徒会は俺達にその任務を丸投げしたまま卒業してしまった。

学校の方針とは裏腹に、速見高校には戦車道に興味をもつ生徒がすくない。生徒会が率先してその魅力を喧伝しなければ、我々単独での部員獲得など土台無理な話だった。

むろん、生徒会にも言い分がないではない。彼らは創立されたばかりの速見高校の制度建設に注力しており、戦車道チームの人材勧誘を行う余裕など持ち合わせていなかったのだ。だが、あの時少しでも部員を増やせていたら──という気持ちが、俺の中でしずかに燻っていた。

(まずは対・プラウダか……ろくな活躍もせず終わるわけにはいかないな)

だからこそ、の演習試合だ。これで少しでも我々の活躍を見せられれば、興味をもつ生徒が出てくるかもしれない──そこへ、我々は戦車道チーム存続への一縷の望みをかけたのだ。




登場人物紹介・Pt.2
【名前】六甲清一(ロッコウキヨカズ)
【所属】速見高校2年
【役職】クロムウェル/M24車長(戦車隊副隊長)
【概要】
速見高校戦車道チーム副隊長。真鶴のサポート役としてクロムウェルかM24どちらかの車長を務める。聖グロリアーナ学園中等部出身で、真鶴とは中等部時代からの友人。
口調がやや古風で趣味も古いが、PCゲームなども嗜む。英語にはやや堪能で、撥音はやや英式寄り(ただし感覚派のため文法理解度は終わっている)。
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