ガールズ&パンツァー外伝 戦場を駆ける彗星   作:レオパルト

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Leo - [未記入]

Rei - どうも、伯林 澪です。今回はすこし長めになります。あと、新作SF小説( https://syosetu.org/novel/330693/ )を別アカウントで投稿しておりますので、そちらも見ていただけると嬉しいです(宣伝)。


第3話 嵐の前の静けさ

──兵庫県神戸市・試合会場──

練習試合当日──試合前のブリーフィングとして他の隊員達より先に、俺と六甲で黒森峰の陣地へ向かった。今回の試合は試合会場の地域でも一大イベントらしく、多くの観客が詰めかけている。

「凄い観客だな……」俺が感心してそう言うと、六甲も同意するように返す。

「ええ。練習試合(エキシビション・マッチ)とはいえ戦車道四強の一角たる黒森峰とプラウダが戦うわけですからね……自然と大衆の注目の的になるってもんでしょう。ウチはさしづめ黒森峰の引き立て役ってとこですかね」

「仕方ない。ウチは去年の大会すら出てないからな……出られればどれほどよかったか」

ぼやいたところで(せん)なきことか──と自嘲しながら、俺はだだっ広い観客席を見やる。ギャラリーの多くは黒森峰やプラウダの応援グッズを身につけており、この試合において誰が主役なのかは明々白々だ。端のほうで握り飯を持って騒いでいる連中は……気にすまい。

しばらく道なりに歩いてゆくと、黒森峰側の陣地に着いた。俺達の姿を見つけると、一年生とおぼしき生徒が本部のテントまで案内してくれる。──どうやら事前に話が通してあったらしい。

「よく来た、真鶴───それと六甲君。元気そうで何よりだ」

久々に直接面と向かって会った隊長はいつもの凛とした表情とは違い、柔和な表情で俺たちを出迎える。

「お久しぶりです。西住隊長」

「ああ、本当に久しぶりだな」

隊長の返す言葉には皮肉が混じってない、純粋な懐かしさをが滲んでいる。俺が郷愁の念に浸りかけていると、横あいから咳払いが聞こえた。

「ごほんッ──そういえば、黒森峰の副隊長はいらっしゃらないのですか?隊長殿しか見当たりませんが」

蚊帳の外だった六甲が、唐突に意味の解らないことを言う。西住隊長の後ろで見下したように我々を見ている銀髪が黒森峰の副隊長──逸見エリカだということは、俺が事前に渡したプロファイルで知っているはずだが……

「おい、前に教えただろう?あの銀髪が──」

「ええ、もちろんそう思ったのですがね?天下の黒森峰の副隊長ともあろうお方が、あのように他校の生徒を見下す方な訳はないと思いましてね」六甲は肩を聳やかしてこたえる。──どうやらわざとらしい。副隊長を貶されてさしもの西住隊長も真顔にかえったが、六甲はいっこう気にする様子もみせない。

「おい六甲──」そんなだから中等部でも浮いてたんだぞ、と俺が言おうとすると、(くだん)の副隊長殿が割り込んできた。

「何言ってんのあんた!?人をバカにするのも大概にしなさいっ!」

「おや、本当に彼女が副隊長で?やれやれ──黒森峰の未来は暗そうですな……」

「何ですってぇ!?そういう台詞は黒森峰(ウチ)に一回でも勝ってから言いなさいよ!」

「マウスやティーガーでチハ軍団を粉砕しておいてどの口がそれを?せめてIV号やIII号で同じことをしてから言い給えよ、君──大洗のようにね」

「────っ!うっさいわね、全国大会も出られなかったくせに!」

六甲が口調だけは丁寧に思うさま煽り、乗せられたエリカが激昂する。彼女は六甲に今にも殴りかからんばかりの勢いだ。六甲もこのままでは黒森峰を「卑怯者」呼ばわりしかねない。

「やめろ六甲!──エリカも落ち着いてくれ!」

俺はあわててエリカと六甲の間に入り、双方を制止する。

「ちょっと将翔、何なのよコイツ!」

「すまないエリカ、コイツは昔から口が悪くてな。六甲、すまないが席を外してくれないか」

「了解、()()殿()……終わったら呼んでくださいね」

六甲は不服らしく、俺を「殿」付きで呼びながらでテントから出ていく。彼がテントを出ていくまでエリカは鋭く視線を向けつつ、拳を握りしめてながら怒りでプルプルと震えていたが、やがて落ち着きを取り戻し始めた。

十秒もたつと彼女はほぼ完全に落ち着き、またもや尊大な態度にかえった。そして──

「で、2年間も私たちと連絡を絶ってた将翔が突然私たちの前にノコノコと現れたわけね。──いったいどういうつもりかしら?もしかして練習相手もいなくて隊長に泣きついたの?」

皮肉をたっぷり混ぜた言葉をかつての仲間であった俺に投げかけた。確かに彼女の言う通りなのだが、その態度と顔で言われると無性に腹がたつ。──俺が皮肉のひとつでも言ってやろうかと思っていると、西住隊長がその凛とした声で制止にはいった。

「エリカ、その言い方はないだろう。仮にも彼らは我々のチームメイトだ──それに、六甲君の言うこともたしかに一理ある」

「す、すみません隊長……」

西住隊長の言葉に、エリカが一瞬でしおれる。さっきまでの狼のような威勢はどこへやら、今の彼女は仔犬のようだ。青菜に塩とはまさにこのことだろう。

「さっきはうちの副隊長がすみません、西住隊長──では、打ち合わせをはじめましょうか」

西住隊長がしおれているエリカに耳打ちをすると、彼女はあわててテントの隅に飛んでいき、しばらくゴソゴソした末に黒森峰の編成表を持ってくる。黒線で消されている箇所を見ると、どうやらこちらの車輛数にあわせてパンターとIII号を通常編成から減らしたようだ。六甲が言ったことをすこし気にしているのだろうか。

「フラッグ車は──真鶴が問題なければ、だが──私のティーガーで構わないだろうか?」

「それで大丈夫です。ウチは軽装甲車輛しかいないので」

「よし、ではそれで決まりだ。そちらは?」西住隊長はそう訊いてくるが、こちらとしてもまともな編成を組めるほどの輛数は持ち合わせていない。ならば……

「こちらは俺の乗るコメットと六甲の乗るクロムウェル、あとはIII号L型が2輛──です。(いたずら)にそちらについて行こうとして失敗するよりは、遊撃隊として立ち回ろうかと思います。さいわい、機動性には不自由しません」

そう言いながら、俺は西住隊長に編成表──ずいぶん余白が多いが──を渡す。彼女は鋭い目つきで一通り表を読むと、小さく頷いて俺に返した。

「よし、わかった。お前たちがそれでいいならこちらも動きやすい。──ほかに何か連絡事項は?」

「いえ、特にはありません」俺がそう返すと、西住隊長はちらと腕時計を見やってからこちらに向きなおった。

「わかった──あと30分で試合開始だ。お前にもチームメンバーに今の話を伝える時間があった方がいいだろう。そろそろ戻った方がいい」

「わかりました。ではまた後ほど」

──俺はテントを出ると、独りで腸詰(ヴルスト)を肴にノンアルコール・ビールを堪能していた六甲を引きずり出し、急ぎ足で自陣に向かった。




登場人物紹介・Pt.3
【名前】西住まほ
【所属】黒森峰学園3年
【役職】黒森峰戦車隊隊長(ティーガーI車長)
【概要】
言わずと知れた西住流の長女で、真鶴の姉・涼霞を良き先輩と慕っていた。真鶴とは中等部からの付き合いがあり、中等部時代は真鶴のことを弟のように可愛がっていたこともあり、涼霞の事故の後に突如姿を消した真鶴を必死に探していた。
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