ガールズ&パンツァー外伝 戦場を駆ける彗星   作:レオパルト

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Leo - お久しぶりです。お久しぶり過ぎたかもしれません。レオパルトです。すっかり忘れてたとか言えないですが、第4話です。

Rei - お久しぶりです。書き終わったのになかなか投稿されないなぁと思ってたらレオパルトさんがド忘れしてたみたいです。


第4話 戦車前進(フォワード)

──試合会場・速見高校本部──

テントでの一悶着の後、自陣に戻った俺と六甲は、割り当てられた広い敷地に似合わない、こぢんまりとした自分たちのテントに各車の車長を集めた。──といっても俺をふくめて4人しかいないのだが。

「これからミーティングを始める……と言っても今日は練習試合だし、我々はいわば──引き立て役だからな。優先すべきは身の丈にあった戦法で相手に立ち向かうことで、(いたずら)に戦果を出そうとして慣れない立ち回りをした挙句、大恥をかくことでは決してない。……繰り返すが、あくまで今日の目的は黒森峰戦車隊のサポートだ。いつも通りの機動戦で相手を攪乱(かくらん)し、誘引した敵部隊を黒森峰に粉砕してもらう──なにか質問は?」

今回の基本方針を伝えると、一人の隊員が手を挙げた。

「志賀先輩、何か?」

「質問してもいいかな、将翔くん?」

手を挙げたのは速見高校の戦車隊で唯一の三年生、志賀睦美(シガムツミ)先輩だ。

「ええ、もちろん構いませんが……」

「今回の試合、黒森峰戦車隊とは別行動していいんだね?」

「はい。遊撃隊としての行動ができるよう、先ほど許可を貰ってあります」

「なら、私は敵部隊を君たちの前に誘き寄せるよ。そこを君たちが叩けないかな?」

彼女は元は強豪校からオファーが来るほどの戦車乗りだったが、すべてのオファーを蹴って我が校に入学した。なのでもちろん、()()()()()()非常に優秀だ。だが、それは殲滅力に秀でているという意味であり、戦術立案にまで長じているわけではない。

「志賀先輩、我々は少人数です。プラウダを叩くほどの火力も持ち合わせていません」

「だけど、全員が固まって誘引役を務めれば、一度包囲されてしまえば終わりだよ?」

「うっ……それは──確かにそうですが」

だが、部分的に正論を言っているがゆえに、反論しづらい。少人数の火力分散は正直いって悪手には違いないのだが……

「私たちの火力は今回の相手にはお飾りみたいなものだよ。でも君のコメットに載ってる17ポンド砲は飾りじゃないだろう?」俺が口ごもっているのを見て、先輩が畳みかける。

「ですが、今回の我々は黒森峰の引き立て役ですよ?積極的な撃破は……」

「将翔くん、黒森峰の隊長は私たちの別行動を認めたんだ。別に撃破したっていいんじゃないかな。それに将翔くんは分かってるはずだよ、速見高校(わたしたち)の戦車道が今までのやり方だとずっとこのままだってね」

「しかし……!」

志賀先輩はかなりの実力者な上、俺たちの先輩でもある。俺とてあまり強気には出られなかった。だが──

「……SERIOUSLY(正気ですか)?」

俺の後ろから暢気そうな──そして幾分か馬鹿にしたような声音がまじった──声が割ってはいった。そういえば一人いたのだ……空気を一ミリも読まない奴が。──振り返ると、黒森峰テントから“鹵獲”してきたノンアルコール・ビールの瓶を片手に、六甲が呆れたような顔を先輩に向けていた。

「戦力が少ない上に分散させるのは悪手中の悪手です――おまけに遊軍化したとなりゃ包囲されたあげく各個撃破されてお(しま)いですな。相手が初心者なら話は別でしょうがね……相手は強豪も強豪なんですから舐めちゃアいかんでしょう」

六甲の挑発を受けた先輩は、それをまったく意に介さない様子で笑みを浮かべる。

「ほう、じゃあ六甲君ならどうすればいいと思うのかな?」

「簡単な話です……我々は所詮弱小校、気張って(はし)りまわるよりも支援(サポート)役に徹した方が確実に勝利に貢献できます。()()になりたいがために(いたずら)に戦車と数少ない隊員を酷使するべきではないでしょう?──ま、平たくいえば『身の丈にあった戦い方をすべき』といったとこですかね」

──だが、説明を求められた六甲は、呆れたような顔はそのままに、我々の現状に即した現実的な──そして幾分嫌味の交じった──主張をした。

「だけど、私たちの戦車道がこのままだと──」

「だから言っているでしょう、我が校の戦車道を改革する人員すら今はいないんですよ」反駁(はんばく)しかけた先輩に、六甲がぴしゃりと言う。「現にいまでも、4輛しか動かせていないでしょう?」

「む、むぅ……」

そこまで言われ、さしもの志賀先輩も押し黙った。目の前にある現実を提示されては、詭弁の弄しようがない。──しおれた先輩に良心が傷んだのか、六甲はやっと舌鋒(ぜっぽう)をゆるめた。

「──ともあれ、真鶴も私も先輩の能力を過小評価しているわけではありません。イザという時の切札(ジョーカー)は切る時を選ばなければならないのです……そうだろ?真鶴」

「ああ。──強力な助っ人が欲しいときは必ず呼びますから、今は我々を信じてください。とりあえず、戦果は度外視で4輛まとまって攪乱をおこないましょう。もし殿(しんがり)をもって敵に強烈な反撃(カウンター)をくれてやる必要があれば……志賀先輩、あなたの出番です」

六甲に話を振られて俺がフォローすると、先輩の瞳に輝きがもどってきた。

「……なるほど、確かにそうだね。──わかった、今回は君たちの要望どおりに動くよ」

「ありがとうございます。──ほかに質問は?」

先輩が納得したことで、ほかに反対する者は誰もいないようだった。

 

暫くして試合開始に備えて黒森峰、速見の各車がスタート地点に集結する。こちらの編成は隊長車のコメット、副隊長車のチャーフィー、その他に先輩が乗るIII号戦車L型、搭乗員が1年生のみのクロムウェルMk.V──型式も国家もバラバラの4輛体制。対して黒森峰は、新旧ティーガーで隊長副隊長を固め、その他もパンターやヤークトパンター・ヤークトティーガー駆逐戦車を中心に構成されている。……そのうちシュトゥルムティーガーやレーヴェ*1まで出しそうな勢いだ。

「やっぱりこれだけいたら9連覇もするよな……」

圧倒的な戦力格差を前にして、改めて黒森峰に感心の念を抱きながら、試合開始前の挨拶をしに審判団のもとに向かう。──“主役”の高校以外は副隊長を呼ぶ必要はないそうで、向かうのは俺だけだ。

「将翔か、来たな」

「遅いじゃない将翔」

審判団のもとには既に西住隊長とエリカ、今回の対戦相手──プラウダの隊長と副隊長、知波単の隊長が既にこちらの到着を待っていた。──プラウダ高校の隊長・カチューシャはどこかこちらを見下したような笑みを浮かべている。これが強豪校の余裕か……などと考えているうちに──

「では、これより黒森峰・速見高校 対 プラウダ・知波単高校の試合を開始します。両者、礼!」

「「「「「「よろしくお願いします」」」」」」

──試合の火蓋が切って落とされた。両チームのメンバーが各々の戦車にぞくぞくと乗り込み、エンジンの始動音を低く響かせる。

Panzer vor(戦車前進)!』

Foward(前進)!」

無線機の向こうから聞こえる西住隊長の声と俺の声が被り、両校の戦車が一斉に前進する。黒森峰は砲をならべて勇壮に、我々は別方向へ一目散に。俺のコメットも自慢の俊足を活かし、土を蹴たてて驀進した。──すべては、速見高校戦車道部復興のため。

*1
Löwe;計画倒れのVII号戦車。




登場人物紹介・Pt.3
【名前】志賀睦美(シガムツミ)
【所属】速見高校3年
【役職】III号戦車L型車長
【概要】
速見高校戦車道チームで唯一の三年生。
当時の二・三年生共々全国大会に出場できないという辛酸を舐めた結果、彼女以外の戦車道部員は全員、卒業するか脱退してしまい、速見高校戦車隊の栄光から衰頽(すいたい)までの歴史を知る唯一の人間になってしまっている。普段は物腰の柔らかい女子生徒で、下級生からの人気も高いが、自分の意見を通そうとするときには少々威圧的になる。
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