REI - お久しぶりです。久々に創作意欲が湧いたので書いてみました。数ヶ月ぶりに日本沈没読みましたがいいですねあれ。
あと今日東京の活字店で活字買って名刺刷って来ました。近年どんどん活字店が消えていきます……
『──こちら
「了解。車種と所属は判るか?」
『闇雲に突撃してはこないのでプラウダの車輛でしょう。車種は……シルエットから察するにすべてT-34
「他に敵影は?」
『ありません』
おおかた偵察でもしに来たのだろう。罠の可能性も捨てきれない──というよりかなり濃厚だが、敵戦力を減らせるいい機会だ……
「全隊傾注!──目標、三時方向・敵偵察車3輛! 装塡完了次第自由射撃!」
俺が命じた数瞬後、既に装塡を済ませていた全車輛が一斉に撃った。わずかな射撃タイミングのズレで間延びしたドォン──という轟音の後、茂みに隠れていた
「クソ! 1輛仕留め損ねた!──
そう──速見高校の面々の射撃精度は高く、半キロ離れた敵戦車を精確に貫いていた。だが真鶴の下した「自由射撃」命令に従った結果、照準が2輛に集中してしまったのだ。
必死に逃げるT-34に一早く再装塡を終わらせたIII号が射撃するが、もう間に合わない。III号の放った弾はT-34の尻についていた予備履帯を吹き飛ばすことしかできず、敵は森の奥へとその姿を消してしまった。
「まずい──敵に位置を知られた! 全車、全速で陣地変換!」
俺たちは仕方なく位置を変えるべく全速で動きだしたが、しばらく走った後に
「おい六甲──III号はどこだ? さっきから見当たらんぞ」
俺の報告を聞いた六甲が慌てて車長用キューポラから飛び出してあたりを双眼鏡で捜すが、見当たらないようで目に見えて狼狽している。
『
『今忙しいから! 私のことは放っておいて!』
六甲が無線に叫ぶが、志賀先輩はやっと答えたかと思えば乱暴に答えてすぐ黙ってしまった。
「そういう訳にもいきません! 本隊を抜けてどこに行ったんですか!──あっ、まさか……」
そして先輩を叱咤しながら、俺は
『さっき撃ち漏らしたT-34を追ってる! もうすぐ敵戦車に追いつくから待ってて、終わったらすぐ戻るから!』
「待ってください先輩! すぐに戻ってください!」
俺の感じた不安は現実となった──志賀先輩が独断専行し、敵の罠の只中に飛び込んでいったのだ。まだ弱小だった頃の大洗も引っかかった
プラウダが巣を張って待ち構えている中に飛び込めば、いかに優秀な志賀先輩といえども勝ち目は薄い。せいぜい3~4輛を道連れにしたところで袋叩きにされて終わりだろう。
「どうする⁉──先輩を援けに行くか? 隊を分割して──いや、それは悪手……なら放置するか? 我が校随一の戦力を──?」
『隊長!! 落ち着いてください!』
俺が
「しかしどうする⁉ 無線で戻るよう言ったところであの先輩は聞くわけもなし、だからといって放置すれば戦力がガタ落ち、救援隊を組織しようにもそんなに輛数はない!」
『その通りです。どうにもならない以上、採るべきは〝損害を最小にする〟──消耗抑制ドクトリンです』
「放置しろと⁉」
『遺憾ではありますが……〝YES〟です。救援隊の組織は損害を増やし、戦力を減少させます。ですが、先輩を放置するだけであれば損害は最小限、加えて先輩が大暴れしてくれれば敵戦力を大幅に削減することも可能でしょう──もちろん、運がよければの話ですが』
「それに先輩にヘイトが向くから俺たちが逃げやすくもなる──と?」
『然様です。今は全速力で反対方向へ逃げるのが先決でしょう。それに……』六甲は少し考えるように黙ると、ふいに何かを思いついたように言った。『思わぬ
──プラウダ高校本陣──
『こちらソユーズ3、敵が掛かりました! III号を1輛、予定の位置に誘導中です! 5分ほどで到着します!』
プラウダ高校の副隊長──ノンナの乗るIS-2の無線機から、喜びを滲ませた声が聞こえてきた。──速見高校のIII号が追っているT-34/76からだ。
「カチューシャ、敵が〝罠〟に掛かったようです。1輛だけですが……キルポイントに誘導します」
「あいつら大洗とウチの戦い見てなかったのかしら? まあいいわ──ニーナ! 準備はいい?」
『
T-34/85のキューポラからちょこんと小さな体を出しながら高い声で燥いでいるのは、プラウダ高校隊長のカチューシャだ。彼女の指示のもと、プラウダ高校は3輛の〝餌〟を撒き、釣れた敵をKV-2率いる5輛が袋叩きにする陣地を完成させていたのである。
──速見高校・III号戦車L型(志賀車)──
「志賀先輩! 流石に命令違反はマズいですって!」
操縦手が私の独断専行を諫めるが、それでも彼女は私の指示に背くことはせず、III号は相変わらずT-34/76を追って荒地を軽快に飛ばしている。──きっとこの子は今の速見の戦車道に納得できてないのだ。だから隊長と対立してでもこの現状を変えようとしている私を慕ってくれているのだろう。操縦手の彼女だけではない。この戦車に乗っている全員が私を慕って動いてくれている。
「忠告ありがとう。でもね、今……私たちは戦車乗りとして退いちゃいけない所まで来てるの!」
私を慕ってくれている彼女たちの為にも、せめてこの一輛だけでも撃破しなければならない。
「分かりました、私もお供します! 装填完了です!」
「いつでも撃てます!」
私の中の所信表明に呼応するように装填手と砲手の威勢が良い返事が私の中の闘志を再度奮い立たせる。撃つべき目標はおあつらえ向きに弱点を晒しながら、蛇行すらせずに目の前を走っている。
「撃て!」
「はい!」
長砲身50mm砲から放たれた弾丸は、的確に敵戦車のエンジンを射抜き、あっさりと敵戦車を行動不能へと追い込んだ。
「よしッ!──まずは一輛!」
私は小さくガッツポーズし、喜びを静かに爆発させたが、敵戦車を撃破した1年の砲手──
「どうしたの、矢貫? 本隊に報告して戻るよ……」
「すいません志賀先輩、少し気になることがあるので地図を見せて頂けますか?」
「何かあったの?」
矢貫に戦場の地図を見せると、敵戦車を発見した地点から今いる地点までの道のりをなぞり、更にその先のとある地点を指差す。
「もし、プラウダが私たちを
矢貫が指差した場所には廃墟が存在し、敵戦車の進行方向的に考えても充分有り得る話ではある。
「ふぅん、すると私たちがこのまま行けば敵の罠に誘いこまれて、脱出は絶望的──と」
真鶴の奴が必死に制止したのはこれが理由か、とそこでようやく合点がいった。
「ただ──このまま怖気づいて引き返すというのも癪だねぇ……いっそ殴り込んでやろうじゃないの。よーし──
「「「はい!!」」」
後輩たちの元気な返事と共に、III号の快速を支えるマイバッハ製12気筒エンジンが唸り声を響かせ──III号はプラウダの包囲網に全速力で突っ込んだ。