ガールズ&パンツァー外伝 戦場を駆ける彗星   作:レオパルト

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Leo - お久しぶりではないです。どうもレオパルトです。ちょっと間が空きましたが第六話です。

Rei - この間ぶりです。割と頑張って書いてるので伸びてくれると狂喜するかもしれません。


第6話 〝雪豹〟

──プラウダ高校本陣──

『こちらクルスク2、ソユーズ3が撃破されました! 敵は進行を停止!』

「罠が気付かれたのでしょうか?」ノンナが言う。〝餌〟のT-34/76を撃破したところで停止したということは、仕掛けた罠に気づいた可能性が高い──計画が総崩れだ。

だが、すぐ後に飛び込んできた報告は彼女らが予想すらしていなかったものだった。

『敵、再度行動を開始!──ぜ、全速力でそちらに向かっています! あの速度だとあと30秒もせずにそちらに到着します!』

「──なんですって? ()()()()()()()?」

III号のとった行動は常識では考えられないものだった。罠の只中にわざわざ飛び込んでいくのは、狂人か──でなければよほど腕に覚えがあるか、だ。

(それにしても、III号ごときでいったい何ができる────?)

「カチューシャ、速見のIII号が1両、こちらに向かっています。迎撃の指示をしてください。恐らく敵は何か考えがあるはず──」

ノンナが警告していると、不意に森の中からエンジン音が聞こえてきた。ずんずん大きくなるその音を聞き、先ほどまで呑気に雑談をしていたプラウダの面々は静まり返り、徐々に近づきつつある()()に警戒をあらわにする。

ノンナも敵戦車を視認すべく、双眼鏡を取ろうと車内に潜る。その時──バシュン、という発砲音と共に無線から味方の悲鳴が飛び出した。

ノンナが慌ててキューポラから顔を出すと、最前列にいた味方が白旗を揚げていた。無線から聞こえる撃破された味方の悲鳴から部隊の連携が一瞬、乱れる。

だが、敵はその一瞬を見逃さなかった。──もう一度発砲音が響くと、混乱して固まっていた味方がもう一輛屠られる。プラウダ隊の眼前にその姿を現したIII号は、砲口から白煙を上げながらノンナのIS-2を照準すべくその砲塔をゆっくりと廻す。だが、眼前にいつもは歯牙にも掛けないIII号が無防備な横っ腹を晒しているというのに、彼女らは引金を引くことができなかった。──III号の発する威圧感(プレッシャー)に呑まれていたのである。

むろん、森の中から聞こえてきた音の主が()()が敵戦車、すなわち先ほどソユーズ3を撃破した速見のⅢ号ということは、この場の誰もが知っていた。しかし、普段なら歯牙にもかけない弱小校の骨董品(ポンコツ)からなぜここまでの威圧感(プレッシャー)を感じるのか、誰も理解できなかった。──ノンナ達幹部を除いては、だが。

「あの紋章(エンブレム)は──〝Ju87(スツーカ)〟⁉」ノンナが小さく叫ぶ。そして、その小さな叫びは不運にも、驚きの声色とともに無線機に拾われてしまった。

ユンカースJu87──かのルーデル閣下の愛機としてそのサイレンと共にソ連軍に大打撃を与えた、第三帝国空軍(ルフトバッフェ)が誇る鋼鉄の(ハヤブサ)

だが、戦車乗りでありながらわざわざJu87(スツーカ)の紋章を付ける者は一人しかいない。

『──〝継続の雪豹〟……』

『──〝加賀の辻斬り女〟……』

『──〝戦闘狂(コンバット・フリーク)〟……!』

口々に呟かれる異名は、全てあのIII号L型の車長──志賀睦美が()()()()所属時代につけられた渾名の()()()()()()に過ぎない。特にプラウダの上級生にとっては、彼女は以前の継続戦でさんざん煮え湯を飲まされた相手だった。

 

──志賀車──

「志賀先輩! 敵さん、思ったより反応鈍くないですか!? さっきから全然撃ってこないですよ!」

「きっと急に飛び出てきた私たちにビビってるんじゃない? はい装塡遅れてるよ! 急いで急いで!」

プラウダの戦車は車長がお互いの表情が分かるほどの距離まで近づいているが、一向に指示や連携を取る気配を見せず、こちらのIII号を見て固まっていた。

プラウダとは学校が違うだけで何度か矛を交えたことがあったし、「志賀睦美」の名はこの〝黒いJu87(スツーカ)〟の紋章と共にかなりの知名度を誇る。プラウダの連中もまさか〝継続の雪豹〟が斬り込んできたとは思わず、足が竦んで動けなくなっているのかもしれない。

だが、その静かな恐慌(パニック)状態も長くは続かなかった。──〝継続の雪豹〟の斬り込みは確かに衝撃的ではあったが、その程度で戦意を喪失するプラウダではない。呆けたようにIII号を見ていた車長たちも、やがて再びスイッチが入ったように動き始めた。

「チッ……矢貫! 自由射撃! 目についた奴から叩くよ!」

「はい!!」

矢貫がすぐさま見事な正確さでT-34/85を1輛射抜くが、その間に照準を終えた3輛のT-34がこちらに撃ってくる。III号は咄嗟の急発進でぎりぎり躱したが、このままでは集中砲火の餌食になってしまうことは誰の目にも明らかだった。だが、志賀は焦るどころか落ち着きはらって──自信によるものか、恐怖によるものか──不敵に笑っていた。

「〝ロシアの広大さが我々をむさぼる〟ねぇ……さぁて、どうするかな」




ミニ解説

【ルーデル閣下】
ハンス・ウルリッヒ・ルーデル(1916-1982)の愛称。
ドイツ空軍でただ一人黄金宝剣柏葉付騎士鉄十字章を授与されており、「ソ連人民最大の敵」「アンサイクロペディアに噓を書かせなかった男」「スツーカの悪魔」「空の魔王」など数多の異名をもつ戦車撃破王。

【ロシアの広大さが我々をむさぼる】
ゲルト・フォン・ルントシュテット(1875-1953)の言葉。1942年夏。
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