Rei - この間ぶりです。割と頑張って書いてるので伸びてくれると狂喜するかもしれません。
──プラウダ高校本陣──
『こちらクルスク2、ソユーズ3が撃破されました! 敵は進行を停止!』
「罠が気付かれたのでしょうか?」ノンナが言う。〝餌〟のT-34/76を撃破したところで停止したということは、仕掛けた罠に気づいた可能性が高い──計画が総崩れだ。
だが、すぐ後に飛び込んできた報告は彼女らが予想すらしていなかったものだった。
『敵、再度行動を開始!──ぜ、全速力でそちらに向かっています! あの速度だとあと30秒もせずにそちらに到着します!』
「──なんですって?
III号のとった行動は常識では考えられないものだった。罠の只中にわざわざ飛び込んでいくのは、狂人か──でなければよほど腕に覚えがあるか、だ。
(それにしても、III号ごときでいったい何ができる────?)
「カチューシャ、速見のIII号が1両、こちらに向かっています。迎撃の指示をしてください。恐らく敵は何か考えがあるはず──」
ノンナが警告していると、不意に森の中からエンジン音が聞こえてきた。ずんずん大きくなるその音を聞き、先ほどまで呑気に雑談をしていたプラウダの面々は静まり返り、徐々に近づきつつある
ノンナも敵戦車を視認すべく、双眼鏡を取ろうと車内に潜る。その時──バシュン、という発砲音と共に無線から味方の悲鳴が飛び出した。
ノンナが慌ててキューポラから顔を出すと、最前列にいた味方が白旗を揚げていた。無線から聞こえる撃破された味方の悲鳴から部隊の連携が一瞬、乱れる。
だが、敵はその一瞬を見逃さなかった。──もう一度発砲音が響くと、混乱して固まっていた味方がもう一輛屠られる。プラウダ隊の眼前にその姿を現したIII号は、砲口から白煙を上げながらノンナのIS-2を照準すべくその砲塔をゆっくりと廻す。だが、眼前にいつもは歯牙にも掛けないIII号が無防備な横っ腹を晒しているというのに、彼女らは引金を引くことができなかった。──III号の発する
むろん、森の中から聞こえてきた音の主が
「あの
ユンカースJu87──かのルーデル閣下の愛機としてそのサイレンと共にソ連軍に大打撃を与えた、
だが、戦車乗りでありながらわざわざ
『──〝継続の雪豹〟……』
『──〝加賀の辻斬り女〟……』
『──〝
口々に呟かれる異名は、全てあのIII号L型の車長──志賀睦美が
──志賀車──
「志賀先輩! 敵さん、思ったより反応鈍くないですか!? さっきから全然撃ってこないですよ!」
「きっと急に飛び出てきた私たちにビビってるんじゃない? はい装塡遅れてるよ! 急いで急いで!」
プラウダの戦車は車長がお互いの表情が分かるほどの距離まで近づいているが、一向に指示や連携を取る気配を見せず、こちらのIII号を見て固まっていた。
プラウダとは学校が違うだけで何度か矛を交えたことがあったし、「志賀睦美」の名はこの〝黒い
だが、その静かな
「チッ……矢貫! 自由射撃! 目についた奴から叩くよ!」
「はい!!」
矢貫がすぐさま見事な正確さでT-34/85を1輛射抜くが、その間に照準を終えた3輛のT-34がこちらに撃ってくる。III号は咄嗟の急発進でぎりぎり躱したが、このままでは集中砲火の餌食になってしまうことは誰の目にも明らかだった。だが、志賀は焦るどころか落ち着きはらって──自信によるものか、恐怖によるものか──不敵に笑っていた。
「〝ロシアの広大さが我々をむさぼる〟ねぇ……さぁて、どうするかな」
ミニ解説
【ルーデル閣下】
ハンス・ウルリッヒ・ルーデル(1916-1982)の愛称。
ドイツ空軍でただ一人黄金宝剣柏葉付騎士鉄十字章を授与されており、「ソ連人民最大の敵」「アンサイクロペディアに噓を書かせなかった男」「スツーカの悪魔」「空の魔王」など数多の異名をもつ戦車撃破王。
【ロシアの広大さが我々をむさぼる】
ゲルト・フォン・ルントシュテット(1875-1953)の言葉。1942年夏。