Rei - 短いですが久しぶりの投稿です。対プラウダ戦はあと一話を予定しています。
──その時だった。
ヒュッ、と風を切り裂く音が聞こえた直後、知波単隊の玉田車──九七式改が撃ち抜かれたのである。
『なっ!? 玉田、何があった!?』
『北方からの攻撃により行動不能! 正確な敵位置は不明! 申し訳ありません!』
すぐさま共用周波数で通信が飛び交うが、攻撃の正体はわからない。ならばと、ノンナはひときわ大きな声で無線機に言った。
「落ち着きなさい! 敵も超遠距離射撃を行っている以上、狙いをつけるのは難しいはずです。牽制射撃で攻撃を中断させ、全速力で離脱します」
『りょ、了解であります!』
むろん、敵の位置など判ってはいない。射撃方向はてんでバラバラだが、敵に〝狙われている〟と思わせるぐらいはできるだろう……ノンナはそう思いながら、砲塔旋回ハンドルを廻しはじめた。
──速見本隊──
「──プラウダ隊が……減速?」キューポラの上で双眼鏡を覗いていた六甲が訝しげに呟いた。「隊長、プラウダ隊が減速しています。攻撃を受けて
「そんなはずはない。黒森峰隊の到着にはどう甘く見積もってもあと5分はかかるし、あいつらが内紛を起こしたとは思えん」と将人が返すが、その間にもプラウダ隊のIS-2はその長い砲身を北の山岳地帯に向けてめくら撃ちをはじめていた。
「──まさか!」将人は何かを思いついたようにマイクを取り出した。「
『今かい? 北の山岳地帯の中腹で敵さんを狙撃中さ』
さよう──志賀車は撃破されてなどいなかった。襲撃中にIS-2とT-34/85が離脱していくのを目ざとく見つけた志賀は、プラウダ本隊が同士討ちを恐れて射撃しにくくなっていることを利用してノンナ達とは反対方向へすばやく離脱し、大回りして待ち伏せをしていたのである。
「まだ見つかっていませんか?」
『見つかってないだろうね。闇雲に撃ってるだけだから
「それなら好都合です。運悪く当たらないように注意しつつ、プラウダ隊の気を引きつづけてください。我々は裏から回り込んで奇襲を試みます」
『よしきた。──ただ来るなら急いだほうがよさそうだよ。敵さんはどうも
「わかりました。なるべく注意を引き付けて、時間を稼いでください」
『
通信をおえてから二分と経たないうちに、木陰に隠れていた速見本隊が動き出した。──いかに歴戦のプラウダ隊といえども、絶えず飛んでくる遠距離攻撃に対処しながら背後からの奇襲を
「
将人の号令とともに、都合3門の砲が一斉に火を噴いた。──ドドドンッ、という連続した砲声の一瞬後、取り巻きのT-34が一瞬にしてすべて屠られた。
「Эскадрилья Хаями!? Откуда они были!?(速見隊!? いったいどこから⁉)」
「Не знаю(分からないわ)!」
生き残ったIS-2が退避しようとするが、将人がそれを許すはずもなかった。小口径砲をそなえるコメットは装塡をすばやく終え、第二の牙をIS-2の機関部に向けて放った。
──プラウダ本隊──
『別働隊全車輛、撃破されました! 知波単隊も全滅です! カチューシャ、敵本隊がそちらへ向かっています。注意してください!』
「な、なんですって……」
IS-2からの最後の通信を聞き、カチューシャは絶句した。〝本隊〟とは名ばかりで、カチューシャの周りにいるのは新人ばかりだ。ノンナとクラーラの二ツ頭で黒森峰に損害を与え、返す刀で速見隊を粉砕するつもりだったが──当てが完全に外れてしまった。
──しかし、この程度で意気阻喪していてはプラウダ高校戦車隊の隊長は務まらない。どのような状況下でも戦意を喪失せず、敵を撃滅することこそ、「偉大なるプラウダ高校」の隊長であるための資質なのだ。
「……ッ!
『『『
────古来より、ロシアという国は攻撃に疎かった。どの時代でも、ロシアを侵略すべく侵入した軍はロシアの国境をやすやすと破り、奥へ奥へと侵攻した。
だが、その攻勢はやがてぴたりと止まり、やがてじわりじわりと後退をはじめる。ナポレオン一世による侵攻も、第三帝国による電撃戦も、ロシア軍を完膚なきまでに叩きのめすことはついにできなかったのだ。
そして、カチューシャはその歴史を繰り返すべく、森林地帯の奥地へと陣を移したのである……