リーニエ「私が人間に絆される訳が無い……多分」(本編完結) 作:リーニエたんhshs
第1話『変な人間』
魔族、という私達の属するイキモノは人間を食す事が何よりの楽しみであり生き甲斐だ。
人間を騙す為に人間に程近い声と端麗な容姿を手に入れ、その声で囁き、容姿で目を奪い、誘い込み、食らう。
たまに討伐しに来た人間から「罪悪感とか無いのか」なんて聞かれるが魔族というイキモノはそんな感情を持たない、知ろうとしてもどこぞの七崩賢の様に理解なんて出来るはずが無い。
根本的に魔族とは『そういうイキモノ』であるからだ。
人間の容姿をしているがそれだけ、全くもって別の何か。
そうであるはずだし今まで私が見てきた魔族も全員そうだった。
だから……だから。
私は言いたい。
「私が人間に絆される訳が無い……多分」
「いや俺の膝の上にちょんと乗っかりながら言うセリフじゃないんですわそれ。あと結構目逸らしながら言ってるし」
「人間と貴方は別腹だから。貴方の胸の中は暖かい」
「そんな思い切りデレデレしながら言われても詭弁なんですよそれ」
「私をこんな風にしたのは貴方。だから責任取って」
「……まぁその、あの時はつい勢いでな……ってこのやり取りいつもやってんなオイ」
「気の所為」
「ぜってぇ気の所為じゃねえよ」
そう、私が人間に絆されるはずが無いのだから――
「リュグナー様、初仕事ですか?」
「ああ。この山に入ったという上質な魔力を持つ人間を捕え喰らう。その為にお前には魔力探知でその人間を探してもらう」
「承知しました」
思えばアレは5年前だったかな。
魔法研究もかなり研ぎ澄まされたものになり私は晴れて七崩賢が一人……名前は知らないけど、の筆頭部下……の筆頭部下の1人に就任した。
実戦経験皆無だった私が最初からその位置に付けられたのも一重にその魔法の汎用性、強度が認められたからだろう。
取り敢えず悪くない地位に付いたのだから人間はしっかりと食べたい、そんな事を呑気に考えていたと思う。
「……ボサっとするなよリーニエ、使えなきゃ殺すぞ」
「分かってる」
そう、この日は管轄内の山に勝手に入った人間を喰らうという事で初仕事に、管轄している七崩賢の筆頭部下リュグナーにドラートと共に呼び出され駆り出されていた。
今考えるとちょっと何言ってるのか分からない話だけれど、魔力強化には魔力の強い人間を喰らうのが良い……とか、言っていた気がする、定かでは無いけれど。
そんな下らない事でも仕事は仕事だ、雑用の様な事をやっていけばこの縦社会の魔族の中でも多少なり有利に生きていけるはずだと何一つ迷いなく仕事をしようとしていた。
「さて、着いたぞ。では早速探知を始めろ」
「はい」
結果として数十年を掛けて研究してきた『魔力の流れを読み取る』事による模倣の応用……副産物として手に入れ研鑽してきた自慢の魔力探知は絶大な効果を発揮し10秒もしない内に対象は発見した。
「……見つかりました」
「うむ、ご苦労」
「ふーん、割とやるんだ」
そしてそれが私にとっての転機になるのだった――
「ん?魔族?なんでこんなとこに?」
「ここは我々の管轄下なのでね」
「へーそうなの、ちょっと迷子になっちまってね。ちょっと下るから……」
「そんなものは必要無い、殺れドラート」
「悪いけど死んでもらうよ」
魔族は人間の話す言葉が分かる、何を喋っているのか分かる。
だがあくまでも『言葉の意味を知っているだけ』だ。
だから魔族と人間の間で対話は成立しない。
人間と家畜が対話出来ないのと同じ様に、である。
人間はそれを理解出来ない者が多い、この人間もまたそう聞いた通りなのか――そう思っていた。
「おいおい荒事は好みじゃないんだよ。ったく魔族はこれだから嫌だね」
「コイツ……人間の首なら一瞬で飛ばせる程の強度がある糸を簡単に切り裂いただと?」
「俺のハンマーは切り裂けないみたいだな?あと切り裂いたんじゃなくて潰したんだよ」
「こんのッ……」
しかしこの人間は魔族を理解していた。
それにとても強かった。
私よりも強いドラートをまるで遊ぶかの様に防御しつつ観察している姿に思わず見入ってしまう。
「ふむ……仕方ない。リーニエ、殿をしろ。ドラート、撤退するぞ。相手をし続けるのは些か厄介だ」
「分かりました、リュグナー様」
そうして呆けていた私だったが現実に引き戻される。
何が殿だ、ドラートでも歯が立たないのに捨て駒にするの確定みたいな流れじゃない……あの時の私は素直にそう思ったし今でもリュグナーの事は許してない。
いつか必ず殺す、文字通り。
だがそんな事言える訳も無く淡々と答え対峙する。
「……はぁ。こんな女の子殿にして逃げるなんざ種族関係無く男として情けないとは思わないのかねえ」
「……私は気にしない。寧ろ貴方の方こそ逃げなくて良いの?私、こう見えて厄介だよ」
「厄介かどうかなんて気にしてねえよ。いくら人間を食らう種族と言えどこんな女の子まで殺さにゃならんとはなあ」
「……?確かに私達魔族は人間を食べるけど、私はまだ食べた事が無い。興味本位で食べたいとは何度となく思ってきたけど」
「え?まだ食べた事無いの?」
「だから、貴方が最初の食事になって」
「お断りします」
「じゃあ、殺す」
「分かっちゃいたけど魔族の子はどうしてこう話が通じないかねえ!ナンパの一つでも出来りゃ世界平和に繋がりそうなもんなんだが!」
この男がさっきやってた動きを真似て攻撃する。
ドラートが咄嗟に避けに徹したから避けられていたものの相当な力を持った一撃である事は見抜いた、ならばそれを使えば或いは……
「うおっ、初見の俺の動きを完璧に真似るとかコイツぁコピー能力か!?面白いもん持ってるな……だが!力が入ってないね!」
私の得物であるバトルアックスは軽々と止められた……この男の真似をしたのだから多少なり効いていてほしかったのだけれど。
今となってはこの男に勝てるのはかつて七崩賢総出で迎え撃って尚半数が死亡したと言われている南の勇者と同等以上ではないと無理だと感じられるのだから勝てないのも無理はなかった。
ただ、この時はそんなの分かるはずもなかったけれど。
「くっ……私を殺すの?」
魔族の得意技、言葉。
人間は言葉に弱い。
組み伏せられ文字通り本気を出しても動けない状態にさせられた私に残されたのは『命乞いの模倣』。
この少し幼い人間の容姿だと油断してくれる人間が多いのだとリュグナーは話す、今だから分かるけどその内の半数くらいは恐らくロリコンってやつだろうね。
「……まあ、問答無用で殺す奴もいるんだろうけどさ。まだ君は人間を殺した事が無い、食した事も無い、何なら俺が初めての相手だろ?」
「それがどうかしたの。それにそんな事貴方が分かるの?」
「ああ、分かるとも。何せ俺が研究してる魔法は『真偽を見抜く魔法』だ。この世は特に騙し合いの世界、そんなクソッタレな世界を無くす為にまずは嘘が通じない人間に俺がなってやろうって思った訳。そんでこの魔法は99%の種族に通用するまでになった。流石にフリーレンにゃ無理だけど」
最初その言葉を信じる事なんて出来なかった。
この人間の年齢は凡そ15前後、魔法研究とは無縁そうな脳まで筋肉の様な大柄で顔に傷跡まである大男ではあるけど顔付きは少なくとも私の見た目年齢の少し上程度。
そんなまだ若い人間がそこまでの魔法を使えるなんて、思える訳がなかった。
「……」
でも本能では分かっていた。
この人間の話す事に間違いは無い、何故だかそう思った瞬間『この人間に食料として以外の興味を持った』。
魔族として有り得ない感情だった。
「つー訳で君は殺さないでおく。君が人間を自分の意思で害したり食べたりしない限り俺は君に手を出さないし会いに行く。……まあ、こんな事フリーレンに言えばキレられるだろうし自分でもバカな事してるって思うけど。でも俺は君を信じたいと思えた」
「魔族なのに?」
「信じたいと思う対象にそんなの関係無いね。ただ俺は目の前の『真実』を見てそれを決めてるに過ぎない。だから敵対種族がどうとかまどろっこしい話なんてクソ喰らえだ。『真偽を見抜く魔法』を持つ俺だからこそ言える話ではあるけどな」
さっきの二人は今度会ったら問答無用で処すし、なんて言いながら私の拘束を解く。
――そしてそこで私は初めて思い至ったのだ。
『そもそも上位魔族でもない私が、何故負ける事を前提で考えたのか』と。
魔族は人間を狩る側だ、人間は餌でしか無い……そのはずなのに、何故私はそこに至れた? 否、『至ってしまった』?
……今はもう、十全に理解しているけれど。
「……有り得ない」
二つの意味を持って、そう言い放った。
魔族の真意を知っていて尚、たかが人間に手を出してないだけで信じる人間がいる事と、妙な感覚に襲われた私自身に向けて。
※という前書きは建前で本音はリーニエたんをどうにかしてhshsしたかったから考察に考察を重ねた上で強引に書いてます
みんなもリーニエたんをhshs、しよう!